蒼の光   外伝3




蒼の再生






                                                           ※ここでの『』の言葉は日本語です






 この甘い身体に触れなくなってどのくらい経っただろうか。
もちろん、どんなに忙しくても蒼の寝顔を一目見るようにと心掛けてはいたし、薄く唇を開いて眠るそれに自身の唇を重ねたこと
はあったが、熱い交歓は久しくなかった。
 「ソウ」
 寝台にそっと身体を下ろし、前髪をかき上げてやりながら名前を呼ぶと、照れたような、それでいて嬉しそうな顔で自分を見返し
てくれる。素直な感情表現が好ましく、もっともっと蒼の表情の様々な変化を見たくて、シエンは蒼が身にまとっていた衣を脱がし
た。
 「・・・・・ここは?」
 「え?」
 「傷が出来ています」
 「傷?・・・・・いつできたんだろ?」
 本人はまったく自覚がないようで、シエンに指摘された肘の辺りを見ている。
日々、政務だけでなく、時間があれば王宮の中を忙しく駆け回っている蒼は気付かないうちに負傷したのかもしれないが、既に
薄くなりかけていたその傷に気付いたのが今であることにシエンは眉を顰めた。
 愛する者が傷付いた時、一番側にいなければならなかったはずなのに・・・・・。そう思いながら、シエンはそこに唇を押し当て、
舌で癒すように舐めた。
 「・・・・・っ」
 敏感な蒼は途端に身体を震わせ、困ったように見上げてくる。
 「な、舐めないでよ」
 「どうしてですか?」
 「ど、どうしてって・・・・・くすぐったい」
そう言って視線を逸らした蒼の頬が赤い。鮮やかな表情の変化にシエンは笑い、もう一度同じ場所を舌で舐める。
 「シ、シエン!」
 「すみません。最近ソウに触れていないので、こう見えてもとてもあなたに飢えているんですよ」
 「う・・・・・」
 こんなふうに舐めて傷が完治すればいい。いや、出来れば怪我などしないように王宮内で生活をしてもらえればいいのかもしれ
ないが、大人しい蒼は蒼ではないような気もする。
(私が、きちんと見守っていればいいだけかもしれない)
 生まれた世界よりも、自身と共に生きることを選んでくれた蒼だ。彼にとって自由で、生きやすい環境を作ってやることこそが自
分の使命だと思い、シエンは自分よりも華奢な身体を更に深く抱きこんだ。
 「ソウ」
 「・・・・・んっ」
 「ソウ・・・・・」
 愛しさを舌の上に乗せ、シエンは何度も何度も名前を呼ぶ。
 「・・・・・ソウ」
 「・・・・・こ、こ、いる、よ」
それに答えてくれる言葉が落ちてきて、シエンはハァと深い息をついた。
 今日、誘ってくれたのは蒼かもしれないが、飢えていたのは自分の方が重症だ。その証拠に、触れなくても下着の下から押し上
げてくるペニスの勢いに、蒼が知ったらどんな表情をされるだろうか。




 小さな傷なんてまったく気付かなかった。
痛みも感じたかも分からないようなものを、こうしてシエンが気付いてくれるのが嬉しい。
(俺のこと、ちゃんと見てくれているってことだもんな)
忙しくて仕方が無いだろうに、そんな気遣いをちゃんとしてくれる。愛されていると深く実感できて、蒼はテレくささをごまかすようにシ
エンに抱きついた。
 「ソウ、少し離れてくれないと可愛がってあげられませんよ?」
 隙間がないほどに密着したせいで、苦笑しながらシエンが言う。可愛がるというのがどういった行為なのか、頭で考えるよりも先に
身体は分かってしまったようで、蒼は、
 「・・・・・っ」
(お、俺っ?)
シエンの腹に少し勃ち上がってしまった自分のペニスがあたったのが分かって、焦って腰を引こうとしたものの、ベッドに阻まれて容易
に動くことが出来なかった。
 「ぅ・・・・・っ」
 シエンに気付かれる前にどうにかしなければと焦るほど、ペニスは足にこすり付けられてしまい、その質量はどんどん増していく。
こんなことでと、我慢が利かない自分の身体を後ろめたく思っていると、クスッと頭上で笑われる気配がした。
 「ソウ」
 「だ、だってっ、だって、ひさしぶりだし!」
(お、俺だって、こんなに直ぐに・・・・・っ)
健康な若い男だったら、好きな相手に発情したって仕方が無いといいわけをする前に、少し体勢をずらされた蒼は自身の太股に
熱く濡れた感触に気付いた。
今の自分と同じ状況・・・・・そう思い、蒼は無意識のうちにシエンを見上げてしまう。
 「久し振りですからね」
 「シ、シエン」
 「早く、あなたを味合わせてください」
 「・・・・・っ」
(は、恥ずかしいこと言わないでよ!)
 どこまで本気なのか、もしかしたら蒼をからかうためなのかもしれないが、蒼は軽くシエンの肩に額を押し付けると、身体から力を
抜く。
好きだから、こんなふうに感じたっていいのだ、そう自分に言いきかせて、蒼は自分からも目の前のシエンの首筋に唇を押し当てた。

