反・睦言編
『バージンは面倒くさい』
昨日も、組の事務所で若い組員が笑いながら話していた。
相手はどうやらナンパした女子大生だったらしいが、見かけの派手さを裏切って男の経験は無かったらしい。
組員はそんな風に毒づいていたが、その顔は嬉しそうににやけていた。きっとその相手が自分以外の男を知らなかったことが嬉し
かったのだろう。
秋月自身、女の処女性には拘らなかった。
同じ抱くのならばお互い楽しんだ方がいいし、女の過去には拘るつもりは無かった。
女とは違うが、男の日和は女を知っていても当たり前だと割り切っていたつもりの秋月だが、直ぐに日和が性的にまっさらだとい
う事を感じ取った。
中学1年生の時には既に女を知っていた秋月から比べれば遥かに晩生だったが、日和はそれでいいのだと強く思えた。
そして、そんなまっさらな身体を汚す権利は、自分にしかないと思った。
秋月の視界の中に入ってしまった時から、日和の全ては秋月のものになる運命だったし、それ以前に日和が汚れていなかったの
は全て秋月の為なのだ。
「んんぐっ」
苦しい体勢に呻く日和の薄い腹をゆっくりと宥めるように撫でると、腰の下に枕を差し入れ、腰を高い位置に持ってきて、その
まま秋月は自分を受け入れる場所へと視線を向けた。
今まで指を差し入れていたその場所は、周りの肌よりは濃い色に染まっているが、とても自分のペニスが入るほどに広がってはい
ない。多分、このまま無理矢理にでも捻じ込んでしまえば裂けてしまうのは間違いが無いだろう。
(このローションで足りるか?)
出来れば舐め濡らしたいが、現実問題として自分の唾液や日和が吐き出した精液だけで慣らすというのは無理な話だ。
それはこの後、もっと日和がセックスに慣れた時のお楽しみとして、秋月は今は仕方ないと更にそこに・・・・・日和の尻の狭間に
たっぷりとローションを垂らした。
「!」
その冷たさに驚いたのか、日和の身体が揺れ、細い足が宙を蹴るように動く。
しかし、もちろんその動きは秋月の片手で押さえられた。
「日和、力を抜け」
「・・・・・っ」
丸い目が、どうしてというように秋月を見上げてきた。
多分、秋月がもっと優しい男なら、この目を見てこれ以上行為を進めることなどは出来ないだろう。
しかし・・・・・秋月は、悪い男だ。助けてくれと言葉で言われたとしても、きっと秋月の手は止まらない・・・・・止められない。
「日和、愛してる」
「!」
ごく自然に、言葉が突いて出た。
それは日和の抵抗を止める口先だけの言葉ではなく、秋月の本心から出た言葉だ。
さらに大きく目を見開いた日和は、しばらくじっと秋月の顔を見ていた後・・・・・不意にクシャッと顔を歪めて目を閉じてしまった。
「日和?」
「・・・・・」
僅かに日和の身体から力が抜けたような感じがして、秋月は慣らす為に指を差し入れている場所に更にもう一本指を滑り込
ませた。
後で、殴らせてくれと日和は言っていた。
可愛い日和の平手打ちくらいなら、何発でも受けると言った言葉は嘘ではない。
秋月はひっそりと笑うと、そのまま日和の唇に唇を重ねた。
「!」
(そ、そんなとこ触るな・・・・・っ!)
男と男のセックス。女のように、受け入れる場所があるわけでもない男の身体で同性同士のセックスをするということは、多分そ
の場所を使うしかないのだろう。
もうどのくらい経ったのか・・・・・それは十分か、それ以上か分からなかったが・・・・・しつこいくらいに蕾の中を指で探る秋月の動き
からも想像がついた。
今更嫌だと言っても秋月は止めないだろうし、抵抗して更に痛いめに遭うのは嫌だが、普段自分さえも滅多に触らないような場
所を他人に、それも自分と同じ男にずっと見られ、触られているのには、たまらない羞恥を感じてしまう。
「んっ、ぁ・・・・・んあっ」
(こんな・・・・・のっ、俺の声じゃない!)
