蒼の光   外伝2




蒼の運命




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                                                           ※ここでの『』の言葉は日本語です






 蒼の顔が僅かにだが引き攣った。
それが自分の言葉のせいだとは分かっていても、シエンは言葉を繕うことはしない。今言った通り、シエンも蒼と共に快楽を感じ合
うつもりだからだ。
 「ソウ」
 名前を呼ぶと、蒼はオズオズと手を伸ばしてくる。しっかりと自分の服の胸元を握り締める小さな手に自分の手を重ねながら、シ
エンは白い首筋に唇を落とした。
 「・・・・・っ」
 くすぐったいのか、それとも感じるのか。途端にピクッと蒼の肌が粟立つのが分かる。
素直なその反応はシエンにとっては好ましく、目の前の身体が自分の手で開かれていくのだという実感を感じた。
(本当に・・・・・愛らしい)
 普段は健康的で、生命力に輝いている蒼だが、自分の身体の下にいるこの時はとても艶っぽく、しなやかな身体を惜しげもな
く晒してくれる。
それが自分の前だけだと思うと、それだけでシエンの気持ちは高まった。
 「そう言えば」
 「え?」
 「ヒューバードと剣を交えている時のあなたはとても輝いていて、眩しくて仕方が無かった」
 「・・・・・シ、エン?」
 蒼のことを考えたならば、あの時直ぐにでも自分は止めに入るべきだったのに、真剣な表情で、自分よりも遥かに体格の良いヒュ
ーバード相手に一歩も引かずに向き合っていた蒼があまりにも眩しくて、シエンは止めるより先に見惚れてしまっていた。
 蒼は、自分がただ守るだけの存在ではなく、きちんと自分の足で立ち、ちゃんと目の前の困難に向き合うことが出来る男・・・・・
そう、自分と同じ男だと強く感じた。
 「・・・・・」
 眼下にいる蒼は、急に黙ってしまった自分を不安そうに見つめている。きっと、こんな表情を見せてくれるのは自分だけだと、シエ
ンはふっと目を細めて笑った。




 シエンの声が少し濡れているような気がして、蒼はどうしたんだろうと思った。
自分の言葉や態度が、何かシエンの心を揺さぶる結果になってしまったのだろうかと心配になったが、そんな蒼の不安とは裏腹に、
キスをしてくるシエンの表情はとても穏やかだ。

 チュッ チュッ

 何度も触れるだけの軽いキスを交わしているうち、目が合うと思わずお互い笑ってしまう。
 「シエン」
 「ソウ」
 「・・・・・エッチ、しよっか」
 「身体を繋げましょう」
また笑ってしまった。誘いの言葉も自分達は全く違うが、お互いに向き合っている感情は同じだと信じたい。
 「大好き、シエン」
こみ上げる感情のままそう言うと、シエンは苦笑しながら偶然ですねと返してくれた。
 「私も、あなたを愛しています。あなたを愛し、愛されることが出来て、幸せで・・・・・たまらない」

 ここが、王宮の自分達の部屋でないことは分かっている。それでも蒼はもうシエンに抱かれることを躊躇わなかった。
温かいシエンの胸に抱かれ、熱い熱を身体の奥深くで感じたい。改めて感じる想いの深さをお互いに分け合うために、ここで抱き
合うことは必然のように思えた。
 「ふ・・・・・ぅ」

 クチュ

 重ねるだけだった口付けは、もうお互いを貪るものへと変化していた。
蒼は自分からもシエンの舌に積極的に自分の舌を絡め、口の中に入ってきた唾液を嚥下する。
(キスだけじゃ・・・・・足りないよっ)
 身体を重ねることに慣れた蒼の身体は、戯れるようなキスだけでは満足しなかった。そのままシエンの服に手を伸ばし、引っ張る
ようにして脱がそうとする。
 「ソウ」
 「ちゃ、ちゃんと、素肌で感じたいっ」
 服越しの体温ではなく、お互いの肌を重ねたいと訴えると、シエンはなぜか一瞬眉間に皺を寄せると、いきなり蒼の服を引き破
る勢いで脱がした。
 「シ・・・・・ッ」
 「あなたに他の男が触れた仕置きを、ソウ、この身体で受けてもらいますよ」
 「し、しおきって・・・・・」
(お、俺が、セルジュとキスしたから?)
 シエンという伴侶がいるというのに、その唇を簡単に(あくまでも不可抗力だが)許してしまった自分のことをシエンは許してくれな
かったのか。
 「シエンッ、ごめ・・・・・っむうぅっ」
 謝罪の言葉は、シエンの口の中に消えていき、そのまま蒼は何時もとは違う荒々しいシエンの手によって快楽の波に落とされて
しまった。




 衣に隠れ、陽を浴びていない部分の蒼の身体は眩しいほどに白いままだ。
(ここには触れていないようだな)
蒼が自分に嘘を付くわけがないと信じているものの、それでも、もしも身体を征服されてしまったら、それを押し隠す可能性はある
かもしれないと思った。しかし、蒼の身体は綺麗なまま、自分が王都で最後につけた赤い口付けの痕さえも消えていた。
 「・・・・・」
 心臓の直ぐ側に唇を寄せて強く吸うと、直ぐに新しい赤い印が出来る。他人の目にも分かる、この身体が自分のものであるとい
う印に思わず笑みを浮かべたシエンは、そのまま唇をずらすと、小さな淡い色の乳首を口に含んだ。
 「ひゃっ」
 突然の刺激に驚いた蒼が胸を突き出す格好になってしまい、シエンは慎ましやかなそれに歯を当て、もう片方には手を伸ばす。

