蒼の光   外伝




蒼の引力




27

                                                           ※ここでの『』の言葉は日本語です






 「ふぐっ、うっ、うんっ」
 身体の中から愛撫されている。
それは普通ならば経験しない感覚なのだろうが、大きなシエンのペニスを受け入れるためには、ここをこうして解してもらわないと切
れてしまうかも知れないということは蒼も分かっていた。
 本来、受け入れることなどないはずの場所。自分では見ることは出来ないが、想像したとしても、とても入るわけがないと思う。
だが、毎回、シエンは蒼が自分から入れて欲しいと訴えるまでトロトロに身体を蕩かしてくれて、気付けばきついながらもそれを根
元まで受け入れている。
(で、でも、やっぱ・・・・・っ、慣れ、ないっ)
 何度こうして愛撫を施してもらっても、意識が飛ぶまでは羞恥心は消えることがない。
それでも・・・・・その羞恥を耐えてでも、シエンを受け入れたいという強い思いが蒼にはあった。男である自分がここでしかシエンを
受け入れることが出来ないのならば、そのための準備は当然しなければと思う。
 「くぅ・・・・・うっ・・・・・んっ」
 「ソウ、痛みがありますか?」
 「・・・・・な、い」
 嘘ではない。たっぷりの香油と、慎重な指先の動きは蒼の内面を傷付けることはなかった。もちろん、圧迫感や異物感は当然
あるし、なにより恥ずかしさは時間が経つごとに強まってくるが。
 「もっ、い・・・・・よっ」
 「駄目ですよ、まだ・・・・・」
 「はや、くっ」
 早く、シエンを中で感じたい。欲しいと思っているのはシエンだけではないのだと教えるために、蒼は身体の中にある指を意識し
て締め付けた。




 指はまだ2本しか入っていない。3本目を入れようとした時、蒼の眉間には皺が寄っていて、シエンはまだもう少し時間が掛かる
だろと思っていたくらいだが、蒼自身は欲しいと訴えてくる。
 「ソウ・・・・・」
 「・・・・・ね、が・・・・・っ」
 どんなに念入りに前戯をしても、受け入れる側の蒼の身体には負担が掛かる。それを少しでも軽くしたいというのがシエンの思
いだが、蒼が欲しいと訴えるこの時に抱かないというのはどうだろうか・・・・・?
 「・・・・・力を抜いてください」
 欲しいと思っているのは自分も、蒼も一緒だ。シエンは痛みを耐えてでも早く受け入れたいと思ってくれている蒼の気持ちに応
えようと思った。
 蒼は身体から力を抜くために、何度も浅い呼吸を繰り返し始める。まだ中に入れたままの指への締め付けは、その深呼吸ごと
に和らいできた。
 「・・・・・っ」
 シエンは時期を見計らって指を引き抜くと、そこに自分のペニスの先端を宛がう。
既に濡れて、完全に勃起しているそれを押し込めば蒼にはかなりの負担だろうし、傷付けてしまう可能性もあったが、シエンはこ
こで悩むのは止め、片手で蒼の手を握り締め、片手で浮かび上がる腰を掴んで、そのままぐっと先端を押し入れた。
 「んああっ!」
 蒼は叫んだ。やはりまだ十分に蕾は解れてはおらず、相当な負担が細い身体に掛かっていることが分かったが、蒼は止めて欲
しいとは言わず、唇を噛み締めて痛みに耐えている。
 「・・・・・っ」
 可哀想だと思う。本当なら、このまま身体を引くことが優しさなのではないかと思ったが・・・・・自分の肩に爪が食い込むほどに
強くしがみ付いている蒼の想いを考えれば・・・・・いや、シエンは自分自身が今ここで蒼の身体を解放することが考えられなかっ
たのだ。
 「あ・・・・・あぁ・・・・・っ!」
 「ソウ、ソウ・・・・・っ」
 「シ、エン、シエン、シエン・・・・・ッ」
 うわ言のように自分の名前を呼び続ける蒼に愛しさはさらに増し、シエンは痛みを長引かせないようにと先端の太い部分を一
気に突き入れた。
 「!!」
 「・・・・・っ」
 痛みを感じるほどの締め付けが自分のペニスを襲う。しかし、蒼はこれ以上の衝撃と痛みを感じているのだ。シエンは奥歯を噛
み締め、その強烈な締め付けに耐えた。




 ピリピリとした痛みを尻に感じた。
強引に中に押し入ってきた熱くて太いものの脈動が自分の身体に直に響いてくる。
 「・・・・・ううっ」
 少し、身体が深く倒され、蒼が低く呻いた。しばらくして、シエンのホッとしたような声が聞こえる。
 「傷付いてはいないようだ」
 「・・・・・っ」
それがどこを指しているのか、想像すると蒼はカッと顔が燃えるほど熱くなる気がした。シエンの綺麗な空の色の目は、今自分の
一番恥ずかしい場所を見ているのだ。
(か、隠し、たいっ)
 ジロジロと見られて(そんなつもりはないだろうが)いい場所でもないので、蒼は何とか身体の位置を変えようと身じろいだが、そ
れは返って中のペニスを刺激する結果になってしまい、ドクンと脈打ったペニスがますます嵩を増して内壁を突いてきた。
 「うぁ・・・・・ぁっ」
 痛い、苦しい、熱い。
しかし、その感覚も、シエンが動かずに馴染むのを待っていてくれている間に少しずつ変わってくる。
 「シ・・・・・」
 「ソウ?」
 気遣うシエンの声がすぐ側で聞こえる。
蒼は涙で潤んだ目を、自分を見下ろす青い眼差しへと向けた。




