A nonaggression domain
１１
『』は英語です。
ようやく、本当に２人きりの空間になり、江坂は思う存分、愛しい静の身体を貪った。
セオドアがいる時は必要最小限の姿だけ見せたが、自分しかいない今は、美しい静の身体を好きなだけ鑑賞出来る。
「んっ、ふっ、んんっ」
既に何度も精を放った静の肛孔は、グチュグチュという淫らな音を響かせながら江坂のペニスを受け入れた。何度抱いてもきつ
いほどに締め付けてくる内壁。それでも、蠢く内部の感触はどんな女との過去のセックスよりも心地良い。
チュク
静の身体を深く折り曲げ、江坂はその唇を奪った。
「ふむっ」
中で角度の変わったペニスは静の良い場所を的確に突き、嬌声を上げようとするのだろうが、キスのせいでそれはくぐもった声にし
かならない。
ピチャ
何度も何度も角度を変え、江坂は口付けを続けた。
ペニスを最奥に突き入れることは支配欲を満足させてくれるが、キスは静が本当に自分を受け入れてくれているのだという証の一
つに思え、気付くと江坂は静にキスをしていた。
お互いの唾液を交換し、舌を絡ませ、軽く噛み・・・・・まるで静の口腔を自分の舌で犯すように、江坂は僅かな息継ぎしか許
さない。
（可愛い、静）
人形のように整った顔に、色濃く浮かぶ愉悦の色。この美しい人形に精液を注ぎ、人間にするのは自分しかいない。
江坂は静を抱くたびにそんな錯覚を感じていた。
何度熱い迸りを身の内に受け止めたのか、静は全く分からなかった。そして、それ以上に自分がどれ程にイッたのかも、考えた
くない。
始めはゆらゆらと居心地良く身体を揺さぶられている感覚だったが、どれくらいセックスを続けていたのか・・・・・今、静の意識は
酔いという部分から少しは醒めてきていた。
（お・・・・・れ、一体・・・・・っ）
もちろん、江坂に抱かれることが嫌などと考えたことは無かったが、意識のほとんど無かった自分がどんな風に乱れたのか想像す
ると恥ずかしくて仕方がない。
「・・・・・静？」
眼鏡を外し、髪も少し乱れている江坂は、ゾクッとするほどの男の色気を纏っていて、静は真っ直ぐに見つめることも出来なかっ
た。
無意識のうちに身体に力が入ってしまい、それによって中にある江坂のペニスも締め付けて、江坂は静がかなり正気を取り戻し
てきたのを悟ったらしい。
「りょ、じさ・・・・・っ」
「そのまま、感じるままに動いていいんですよ」
「ああっ！」
少し笑みを含んだ声でそう言った江坂は、ズンッとより深くペニスを押し入れてきた。中の締め付けももちろんだが、江坂のペニ
スがより大きさを増したのか、圧迫感は更に強くなり、静は堪えようとした声を上げてしまう。
グチュ グチュ
大きく出入りを始めたペニスは、締め付けも関係ないように静の内壁を刺激し、かき回してきた。今度ははっきりと耳に響いてくる
水音や身体のぶつかる音に、静は耳を塞ぎたいほどの羞恥を感じてしまった。
セックスをする時、何時も江坂がトロトロに蕩かしてくれるので、こうして身体が深く繋がる時にはほとんど羞恥を忘れることが出
来るのだが、今回は霞みかかった頭の中が晴れた瞬間、もう江坂のペニスは身体の中に入り、自分の身体もそれを喜んでいて
・・・・・心だけがついていっていなかった。
そのために羞恥は未だ消えることなく、それでも身体は貪欲に快感を貪って。
静は心と身体、相反する反応に混乱したまま、助けを求めるように江坂の背中に腕を回した。
静の身体のことを考えて薬の量は言われたものよりも少なくしたのだが、そのせいで今静はほとんど通常の感覚に戻っているの
だろう。
（これは、いい眺めだ）
