海上の絶対君主





                                                        
※ここでの『』の言葉は日本語です





 大きな手が器用に自分が着ている服を脱がしていくのを見て、珠生はやっとラディスラスが何をしようとしているのか気付いた。
 『離せ!』
次の瞬間、珠生は猛烈に暴れた。まだ自由な手でラディスラスの胸を押し返し、足をバタつかせて身体を離そうとする。
しかし、厚いラディスラスの胸はビクリともせず、足の上にも身体が乗ってきて動かせなくなってしまった。
あまりにも明確な自分との違いに、珠生は諦めそうになる心を無理に奮い立たせる。
 『こんなことっ、許さない!』
 「タマ、大人しくしろ」
 『離せってば!』
 強引に身じろごうとした珠生の腿に冷たく硬いものが当たった。
(な・・・・・剣っ!)
ラディスラスの腰にはまだ剣が携えられており、それが珠生が身体を動かすたびに足に当たっているのだ。
この剣を手にすれば、今のこの状態からは逃れられるはずだ。
人を傷付けたいわけではない。今こうして自分を組み敷いているラディスラスに対しても、この剣で実際に傷を負わすというのは
考えられない。
ただ、あまりにも体格や力に差があるこの状況を変える為にも、この剣をうまく利用しようと思った。



 「・・・・・タマ?」
 急に抵抗を止めた珠生を、ラディスラスは怪訝そうに見つめた。
諦めたにしてはあまりに早いような気がした。
(また何か・・・・・企んでいるのか?)
力が無い子供の武器は頭しかない。
(・・・・・やってみるがいい)
 ラディスラスは楽しくなった。
今から自分が珠生にしようとする行為は、これまでも様々な女に対してしてきたことだ。
しかし、これほどワクワクするのは初めてで、ラディスラスはこの生きのいい獲物をどう美味しく料理をするかを考えることにした。
 「そのまま大人しくしてろよ」
 『・・・・・』
 果物の皮を剥ぐようにして服を脱がせた珠生の肌は、やはり目に眩しいほど白かった。今まで色白な女だと思っていた者達も
そうではなかったのだと思うほどに明らかに違う。
豊かな乳房も、肉付きの良い腰も無いが、しなやかに瑞々しい身体はとても自分と同じ男とは思えず、ラディスラスはまるで確
かめるようにそっと肌に手を触れてみた。
 『!』
 ビクッと背中を反らした珠生は、自分自身の反応に途惑ったようにラディスラスに不安そうな目を向けてきた。
ラディスラスは軽く珠生の髪を撫でて、その頬に口付けを落とす。
 「大丈夫だ、タマ。俺に全て任せていれば何も心配することないぞ」
 『・・・・・っ』
 ラディスラスは身体を起こし、自分の服に手を掛けた。
そのまま脱ごうと珠生から一瞬目を離した時・・・・・、
 「!」
急に胸を突き飛ばされたかと思うと、細い腕が腰の剣に伸びたのが見えた。
 「タマっ」
ラディスラスが叫ぶと同時に、珠生はかなり重いであろう剣を両手で持ち、その切っ先をラディスラスの胸に向けて言った。
 『これ以上、俺に触るな!』
 「タマ」
 『近付いたら、これで・・・・・っ』
 「・・・・・」
(これを狙っていたのか・・・・・馬鹿じゃないが・・・・・)
 「手が震えていたら、誰も斬ることは出来ないぞ、タマ」



(こ、こんなに重いなんて・・・・・っ)
 手にずっしりした剣は、想像以上に重かった。
とても振り回すことなんて出来ないなと思いながら、辛うじてラディスラスの胸元に切っ先を向ける。
鈍く光るこんな剣など持ったことがない珠生は、これが実際に人を傷付けるなどとはとても想像が出来ないが、多分ラディスラス
は今まで何人もの人間を斬って来たのだろう。
だからなのか、鋭い切っ先を向けられているのに、ラディスラスの顔に恐怖や焦りの表情は全く見えず、反対に困った奴だというよ
うに苦笑を浮かべているくらいだった。
 『これ以上、俺に触るな!』
 「タマ」
 『近付いたら、これで・・・・・っ』
 「・・・・・」
 とても、この剣を持ったままで逃げることは出来ないだろう。
少しだけ傷付けて、その隙に逃げれるだろうか・・・・・珠生がそう考えた時、手に振動がグッと掛かった。
 『なっ!』
 突き出された剣先を、ラディスラスは素手で掴んでいた。
寝台の布の上にポタポタと落ちる赤い滴がラディスラスの血だと分かった瞬間、珠生はヒッと声無き声を上げて剣から手を離して
しまった。
自分が傷付けたわけでは無いが、自分が持っていたもので誰かが血を流す・・・・・少しでも傷付けてと考えていたくせに、いざ実
際に赤い血を見てしまうと珠生はパニックになってしまったのだ。
尻餅を付いた形で顔面蒼白になった珠生を見て、ラディスラスはニヤッと笑った。



