2,000,000キリ番ゲッター、お2人目、bankoran様のリクエスト分です。





















 関東随一、そして、日本でも有数の広域指定暴力団、大東組の最年少理事である江坂凌二(えさか りょうじ)は、毎朝よ
ほどのことが無い限り、午前7時には目覚める。
それは自分の為というよりは、まだ学生の最愛の恋人の為だ。

 規則正しい生活を彼に送らせてやる為に、江坂はまだ早いといえる時間に起き、そのまま朝食の支度をしてやる。
江坂自身、料理は得意というわけではなかったが、恋人と共に生活するようになってから、どうしても外食が無理な朝食くらいは
作れるようになっていた。
 「・・・・・」
 別に、誰に見せるわけではないので、表情は相変わらず冷たく無表情のまま、黙って卵を割り、ベーコンエッグを作っていく。
ワイシャツが汚れないように、一応エプロン(静がプレゼントしてくれた)をつけてキッチンに立っている秀麗な容貌の男・・・・・黄身
が少し硬めの物が好きな静の為に、細心の注意を払って卵を見下ろしている様は、多分静以外はけして見ることは出来ない
姿だろう。
 「・・・・・」
 ベーコンエッグが出来上がり(少し冷めた方がいいので、起こす前に作るのがちょうどいい)、トマトサラダと、野菜のジュースを入
れたところで、江坂は寝室へと向かいかけ・・・・・少し足を止めて窓辺のサボテン群に視線を向けた。

 「静さん、静さん、起きなさい」
 あくまでも優しく、静の頬や額にキスをしながら目覚めを促すと、寝起きのよい静は目を擦りながらまぶたを開いた。
 「・・・・・おはよう、ございます、え・・・・・凌二、さん」
 「おはようございます」
江坂の最愛の恋人、小早川静(こばやかわ しずか)の人形のように整った顔が、そう返事を返した途端に子供っぽく無防備
に笑う。
 「今朝も一番にあなたと視線が合って嬉しいですよ」
 嘘偽りの無い言葉でそう言った江坂は、そのまま軽く静の唇にキスをする。これが、出張などやむおえない場合を除いた毎日
の習慣だった。




 静が洗面所に向かっている間に、江坂はベッドのシーツを交換する。
江坂がそこまでするのは、けして静に頼まれているからではない。

 「俺だって手伝いますから、全部を1人でしないで下さい」

 静はよくそう言って自分でも炊事、洗濯、掃除を、分担しようとしてくれるが、誰かにやってもらうよりも自分が手早くやった方が
いいし、なにより静にはそういった日常の煩わしさを感じて生活して欲しくない。
綺麗な細い指が荒れるのは嫌だし、火傷などもってのほかだ。
 掃除は一週間に二度、信頼出来る会社に入ってもらっているが、2人の寝室だけはけして足を踏み入れないようにさせている
ので、こういったシーツの交換も既に慣れたものだった。




 「おはよー」
 「・・・・・」
 顔を洗ってリビングにやってきた静は、何時もの挨拶を始める。
もちろん自分達以外に住んでいる者はいないし、静の愛情を分け与えるようなペットも飼っていない。静が挨拶をしているのは
所々に飾られているサボテンにだ。

 「サボテンは人間の言葉が分かるんですよ?ちゃんと声を掛けて可愛がってやれば、何時までも青々としていてくれるんですっ
て」

 どういう根拠からの言葉かは分からないが、静がそう言うのだ、多分間違いはないだろう。
それに、さすがにサボテン相手に妬きもちを焼くということは無く、江坂は焼きたてのパンを差し出しながら言った。
 「静さん、用意が出来きましたよ」




 その日の予定を話しながら、穏やかな時間は過ぎていく。
江坂は無駄なことを話す性格ではなく、静も一見冷たく無口そうに見えるが、江坂は静の話を無駄だと思ったことはないし、静
も恋人の江坂に言葉を惜しまなかった。

 「俺が洗いますからっ」

 使った食器を運びながら、静はこれだけは譲れないと言う。
江坂も、静に何もさせないというよりは、何か役目を与えた方がいいだろうと思っているので、お願いしますと素直に言った。
食器洗いといっても、最新の食洗機(もちろん乾燥も出来る)があるが、数が少ないので勿体無いと静は自分の手で洗ってし
まう。
 始めは、どうしてわざわざそんなことをするのかと思っていたが、洗っている時の静の幸せそうな表情を見ると、くすぐったい思いを
感じてしまった。2人分の食器を洗っていると、2人で生活しているのだということを実感するのだろう。
それを感じ取ってから、江坂は静のすることに疑問を持つのを止めた。