江坂の視線から身体を隠そうと身を捩るのに、ペニスを咥え込んだそこは嬉しそうに締め付けてくる。
自分でもその身体の反応が分かっているのか、静の表情は羞恥のために泣きそうになっていて、それさえも江坂の嗜虐心を刺激
してきた。
静のことを愛しているし、大切にしたいと思っている。
悲しませることはもちろん、少しの影もその心に落としたくないと思っている。
その反面、こうして快感に咽び泣く姿は江坂の劣情を高めるのに最高の表情であることも確かなのだ。
「静」
「りょーじ、さんっ」
自分を責め苛んでいる男に、助けを求めるように腕を伸ばしてくる姿が愛らしい。
江坂は口元に笑みを浮かべると、身を屈めて静の口元に唇を寄せた。
「見られたくない？」
「・・・・・っ」
「恥ずかしいんですか？」
「・・・・・っ」
コクコクと、何度も首を縦に振る静は、嬌声を抑えるために唇を噛んでいる。このままでは綺麗な静の唇が傷付いてしまうと、江
坂は強引にその中に自分の指を含ませた。
「噛むのなら、私の指にしなさい」
それは嫌だと首を振る静に、それならば声を押し殺すなと続ける。
「聞いているのは私しかいない。恥ずかしいことなどありませんよ」
「ふ・・・・・ぐっ」
静の唾液が自分の指を伝い、シーツに滴り落ちた。勿体無いと、江坂は思う。
「それに、恥ずかしいのなら」
「ああっ」
江坂はペニスを蕾に含ませたまま、強引に静の腰を動かしてシーツにうつ伏せの体勢にした。その衝撃で静はシーツに向かって精
を放ってしまったが、江坂はその粗相を項に唇を寄せながら褒めてやる。
「静の身体はどこも感じやすくていい。ほら、ここもちゃんと私を締め付けたままだ。この体勢の方がより深く私を感じるでしょう？」
「い・・・・・や・・・・・っ」
「この体勢なら、私は綺麗な背中しか見ることが出来ない。恥ずかしくはないでしょう？ほら、もっと感じなさい」
グリュッ
「ひっ！」
深く腰を突き入れると、静は高い声を上げた。
どこもかしこも綺麗な静。その気持ちが快感に蕩けてしまうまでもう少し、この白い背中にキスの痕を降らせてやろうと思った。
背中に圧し掛かってくる大きな身体。
着痩せする江坂の身体は服を脱げば鍛えているのが分かって、ふにゃふにゃな自分の身体とは全く違う種類のものだった。
「んっ、あっ」
背中に何度も唇が触れるのが分かる。それだけでなく、軽く歯も立てられ、このまま食べられてしまうのかという思いにゾクゾクす
る感覚が襲ってしまう。
それでも、自分を抱いているのは江坂だと、握り締めている手の感触からも、肛孔を犯すペニスからも、そして、汗に混じってほ
のかに香るコロンの匂いからでも分かるので、静は揺さぶられるまま与えられる快感に身を委ねていった。
パシ パシ
グチュ クチ
身体の中を掻き回される音に、肉体がぶつかる音。
自分がしているのがセックスなのだと、身体の感覚からも、音からも、思い知らされていく。もう、全てが蕩かされてしまっていた。
「りょっ、りょ、じ、さっ、凌二、さんっ」
「静・・・・・っ」
「んんっ」
白い身体が赤く染まり、自分の突き入れに合わせるように腰が揺れて、もう、静は完全に快感に囚われている。
「ふ・・・・・っ」
俯いてしまった顎を取り、少し強引に後ろを振り向かせて舌を絡めれば、目に涙を滲ませながらも応えてくれた。上も、下も、ど
ちらもこれ以上ないほどに交じり合っていて、江坂はそのまま奥へ奥へと腰を入れていく。
「・・・・・んっ」
飲み下せない唾液が顎を伝い、息苦しそうに喉を鳴らした静をようやく解放した江坂は、更に動きを早くして、
「・・・・・っ」
「・・・・・ひぁ・・・・・っ」
