大人の秘密





 「・・・・・ああ、わかってるよ、随分会っていないことは。でも、私が忙しい身だって事は君も知っているだろう?」
 もう10分も同じ様なことを言っている慧を、尾嶋は半ば呆れたように見つめていた。
ここ最近、慧宛のプライベートな電話が会社の方に掛かってきていた。慧がプライベート用の携帯電話の番号を変えたせ
いで、連絡の取れない遊び相手が掛けてくるのだ。
 「・・・・・参った」
 やっと電話を切った慧は、さすがに疲れたように溜め息を付いた。
 「自業自得です。遊び過ぎですよ」
 「・・・・・人の事言えるのか?覚えていないくらい青少年を泣かしているくせに」
 「少年はありませんよ。18歳以下は犯罪です。それに、私は貴方と違って、誠心誠意、相手に対していますから」
 「よく言う。どこでお前と知り合ったか、お前を尊敬してるいずみの前でバラしたいよ」
 「あなたの評価も落ちるでしょうがね」
 「・・・・・」
言葉で尾嶋には勝てないと分かっているので、慧はむすっと黙り込んだが、直ぐに何か思いついたのか、ニヤッと笑うと口を
開いた。
 「そういえばお前の愛しい甥っ子殿は、確か16歳じゃないか?」
 「・・・・・」
 一瞬尾嶋が黙り込んだのを慧は見逃さなかった。
会社では切れ者で、夜の街では有名な遊び人だった尾嶋が変わったのは2年前、海外転勤になった兄の子供を引き
取ってからだ。
今もって会わせてくれず、一度だけ会社宛にあった電話に、尾嶋が席を離れていたのを幸いに出ただけだが、素直そうな、
可愛らしい声をした少年だったと記憶している。
 その後、勝手に電話に出たことがばれてしまい、散々嫌味を言われたことも思い出してしまい、慧はもっと尾嶋を苛め
ようと言葉を続けた。
 「お前がゲイだとは知っているが、まさか自分の甥っ子に手を出すことはないよな?」
 「・・・・・」
 「それとも、趣旨変えしたか?」
 尾嶋の歴代の愛人は、誰も彼も素晴らしく美人な青年達だった。
彼らは容姿だけでなく性格も大人で、尾嶋とのドライな関係を楽しみ、別れる時は見事なまでにきっぱりと縁を切ってい
る。
遊びの女達に悩まされることの多かった慧は、その頃男と付き合おうとは思いはしなかったものの、彼らと尾嶋の関係は羨
ましく思っていた。
(ま、願いは半分叶ったけどな)
 尾嶋の元恋人達に負けないくらい素晴らしい恋人(まだ完全ではないが)は、女ではなく男だったが、性別など構わない
と思うほど嵌っている。
 何を思っているのか、一人だらしなく頬を緩ませている慧に、今まで黙っていた尾嶋が数枚の紙を差し出しながら言った。
 「リストです」
 「リスト?」
 「今までのあなたのお遊びの相手ですよ。遊びと割り切っていなかった方で、会社の方に連絡してきた方のリストです。ご
自分で処理なさって下さいね」
 「おっ、お前、この人数を一人でかっ?」
 「遊ぶ時はお一人でさばいていたでしょう。私は今後あなたのプライベートに関しては一切口を挟みませんから、ご自分
でどうぞ」
 冷たく言い放たれ、慧はげっそりとした思いでリストを見た。軽く遊んでいたつもりでも、別れに使うエネルギーは相当だ。
 「尾嶋・・・・・」
情けなさそうに名を呼ぶ慧に、有能な秘書はきっぱりと言った。
 「松原君は、しばらく常務秘書の田口さんに預けます。許婚の修羅場は見せない方がいいでしょう」
 「お、尾嶋・・・・・」
 「それと、訂正しますが、甥はまだ15です」
有能な秘書をからかうものではないと、慧は強く心に誓った。





                                                                  end









慧と尾嶋はかなりの遊び人・・・・・だったです。
可愛い甥っ子さんは、今度16歳になる高校1年生。 尾嶋さんちょっと犯罪。











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