愛情の標
20
音の無い寝室には、真琴の喘ぎ声と粘膜を擦り合う音、そして激しく身体がぶつかり合う音が混ざり合って響いている。
「うあっ、あっ、はっ、ああっ」
一度中に出されたせいか、濡れた真琴の中は初めよりもスムーズに海藤を受け入れていた。
ペニスが出し入れされる度に、結合した部分からは白い泡のようになった精液が零れ出ている。
耳を塞ぎたくなるような猥らな音は、真琴にゾクゾクとした背徳感を伴う快感を誘発していた。
真正面から向き合う姿で抱かれている真琴は、海藤の律動に身体を揺さぶられながら、涙で潤んだ目を必死に自分を
抱く男に向けていた。
眼鏡を外した端正な海藤の顔・・・・・。普段は綺麗に撫で付けられた髪は乱れ、微かに眉をよせ、額に汗を滲ませながら
真琴を攻めている。
そんな海藤の姿を見ると、この行為に溺れているのが自分だけではないのだと、自分が海藤に溺れているように、海藤も
夢中になってくれているのだと信じることが出来た。
「かっ、かいどっ、さっ、あっつ!」
何度も抱かれて、自分の身体はすっかり海藤の色に染められた。
イキっぱなしの様にペニスから零れる精液も、喘ぎ続ける口の端から零れる唾液も、普段ならば恥ずかしくて絶対に海藤
にだけは見せたくない姿だ。
しかし、そんな一番みっともない姿を見せることが出来るのも、海藤しかいなかった。
「真琴、口、開いて」
言われたように口を開くと、直ぐに海藤の舌が進入してくる。
他人の唾液を飲み込むということなど考えられなかったが、海藤はそんな真琴の羞恥も理性も一瞬の内に飛ばしてしまう。
絡み合う舌と、互いに交換し合う唾液。
海藤のそれは甘くさえ感じる。
「お前はキスが好きだな」
「すっ・・・・・きっ」
「キスが?」
「かいど・・・・・さ・・・・・がっ」
「・・・・・これ以上俺のたがを外すな・・・・・っ」
急に激しくなった海藤の動きに比例し、太く長いペニスが真琴の中の気持ちのいい場所を突き擦る。
「まっ、ま・・・・・っ」
「待てないっ」
口付けの仕方も、男の受け入れ方も、全て海藤が教えた通りに身体が覚え込み、その通りに反応する真琴が愛おしかっ
た。
「はっ、ああっ、あっ!」
吐き出した自分の精液を真琴の中の隅々にまで塗り込めるように巧に動く海藤は、今は服を脱いで全裸を晒している。
性欲処理のセックスの時に限らず、海藤は今までもセックスの時に全裸になることはほとんどなかった。
我が物顔で痕を付けられるのが嫌だったし、立場上何時狙われるか分からない為、最小限は服を身に付けている事が
多かったからだ。
それでも女達は海藤のテクニックとペニスに溺れて、それを不自然に感じる者はいなかった。
しかし、真琴は違う。
海藤が唯一といってもいい愛情を注ぐ真琴に対しては、海藤も自分の全てを曝け出すのに躊躇いはなかった。
直接肌に触れ、お互いの汗も精液も交じり合うほど密着し、唯一繋がることの出来るペニスを真琴の蕾に突き刺す時、
海藤はようやく真琴を手に入れた安心感を得る。
「い・・・・・いっ!」
「ほら、自分でも動かしてみろ」
「う・・・・・んっ」
耳元で囁くと、真琴は従順に言葉に従う。
まだまだぎこちない動きながら、少しでも海藤に快感を与えようと腰を振った。
「・・・・・愛してる」
「!」
海藤の言葉に、キュウッと、まるで海藤のペニスを抱きしめるように真琴の中が絞まった。
「お・・・・・れも・・・・・っ」
「ん?」
「俺も・・・・・愛してる・・・・・っ」
こんなにも愛おしいものが手に入るとは思わなかった。
全ての愛情をぶつけるように、海藤は真琴の身体を抱え直し、一層激しい律動を繰り返す。
「ふあっ、あっ、あっつ!」
既に真琴は身体に力が入らなくなったのか、海藤の背中に回していた手がだらりと滑り落ちた。
しかし、そのまま手を重ねれば、まるで縋りつくようにギュッと指を絡めてくる。
「ほらっ、全て飲み込め・・・・・っ」
「ああ!!」
ぐいっと強く突き上げられた瞬間、真琴は海藤の胸を濡らして何度目かの射精をした。
すぐに海藤の動きも止まり、その瞬間一度出したとは思えないほど大量の精液を真琴の最奥に吐き出した。
「ん・・・・・っ」
一滴残らず真琴の中に全て注ぎ込んだ海藤はペニスを突き刺したまま、今だ荒い息の真琴の目元にそっとキスを落とした。
男の目から見れば色っぽいと映る目元のホクロも、今は真琴の涙で濡れ光っている。
「・・・・・このまま出たくないな」
海藤が零した呟きに、真琴は涙で潤んだ目をうっすら開いて言った。
「お・・・・・れも・・・・・もっと・・・・・欲しい・・・・・」
「真琴」
「俺の中・・・・・もっと、海藤さんで・・・・・いっぱいにして・・・・・」
「・・・・・っ!」
真琴の無意識の媚態に、まだ真琴の中に入ったままの海藤のペニスが再び大きくなり、そのまま蠢く真琴の中を押し広
げるように突き上げを始める。
「しばらく寝かさないぞ」
長い夜はまだ終わらなかった。
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