バシッと腰を打ちつけた瞬間、もう何度目かも分からない精を最奥に吐き出した。
苦しそうな、それでいて物足りないような、静の蕩けきった顔。その横顔に唇を触れた江坂は、吐き出した精液をゆっくりと静の内
壁に馴染ませるように腰を動かし続ける。
せっかく場所を変えたのだ。何時もとは違う静の痴態をもう少堪能してやろうと、江坂はくったりとシーツに沈む静を仰向けにし、
萎えないままのペニスで軽く内壁を突く。
「え・・・・・？」
「まだ、付き合ってもらいますよ」
朝食の仕度もしないでいいですしと笑いながら言った江坂は、細い静の足を抱え直して唇を寄せると、目を細めてもう一度唇
を奪った。
何時もは目覚めの良い静だったが、夕べの酒のせいか少しだけ頭が重いなと感じながら目覚めた。
「あ・・・・・」
「おはようございます、静さん」
江坂は既に目覚めていて、何時もの優しい笑みを向けてくれる。それに応えようとした静だったが、
「・・・・・はよ、ござ、ます」
少し、声が喉に引っ掛かった。その理由など、改めて考えなくても分かり、頬が熱くなるのを自覚した。しかし、江坂はそんな静を
からかうことなく、数度髪を撫でてくれた後、軽く唇を重ねてきて立ち上がる。
「直ぐ水を持ってきましょうね」
「・・・・・な、さい」
「待っていて下さい」
寝室を出て行く江坂の後ろ姿を見送りながら、静ははあっと深く息をついた。
（昼間はこんなに優しいのに・・・・・夜はエッチだ）
受身の自分が疲れるのは仕方ないとは思うものの、さらっとした肌の感触を考えれば身体を拭いてくれたか、風呂に入れてくれた
のだろう。
あれ程濃厚なセックスの後、自分の後始末をして、今こんなにも・・・・・。自分とは基礎体力が違うのだなと、静は早々に対抗
することを諦めてしまった。
ミネラルウォーターの水を一気に半分ほど飲んだのを見ると、相当に喉が渇いていたのだろう。
それは酒のせいもあるだろうが・・・・・江坂は用心深くその様子を探った。後には残らない薬だとはいえ、静に万が一にでも影響
が残ったら・・・・・それこそ、あの男をこれでもかというほどに貶めてから始末をするつもりだが、どうやら薬の後遺症と見られる様子
は表れなかった。
疲れたふうなのは、夕べから今日に掛けてのセックスのせい。それは自分のせいなので、甘んじて責めは受けるつもりだが、優し
い静は自分を責めることは無かった。
何を言われたとしても言いくるめることが出来る江坂だが、そんな静の大きな心には苦笑を零すしかない。
「はあ〜、落ち着いた」
「それは良かった。私のせいだと思うと気が気じゃなかったので」
「・・・・・っ、そ、それは、俺の責任でもあるし」
目元を染めながらそう言った静に、江坂はおやと思った。
「静さんの責任というのは？」
「・・・・・」
「静さん？」
朝日が差し込む明るいベッドの上で、まだバスローブ姿の静にこんなふうに聞くのは卑怯かもしれないが、江坂はいったいどんな
答えが返ってくるのだろうかと楽しみに感じてしまう。
「だって・・・・・」
「・・・・・」
「だって、俺も・・・・・したかった、し」
「静」
満点の応えに、江坂は静の顎を手に取り、俯かないでくださいと言った。
「共同責任なんですから、下を向くことなんてないですよ」
「・・・・・恥ずかしいし」
「では、顔を上げたまま目を閉じていなさい」
素直に自分の言う通りに目を閉じた静に、江坂はそのまま唇を重ねた。ピクッと瞼が震えたのが分かったが、静は目を閉じたまま
で、江坂はそれを諾と取り、当然のように唇を割って舌を絡め取る。
「んっ」
夕べから続く甘い時間は、どうやらまだ途切れてはいないようだった。
