赤の王 青の王子
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※ここでの『』の言葉は日本語です
目の前に置かれた鮮やかなオレンジ色の木の実を指差し、有希はたどたどしく言った。
「ネルの実・・・・・あ、まい」
「当たりです。ユキ様、食べていいですよ」
「ウンパ」
日常会話は出来るだけエクテシア語を話すようにとディーガに言われ、有希は片言の言葉で何とか過ごしている。
この国に来て2週間経った。
日々の日常は変わらず、有希の戸惑いは小さく降り積もるように溜まっている。
今にも大声で叫んで逃げ出したくなるが、ここを出て行くあてはない。
「ユキ様?」
「さま、いらない」
「しかし、王のお叱りを受けてしまいます」
「おし、かり・・・・・?」
「王以外の方がユキ様の名を呼ばれることを良しとされておられないのです。これでも私はかなり破格のお許しを受けて
いるのですよ」
この世界の事など全く知らない有希を一人にすることは出来ず、かといって王であるアルティウスや占術師のディーガが付
ききりというわけにもいかず、結局多少なりとも有希の言葉が分かるディーガの弟子が、有希の側仕えとして宮殿に上がっ
た。
ウンパは13歳とまだ若いが、占術師の素質を見出されて、まだ4歳になったばかりの頃にディーガの弟子になった程の優
秀さだ。気遣いも出来て、戸惑うばかりの有希をよくフォローしてくれる。
良家の子息だったのか礼儀もよく、有希にとってはかなりよい人選だったが、アルティウスは初めてウンパを見た時、頑強に
側につくのを反対した。
それは、13歳という年齢以上に大人びたウンパの容姿のせいだ。身長は既に有希よりも高く、鍛えている身体もとても13
歳とは思えない。
各国共通して、男は15歳、女は14歳で成人を迎え、結婚することも出来る。
ウンパも見掛けだけでは、既に成人した男並で、アルティウスはそんなウンパと有希を一緒にいさせる事が嫌だったのだ。
自分が有希と一緒にいると頑強に言い張ったアルティウスを諌めたのは、当の有希だった。
「おうさま、しこと、する、たいじ」
覚束ない発音ながら、有希が自分の心配をしてくれたと感激したアルティウスは、くれぐれもと念を押し、もし間違えを起こ
せば親兄弟親族もろとも処刑すると言い放った。
まだ難しい単語は分からない有希だったが、その時の強張ったウンパの横顔を忘れることが出来ず、出来るだけ迷惑を
掛けない様にと当初は遠慮していたが、ウンパの方は既に気持ちを切り替えたのか積極的に有希に関わった。もちろん身
体への接触は最小限だが。
そんなウンパの態度に、有希も次第に打ち解けるようになり、今はディーガよりも先にウンパに相談するくらいだ。
「さ、ユキ様」
「ありかと」
イスを引いてくれるウンパに頭を下げ、有希は瑞々しい木の実を口に入れる。
『ほんと、これビワみたいな味・・・・・』
美味しいとか不味いとか、辛い甘いなどの味の表現は思わず日本語になってしまう。
「ユキ様」
「あっ、こめなさいっ」
「いいえ、出来るだけ意識して下さいね」
「はい」
(また怒られちゃった)
「今日は昼からマクシー様が来られるそうです。ユキ様と話をされたいそうなので、ディーガ様も来られますよ。難しい言葉
は、まだ私は理解出来ないので」
「ディーガさま、会える、うれし、けど、マクシーさまて?」
「エクテシアの宰相様です。お優しい方ですから、大丈夫」
「なんの、はなし?」
「さあ。私は何も聞いておりませんので」
申し訳なさそうに言うウンパに笑って首を振りながら、有希は初めて会う宰相という存在を想像した。
(僕に何の用なんだろ?ただ話をするだけかな・・・・・?)
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