夕食の片付けを終えた芳野聖(よしの ひじり)は、エプロンを外しながらリビングを振り返った。
 「亘さん、お風呂・・・・・」
 「聖君、先に入っていいよ。僕は帰ってきてからシャワーを浴びたから」
 「あ・・・・・じゃあ、お先に」
一言そう断ると、聖は足早に自分の部屋に戻っていく。風呂に入ってしまえば、後はもう寝るだけ・・・・・今日も無事に終わるの
だと、聖は一安心をしていた。



 この春、高校に進学した聖が、込み入った事情で同居をしている高須賀(たかすが)家。
家長であるトップ企業家の42歳の高須賀圭史(たかすが けいし)と、その長男で、今年大学4年生という立場と、自分でた
ちあげたコンピューターソフト会社の役員という立場の亘(わたる)。
 ごくごく、平凡・・・・・と、いうよりは物静かで大人しく、母親に似た色白の肌と柔らかな面差し、そして片頬に出来るエクボの
せいで幼く見える聖は、自分とは違う生活力が旺盛で男らしい2人にいまだひけ目があり、数ヶ月一緒に暮らしているのだがま
だまだ慣れない。

 逃げた母の代わりに家事全般を任せられている上、なぜか花嫁の立場としておかえりなさいのキスをしたり、信じられないよう
な悪戯を仕掛けられたりしているものの、ここ以外に頼る場所の無い聖は、何とか自分の心と折り合いをつけて、高須賀家で
日々を過ごしていた。








 「ふ〜」
 大人2、3人はゆったりと入れそうなほどに広い風呂の中、湯船に伸び伸びと足を伸ばしながら、聖はパシャッと顔を洗った。
少し熱めにしたお湯の中に肩まで入っていると、ぼんやりと色んなことを考えてしまう。
(最近、高須賀さんも帰ってくるの早いし、亘さんなんか夕食の支度も手伝ってくれて・・・・・母さんは、2人共凄く忙しい人だっ
て言ってたのになあ)
 「・・・・・俺に、気を遣ってくれてるのかな」
 慣れない家で1人きりになる聖を心配してくれて、2人とも仕事や付き合いを断ってくれているのではないか。そう考えると申し
訳なくて、聖は明日にでも大丈夫だからと言おうと思った。





 「ねえ、父さん」
 聖がバスルームに消えると、亘は新聞を読んでいる父に話しかけた。
 「なんだ?」
 「そろそろ、聖君を慣らしてもいいと思わない?」
そう切り出すと、父は新聞を下ろして視線を向けてきた。笑みを湛えているその頬を見ても、父が自分の考えに反対ではないこ
とが分かる。
(もしかしたら、僕を出し抜くことも考えていたかも、な)
 幾ら会社を持っているとはいえ、大学生で共同経営の亘の方が時間があり、自然と聖といる時間も多かった。
多分、キスの回数も、悪戯をしている回数も自分の方が多いと思うが、それについて父が文句を言わないのは、それなりに聖を
構っているせいで・・・・・。
 もしかしたら夜のレッスンもしているのではないかと疑うこともあったが、どうやら誕生日まではという自分との約束を律儀に守っ
ているらしい。と、いうよりは、あまりに子供らしい聖になかなか手が出せないのかもしれないが、どちらにせよ、もう目の前に迫っ
ている聖の誕生日に向けて、スムーズに初夜を迎える為に多少のレッスンはしておいた方がいいのではと思った。
 「どこまでだ?」
 「ん〜、やっぱり、バージンは大切にしてやりたいから、挿入は無し」
 「じゃあ、やることは限られているな」
 「それでも、初めての子に教えるんだから、色々とあるんじゃない?」
 自分も父もそれなりに遊んできているものの、やはり年齢には勝てずに父の方が経験は豊富だろう。この機会に彼がどんな風
なセックスをするのか見るのも一興だと思った。
他の家族ならもちろんNGになりそうなことも、自分達親子には問題がないのだ。
 「じゃあ、後で」
 「ああ」
 「父さん」
 「ん?」
 「あんまり泣かさないでよ?中年はしつこいって聞くし」
 父のことを認めていないわけではなかったが、やはり聖を間に挟んでしまうと牽制をしておかなければと思う。
そんな自分の気持ちを十分分かっただろう父は、にやっと意味深な笑みを口元に浮かべた。
 「お前も、若い奴は勢いだけで突っ走るからな。聖のペースに合わせるように我慢しろよ」
 「・・・・・」
(大きなお世話)