あんな場所を触られて、こんな風に気持ちのよさそうな声を上げているのは自分じゃないと思いたかった。
しかし、それは空耳ではなく、確かに・・・・・自分があげている声なのだ、男に、秋月に触れられて。
「・・・・・や・・・・・」
「嫌?もう3本も俺の指を食ってるのに?」
「ひゃあ!」
グリュッと、指で身体の中を抉るように擦られ、日和は高い悲鳴を上げてしまった。
それと同時に、
「少しはいいな?勃ってる」
「う・・・・・そっ」
からかうような秋月の言葉に即座に否定するが、深く身体を折り曲げられた今の状態では、自分のペニスが勃ち上がってしまっ
ているのが嫌でも目に入った。
(お・・・・・れ・・・・・)
自分の身体が秋月に屈してしまっていることに、日和はもう絶望的な気分になっていた。
「・・・・・っ」
「ひ・・・・・ぃがっ!!」
始めは指一本も入らないくらいぎっちりと硬かった蕾は、今は秋月の指が3本、何とか中で動かせるほどには緩んで来た。
多分薬を使えば痛みも無く、もっと容易にここを広げることが出来ただろうが、それでは駄目なのだ。多少の痛みを感じてもらわ
なければ、日和に秋月に抱かれたという自覚が生まれない。
それは秋月側の勝手な思いだが、秋月は痛みと快感を与えることによって、日和に自分が誰のものになったのかの自覚を持た
せるつもりだった。
「い・・・・・た、痛い、痛い、痛いよ・・・・・ぅ・・・・・」
それまで、何とか零れることを我慢していたらしい涙が、バッと溢れてきて日和の頬を濡らした。
日和が今どれ程の痛みを感じているのか・・・・・それは今自分のペニスが千切られるほどに絞られている痛みよりも遥かに激し
いのは間違いが無いだろう。
「ひ、よりっ」
(このままじゃ、無理か?)
まだ、ペニスの三分の一程しか蕾に埋まっていないのに、引くこともそのまま突き入れることも出来ない。
秋月は舌打ちを打ちそうになったが、日和の子供のような泣き顔を見ると眉を潜め・・・・・やがて思い切ったように太ももの内側
を掴んで足を左右に大きく開くと、身体を圧し掛けるようにして一気に・・・・・・ペニスを根元まで突き入れた。
「!!」
身体が中から引き裂かれる・・・・・そんな風に思ったのはもちろん初めてだった。
日和は後から後から壊れたように涙を流しながら、ギュッと目を閉じてこの痛みを何とか逃そうとした。
「日和、日和、力を抜け」
「で・・・・・き・・・・・」
「俺はこのまま最後までするぞ。これ以上痛い思いをしたくないなら力を抜くんだ」
何度も何度も、力を抜くように、息を吐くようにと言われ、日和はその言葉に縋るように大きく何度も深呼吸をした。
すると、ジンジンとした熱い痛みは治まらないものの、下半身の圧迫が少しだけ緩んだような気がする。
(ほ・・・・・か、どうした、らっ?)
もっと楽になる方法が知りたくて、必死に秋月の腕を掴み、涙で潤む視界を何とか開くと、ぼやけた視界の中に秋月の顔が現
れた。
秋月はまだ上半身にシャツを羽織ったままだったが、軽く撫で付けられた髪は乱れていて・・・・・。
(へ・・・・・な、かお・・・・・)
きっと、意地悪そうな、征服欲に満ちた顔をしていると思ったのに、日和を見下ろしている秋月の顔はとても優しくて、日和が
視線を合わせたことに気付くと、
「・・・・・うぅっ」
「日和・・・・・っ」
無理な体勢のまま、強く日和を抱きしめてきた。
「く、くる・・・・・し・・・・・っ」
蕾にはまだ秋月のペニスが突き刺さったままで、抱きしめられた瞬間に更に内壁をぐっと押し広げられるように角度が変わる。
苦しくてたまらないのに、日和は自分を抱きしめる秋月の熱い吐息を頬に感じると、離してくれという言葉が喉の奥に張り付いて
しまったような感じがした。
(お・・・・・れ・・・・・)
嫌なのに、苦しいのに、抱きしめられる温かさを拒絶出来ない。
「俺のものだ」
「あ、あきづ・・・・・」
「俺のものだ、日和・・・・・っ」
何時も日和をからかって、大人の余裕であしらう秋月が、今この瞬間自分よりも年下のように思えてしまった。
「日和・・・・・」
(どうして・・・・・こんなに、優しく・・・・・呼ぶんだろ・・・・・)
やったことは無茶苦茶で許せるはずなどないのに、日和は自分を抱きしめて何度も溜め息のように呟く秋月を下からぼんやりと
見つめるしか出来なかった。
(抱かせてもらった・・・・・のか)
