赤の王 青の王子
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※ここでの『』の言葉は日本語です
有希が目を覚ましたのは、差し込む日差しが赤く染まる頃だった。アルティウスを訪ねたのは夜だったので、日付が変わっ
たのだろうということはおぼろげながら分かった。
ゆっくりと起き上がろうとするが、身体中が痛みに悲鳴を上げてしまい、有希は再び寝台に沈む羽目になる。
(痛い・・・・身体中・・・・・痛い・・・・・)
特に下半身はまだ何か含んでいるような違和感と熱があり、有希は昨夜自分の身体に与えられた信じられない暴力を思
い出して身震いしてしまった。
(このままここにいたら、また同じ目にあう・・・・・)
逃げなければと思った。男である自分が同じ男に組み敷かれる恐怖と屈辱感を、これから先何度も感じるかもしれない
と思うだけでぞっとする。
『どうしよう・・・・・どこに行けば・・・・・』
見知らぬこの世界で頼れる者はいない。
そもそもこんなに痛む身体では、1人でこの国を出ることさえ叶わないだろう。
(どうしよう・・・・・)
『でも・・・・・ここにはいたくない』
有希はギシギシと音がしそうなほど痛む身体を無理矢理起こすと、そっと寝台から足を下ろした。
「・・・・・」
アルティウスは執務室から見える有希がいるはずの部屋を見つめ、らしくもない溜め息をついた。
(私を許さぬであろうな・・・・・)
有希を抱けるという高揚と、有希にとって自分が始めての男だという喜びで、アルティウスは全くセーブが効かなくなってし
まった。
何度も何度も有希を求め、有希が気を失った後もペニスを貫き続けた。
意識はなくても、有希の中は熱く蠢くことを止めず、アルティウスはこれ程の快感を与えてくれる身体を初めて抱いたと歓喜
した。
行為の後、何時もならば相手のことを考えもせず自分の部屋に戻るのだが、有希の身体だけは他の誰にも触らせたくな
かったので、アルティウス自ら身体を清めた。
「お呼びか、王よ」
アルティウスの思考は、自分が呼び寄せた者の声で途切れた。
「マクシー、知恵を借りたい」
アルティウスが自分から他人の意見を聞こうとするのは珍しく、宰相であるマクシーは内心驚きながらも穏やかに頷いた。
「私の意見がお役に立つのならなんなりと」
「ユキのことだ」
「ユキ様の?」
「今回シエン王子が来国したのは始まりに過ぎないだろう。《星》の存在を知れば誰もが欲しがり、奪いにくるやもしれん。
ならば、対外的にも、ユキは我がエクテシアのものだと知らしめたいのだ。どのようにすればよいか?」
「・・・・・王にとって、ユキ様の存在は?《強星の主》という以外に、思いはおありか?」
「私にとって・・・・・」
アルティウスの中では、有希は《強星の主》ではなく、ただ欲しいと思う人間だった。今となっては、《強星の主》という肩書き
が煩わしいくらいだ。
「ユキは私の唯一の存在だ。たとえ《星》でなくとも変わらぬ」
「ならば・・・・・后になさいませ」
「后に?」
「幸い、王にはいまだ正妃はおられませぬが、、既に跡継ぎの皇子は存在しております。ユキ様が女でなくても、なんら問
題はございません」
この世界でも男同士の結婚自体は認められていないが、身分ある者達の中には男を妾として囲っているものもいる。
有希をエクテシアのものとするには、正式な立場を与えてしまうのが一番早いだろう。
「もともと《星》には性別など関係あらず。後は王のお心の問題です」
「ユキを私の后に・・・・・そうだな、それが良い!」
名実共に自分のものになるにはそれが一番いい方法に思えた。
「マクシー、直ぐに準備を始めよ。大国エクテシアの王の婚儀だ、盛大なものにしなければならぬっ」
「御意」
「それに、妾妃達は即刻生家に戻すように。ユキが嫌な思いをせぬように、即刻だ」
「よろしいのですか?これから後、妾妃方を必要とされる時がくるかもしれません」
「よい!私はもう・・・・・ユキ以外に欲しいとは思わない」
昨夜アルティウスと有希の間で何が起こったのか、マクシーの耳にも届いていた。一度抱いただけでは収まらないほど、ア
ルティウスは有希に執着しているのだろう。
女が欲しくなればまた集めればいいと、マクシーはアルティウスの言葉に頷いた。
「全て、王のお心のままに」
「では・・・・・」
早速話を先に進めようとした時、部屋の外から声が掛かった。
「王、シエン王子がお目通りを願っておられます」
シエンという名前に、たちまちアルティウスの機嫌は急降下する。
「何用だ」
「明日、ご出発されるにあたり、滞在のお礼をと申されております」
「・・・・・」
(明日帰るか・・・・・)
婚儀の準備が全て滞りなく済むまで、シエンに有希の周りにはいて欲しくない。
都合がいいと、アルティウスは直ぐにドアを開かせた。
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