レン&キア編





 1匹目のウサギが言った。
 「僕の一番下の弟は、とても可愛いんだよ」

2匹目のウサギが言った。
 「弟のキアはまだウブで、誰とも交尾をしたことが無いんだ」

3匹目のウサギが言った。
 「交尾が怖いなんて言ってるけど、こんなに気持ちがいいものなのに・・・・・ホントに怖がりで可愛い子なんだよ」

4匹目のウサギが言った。
 「兄弟の中でも、多分あの子は特別なの。交尾が好きな私達と、好きな人と交尾がしたいあの子と・・・・・。替わりた
いとは思わないけど、あんな風に可愛い言葉を言ってみたいわ」

5匹目のウサギが言った。
 「多分、もう直ぐ私は子供を生むと思うけど、キアみたいな子供が欲しいなあ。素直で、可愛くて、そしてとても淫乱な
子が」

6匹目のウサギが言った。
 「今、キアには好きな人がいるみたいなんだ。誰だと思う?レン」





そして・・・・・。



 7匹目の子ウサギは、今日も弾んだ足取りでレンの小屋にやって来る。
他の雄や雌とは違い、レンとの交尾が目的ではない。ただ、レンに会いに来るのだ。
 「レンッ、聞いて!姉さんに子供が出来たんだ!」
何時に無く興奮したように言うレンの言葉を聞いてみると、どうやら4番目の姉が身篭ったらしい。
(あれだけ誰彼構わずに交尾をしていた様子なのに、結局くっ付くのは同族なのか)
 一度だけ抱いたことがあるそのウサギは、柔らかい身体を駆使した性技に優れ、またその手に抱きたいと思うほどの身
体だったが、レンは二度とその身体を抱くことは無かった。
 「凄いよね!」
 「・・・・・凄い?」
 「新しい命を産むことが出来るなんて!」
 「・・・・・」

 「きっと、キアが一番喜んでくれるわ。レンだってそう思わない?」

(全く・・・・・わざわざ俺に言いに来なくていいのに)
 一度だけ抱いたキアの6匹の兄弟達は、それからもなぜかちょくちょくレンを訪ねてきた。
口ではもう一度抱いてもらいたいからと言うが、そう言うほどにはレンに迫ってくることは無い。それよりも少し話をして、レン
の短い相槌に満足して帰っていくのだ。
その中で、少し前にレンは4番目の姉ウサギから子供が出来たことを聞いていた。相手は隣村に住む同族で、近々結
婚するらしい。
 子供が出来たからといって、淫乱な兎族がお互いしか目に入らなくなるとは思わないが、来るのは今日で最後と言って
いた4番目の姉兎は幸せそうな顔をしていた。
 「キア」
 「え?なあに?」
 「・・・・・お前も欲しいのか?子供」
 「僕?」
 意外なことを言われたというように、キアはビックリしたように目を丸くした。
 「そんの、考えたことも無かった!」
 「・・・・・そうなのか?」
 「だって、僕はっ・・・・・」
 「・・・・・キア?」
 「・・・・・ううん、なんでもない」
何か言い掛けて止めたキアの言葉を、レンは最後まで聞きたかったと思った。


 「今、キアには好きな人がいるみたいなんだ。誰だと思う?レン」


 「・・・・・そんなの、俺が知るか」
 「レン?」
 「なんでもない」
言ってもらわなければ分からない。友達だとか、傍にいたいとか、そんな言葉では言い表すことが出来ない気持ちがきっと
あるはずだ。
(早く言え、キア)
レンは自分が言葉にするのが苦手なことを置いておいて、キアに早く言ってもらいたいと思う。





大好きな人は、誰?





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