 「ム、ムズムズ、する、よ」
 「ソウ・・・・・」
 自分の身体の中の変化に戸惑い、助けを求めるように、蒼は震える手を伸ばしてきてシエンの腕を掴んだ。
その表情の中に僅かながら快感を拾う様子が見てとれたシエンは、ようやくゆっくりと腰を動かし、まだ先端部分だけしか入ってい
なかった自身のペニスをさらに奥へと沈めていく。
 「ん・・・・・っ」

 グチュ

 香油と、自分のペニスから漏れた液の力で、本来蒼の蕾の許容量以上のものを、淫らな水音と共に中にねじ込んでいくと、内
壁はきつい抵抗を示しながらも、一方では柔軟に受け入れてくれた。
 もう何度も行ったか分からないこの行為。それでも、そのたびに厳粛な気持ちになれるのは、こんな蒼の身体の反応もあってか
もしれない。
 「んっ、んっ、あっ、・・・・・っ」
 健康的に日焼けしている肌。
一方で、痩せ過ぎだと思ってしまいそうなほどに細い身体。
自分の身体の下で身をくねらせて喘ぐ姿は、普段の明るく元気な蒼のもう一つの顔、欲情に溺れた淫靡な姿で、シエンは自分
しか見ることの出来ないその艶姿に思わず目を細めた。
(愛らしい・・・・・)
 愛しくて愛しくて仕方がない。この気持ちは何度蒼を抱いても、満たされることはないのかもしれない。
 「はっ、んはっ、シ、シエッ」
 「ソウ・・・・・ッ」
長く耐えることも出来ず、シエンはぐっと最奥を突いた拍子に精を吐き出した。ドクドクと、しばらく抱き合うことが出来なかった間の
分も合わせるかのような大量の精を、全て蒼の身体の中に浸透させるかのように、シエンはその間も一向に萎えないペニスで、内
壁をグチュグチュと突き続けた。




 「んあっ、あっ、あっ」
 逞しいシエンの腰に跨る格好になった蒼は、その腹に手を付いて動いていた。
いや、蒼自身はもう自分自身で動くことも出来ず、シエンが下から腰を突いてきているのだ。
 「んっ、もっ、もうっ、や、め・・・・・よっ」
 自分が3回、イッたことは覚えている。シエンも自分の身体の中に2回ほど吐き出し、そのままペニスは抜かれずに、吐き出した
精液と共にさらに内壁をグチャグチャに掻き回されて・・・・・いったい、お互いが何度射精したのか、蒼はもう覚えていなかった。
 ただ、繋がったままの下半身の下にある敷布はビショビショに濡れていて、擦られ続けている肛孔は痺れを感じてきている。
蒼はもう止めて欲しいとシエンに訴えた。
 「ま・・・・だ、足りない、のにっ?」
 整ったシエンの涼やかな容貌が、今は淫蕩な笑みを浮かべている。
(お・・・・・れも、おな、じ?)
多分、自分も、このシエンと同じような表情をしているのだろうと思う。気持ちよくて、感じ過ぎて・・・・・でも、そろそろ身体も限界
だった。
 「シエ・・・・・ッ」
 「・・・・・っ」
 「お、俺、も・・・・・っ、お腹、い・・・・・っぱ・・・・・っ」
 もう入らないよ・・・・・・そう言った途端、再び内壁を突いていた中のペニスが膨らみ、
 「くぅ・・・・・っ」
ビシャッと、中に熱い精液が撒き散らされる感触がする。ああっと喘いだ蒼は、そのままシエンの身体の上に倒れこんでしまった。
 「シ・・・・・」
 「もう、終わります」
 「ほ・・・・・と?」
 「本当は、もっとソウが欲しいけれど、今日はもう疲れているでしょうから・・・・・」
 体力が戻ったら、今度は満足するまで付き合ってくださいと言うシエンの言葉に思わず腰が震えてしまったが、そのシエンの口調
は笑みを含んだもので、多分・・・・・自分をからかっているだけなのだろうと思う。
 「う・・・・・ん・・・・・まか・・・・・せ・・・・・」
本当は、自分だってもっとシエンが欲しいのだ。体力が戻ったら、今度はシエンが止めようというまで甘えてやると思いながら、蒼は
そのまますっと眠りに落ちてしまった。




 「ソウ?」
 終わったというシエンの言葉に安堵したのか、蒼はすとんと眠りに落ちてしまったようだ。
まだペニスが身体の中にあるというのにと、シエンは苦笑しながらようやく腰を引く。ニュルッと引き出したペニスと肛孔の間には精液
の糸が引かれ、直ぐに慎ましく閉じられた蕾からも、じんわりと中から掻き回されて泡立てられた精液が滲み出てきた。
 「・・・・・」
 汗ばんだ蒼の額の髪をかきあげてやり、そっと口付けを落とすと、シエンはそのまま寝台から立ち上がった。蒼を気持ちよく寝か
せてやるためにも、中の始末をしてやらなければならないだろう。
 普通こういう後始末は召使いがやるものだが、シエンは抱いた直後の艶やかな蒼の姿を見せたくはなかったし、誰にも触れさせ
たくはない。
 久し振りの情交で無理をさせてしまったかとも思うが、紅潮した蒼の頬には僅かに笑みが浮かんでいて・・・・・きっと許されたの
ではないかと勝手なことを思う自分に呆れてしまった。
 「・・・・・帰ってきた」
 安心して身体を重ね、眠ることが出来る場所。
シエンはようやく、自分達がいるべき場所に戻ってきたのだと思い、深い安堵の溜め息をついた。