DOG DAYS







 太朗はただただ呆然とするしか出来なかった。
綺麗な人に手を振って見送られても、奥の部屋に連れ込まれても、始めの1言がなかなか口から出てこない。
(暴力団って・・・・・ヤクザだって・・・・・)
 口の悪い人だなとは思っていた。しかし、自分も似たようなものなので気にしたことはなかった。
高級車や高級なスーツなど、お金持ちなんだなとも思っていたが、ジローがじゃれて服が汚れても怒ることは無く、気持ちの大
きな人だなと感心していた。
 太朗にとって上杉は、
飼い犬のジローと同じ名前で、
お金持ちで、
大人なのに子供みたいな意地悪を良くする、
とても・・・・・優しい男だった。
 ヤクザということで偏見を持つつもりは無かったが、それでも反射的に恐いと思ってしまうのは止められない。
太朗は相反する気持ちを持て余して、ただなすがままに大きなソファに座らされ、そのまま押し倒されていた。
(え・・・・?)
 気付くと、真上から上杉が太朗の顔を見下ろしている。
 「ジ、ジロー・・・・・う、えすぎ、さん?」
名前を呼ばない方がいいのかと言い返せば、端正な上杉の眉が潜まった。
 「タロ・・・・・俺が恐いか?」
 「こ、恐くなんか・・・・・」
 「声も身体も震えてる。でも、ここで逃がすほど、俺は優しくないんだ」
 「え・・・・・?}
 「俺はこれだと思ったもんは絶対に手に入れてきた。タロ、お前もそうだ」
 「ジ、ジローさ・・・・・恐いよ・・・・・」
 尻を動かしてソファから立ち上がろうとするが、太朗より2周りほども大柄な上杉に身体で押さえ込まれては身動きが取れ
ない。
 「俺より20近くも下で、まだガキのお前をどうこうするつもりはなかったんだがな」
 「い、家に帰してよ・・・・・」
 「俺という男を覚えこんだらな」



 上杉にとって太朗は、何のしがらみも欲も感じさせない、純粋で綺麗な存在だった。
夕飯を奢れば、次に会った時は母親に作ってもらったというケーキを手土産に持ってきた。
まだまだ子供の癖に、受け取るだけでなく、自分も相手に返すということを自然と知っている太朗に好感を持っていた。
 動物が好きで、何時も一番に上杉よりも大福を抱きしめて挨拶する太朗を、少々ムカつきながらも楽しんで見つめていた
のだが・・・・・。
 「タロ、俺のもんになれ」
 「・・・・・え?」
 意味が分からないのか、太朗は不安そうな顔をしながら戸惑ったように言う。
相手が15歳の子供だと改めて感じたが、上杉ももう引き返すことはしなかった。
 「セックス込みで、俺の傍にいるってことだ」
 「せ、せっくす?」
 じわじわと頭の中にその単語がいきわたったのか、見る間に太朗の顔が羞恥に赤く染まっていった。
 「なっ、何言ってんだよ!」
 「おかしいか?」
 「おかしいよ!俺、男だよ!男同士でそんなの変じゃんか!」
 「・・・・・そうだよなあ、それにお前まだ子供だし・・・・・俺もトチ狂ってんだと自分で思うが・・・・仕方ねえだろ、お前が欲しいっ
て思っちまったんだから・・・・・」
 会わないと言われたことがこれ程ショックだったとは自分でも驚くが、そのおかげで自分が太朗に対してどういう想いを抱いて
いるのかが分かる切っ掛けにもなった。
 上杉は黙ったまま、服の上から太朗の胸に手を当ててみる。
薄いTシャツ越しに、驚くほど鼓動が早くなっているのが分かった。
 「期待してるのか?」
 「何のことだよ!離せよ!」
 「15か・・・・・まだ経験ないのか?」
 「け・・・・・いけん?」
 「女はお前みたいなお子様は好みじゃないか」
 「・・・・・っ」
 身体の下でビクッと太朗の身体が震えるのか分かる。
それは怯えているというわけではなく、どちらかというと怒っているようで、上杉はそんな太朗の変化が嬉しくて、もっと怒らせて
みたくなった。
 「そういえば初めて会った時、一緒の風呂に入ったよな?お前俺の見ただろ?」
 「見、見たって、何を・・・・・」
 「俺のペニス」
 「ペ・・・・・っ?な、なんてこと言うんだよ!」
 「なんだ、本当のことだろうが」
 「人前でちんちんのことなんか言わないよ!」
 「・・・・・ちんちんとも言わないがな」