 風呂から上がった聖がリビングに行くと、そこには亘の姿はなかった。
自分が部屋に上がる時まで傍にいることが普通だったので、どうしたのだろうかと少し心配になったが、
 「ああ、別に何でもない」
 そこにいた高須賀は笑いながらそう言い、聖の心配は懸念だと続けた。
 「それよりも、聖」
 「は、はい」
少し、高須賀の口調が改まったので、聖も緊張したように返事を返す。学校のことか、それとも母の・・・・・連絡がないのかを聞
かれるのかと思ったが、彼の口から出たのは意外な言葉だった。
 「来週だったな」
 「え?」
 「お前の誕生日」
 「・・・・・あ」
 言われるまで、すっかり忘れていた。
色々なことが怒涛のように襲い掛かってきて、生活環境も変わってしまったからか、聖は自分の誕生日がもう目の前に迫ってい
ると言われるまで気付かなかった。
(で、でも、そんなこと言われても・・・・・)
 去年までは、どんなに忙しくても母がケーキを買ってきてくれた。
普段は恋人とのデートで家に帰ってくる時間も遅い時があるのに、聖の誕生日だけはどんな予定も入れないで、家で2人きりで
祝った。
嬉しくて、その時だけは母を独り占めしているよな気分になっていたが、今年は・・・・・多分、気の重い誕生日を迎えるだけだ。
 「・・・・・」
 高須賀の前でだけは溜め息をついてはいけないと思ったが、それでも少し落ち込んだ気分になっていると、大きな手がクシャッ
と少し湿っている髪を撫でてくれた。
 「欲しい物、考えておけよ」
 「・・・・・え?」
 「大事な花嫁の誕生日だ。亘の奴も張り切っているからな、他の予定は入れるなよ?」
 「た、高須賀さん・・・・・」
 「違う」
 「・・・・・あ、あなた、ありがとう、ございます」
 「ああ」
(なんだか・・・・・嬉しい)
 思い掛けない言葉を言われ、聖の頬には笑みが浮かんだ。
多少、高須賀はおかしなことも言うが、基本的には頼りがいのある父親みたいな存在だ。
(で、でも、そんなこと言ったら、俺はお前の父親じゃないって怒るかもしれないけど・・・・・)
 なぜか、新婚の夫婦という設定を気に入っている高須賀は、あくまでも自分を花嫁として見ていると言う。少し違うと思うのだ
が、それでも気持ちは嬉しくて、聖はよく考えますと言って部屋に戻った。



 「欲しい物かあ」
(そんなの思いつかないし、いらないよ、な)
 そんな風に言ってもらえるだけで嬉しいし、実際に何か欲しいというものもない。今の聖にとっては、寝る場所と食べる物がある
生活は、本当にありがたいことだった。
(明日、そう伝えよう)
気持ちだけで本当に嬉しいと言おう・・・・・そう思いながら目を閉じ、うとうとと眠りに誘われていると・・・・・。

 カチャ

 「・・・・・?」
 小さな音に、眠りかけた聖の意識が浮上する。
 「な・・・・・に?」
 「あ。起きていた?」
その言葉と共に聖の視界いっぱいに現れたのは、笑っている亘の顔だった。



 「わ・・・・・たる、さん?」
(ど、して?)
 彼がこの部屋を訪ねてくることは時々あったが、それは勉強を教えてくれたり、学校の話を聞いたりする時で、眠る直前に現れ
ることはなかった。
何かあったのだろうか・・・・・何時もとは違う彼の行動に不安を覚えた聖は起き上がろうとしたが、亘が身体の上に圧し掛かって
いるのでそれも出来ない。
 「わ、亘さん、あの」
 「もう直ぐ、聖君の誕生日だね?」
 「え・・・・・あ、はい」
 それは、先ほど高須賀にも言われたことだ。いったい、自分の誕生日がどうかしたのだろうか・・・・・聖の不安な眼差しに深く
笑んだ亘は、勉強をしようと言い出した。
 「ベ、勉強?」
 「そう。覚えてない?君の16歳の誕生日に、君を僕達の花嫁にするって」
 「あ・・・・・」
 「その勉強をしようと思って」
 「は・・・・・あ」
 確かに、そのようなことを言っていたことは覚えているが、まさか本気だとは思わなかった。
今でもキスをされたり、悪戯をされたりするものの、それでも彼らが最終的な行動を取ることをしなかったのは、自分が男だからと
いうことが頭の中にあったからだろう。
 高須賀も、亘も、何もしなくても周りに女性が寄って来るほどに容姿もいいし、地位も金もある。わざわざ自分のような男子
高校生に手を出すこともないと、彼らが自分をからかうのは退屈凌ぎなのだろうと思っていた。
 だから、ではないが、今の亘の言葉を聞いても、聖はまだよく意味が分からなかった。
 「あの・・・・・」
 「大丈夫、僕達に任して」
 「亘さ・・・・・」
 「俺もいるぞ、聖」
 「・・・・・」
薄暗い部屋の中、もう一つの声が聞こえた。





