500,000キリ番ゲッター、お一人目、桂様のリクエスト分です。
innocent
「どうしました、倉橋さん。全然飲んでないじゃありませんか」
「頂いていますよ」
「そんな水みたいなものを飲んでどうするんです。すみません、こちらにマンハッタンを」
「小田切さん、私は」
「まあまあ」
新年会の解散の後、まだ話そうと強引に飲みに誘われた倉橋は何とか酔わない為にとビールで誤魔化そうとしたが、それで
は面白くないと小田切は勝手に注文を追加する。
さすがに他の会派の、自分よりも年上の小田切の好意(?)を無下に断わることも出来ず、倉橋は少し困ったような顔をしな
がらも一気に飲めば終わると、差し出された酒を一気に飲み干した。
「・・・・・」
「なかなかいい飲みっぷりですね。次は・・・・・」
「小田切さん、私はもう」
「お酒はいいですか?でも、もう少し付き合ってください。カルーアミルクを」
「小田切さん」
「子供の飲み物ですよ」
差し出されたのは、本当にコーヒー牛乳のような色だ。
恐る恐る口にしてみてもほとんど酒の味も匂いもしない。
(これなら大丈夫か)
倉橋はホッとして、それを口に運んだ。
倉橋が小田切のオモチャになっているのを、綾辻は苦笑を浮かべながら見ていた。
いざとなるとおぶってでも帰ればいいのだし、綾辻自身酔って素直になった倉橋を久しぶりに見てみたかったのだ。
あまり酒に強くない倉橋は、以前綾辻の前で醜態を晒して以来、なかなか一緒に酒を飲もうとしてくれなかった。
綾辻としては酔った倉橋は普段と別人のように可愛いので、何とか機会を狙っていたのだが、今回は小田切の強引な誘いに
断われなかった倉橋も同席して、こうして慣れない酒を飲んでくれている。
(今日は小田切さんに感謝だな)
「綾辻さん」
「はい?」
「彼とはどこまでいってるんです?」
「小田切さん?」
急にきわどいことを聞いてきた小田切に途惑ったが、小田切はにっこり笑って言葉を続けた。
「大丈夫ですよ。もうとんでるみたいですから」
「・・・・・克己?」
慌てて倉橋を振り返った綾辻は、既にそこで出来上がっている倉橋を見つけた。
紅い顔に、トロンとした目付き。
何時の間に倉橋はこんなにも酔っ払ったのか、綾辻の疑問に答えたのは小田切だった。
「カルーアミルク、そこに置いてあるので3杯目なんですよ」
「え?」
「さっきあなたが電話をしに席を立ったでしょう?その間に一気に飲んでしまったんですよ。ジュースのようだと思ったのかもしれ
ませんが、これ意外とアルコール度数高いですからね」
確かに先程、どうしても一件確認しておきたかった海外の株取り引きの確認の為に席を外したが、それでもせいぜい5分くら
いだったはずだ。
「克己」
綾辻が肩に手をやると、ゆっくりとした動作で倉橋は綾辻の顔を見上げ、やがてにこっと無邪気に笑い掛けた。
普段の無表情さとは雲泥の違いだ。
「これ程変わるなら、飲ませても楽しいでしょうね」
倉橋は酔っても暴れたり大騒ぎをしたりするわけではなく、少し無邪気になり、すこし・・・・・色っぽくなる。
綾辻の目の前には、今まさにそんな出来上がった倉橋がいた。
「克己」
「・・・・・?」
首を傾げて綾辻に笑い掛けるなど、普段の倉橋からはとても考えられない。
「・・・・可愛いですねえ」
そんな倉橋を作った張本人の小田切は、ニヤッと悪戯っぽく笑いながら倉橋の頬に触れた。
「冷たい氷のようなあなたが溶けていく様はドキドキしますね」
「・・・・・?」
「私の言葉、分かりませんか?」
倉橋は笑って見つめ返すだけだ。
苦笑した小田切の手が、そのまま唇に触れようとした時、
「小田切さん、そこまで」
「ああ、それはすみません」
さすがにそれ以上はと止めた綾辻に、小田切は素直に手を引く。
そろそろ連れて帰った方がいいと判断した綾辻が立ち上がろうとした時、小田切はクスクス笑いながら綾辻に言った。
「ねえ、綾辻さん、あなた達まだ抱き合ってないでしょう?」
「・・・・・」
「あなたに触れられそうになると、倉橋さん、可哀想なくらい緊張してますからね」
「・・・・・まだ、早いと思っただけ」
「そうですか?」
小田切はポケットから小さな薬の包みを取り出すと、それをゆっくりと綾辻の目の前にかざした。
「媚薬、お分けしましょうか?」
タクシーからマンションまで倉橋の身体を半分抱きかかえるようにして来た綾辻は、何とかベットの上に倉橋を座らせた。
(初めて連れ込むのが酔った状態とはな)
しかし、もしも正気だったとすれば、倉橋は絶対にこの部屋に足を踏み入れることはないはずだ。
「克己、水は?」
「・・・・・みず?」
首を傾げる倉橋は、顔を覗きこんだ綾辻に向かって笑んだ。
「欲しい」
「少し待ってろ」
普段もこれ位素直だったらと思う反面、あまり手ごたえがないのはつまらないとも思いながらペットボトルを取ってきた綾辻は、少
し考えてからそれを自分が口に含むと、そのまま口移しで水を飲ませた。
嫌がりも照れもしない倉橋は、綾辻に口移しで飲まされた水を素直に飲みほし、もっとというようにその服の裾を引っ張る。
何度か同じ行為を続けた綾辻は、ふとそのまま深いキスを仕掛けた。