 「ん・・・・・あっ」
 大きな手が、ペニスを優しく包み込む。
滑りよく擦られるのが恥ずかしく、蒼は何とか太股をすり合わせてシエンの手の動きを遮ろうとした。こうして触られるのが嫌なので
はなく、誘ったのが自分の方なのでリードも自分がしたいという男の見栄のせいだった。
(う、上手いんだもんっ)
 蒼の感じる場所をすべて把握しているシエンの愛撫は的確なので、このままでは先に一度イかされてしまいそうだ。それは絶対
嫌だと、蒼はシエンの胸に片手を付いた。
 「・・・・・」
 その行動を拒絶と取ったのかどうか、シエンのペニスを弄る手の動きが勢いを増す。
 「んんっ」
口からついて出そうになる嬌声を噛み殺そうとすれば、シエンがキスをしてきた。
直ぐに唇を薄く開くと、シエンの舌が中に入り込んで、蒼の呼吸まで奪うように舌を絡め、強く吸ってくる。
 「ふ・・・・・っ」
 意識がキスに向かうと、自然に足からは力が抜けてしまい、先程よりももっと奥にシエンの手が侵入するのを許してしまった。
 「んぅっ」
あの、長く綺麗な指先が、ペニスの下の双玉を弄んでいる。
直接的な快感が高まってしまい、蒼はもっと強烈な刺激が欲しくなった。




 グチュ チュク

 ペニスから滴り落ちる先走りの液をたっぷり指先に絡めながら、シエンは蒼のそれを巧みに弄っていた。
最近は確かに抱き合うことがなかったものの、蒼を手に入れてからこの身体は飽きることなく抱いてきた。抱くたびに自身の手に馴
染み、感じやすくなっていくのをどんなに嬉しく思っていたことか。
 身体はシエンの愛撫を直ぐに思い出してくれ、ゆるりと弛緩し、受け入れてくれる。
(本当に、愛らしい)
こんな言葉を言えばきっと怒ってしまうだろうが、シエンは本当にそう思いながら蒼のペニスに顔を埋め、口に咥えた。
 「シ、シエンっ?」
 それまで快感に流されるままだった蒼が、突然の刺激に焦ったように肩に手を置いて引き離そうとしてくる。だが、シエンは口から
ペニスを出さず、舌を絡めて刺激してやった。
 零す蜜さえ甘く感じる蒼のそこは、ビクビクと口の中で面白いように跳ね、更に大きく膨らんだようだ。
竿を食み、先端部分を指先で刺激しながら、シエンはもう片方の指先を双丘の奥へと滑らせた。
 「んあっ!」
 「ソウ、力を抜いて」
 「で、でも、でもっ」
 「ここを解さないと、私を受け入れられないでしょう?」
 小柄な蒼の蕾はやはり小さく、根気良く慣らし、香油を塗りこまなければなかなか自身を咥え込むことが出来ない。
もちろんそれを手間などと思うことは無く、むしろ徐々に蕩けていく蒼の表情を見るのが楽しみだった。普段、太陽の陽の下が似
合う健康的な蒼が、自分の腕の中で妖艶に変化する。
それを見るのも、そうさせることが出来るのも自分だけに与えられた特権だと、シエンは蕾の周りを何度も指先で撫で摩り、少しず
つ少しずつ、爪先を挿入していった。
 「・・・・・っ」
 目の前の内腿が引き攣る。
痛みを感じたのか、何時もより少々性急な自身の行動を反省するが、シエンも久し振りの情交に逸る気持ちを抑えることは出
来なかった。
何より相手は最愛の人なのだ。
(少し、痛みを感じさせてしまうかもしれないが・・・・・)
 その痛みを紛らわすよう、蒼のペニスへの愛撫をもっと深める。

 ジュク

唾液と、先走りの液を絡めて舌で竿を鍛える。
 「やっ、はっ、んんっ」
 頭上で、切ない嬌声が聞こえた。
痛み以上の快感を拾い上げてくれていると、シエンも安心して蕾を穿つ指の動きを大胆に変えた。




 身体の中をグチャグチャにかき混ぜられている。
シエンを受け入れる前、必ずこうして慣らしてもらわなければならなかった。男の身体で受身になるから仕方が無いとはいえ、何
だかこの間がとても居たたまれない。
(で、でも、自分じゃ出来ないし・・・・・っ)
 自分の手を伸ばし、指先でそこを解す姿を想像して・・・・・いや、その前に慌てて打ち消した。シエンには申し訳ないが、やは
りこれは彼にしか頼めない。

 クチュ ピチャ

 いつの間にか香油を垂らしていたのか、水音が部屋の中に響いた。
(こ、この格好〜)
これが何の音なのか、目に見えなくても十分想像が出来て、蒼はどうしようかと視線を彷徨わせてしまう。
寝台に寝そべり、両膝を立てた状態。その足は当然閉じられてはいない。
シエンはその下半身に顔を埋め、いまだペニスを口で愛撫しながら、そのもっと奥を指でかき回して・・・・・。自分の身体の変化
をつぶさに見られているはずだ。
 みっともないと、思われていないだろうか。
男のくせに淫らだと、呆れてはいないだろうか。
そんなことを考えていると、
 「ひあ!」
身体の中を穿つ指の数が増えたのに、唐突に気がついてしまった。
 「ソウ、こちらに集中して」
 「シ、シエ・・・・・ッ」
 こちらというのは、ペニスなのか、それともそのもっと奥か。
 「シ、エン、も、い、よっ」
これ以上の羞恥を感じるよりは、多少の痛みを感じた方がいい。
 「ソウ」
 「だい、じょぶ・・・・・っ」
 どんなに慣らしても、羨ましいくらい逞しいシエンのペニスが挿入される時は痛みを感じてしまう。
だが、その痛みは同時に、シエンの全てを自分に預けてもらっているという歓喜も感じさせてくれるのだ。
 「はや、く!」
 再度ねだると、シエンがようやく身体を起こしてくれた。そして、クチュリと舌を絡める濃厚なキスをされる。
(・・・・・苦い)
これが何の味かなど、考えるのは止めた方がいい。
生理的に滲んだ涙のせいで霞む視界。蒼がそっと目線を動かすと、その先にシエンの姿が見える。彼の下半身では逞しく滾っ
たペニスがあって・・・・・蒼はコクンと唾を飲み込んだ。