 聖の戸惑った視線を受けながら、高須賀は息子に言った。
 「ほら、キスでもしてやれ」
 「じゃあ、お先に」
上機嫌に言いながら、息子は聖に覆い被さっていった。大きなベッドとはいえ、男3人が乗ると少々窮屈な感じで、
(俺のベッドが良かったか?)
キングサイズのベッドでゆっくりと可愛がってやりたかったと思うが、今日は最後までやらないわけだし、聖も自分の部屋の方が多
少は落ち着くだろう。
 いや、もしかしたら、これから部屋で眠るたびに今日のことを思い出してしまうかもしれないが、それならばそれで、聖の意識が
早く自分達との大人の関係へと向くのは大歓迎だ。
 「んっ」

 クチュ ピチャ

部屋の中が暗いので、余計に艶かしい舌の絡み合う水音が響く。
それを聞きながら、高須賀は上掛けをはぎ、いきなり聖のパジャマの下を下着ごと脱がした。
 「うんん!」
 途端に、足を振り上げて抵抗してくるが、華奢な足は簡単に押さえつけることが出来る。
高須賀はそっと手を滑らせ、ペニスに近いきわどい太腿を軽く噛んでやった。緊張したように肌が粟立ったのを感じるが、まだ本
気で嫌がっていないのが分かる。
これも、日々キスや抱擁を繰り返してきた成果かなと思いながら、高須賀はそのまま震える聖の足を舐め上げた。



 「・・・・・んっ、うむんっ」
 逃げる舌を追い掛けながら絡め取り、唾液を流し込んで飲み込ませる。
まだようやくキスを覚えたばかりの聖には、かなり上級者のそれかもしれない。唇の端から顎にかけて唾液が零れていた。
(勿体無い)
甘いそれをこのまま流してしまうのが勿体無いと思っていると、絡め合っていた聖の舌が振るえ、伸ばされた手が痛いほど肩にし
がみ付いてきた。
 何をしているのだと考えるまでもなく、父が手を出したのだろうと想像がつく。
震える舌を宥めるように吸ってやると、まるで助けを求めるかのように唇を押し当ててきた。なんだか可愛くて、亘はようやく唇を
離すと、聖の下半身に顔を埋めている父に言った。
 「父さん、ゆっくりしてやってよ」
 「・・・・・してるぞ。まだ、少し舐めただけなんだがな」
 「本当?後ろに指なんか入れてないだろうね?」
 「それはまだ早いって。せめて一度イカせてやってからな」
 「・・・・・」
(それまで、かなり遊ぶくせに)
 父のセックスを間近で見たわけではないが、一度、父と関係を持ったモデルと、そうとは知らずにセックスをしたことがあった。
彼女が言うには、父のセックスは歳相応にねちっこく、しかし、ペニスの大きさも硬さもかなりのものだったとのこと。

 「あなたも負けてないわよ」

 そう言った彼女の真意は分からない。
(僕も、歳以外は負けていると思わないけどね)





 「い・・・・やぁ・・・・・っ」
 ピチャピチャと音をたてながら乳首を舐めているのは亘だ。
小さなそれを、じっくりと味わい、育てるように、しつこく、ねっとりと咥え、刺激してくる。始めは、吸われたり噛まれたりするのが痛
かったが、今ではジンジンと痺れてくるようで・・・・・いったい、どんな風に自分の身体が変わったのか想像するのも怖いが、確か
なことは・・・・・。
(お・・・・・れ、感じて、る?)
 「俺のことも忘れるなよ」
 胸の刺激に意識を集中していると、ペニスをキュッと握られてしまった。
胸元を刺激しているのは亘だが、下半身をずっと弄っているのは高須賀だ。まだ皮を被ったままのペニスを、先端部分から幹の
部分まで手で擦り、口に咥える。
 「ひゃあっ!」
(き、汚いからっ、やめ・・・・・っ!)
 ここは排泄器官で、口に入れるものではない。何度もそう言って高須賀の頭を引き離そうとするのだが、大柄な彼の大きな手
はしっかりと聖の腰を捕らえ、喉の奥までを使ってペニスを扱いていった。

 クチュ クチャ グチュ

退こうとしていた腰が、無意識の内に揺れ始める。
このまま、自分がどうなるのか分からないと気が遠くなりそうになった時、
 「ひんっ!」
一際強くペニスを吸われ、先端に歯を立てられて・・・・・聖は呆気なく高須賀の口の中に精を吐き出してしまった。