 静が食器洗いをしている間、江坂は洗濯に取り掛かる。
乾燥機付きの全自動の洗濯機をまわすだけなのだが、その前に一仕事があった。
 「・・・・・」
 それは、自分と静の下着を取り出し、手洗いをするということだった。
もちろん、この下着もそのまま洗濯機で洗えばいいのだが、静の身体の一番大切な部分に触れるものは、出来るだけ自分の手
を掛けたいと思っていた。
 ブランド物の、高級といえる下着は、全て江坂が静に似合うものとしてセレクトしたもので、吟味しただけ肌触りも良く、静に良
く似合っている。
 本当は汚れるたびに新しいものを買い与えたいのだが、それなりの家庭で育ったわりには庶民感覚の静はとてもそんな贅沢(
全く贅沢ではないと思うが)は受け入れないだろう。それならばと、江坂にとってはこれくらいは当然の行動だった。
 「・・・・・」
 ただし、少しでもゴムがゆるんだりすれば、使えないものとして廃棄処分にする。その場合は一度洗濯して静の気配を完全に
消してから、細かく鋏で切断し、生ゴミと一緒に捨てた。
それも、独占欲ゆえの行動だった。







 大学に行く静を車で送り、そのまま事務所に向った江坂は、自分の部屋に入るなりたて続けに仕事をこなし始めた。
全ての理事が無能だとは言わないが、一番若く、経済や海外にもそれなりに詳しい自分に仕事が集中してしまうのは仕方がな
いと思う。
 しかし、名前だけで飯を食っている無能な輩はこの組にとって必要ではなく、江坂は近々組長に直談判して、理事の数を減
らすか、もしくはもっと有能な人物・・・・・それがたとえ自分よりも若い人間であってもどんどん登用して欲しい・・・・・そう申し出
るつもりだ。
 「・・・・・」
 無言のまま、書類に目を通し、訂正やサインを書き入れていく江坂に、傍から1枚の紙が差し出された。
一瞬視線を向けた江坂は、いきなり手を止めてその紙を手にする。
 「資料はそちらでよろしいですか?」
 「ここは本当に味はいいのか」
 「本場ではありませんが、大阪の店の支店なのでそれなりの味です。小早川君の言う、《明石焼き》の美味しい店というのは、
都内には限られていますので」
 江坂の有能な部下、橘英彦(たちばな ひでひこ)は、突き詰めるような厳しい江坂の言葉にも穏やかに返した。
 「今、たこ焼きに凝ってらっしゃるんですね」
 「・・・・・海藤のところの・・・・・あの青年のせいだ」
 「西原・・・・・君、ですか」
 「先日、タコを送ってきた。明石のタコらしい。静が、タコ料理で一番美味しいものは何だと、ちょうど掛かってきていた上杉の、
あの子供に聞いたようだ」

 「江坂さん、タコ料理で一番美味しいのはたこ焼きだって!」

 楽しそうに笑っている静を見るのは微笑ましかったが、まさかせっかくの外食までたこ焼きになるとは思わなかった。
それでも、決めたからには完璧を目指す江坂は、都内でも一番美味しいたこ焼き屋(それが屋台であっても)に静を連れて行く
つもりだった。







 「すっごく美味しかった!」
 「それは良かった。たまたま、この店を知っていたんですが」
 夕食のたこ焼きを静は十二分に満喫したらしく、帰宅途中の車の中からマンションの部屋に入っても、ずっと上機嫌が持続し
ていた。
その笑顔の分だけ調べた甲斐があったと思った江坂は、帰宅時間に合わせて入れていた風呂に静を誘った。
 「さあ、バスに入ってください。ああ、一緒に入りましょうか?」
 「だ、駄目ですっ」
 慌ててバスルームに消えていく静を笑いながら見送った江坂は、そのままリビングのカーテンを閉め、窓辺に置いたサボテンを見
つめる。
静から頻繁に水をあげてはいけないのだと言われているし、これらの世話は率先して静が見ているので手出しは出来ないが、そ
れでも枯れていたりしては大変なので朝夕のチェックは欠かせなかった。
 もしもそんなものが見付かったら、こっそりと自分が買い換えるつもりだが、今のところはその心配はないようだ。
 「明日は・・・・・午後からだったな」
静の受ける講義は午後からで、今夜はゆっくりとあの身体を味わえる。
 「・・・・・」
 江坂は寝室に向うと静と自分のものの下着(もちろんアイロン済み)を取り出し、そのまま自分もバスルームに向かった。可愛
がるのは今この瞬間からでも構わないだろう。



 「あ、ちょっ、ま、待ってっ」
 「すみません・・・・・待てない」
 言葉は哀願する響きを帯びているものの、江坂の手はスムーズに動く。
ローション代わりに使うボディーシャンプーは、もちろん静の身体に影響の無いベビー用の物で、バスルームの中でセックスをする
時にだけ、何時もの物とすり替えていることを静は気付いていないだろう。
 「あっ、あっ、あっ」
 甘やかな声がバスルームに響き、それを心地良く感じながら、江坂はゆっくりと静の硬く閉ざされた蕾を根気よく解していった。
本当は、泣いて、自分から足を広げるまでじっくりと攻め立てたいが、ここでのぼせるほどに責め苛んだら今夜という時間が潰れ
てしまう。
 ボディーシャンプーで中まで解れたことを確認した江坂は、既に立ち上がっている自分のペニスの先端を宛がい、ぐっと慎重に
腰を沈めていった。