 今まで、血を流す人間を見たことが無かったのか、可哀想なほどに怯えてしまった珠生を見て、ラディスラスは可哀想にと思うと
同時にゾクッと欲望が湧き上がった。
追い詰めて快感を覚える趣向など無かったはずだが、この珠生の顔を見ていると・・・・・もっと泣かしたくなってしまう。
 「・・・・・お前が悪い」
(俺の眠った欲望を引き出したお前が・・・・・)
 掴んだ剣は寝台の下に投げ捨てた。握った掌には赤い線のような傷がついてはいたが、うまく力を利用したので深い傷にはなっ
ていない。
ラディスラスはペロッと血を舐め取ると、そのまま珠生の足を引っ張って寝台の上に押し倒した。
ラディスラスが怪我をしたショックがまだ続いているのか、珠生は今度こそ無防備に横たわった。
 「どうした?今度は抵抗しないのか?」
 『・・・・・』
 「タマ」
 既に半裸の姿だった珠生の服を全て脱がし、ラディスラスは自分も服を脱ぎ捨てた。
日に焼けた自分の肌と珠生の肌はまるで同じ人間のものとは思えない。
小さく、ささやかな乳首を掴むと、珠生は泣きそうに顔を歪めたが、今度は身体を捩って逃げようとはしなかった。
 「抵抗しないと、このまま抱いてしまうぞ?」
 通じないと分かっていてもそう聞いてしまうが、やはり珠生の反応は無い。
ラディスラスはそのまま珠生の首筋に顔を近づけた。甘く不思議な香りがし、ペロッと舌を這わせてみる。
(・・・・・うまい)
化粧の味もしない子供の肌が、こんなにも美味しいとは思わなかった。
ラディスラスはそのままずっと肌に舌を這わせ続け、小さな乳首から腹、臍へと、まるで味わうかのように愛撫ともいえない愛撫を
与えた。



 ゾクゾクする・・・・・。

 ラディスラスの長い髪が肌の上を撫でていく。
珠生は今にも漏れそうになる声を抑えるのに必死だった。
まだ誰とも肌を合わせたことは無く、こうして他人の素肌の感触を感じるのも初めてで、同じ男のはずなのに自分とは全く違う身
体の感触に途惑うしかない。
(どうしよ・・・・・どこまでされるんだ・・・・・?)
 大学進学で地元から離れる時、友人達からは冗談交じりに気を付けろと言われたことがあった。今の世の中は男でも構わな
い男がいるからと、その時はただ笑って聞き流していたが、今自分の身体の上にいる男は・・・・・。
(本当に、俺を?)
男を抱く人間が本当にいたのだということにも驚いたが、自分がその手に嫌悪感を抱いていないことにも驚いていた。
男に触れられればそれだけで気持ち悪くなってもおかしくないのに、今珠生の心を占めているのは驚きと不安だ。
驚きは、もちろんラディスラスが自分を抱こうとしている行為に。
そして不安は、自分がこれからどうなってしまうかということに・・・・・だ。