(何だ、何なんだっ?急に下ネタ振ってきて!)
 生々しくなってきた会話に、太朗は顔を真っ赤にした。
ただ、そのせいか、先程まで感じていたヤクザに対する漠然とした恐怖は消え去り、上杉本人に対する怒りの方が先にたって、
太朗は押し倒された情けない姿のまま下から上杉を睨んだ。
 「ジローさん、人が悪い!」
 「タロ、さっきの質問に答えろ」
 「何だよ!さっきの質問って!」
 「俺のもんになるかどうかってことだ」
 「・・・・・あ」
 「忘れてただろ、お前」
 「わ、忘れてないよ!さっきも言った!男同士なんて変だって!そーいうことは女の子としか出来ないよ!」
 「出来たらどうする?俺のもんになるか?」
 「で・・・・・出来るの?」



 「お前は出来ないって言ったがな」
 上杉はそう言うと、Tシャツを捲り上げた。
よく日に焼けた、少年らしい瑞々しい身体が露になる。
緊張のせいか、それとも暑さのせいなのか、しっとりと汗ばんでいるが少しも嫌な感じはしなかった。
 「・・・・・ここ、美味そうだな」
 剥き出しになった胸の小さな飾りを口に含むと、太朗は一瞬息をのんだ。
口では色々と言うものの、上杉は自分をからかっているだけなのだと思っていたのだろう。
(悪いが、俺も本気なんだよ)
 快感に素直で、未熟な身体を堕とす事など、経験豊富な上杉には簡単なことだった。
(でも、前とは全然違うな・・・・・)
若い頃、好奇心で何度か男と寝たことはあったが、皆そういう行為に慣れたもう少し大人の男ばかりだった。
全ての準備は相手がしたし、上杉はただ女と同じ様に突っ込むだけで、快感は感じたもののこんなものかと思って嵌ることは
無かった。
 ただし、今は事情が違う。
太朗を抱きたいと思うのは好奇心からではなかったし、太朗自身多分男はおろか女とも経験がないまっさらな状態で、これか
ら色付けするのが自分の役割だと思うと年甲斐も無くワクワクする。
 「俺に任せればいいから」
 「ジ、ジローさ・・・・・っんんっ」
 何か言おうと開きかけた口を強引にキスで塞いだ。
少し開いていた口から舌を中に入れ、怯えてなすがままの太朗の舌を強引に吸い、絡める。
初めて経験するであろう大人のキスに、上杉の胸を押し返そうとしていた太朗の両手は力なく下に落ちてしまった。
 「いー子だな」
 そのまま耳元で囁いてやると、くすぐったいのか首をすくめて身を捩ろうとする。
上杉はもちろんそれを許すことはせず、ジーパンのファスナーを下ろすと、開いたところから手を差し入れた。
 「!なっ、や、やめ・・・・・っ!」
 「ああ、まだ縮んでるな?恐いのか?俺が」
 「こ・・・・・わくない!」
 「上等」
 下着越しに触れていた手をいったん外に出し、上杉は今度は大胆に一気に膝までジーパンと下着をずり下ろした。
 「!」
まだまだ子供の姿のペニスを見て、上杉はにやっと笑った。
 「毛も薄いじゃねえか」
 「そ、そんなの、人それぞれだ!」 
 「そーだな。ま、俺としては見た目よりも感度の方が大事だしな」
 「かん・・・・・ど?」
 「黙ってそのまま感じてろ」
そう言う上杉の顔は、悪辣な男の顔をしていた。



 自分の股間に顔を埋めている上杉を、太朗は信じられない思いで見下ろしていた。
それでも下腹部にダイレクトに感じる快感は現実のものだ。
(あ、あんなとこ、口に・・・・・っ)
 ソファの背に片足を上げられ大きく広げられてしまった両足。片方の足首にクシャクシャになった下着が絡まっているのがいや
らしくて、太朗は慌てて目を閉じた。
 出来れば蹴り上げてでも上杉の身体を突き放したいが、簡単に身動き取れない大事なところを握られてしまっている。
 「ジ、ジローさ・・・・・っ」
 「ん?・・・・・気持ちいいか?」
 「そ、そこで喋らないでよ・・・・・っ」
 「若いよなあ、ちょっと舐めただけでビンビンだ」
 「・・・・・っ」
反論したいが、事実なのでどうしようもない。
 「は、初めてなんだから、仕方ないだろ!」
 「ほ〜」
 「し、刺激されたら、誰だって勃つ!」
 「大きな声出していいのか?向こうの部屋には何人もいるぜ?」
 「!」
 太朗はハッとして口を噤んだ。考えてみればここは事務所の一室で、ドア1つ挟んだ向こう側には何人もの男達がいた。
まさかとは思うが、上杉がこのまま男達を引き入れたらどうなるか・・・・・。
快感に真っ赤になっていた太朗の顔が、一瞬にして真っ青になってしまう。
 「タロ」
 そんな太朗の気持ちの変化が分かったのか、今までからかっていた上杉は苦笑を漏らすとギュッと太朗を抱きしめた。
 「他の誰も、お前に触らす気はねえよ」
 「・・・・・ほんと?」
 「ああ。お前は俺のもんだからな」
 「・・・・・違う・・・・・っ」
 「そう反論するのが、可愛いんだよ」