「・・・・・ん・・・・・んく」
無防備な口腔はそのまま綾辻の舌を受け入れ、それだけではなく自分からも舌を絡め始めた。
綾辻にとっては甘いカルーアミルクの味がし、それはそのまま官能の波へと誘っていく。
(・・・・・ったく、性質が悪い)
普段は溶けない氷のように頑ななくせに、こんな時だけ熱く綾辻を求めてくる倉橋が少しだけ憎らしい。
自分は覚えているのに、きっと明日になればキスを交わしたことさえ倉橋の記憶の中からは消えているのだろう。
「可愛く乱れる倉橋さんを見たくありませんか?」
小田切が差し出した媚薬を、綾辻は・・・・・結局受け取らなかった。
薬の力で最後まで倉橋を抱けたとしても、これまで待ってきた自分のプライドが許さない気がした。倉橋には、自ら身体を開い
て受け入れて欲しいのだ。
「克己・・・・・」
深いキスを交わした後の倉橋の唇は濡れて、紅い。
(・・・・・もう少し)
それでも、たまには待っているご褒美が欲しいと、綾辻はそのまま倉橋のスーツに手を掛けた。
しっかりとした男の身体ながら、どこか華奢でしなやかな倉橋の身体。自分とほぼ同じ身長というのに、手を回せば収まって
しまうのではないかとさえ思ってしまう。
「ふ・・・・・ふぁっ」
何時もの彼よりは少し高めの甘い喘ぎ声はダイレクトに綾辻の下半身に響き、綾辻の愛撫の手は更に激しくなった。
綺麗に浮き出た鎖骨から、胸に咲いているささやかな乳首に舌を這わせ、可愛い声を堪能してからその舌を下半身に移して
いく。
下半身では少し細身の綺麗な倉橋のペニスが、先走りの液を零しながら震えて勃っていた。
「身体は素直なんだがな」
しかし、滅多にこういう姿を見せないところが返ってそそるのかもしれないと思いながら、綾辻は躊躇いなく倉橋のペニスを口に
含んだ。
「ふぁっ!あっ!」
激しい刺激と快感を感じたらしい倉橋は、無意識にその快感から逃れようと身を捩る。
もちろん綾辻はそれを許さないようにしっかりと倉橋の腰を掴み、ペニスへの愛撫を続けた。軽く噛み、先端を舌先でくすぐり、
幹の部分も丁寧に舐める。
そうしながら綾辻は目線だけを上げて倉橋を見つめた。
眼鏡越しではない素顔の倉橋の涙顔は壮絶に色っぽく、綾辻は我慢出来なくなってしまった。
「克己」
綾辻がペニスから口を離すと、倉橋は物足りないのか引き止めるようとするように綾辻の腕を掴もうとする。
そんな倉橋に笑い掛け、綾辻は快感に赤く火照った倉橋の頬に手を触れると、倉橋の身体をゆっくりと起き上がらせた。
「出来る?」
「・・・・・?」
「俺の、今克己にやってやったみたいに出来るか?」
少し、首を傾げた倉橋は、やがて細く長い指で綾辻のペニスを掴む。
「無理ならいいんだぞ?」
「・・・・・出来る」
「克己」
「私だって・・・・・出来る」
ゆっくりと・・・・・倉橋の唇が開かれた。
テクニックも何もなく、時折歯も当たってしまうくらいの初心者の愛撫。
それは倉橋が女ではなく男で、男とも経験がないということが分かって、それだけで綾辻の快感は高まっていった。
口腔に含み、ただ頭を上下させるだけの行為に、綾辻はそう時間を掛けるまでもなく達し、慌ててパッと倉橋の口からペニスを
引き出すとその顔にかけてしまった。
「あっ、悪いっ」
急いでシーツで顔を拭いてやろうとしたが、倉橋は不思議そうに濡れた自分の頬に触れたかと思うと・・・・・指先を濡らす綾
辻の精液を口に含んでしまった。
「克己っ?」
「・・・・・にがい」
「当たり前だっ」
「でも、気持ちよかったですか?」
「お前がしてくれたんだ、気持ちよくて死にそうだった」
「・・・・・良かった」
自分が言っていることを理解しているのかどうか、倉橋は顔を汚したままでにっこりと笑う。
その顔があまりに可愛くて、切なくて、綾辻は思わずその唇に噛み付くようにキスをした。
全てが終わった後、綾辻は倉橋の身体を綺麗に拭いてやったが、服を着せることはしなかった。
何時もじれったいくらいそっけない倉橋への意趣返しではないが、目が覚めた時何があったのか散々悩んで欲しいと思ってしま
うのは・・・・・綾辻がまだ子供なのだろうか。
「・・・・・」
自分は愛用のシルクのパジャマの下だけをはいて倉橋の隣に横たわると、倉橋は温もりを求めるかのようにすり寄ってくる。
「・・・・・こんなに可愛いのにな」
昨夜のような、無邪気で、どこか妖艶な倉橋は、多分自分しか見ることは出来ないだろう。
まだ酔った時にしかそんな姿を見せてもらえないのは寂しいが、それはそれで楽しいとも思う。
綾辻は目が覚めた時の倉橋の反応を想像しながら笑みを浮かべると、愛しい男の身体を腕に抱いたまま何時しか自分も眠
りに落ちていった。
end
500,000hit、まずはお一人目、桂様、何時もご訪問ありがとうございます。
リクエストの綾辻×倉橋(+小田切)でしたが、いかがでしたでしょうか?
最後までいってもいいというお話でしたが、彼らの初めてはまた別に短期連載を考えているので、○ェラまでとさせていただきました(笑)。
少し物足りなかったかもしれませんが・・・・・とりあえず、綾辻さんは今の段階はここまでで満足してくれていると思います。