赤の王 青の王子
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※ここでの『』の言葉は日本語です
シエンが与えられた客間に早々に戻ると、残されたアルティウスの機嫌は急降下をたどり、無言のまま杯を重ねていた。
(あ奴、絶対にユキを欲しがっているっ)
「絶対に手放すものか・・・・・っ」
思わずそう言った時、一人の護衛兵が近づいてきて、アルティウスの耳元に進言した。
「・・・・・なんと?」
急いで私室に戻ったアルティウスは、その入口に寝巻き姿の有希が不安そうに立っているのを見付けた。
「ユキ!」
「おうさま」
アルティウスの姿に、有希は慌てて頭を下げた。
「きゅうに、こめんなさい。どうしても、はやくはなしたくて・・・・・」
「構わぬ。さあ、中に入るといい」
有希は頷き、アルティウスの後に続いて私室に入った。
(広・・・・・)
ゆうに家一軒分の広さが在るアルティウスの私室に入るのは初めてで、有希は一瞬ここに来た目的を忘れて華美ではな
いが十分贅沢な造りに見入ってしまう。
「どうした、ユキ。私を訪ねてくれるのは嬉しいが」
「こめんなさい」
「謝る必要などない」
「あの、おねかい、あって・・・・・」
「願い?何だ、何でも申せ。そなたの願いならば何でも叶えてやるぞ」
先程までの不機嫌さは消えうせ、アルティウスは上機嫌で有希の顔を覗き込んだ。有希が自分を頼ってくれるのが嬉しく
て、シエンに優越感さえ感じる。
(やはり、ユキは私の方が・・・・・)
「おうさま」
「何だ?」
「わたし、このくに、てていきたいんです」
「・・・・・なんと?」
「このくにに、わたし、いないほういいから。しえんおうじと、いかせてください」
「!!」
(シエンと行くと・・・・・?この国を出て・・・・・私ではなく・・・・・!)
「許さぬ!」
自分ではない男を選ぶなど、許せるわけがなかった。有希は自分が見つけ、異国の地から自分が連れてきたのだ。
みすみす誰かに渡す事は王の、男としてのプライドが許さない。
アルティウスは激しい感情を込めた目を有希に向けた。
(私の思い通りにならないなど・・・・・許せぬ!)
「お、おうさま?お・・・・・ひっ?」
いきなり感情が爆発したアルティウスに、有希は驚いて数歩後ずさる。
しかし、それさえも我慢ならないアルティウスは、片手で有希の身体を抱え上げるとドアの外に向かって叫んだ。
「誰か!ベルークを呼べ!!」
「王っ、何事でございますかっ」
直ぐに駆けつけたベルークの目に映ったのは、広い寝台の上にいる2人の姿・・・・・。仰向けに倒されている有希と、有希
の身体の上に馬乗りになっているアルティウスの姿だった。
「王っ、何を!」
「こちらに参れ!ユキの腕を掴んで動かないようにしろ!」
「それは・・・・・!」
「今宵、この場でユキを我が物にする!」
「そ、そのような暴挙・・・・・お止め下さい!許されることではありません!」
「ならばお前は、【異国の星】が他国の手に移っても構わぬと申すのか!私が見つけ、私がこの国に連れてきた星を!」
「そ、それは・・・・・」
ベルークは有希に視線を移した。
アルティウスと比べれば、まるで子供のような小さな有希の身体。簡易な寝巻きは既に胸元まで引き裂けられているが、覗
く肌は今まで見たことがないほど透き通るように白い。
助けを求めるように自分を見つめる黒い瞳は涙で濡れて・・・・・不意に、ベルークの身体がゾクッとした感覚に襲われた。
(まさか・・・・・)
全ての感情をコントロール出来る自信があったはずの自分が、今にも崩れそうになっている理性を自覚する。
(まさかこの私が・・・・・)
有希に対して欲望を感じている自分に、ベルークは愕然としていた。
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