全く身体に力の入らない日和を風呂に入れ、最奥に吐き出した自分の精液をかき出して綺麗にしてやると、秋月はそのまま
日和に自分のバスローブを着せてリビングのソファに横たえた。
本当はベッドに寝かせてやりたいが、さっきの今で日和も嫌だろうし、何よりシーツを変えなければとても横になることなど出来な
い状態だった。
「何が欲しい?」
「・・・・・み、ず」
「分かった」
冷蔵庫の中からミネラルウォーターを取り出すと、秋月は一瞬考えてから自分の口に含んでそのまま口移しで飲ませてしまう。
日和が指一本動かすのも辛そうなのでしたことだが、いきなり口移しで水を飲まされた日和は驚いたようだった。
それでも、含まされた水を吐き出すことも出来ないようで、難しそうに眉間に皺を寄せたまま、少しずつ喉の奥に流し込んだ。
「・・・・・」
「少しは落ち着いたか?」
「・・・・・おちつく、なんて・・・・・」
掠れた声が、確かに自分の下で喘いだのは日和なのだと思えて、秋月は日和が横たわっているソファの前に腰を下ろすと、ほ
とんど同じ目線になった日和の髪を撫でながら言った。
「今度はお前の番だな」
「え・・・・・?」
「俺を殴りたいんだろ?」
「・・・・・」
日和が嫌な顔をする。
それを言った時自分がどういった状況だったのかを思い出したのだろう。
それでも、秋月は日和の言葉を違えるつもりはないというように、笑いながら日和の面前に自分の顔を向けた。
「ほら、何発でもいいぞ」
(・・・・・もう、何考えてるんだ、この人・・・・・)
日和の身体の最奥に押し入ってきた時も、らしくなく強く抱きしめてきたし、全てが終わった後の今は、とても上機嫌に見えた。
日和の身体だけが目的ならばもう機嫌を取ることはしなくてもいいのに、こんな表情を見せられると秋月にとって今の行為がとて
も良かったのかとさえ思える。
(よ、良かったとか、何考えてるんだよ、俺・・・・・)
どんな理由があれ、秋月が自分にしたことは暴力の一種で、自分が最終的に受け入れてしまったのは諦めからだ。
「・・・・・」
「日和」
「・・・・・」
(ああっ、もうっ)
どんな罵声を浴びせ掛けたとしても、今の秋月が自分に手をあげることは無いだろう。そうは思っても、日和の口からはどうしても
文句が出てこなかった。
(俺が、気弱だからだ、きっと)
それがなぜなのか、日和は自分の性格のせいだからと無理矢理自分を納得させると、重い手をゆっくりと持ち上げて、
ペシ
と、情けないほどの小さな音を立てて、秋月の頬を叩いた。
「これでいいのか?」
「・・・・・身体、痛いし」
「次に持ち越すか?」
「・・・・・」
(それって・・・・・また会うって、こと?)
即効で首を横に振るつもりだったが、秋月の笑みを見ていると・・・・・。
「日和」
「・・・・・倍返し、ですから」
早口でそう言った日和は、そのままソファに顔を埋めてしまう。
自分の言葉に緊張して身体を強張らせていた日和だったが、少ししてぽんと優しく髪を撫でられてしまった。
「次なんか・・・・・本当は無いんだから・・・・・」
日和は小さな声でそう呟くと、そのまま秋月の視線から逃れるように身体を小さく丸めた。
何度も、何度も、日和の髪をそっと撫でながら、秋月はこみ上げてくる笑みを隠すことが出来なかった。いや、今ここにいる唯
一の人間である日和は顔を隠しているので、自分のこんなにやけた顔を誰にも見られることは無いだろう。
(とりあえず、言質は取ったな)
押しに弱い日和の性格を利用した・・・・・つもりは無いが、とにかくこれっきりにはならないようだ。
「・・・・・」
来週からしばらく自分は日本を離れるが、その時間は日和にとっても考え事が出来るくらいはあるだろう。
その結果、日和がどういう答えを出すかは分からないが、秋月はもう不安に思うことも、焦りも無くなっていた。
(俺のものだから・・・・・な)
一度手にしたものを、むざむざと手放すつもりはないし、こう見えても気に入ったものに対する執着心がかなり強い秋月は、そう簡
単に日和に飽きるということもないだろう。
次に日本に戻った時、日和がどんな顔で自分を出迎えてくれるのか楽しみになってきた。
(2、3発くらいは受けてやるか)
次は今の平手打ちよりは強いだろうかと馬鹿なことを考えながら、秋月は背中を向けてしまっている日和の、少し露になった項に
ゆっくりと唇を寄せていった。
end
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