赤の王 青の王子




                                                      
※ここでの『』の言葉は日本語です






 「私の膝に座れ」
 「え?で、でも・・・・・」
 「来いっ」
 有希が誰の手の中にあるのか知らしめたいアルティウスは、そのまま有希の身体を片手で抱き上げて王座にまで戻り、イ
スに座ると自分の膝の上にその身体を下ろした。
 「あっ、あのっ」
まるで子供のような格好に羞恥を感じ、有希は必死にアルティウスの手から逃れようとしたが、アルティウスはその手の力を
弱めずに、鋭い視線をシエンにに向けた。
 「この者が【異国の星】。しかし既に私の腕の中にいる。その意味は分かるな」
手に入れようとしても無駄だと言外に言っているのだが、一国の代表として乗り込んできているシエンも簡単には引き下が
らない。
 「いかような手段で手に入れられた?」
 「そなたに言う必要はない」
 「言えないような卑劣な方法とか?」
 「・・・・・っ!」
 思わず腰の剣に手をやろうとしたアルティウスを、有希は慌てて押し止めた。
何を言い合っているのかまだよく分からないが、2人の雰囲気がどんどん険悪になっていくのは分かった。
有希の世界とは違い、人を殺すことの出来る武器を持っているので気が気ではない。
(王様も王子様もどうして喧嘩腰に話すんだよ〜)
 2人を早く引き離した方がいいだろうと、有希はアルティウスの顔を見ながら言った。
 「わたし、はなす、だめ?」
 「王子と話したいというのかっ!」
 「だ、だって、はなし、ききたい。だめ?おねがい」
 「ユキ・・・・・」
 本当なら自分以外の人間に目を触れさすのさえ我慢がならないというのに、言葉を交わすと言われてすぐ頷けるはずが
なかった。
しかし、縋る様に自分を見つめてくる有希の願いを無下に断ることも出来ない。
 「ここで話せばよい」
 それが最大の譲歩だとアルティウスは怒った様に言うが、元の世界に帰る方法を聞きたい有希はとてもここでは話せない
と首を横に振る。
 「だめ、ふたり、はなし。おねがいっ」
 「ならぬ!」
 「おねがい!」
 アルティウスの腕の中からすり抜け、その場に跪いて頭を下げる有希。
 「・・・・・っ!」
いたたまれなくなったアルティウスは有希の姿から目を逸らし、怒りを押し殺した声で言い放った。
 「2人は許さぬ!誰か必ず付けるように!」



 謁見の間の奥まった場所。そこは各国要人との特別な会見の時に使う部屋で、出入口の扉以外に窓は一切なく、逃
げ出すことなど出来ない構造になっている。
有希はディーガに頼むと、シエンと3人で部屋に入った。
 「むりさせて、こめんなさい」
 「いいえ、私もあなたと2人でお話をしたかった」
 シエンはチラッとディーガを見る。
 「彼は?」
 「せんせい。やさしい、おせわなてる、いいひと」
 「私のことは空気とお思い下さい。お2人の会話を邪魔することは致しません」
 「せんせ、うそつかない、たいじょぶ」
 有希の話し方はたどたどしく、幼い子供のようで、シエンの頬には自然と笑みが浮かんだ。
 「伝説のかの人がこれ程可愛らしい方とは・・・・・無理を承知でお伺いして良かった」
 「わたしも、あえて、うれし」
 にっこり笑う有希を見つめるシエンの青い瞳は、熱い思いを含んで深く輝く。
しかし、有希はシエンの心に芽生えた想いなど全く気付かないまま、ずっと聞きたいと思っていたことを口にした。
 「もとのせかい、かえりたい、ほうほう、してる?」