 全く何も知らなかった身体が、貪欲に快感を求めている。
上杉は震えて勃ち上がっているまだ幼いペニスを舐めしゃぶり、歯で軽く噛んで刺激を与えた。
口の中にはたちまち先走りの液が滲み出てくるが、不思議と上杉の舌には甘く感じる。
 「あっ、あっ、ん・・・・・っ」
 「・・・・・っ」
(まだ綺麗な色しやがって・・・・・美味そうなんだよ、どこもかしこもっ)
 味わえば味わうほど、手放せなくなってしまう。上杉はそんな自分の気持ちを自覚したうえで、太朗の全てを自分のものにす
る決意をしていた。
 「ああーーーっ!!」
 一際高い甘えたような声をあげ、太朗は上杉の口の中で果ててしまった。
吐き出された精液を全て飲み込み、残滓まで残らず舐め取ると、上杉は呆然としたままの涙が滲んだ太朗の目元をそっと
拭ってやった。
 「気持ち良かったか?」
 「・・・・・こんなの、なんともない!全部忘れてやるから!」
 「・・・・・無理だな。全部撮ってある」
 「う、うそ!」
 考えてもいなかったことなのか、太朗は思わず起き上がって叫ぶ。
上杉はソファから離れると、机の上に置いてあった煙草を取って口に咥えた。
 「誰かに見られたくなかったら、このまま俺と会い続けるんだな」
 「お、横暴!」
 「ヤクザにとっちゃ褒め言葉だ」
 「・・・・・ジローさん!」
 「タロ、俺はどんな手段を使っても、お前を手放すつもりはないんだ。諦めて俺に可愛がられてろ」
 「・・・・・そんなに言うなら、ビデオ消してよ!そんなので俺を縛ろうとするなよ!」
 「保険は大きければ大きいほど安心だからな。安心しろ、可愛くイク姿を他の奴に見せるほど、俺は心の広い男じゃないか
らな」
 「そんな・・・・・」
 「それより、早くその可愛いの隠せよ。そのままだったらまだ続きをして欲しいのかと思うぞ」
 「!」
 下半身丸出しでソファに座っていた太朗は、慌てて下着とジーパンをずり上げて身支度を整えようとしている。
その様子を用心深く見ていた上杉は、太朗の態度に芯からの嫌悪と恐れがなかったことに内心深く安堵をしていた。
正体を隠して付き合ってきたこの3ヶ月間は無駄ではなかったようだ。
 「タロ、これからも今まで通り会ってくれるな?」
 「・・・・・」
 しばらく、太朗は黙っていた。頭の中では色々なことが巡っているのだろう。
そして・・・・・。
 「・・・・・大福には会う」
 「大福だけか?」
 「・・・・・おまけもな」
 「上等」
 上杉は笑った。今はこれだけでも十分だ。
(じっくり落とす方が楽しいからな)
本気の相手にも意地悪をするのは、ずるい大人のずるい心理だ。
数回だけふかした煙草を揉み消し、ゆっくり太朗の傍に近付いて、もう一度その唇を奪おうとした上杉だったが・・・・・。
 「ああーー!!」
 突然叫んだ太朗は慌てて立ち上がった。
 「ジロー置いてきちゃった!!」
 「ジロー・・・・・犬か?」
 「ジローさん、早くあの公園に戻ってよ!ジローが泣いてるよ!」
 「・・・・・おい、今犬の事なんか言うか?」
 「早く!事故にでも遭ってたらどうするんだよ!」
 早く早くと急かす太朗に、つい今しがたまでの淫靡な雰囲気は欠片も残っていない。
しかし・・・・・次の瞬間、上杉の心を支配したのは、太朗に対する例えようもないほど強い愛しさだった。
こういう性格も全部ひっくるめて太朗が愛しく、欲しいと思った。
 「ジローさん!」
 「分かった、分かった」
 もう少し、せめて飼い犬のジローよりも自分の方が立場が上になったら、この場面を撮ったというのが嘘だということを告白し
ようと思う。
きっと太朗は怒るだろうが、最後は許してくれるだろう。
 今はとにかく、太朗が心配しているジローの無事を確認するのが先だと、上杉は車のキーを取って言った。
 「行くぞ、タロ」



                                                           
 end






                           






一応、終わりました。最後まではいきませんでしたが。
私的には太朗が言った「おち○ちん」が可愛くって好きです。
さて、これはシリーズ化した方がいいでしょうか?