正しい犬の飼い方







                                                               
「待て」編





 眉間に皺を寄せて車のシートに深々と背を預けていた小田切は、緩やかに止まった車に気付いて目を開いた。
丁度小田切の住んでいるマンションの前に車が停まったようだ。
 「お疲れ様でしたっ」
 ドアを開けてくれた男が深々と頭を下げて言ったが、小田切はただ浅く頷くだけで返事として、さっさと億ションと呼ばれるマ
ンションに入っていった。
 「・・・・・」
 その後ろ姿を息をつめるように見送っていた男達は、入口のオートロックを開けて小田切が中に消えた途端、止まっていた
息をハ〜ッと吐き出して呟いた。
 「相当ご機嫌斜めだな、小田切幹部は」
 「あの人、無能な人間と面白味のない人間が大嫌いだからな。今日の客はダブルだったから」
 「明日には機嫌が直ってくれているといいんだが」



(全く、3時間も時間を無駄にした・・・・・)
 エレベーターに乗り込んだ小田切は、今だ下降線を辿っている気分のままだった。
アポも取らず、いきなり現われた母体組織大東組の幹部の1人。前組長の遠縁だという理由だけで幹部になったその男は、
イスに座るなり横柄に上杉の名を呼んだ。
丁度所要で出ていた上杉の代わりに小田切が対応したのだが、あの組はこうしてくれた、あいつはこんな接待をしてくれたと、
自分が受けた恩恵を恥ずかしげもなくペラペラと話し始めた。
一体何の用件か・・・・・小田切は口元に薄い笑みを浮かべたまま聞いていたが、やがて男は立ち上がると小田切の隣に座
り直し、あろう事かほっそりとした足をスラックスの上から撫で始めたのだ。
 男がその手の趣味があるとは聞いたことがなかったが、いやらしくねちっこい手の動きは少しも止まらず、小田切の目はだんだ
んと据わってきた。
 結局は・・・・・男は金の無心に来たらしい。
そのついでのように小田切にちょっかいを掛けたようだが・・・・・相手が悪かった。
 まるで偶然のように股間に熱いコーヒーを掛けてやった小田切は、ついでのように指を1本折ってやった。
痛さにのたうつ男を平然と見下ろしながら、小田切が掛けた電話の相手は・・・・・現大東組の若頭、秋枝将文(あきえだ ま
さふみ)だ。
 簡単に男の所業を伝えると、送り返して欲しいと言われた。
処分はあちらで、お前の納得がいくようにと言われ、小田切は介抱も一切せずにタクシーに乗せて会社から追い出した。



 粘っこい手の感触が消えない気がして、小田切はチッと舌打ちをうった。
早くシャワーを浴びようと思いドアを開けようとすると、ドアはいきなり中から開いた。
 「お帰りなさい」
 「・・・・・来てたのか」
 顔を覗かせたのは、小田切の可愛いペットであり、現役の警察官、宗岡哲生だ。
厳つい顔や大柄な身体に似合わず細やかな気配りをする宗岡は、直ぐに小田切の不機嫌さを悟った。
 「裕さん、何か・・・・・」
 気遣わしそうに聞いてくる宗岡の傍をすり抜けて部屋の中に入った小田切は、靴を脱いで廊下に立つとそのままくるっと振り
返った。
 「シャワーを浴びる。脱がせろ」
 「う、うん」
 どうしてとか、ここではとか、小田切の嫌いな言葉は一切言わず、宗岡は丁寧に小田切の服を脱がせていく。
細身のネクタイを解き、上着を取る。
太い指で、丁寧にシャツの小さなボタンを外す。
ベルトを外し、スラックスのボタンとファスナーを下ろし、片足をそっと持ち上げながら下着まで脱がした。
 「・・・・・っ」
 ベットの上ではなく、明るい廊下の真ん中で全裸になった小田切を、宗岡は眩しそうに目を細めて見つめる。
 「お前も来い」
 「お、俺も?」
 「脱ぐんじゃないぞ。私の身体を洗え」