 「ご、ごめ・・・・・さ・・・・・」
 よほど自分の口の中に射精したことに罪悪感を抱いたのか、聖はポロポロと涙を流しながら謝ってきた。可哀想だと思うと同
時に、その涙にグッと来て・・・・・我ながら若いと思うが、下半身が反応してくる。
高須賀はそのまま聖の身体を起こして、自分と向き合う形にした。
 「気持ち良かったか?」
 「・・・・・ど・・・・・して?」
 「ん?初夜は始めから楽しめた方がいいだろう?」
 「しょ・・・・・」
 泣き顔だった聖は、その言葉を聞いた途端ジワジワと顔を赤くしていき、それは身体全体を見事に染めていった。
鮮やかなその変化は見ているだけで楽しくて、高須賀は笑いながら聖の唇にキスをしたが、
 「父さん、俺もいるんだけど」
 「・・・・ああ」
(忘れてた)
 聖の姿しか目に入っていなかったと思わず苦笑した高須賀は、悪い悪いと言いながら聖を後ろから抱えるようにすると、なあ聖
とその耳元に唇を寄せた。
 「今俺がしてやったこと、亘にしてやってくれるか?」
 「そ・・・・・で、出来な・・・・・っ」
 いきなりフェラチオをしろと言っても、高校1年生の聖が直ぐに出来るはずがないとも分かっている。
これは、試しでもあった。聖が嫌悪感なく自分達を受け入れる素質があるのかどうか、それがフェラチオというのは聖にすればあま
りにハードルが高いだろうが、ここでうんと頷いてもらわなければこの先のアナルセックスなんかとても無理のような気がした。
 「嫌じゃなかったら、出来るって」
 「た、高須賀さ・・・・・」
 「ほら、亘の・・・・・お前に触れて欲しがって震えているぜ」



 「んっくっ、んんっ・・・・・ちゅ」
 両手で自分のペニスを握り、恐る恐る口に含む感触がこそばゆい。
聖の小さな口にはもちろん全て入りきれるわけではなく、先端部分だけの刺激になるが、ただ小さな舌が滑り、歯がかするだけ
でも、十分欲情は刺激された。
 「んっ、ふむ・・・・・っ」
 必死でペニスを鍛えようとしている聖の頭を撫でていると、不意にそれまでになく歯を立てられ、その痛みに思わず眉を顰める。
何をするのだと、亘は聖の背後にいる父を睨んだ。
 「父さん、邪魔しないでよ」
 「悪い悪い。聖の可愛い奴が震えているからさ」
 「・・・・・・」
 亘のペニスを刺激しているうちに聖は自分のペニスも再び勃たせてしまったらしく、それに目敏く気付いた父がそれに悪戯して
いるらしい。
(本当に、じっとしてない)
 自分は余裕があるんだと見せ付けるくせに、こうして邪魔をしてくる。確かに、聖は自分だけのものではないが、せっかく自分の
方にだけ意識を向けている時に限って、こうやって手を出してくるのはずるいと思う。
(それでも・・・・・駄目って言えないんだよな)
 「・・・・・っ」
 高須賀の手の動きがより淫らになったのか、聖の口淫が疎かになってくるが、それでも必死にしようとする泣きそうな表情を見て
いるだけでグッと来る。
(・・・・・ヤバイ)
気を抜くと、何時になく早くイッてしまいそうで、亘はその高まりを無理に抑えながら聖の頭を押さえた。






 いったい、自分は何をしているのかと思う。
口には男のペニスを咥え、自分のペニスは大人の男に散々弄られ・・・・・。

 「これは勉強なんだよ、聖君。君が僕達の花嫁になる前の、大切な勉強」
 「聖、そのまま感じろ。大丈夫、どんないやらしいお前でも、俺達はちゃんと愛せるからな」

 亘と高須賀の交互の言葉が頭の中でグルグルと渦巻く。
(俺・・・・・本当に、花嫁に・・・・・なっちゃうのか・・・・・?)
絶対にありえないはずなのに、今この状況を考えればもしかして・・・・・。
 「あっ!」
 「何考えてるんだ、聖」
 「聖君、ちゃんと僕達のことだけを考えて」
 分からない、分からない。
聖は何度も頭の中で繰り返しながらも、下半身と胸に与えられる快感と、口腔の中に含んでいるものに対する自らの行動に、
やがて・・・・・思考は真っ白になってしまった。





 数日後に迫った聖の誕生日。
その日がどんな淫らな1日になるのか、聖は想像も出来ず、高須賀と亘は、経験豊富だという自分達の余裕もかなり失われつ
つあることを自覚しないではいられなかった。





                                                                     end