 華奢で瑞々しい少年の身体。
まだ誰の手も掛けられていないその未開の地に、一番最初に自分が踏み込むことをラディスラスは嬉しく思った。
 「タマ、足を開け」
 『や、やだ・・・・・』
ほっそりとした足は、ラディスラスが力を入れなくとも容易に左右に開いた。
その足の付け根には、まだまだ子供の姿のペニスが縮こまった形で存在していて、その色は肌よりも少しだけ色付いているくらい
の薄い色だ。
 触れるのに、少しも嫌悪感はわかなかった。
 「可愛いな」
 『ひゃあっ!』
今まで抱いたことがある男は慣れた者達ばかりで、それも女に比べれば全然数は少ない。
その男達は勝手に自分で慣らして上に乗ってきたが、何も知らない珠生をどうやって感じさせていいのか・・・・・はっきりと分から
ないが、ラディスラスは自分の欲望のままにそのペニスを口に咥えた。
 『や、やめっ、やだっ、やだあ!』
 さすがに珠生は激しく身を捩って逃げ出そうとしたが、小さなその身体を押さえつけることなどラディスラスには簡単で、しっかりと
珠生の両腿を押さえてペニスを愛撫した。
たっぷりと唾液を絡め、先端から細い幹にかけて、何度も唇で、舌で刺激を与え、ラディスラスはペニスが震えながら立ち上がっ
てくるまで愛撫を続ける。
 「どうした、感じているのか?」
 『や・・・・・』
 「子供のくせに、ここだけは大人なんだな」
 幹から零れる唾液と、先走りの液で、既に濡れていた尻の蕾にラディスラスが指を差し入れると、生きのいい魚のように珠生の
身体が飛び跳ねた。
 「タマ・・・・・」
 ラディスラスは自分のペニスを取り出した。
既に扱くまでもなく、珠生の姿を見ていただけでそそり勃っているそのペニスは、とても珠生のそれと同じ器官とは思えないほど大
きくてグロテスクだ。
まだ開ききっていない珠生の蕾の中にそのまま突き刺せば、どんな傷を負わせてしまうのかも分からないが・・・・・このままじっくり
慣らしてやる余裕もなかった。
 「悪い、タマ」



 信じられないような場所に、濡れた感触がした。
既に目に一杯涙を溜めていた珠生が怖々目を開いてみると、目一杯開かされた足の間に裸のラディスラスがおり、苦しいほど腰
を持ち上げられたその先に・・・・・。
 『!』
(な、なに、あれっ?なにっ?)
 信じられないほど大きなペニスが、今まさに自分が普段触れることのない場所・・・・・尻の蕾にめり込もうとしていた。
小さなそこが無理矢理押し広げられる痛みに、珠生はブワッと反射的に涙を流しながら叫んだ。
 「ラディ!」
 「・・・・・タマ?」
 「ラディっ、ラディっ、ラディ・・・・・!」


 その声は、まるで止めて、止めてと聞こえた。
狭いその蕾は、強引に押し込めば入るかもしれないが、ラディスラスの目は子供のように泣きじゃくる珠生の顔から離れない。
 「タマ・・・・・」
 「ラディ、ラディ・・・・・」
 「・・・・・っ」
 ラディスラスは天を仰いで溜め息を付いた。
一度抱いて手放す相手ならばこのまま泣かれても最後までするが、珠生は・・・・・この少年とは、一度きりで終わらせるつもりは
ないのだ。
このまま無理矢理抱いて、次からもずっと嫌悪や痛みを覚えられては面白くない。
 「・・・・・ラディ?」
 急に身体を解放された珠生は、怖々その名を口にした。
涙で濡れた顔はグチャグチャになっていたが、それさえも可愛いと思ってしまう自分はもうとっくに珠生に掴まっているのかもしれな
い。
躾と称してこの身体に触れようとしたのも、早く自分のものにして安心したかったからだ。
 「・・・・・まったく、女だったら抱いてくれと縋ってくるくらいだぞ」
 『・・・・・?』
 「ここで止めるのは今日だけだ、タマ。お前が感じる場所は分かったからな、お前が泣いて縋ってくるまでドロドロに溶かして、そ
の身体を隅々まで俺のものにする」
中途半端な自分の欲望は、今日は自分の手で処理するしかないだろう。
ここまできて何もしないという自分が可笑しくて、ラディスラスは声を上げて笑ってしまった。
 「ラ、ラディ?」
 「可愛いな、タマ。本気でお前が欲しいよ」
 小さな爪を立てて抵抗してきた可愛い子供に免じて、今日だけはこれ以上なにもしない。
しかし、明日からは・・・・・。
 「絶対にお前の全てを俺のものにしてみせる」
この海を支配する自分が、この海で自ら見付けたのだ。所有の証を深くその身体に刻み込み、必ず自分のものにする。



 「逃がさないからな、タマ」




                                                                      end





                                                     





もうこれ、序章とします(泣)。
とてもこれで終わるなんて許されないだろうし、私も許したくないっ。
次回からは本編として連載開始ですね・・・・・仕方ありません、題材が大き過ぎた。

投票の海賊の欄は消しますが、もっと他のシチュエーションの海賊ものが好みの方は、また新たに投票してください。
とにかく、今回寸止めのラディ船長の本懐を遂げさせてやりたい。(ここまでジローさんに似るとは・・・・・)