 バスルームでは、一度だけの射精で解放した。
中に吐き出した精をかき出すのには便利な場所だが、硬いタイルの上では静の身体が痛むし、他にも楽しむ体位は色々ある
ものの、あまり飛ばし過ぎて静に過去の遊びを勘繰られても困る。
 「大丈夫ですか?」
 「は・・・・・い」
 溜め息混じりに答える静の頬は上気しているが、それでも気をつけて抱いたのでのぼせてはいないようだ。
江坂は自分はバスローブをはおり、静の身体はバスタオルでくるむと、そのまま寝室まで抱いていき、そっとベッドの上に下ろす。
 「少し、待っていてください」
 その声が聞こえているのかどうか、ぼんやりとした視線の静に軽くキスを落とし、江坂はそのままキッチンに向うと冷たいミネラル
ウォーターのペットボトルと冷やしたタオルを持って引き返す。
 「少し、冷たいですよ」
 「・・・・・っ」
 頬に当てたタオルの冷たさに、静は一瞬身体を震わせたが、そっと首筋などに当ててやると気持ち良さそうに目を閉じた。その
様子に思わず微笑むと、江坂はペットボトルを開けて自分が水を含み、そのまま静に口移しで飲ませる。
何のためらいも無く、自分の行為を受け入れる静が可愛くて、愛おしくて、始めは水を与えていたのに、キスは次第に別の意味
を含んできた。
 「あ・・・・・」
 バスタオルを剥ぎ、湯のせいか・・・・・快感のせいか、赤く色付いた肌に唇を触れさせる。
 「・・・・・っ」
 「まだ、これからですよ」
 「え、江坂さ・・・・・」
 「凌二」
 「・・・・・りょ・・・・・じ・・・・・さ・・・・・」
 「静」
耳元で名前を呼んでやると、呆気ないほどに綺麗なペニスが立ち上がってくる。江坂はふっと笑みを浮かべると、そのまま自分の
バスローブを脱ぎ捨て、熱い身体に覆いかぶさった。







 気を失ったように眠りに落ちてしまった静の身体の後始末をし、肌触りの良いシルクのパジャマを着せた。
明日・・・・・いや、もう今日だが、朝、静がゆっくり眠れると思って、久し振りに遅くまで無理を強いて抱いてしまった。傷付けて
はいないだろうが、まだまだ華奢な身体の静にとっては負担だったかもしれない。
 キングサイズのベッドの隣に飾りのように置いてあるシングルのベッドにいったん静を寝かせ、シーツを取り替えてから再びキング
サイズのベッドに寝かせた江坂は、そっとその頬に手を触れてみた。
 「・・・・・」
(熱は、ないな)
 「・・・・・」
 肉体は疲れきっているのだろうが、それくらいならば一晩寝れば治るだろう。いや、時刻はもう午前3時にもなりそうな時間で、
眠れる時間はそれ程に無いだろうが・・・・・。
 「・・・・・」
江坂はしばらく静の顔を見つめていたが、やがて立ち上がるとバスルームへと向かった。



 シャワーを浴び、そのまま寝室に向かおうとした江坂は、ふと足の向きを変えてリビングへとやってきた。
間接照明は点けてあったが、暗かったリビングの明かりを点けると、江坂はそのままサボテン群の方へと歩み寄る。
 「・・・・・」
朝と全く変わった様子は無い、緑色の小さなサボテン。
江坂はしばらくじっとそれを見ていたが、やがてキッチンに向かうと、冷蔵庫の中からミネラルウォーターのペットボトルを取り出し、
もう一度サボテンの傍へと歩み寄る。そして、少しだけ鉢に水をやった。
 「土が乾いているとどうしても気になる・・・・・」
 この位の水ならば、朝、静が目覚める頃までには目立たなくなるだろう。
 「・・・・・」
並べられている鉢全てに水をやった江坂は、満足したように少しだけ口元を緩めると、ようやく寝室へ足を向けた。



 「・・・・・」
 静はよく眠っている。
起こさないようにそっと隣に身体を滑り込ませると、待っていたかのように温かな身体が擦り寄ってきた。
 「静・・・・・?」
 「・・・・・」
起きてはいない無意識の行動に、江坂はその身体を抱きしめる。
明日の朝、多分静にとっては朝食兼昼食になるだろうが、静が食べたかったレタスチャーハンを作ってやろうと思う。

 「真琴が、海藤さんが作ってすごく美味しかったんですって!海藤さんて本当に料理が上手なんですねえ」

 先日、静がそう言っていたことを不意に思い出したのだ。
(海藤が出来ることを、私が出来ないはずがない)
根拠の無い自信を抱きながら、江坂は眠りについた。





 凝り性で、几帳面で、情が強く、顔には出さないが相当な負けず嫌い・・・・・それは、まだ静にも全て見せることが出来ない
江坂の性分だった。




                                                                     end






200万hitのキリ番、お2人目、bankoran様のリクエストです。大変お待たせいたしました(汗)。
様々なシチュエーションをあげていただきましたが、結局、江坂さんの普通の1日を書いてみました。いかがですか?
ご希望の、少しアダルトな彼の話も考えたのですが・・・・・こちらの方が親近感が湧くかと(苦笑)。