 小田切の帰宅時間を考えて用意していたのか、既に湯船には湯が溜められていた。
小田切はシャワーの前に立ち、入口に突っ立っている宗岡を睨みつける。
 「何をしている」
 「あ、うん」
 「・・・・・今日、男に足を触られた」
 「えっ!」
 「このままでいいのか、お前は」
 「嫌だ!」
 小田切の言葉を聞いた宗岡が、いきなりシャワーノズルを掴んでお湯を出した。
ゆったりとした広さのバスルームは男2人でも狭苦しくはなかったが、大柄な宗岡がいると気分的に息苦しく感じてしまう。
普段は1人でゆっくりと風呂に入る小田切だったが、今日はどうしても宗岡に全身を洗わせたい気分だった。
 「裕さん、ここ座って」
 湯船の縁に小田切を座らせた宗岡は、自分の服が濡れるのも構わずにその前に跪き、泡立てたスポンジで丁寧に小田切
の身体を洗い始めた。
首筋から背中、腕、指先の1本1本まで丁寧に、そして、触られたと聞いた足はそれこそ執拗にスポンジで擦っていく。
 「・・・・・」
そんな必死な宗岡を見ていると、小田切の気分も次第に上昇していった。
(可愛いな、こいつは・・・・・)
 時折からかうように湯を掛けると、宗岡のシャツが透けて逞しい筋肉が浮き出てくる。
ペロッと唇を舐めた小田切は、まるで見せ付けるように両足を開いた。
綺麗なペニスを目の当たりにし、宗岡の手が止まる。
 「ここもだ。綺麗にしろよ、お前の手で」
 「は、はい」
 慌ててスポンジを放り出し、宗岡は両手でそっと小田切のペニスを洗い始めた。
洗うといっても両手で擦るという感じなので、次第にペニスは硬度を持って勃ち上がっていく。
見ている宗岡の息は荒くなり、ジーパンの前が痛そうに膨らんできたのを見て、小田切はクスクスと笑った。
 「ここでは駄目だぞ」
 「ゆ、裕さん」
 情けなさそうな声が可愛い。
 「待て、だ」
 絶対に許しが得るまでは動かない宗岡を知っているので、裕はわざと自分でペニスをなぶったり、ピンク色の乳首を突き出す
ように胸を反らしてみせる。
 「・・・・・っ」
 何時しか宗岡は小田切の身体を洗っていた手で、ジーパンの上から必死で自分のペニスを押さえていた。
宗岡の大柄な身体に似合う、大きくて長い、美味しいペニス。
味わいたいのは山々だが、今日の面白くなかった出来事を思えば、まだまだ宗岡を苛めてやらないと気が済まない。
 「苦しそうだな」
 「・・・・・い、いえ」
 「ふ〜ん・・・・・脱ぎたいか?」
 「・・・・・っ、はいっ」
 「じゃあ、いいぞ、脱いでも。その代わり私には触れてはいけないよ?」
 「!」
 よほど苦しかったのか、宗岡は焦ったように服を脱ぎ捨てて全裸になった。
褐色の肌に逞しい筋肉、そして・・・・・見惚れるほどの立派なペニス。
(綺麗だな・・・・・)
まるで芸術品のような綺麗な身体を持つこの男が、ただ一途に自分だけを想っているというのはとても心地良い。
既に立ち上がっていたペニスに指先を触れると、宗岡はビクッと全身を震わせ、ペニスの角度は更に上になった。
 「濡れているのは湯か?」
 「ゆ、裕さんっ」
 「随分粘ついた湯だが・・・・・それとも、私が欲しいのか?」
 「欲しいっ」
 我慢が出来なくなったのだろう、宗岡はそう叫んで小田切を抱きしめようとした。
しかし・・・・・。
 「まだ、いいとは言ってないぞ」
 「・・・・・っ」
 そうは言ったが、小田切自身自分のペニスも完全に勃ち上がり、尻の奥も宗岡を欲しがってヒクついている。もっとこの時間
を楽しみたいとは思ったが、予想よりも欲望が高まっているようだ。
(そろそろ私も限界か)
そう思うと、早くあの太く長いペニスを存分に味わいたいと思う。
小田切はその場に腰を下ろし、大胆に足を開いて妖艶に笑った。


 「よし、いいぞ、哲生」




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