愛情の標
19
マンションに戻った真琴は、リビングの真ん中に立つと、はあ〜と安心したように溜め息を付いた。
(ちゃんと帰って来れた・・・・・)
自分にとってこのマンションが既に帰る場所になっていることに改めて気付かされる。
そして、改めて海藤に礼を言おうと振り向きかけた真琴は、後ろからすっぽりと抱きしめられて動きを止めた。
(海藤さんだあ・・・・・)
海藤が何時も付けているエゴイストの香りと僅かな煙草の匂いが混ざり合って、海藤という男の香りを作り出している。
真琴はこの香りが好きだった。
「真琴、お前何か気懸かりなことがあるな?」
「え?」
「言ってみろ。どんなことでも俺が答えを出してやる」
自分のことを思っての言葉に、真琴は胸の前に回っている海藤の腕をギュッと掴んだ。
「・・・・・本当は色んなこと考えたんです。海藤さんの家のこととか・・・・・結婚のこととか」
「俺の?」
思い掛けない言葉に、海藤は珍しく戸惑ったように呟いた。
海藤が思っていた気懸かりなこととは先程の拉致のことで、本当は何かされたのではないかという疑念からだった。
しかし、真琴の口から出たのは自分のことで、それも家や結婚など、全く想像もしていなかったことだけに、さすがの海藤も
一瞬言葉に詰まってしまった。
「本当はちゃんと女の人と結婚して、子供も出来て・・・・・。海藤さんのご両親もそう思ってるんじゃないのかなって」
「・・・・・誰が言った?」
まだ大学に進学したばかりの真琴が、家のことまで気が回るとはとても思えなかった。誰かが何かを真琴に言ったのだろう
と、海藤は真琴の身体を反転させて正面から向き合うと、その顔を覗き込むようにして言う。
しかし、真琴は首を横に振って、海藤の言葉を否定した。
「いいんです、もう。俺の気持ちは決まってるから」
「真琴?」
「誰が相手でも、俺、海藤さんを渡すつもりないですから」
助けに来てくれた海藤の姿が目に入った途端、真琴はそれまで頭の中でモヤモヤしていたことが一瞬で弾け飛んだのを
感じた。
子供の言い分かもしれないが、こんなに大好きな人を、誰かに渡すなんて考えられなかった。
「大好き」
テレながら、しかしはっきりと言い切った真琴をじっと見つめていた海藤は、次の瞬間攫うようにその身体を抱き上げた。
「か、海藤さん?」
「悪い、今すぐ抱きたい」
「え?あ、あの、お、お風呂!お風呂入らせてください!」
考えていなかったとは言わないが、あまりの早い展開に真琴は思わず抵抗するように足をバタバタさせる。
しかしどんな抵抗も、大人の男の前では可愛い誘いにしかならないようだ。
「どうせ濡れるんだ。風呂は後で入れてやるから」
絶句した真琴の唇に、海藤は噛み付くようなキスをした。
自分が言ったようにかなり余裕がないのか、海藤は何時ものように丁寧に服を脱がせようとはせず、ほとんどボタンを引き
ちぎる勢いで真琴のシャツを脱がせた。
「んん・・・・・っ」
その間も貪るような口付けは止まらず、真琴は口中をくまなく愛撫する海藤の舌についていくことが出来ずに、ただ求めら
れるまま受け入れるしか出来ない。
「あ・・・・・」
服越しに感じる海藤の下半身も既に固くなっていて、真琴は急に恥ずかしくなって顔を真っ赤にした。
「ほら、腰を上げて」
「は・・・・・い・・・・・っ」
言われるまま腰を上げると下着ごとジーンズを脱がされた。
白い肌に軽く歯をたて、その上からキスを繰り返す。まるで真琴が自分のものだと刻み付けるような行為に、敏感な真琴
の身体は直ぐに反応した。
真琴は完全に立ち上がった自分のペニスを隠そうと手を伸ばすが、一早くその手は海藤に押さえられ、そのままペニスを口
に含まれた。
「あああ!あんっ、ああ!」
手での愛撫ももちろん気持ちがいいが、口腔内でされる愛撫は我慢できないほどの快感があった。
竿の部分から先の部分まで、唇で、口腔で、海藤は休む暇も与えずに愛撫を繰り返す。
女相手に使ったことのない真琴のペニスは、海藤の愛撫に溶かされ、とめどなく快感の涙を流し続けた。
その快感に呆気なく果てた真琴のペニスから吐き出された精液を口で受け止めた海藤は、それをそのまま片手に吐き出
すと、今度は力が抜けた真琴の片足を肩に担ぎ上げて足を広げさせ、まだ固く閉ざされたままの尻の蕾に塗りこめた。
「い・・・・・たっ」
何度抱かれても初めのこの瞬間には痛みを感じてしまう。
いつもならそんな真琴のペースに合わせてくれる海藤も、今日はなだめる様なキスを頬にしながら、その手を止めることはな
かった。
蕾を解す海藤の長い指が1本から2本になり、引きつれたような痛みが再び襲うが、真琴はそれを与えているのが確かに
海藤だと涙で滲む目で見つめながら、ギュッと背中に回した手に力を込めた。
「すまん・・・・・あまり慣らしてやれないが、とにかく入らせてくれ」
「え・・・・・」
海藤はまだシャツの前をはだけただけの姿だったが、そのままスラックスの前だけくつろげ、海藤は既に支える必要もないほ
ど雄々しく立ち上がったペニスを真琴の蕾に合わせた。
ニチャッと微かないやらしい音が耳に入り、真琴は思わず目を閉じてしまう。
「力を抜いてろ」
待ってと言うより先に、鈍い衝撃が真琴の下半身を襲った。
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