 チュク チュッ

歯で甘噛みし、舌で舐めねぶり、強く吸ってやると直ぐに乳首は存在感を示すように立ち上がった。素直な反応にシエンは今度
は反対側の乳首に刺激を与え、先ほど舐めて濡れた乳首を指で摘んで捏ねてやる。
 「・・・・・」
 胸への愛撫を始めて間もなく、シエンは腹に濡れた感触を感じた。
たったそれだけの刺激で勃ち上がった蒼のペニスを、わざと腹で擦るようにしてやると、
 「んっ・・・・・く・・・・・っ」
蒼は声を出さないようにと唇を噛み締めていたが、それでも鼻から抜ける吐息は漏れてしまうようだ。
 「ソウ、声を出して」
 「・・・・・っ」
 「ソウの声が聞きたい。私の手に感じているソウの声を」
 「ば・・・・・かっ」
 頬を上気させて睨んでくる蒼の顔は壮絶な色香を纏っている。
罵声も甘く感じるとは、自分も相当蒼に傾倒しているなと苦笑を漏らすと、その息が肌を撫でて・・・・・蒼は身を捩って、さらに強
く自身のペニスをシエンに押し付けてきた。
 「んっ、はっ」
 「・・・・・」
 先ほどのキスでも随分高まっていた様子を見せていたが、その余韻のせいか胸だけの愛撫で蒼は精液を吐き出してしまいそうに
なっている。一度、先に吐かせてやる方がいいかもしれないと、シエンは手を伸ばしてすんなりとしたペニスを握りこんだ。
 「シ、エン!」
 「ほら、自分でも動かなければ」
 「や、や・・・・・っ」
 「ほら、私だけがこうして擦るだけでいいのですか?」
 耳元で囁きながら、シエンは蒼のペニスを何度も擦った。
先走りの液で濡れたペニスはグチュグチュと淫らな音をたて、シエンの手の中でビクビクと震えている。先端部分を爪先で刺激して
やるとさらに高い声をあげ、蒼は両手でシエンの肩にしがみ付いた。
 「んあっ、はっ」

 チュク グチュ

 シエンの手の中でどんどん育っていくペニスは、もう精を吐き出しそうに膨らんでいる。
 「ソウ・・・・・愛してる」
 「!」
耳の中に舌を差し入れながら低く囁いてやると、蒼はそのままシエンの手の中に熱い精液を吐き出していた。




 「はぁ、はぁ、はぁ」
 狭い部屋の中に、自分の荒い喘ぎ声が響いている。
(・・・・・っそ、イッちゃった・・・・・)
シエンに触れられるのはとても気持ちがいいし、大好きな人とのセックスで感じてしまうのは当たり前だと割り切っているつもりでも、
なんだか自分だけが感じ過ぎているようで恥ずかしい。
 「・・・・・」
 シエンは上半身は既に服を脱いでいるものの、下半身はまだ身に着けたままだ。全裸の自分との対比を人に見られるわけでは
ないが、早く同じ熱を分け合おうと、蒼はすっかり力が抜けてしまった身体に何とか気力を込めて、ノロノロとシエンの下半身へと
手を伸ばした。
 「ソウ?」
 シエンの声が少し驚いたものに聞こえたが、蒼は手を止めることなく、ゆっくりと服の上からペニスを刺激し始めた。
 「ソウ、手を」
 「俺、も」
 「・・・・・」
 「俺も、シエンを感じさせる」
セックスは2人でするもので、自分だけが一方的に快感を吐き出したらそれは自慰と同じだ。早くシエンの欲情を高めようと、蒼は
何とか手を動かし続け、やがて服の下のシエンのペニスが大きくなってきたことがその感触で分かった。
(・・・・・やっぱり、直にした方がいいよな)
 服越しのもどかしい刺激ではなく直接しなければと、蒼はシエンの服の中に手を入れようとしたが、なぜかその手を掴まれてしま
い、どうして止めるのだと少しだけ眉を顰めて顔を上げた。
 「ソウがしてくれるのは嬉しいのですが・・・・・」
 「気持ち、よくない?」
 手の中のペニスは大きくなっていたが、それは自分の気のせいなのだろうか?
 「・・・・・いいえ、とても気持ちが良くて」
 「・・・・・」
 「そのまま、ソウの手を汚してしまいそうだったので」
 「・・・・・なに、それ」
蒼のペニスには直に触れ、その精液を自分の手で受け止めたくせに、蒼に対しては妙な遠慮をしている。
何だか・・・・・悔しい。
 「ソウッ?」
 蒼はようやく身を起こすと、そのままシエンの胸を突いて腹の上に這い上がった。
 「じっと、して」
 「ソウ?」
 「今度は、俺のばん」
シエンの服を強引にずらし、半勃ちになっているペニスを引きずり出す。さすがに目の前で見るその大きさに怯えそうになったが、これ
は愛する人の分身なのだと何度も心の中で呟くと、
 「んっ」
 「ソウ!」

 ズリュ

いきなり、口の中にそれを咥え込む。勢いをつけ過ぎて喉を突いてしまい、苦しくて思わず口の中のペニスに歯を立ててしまい、頭
上でシエンが息を詰める気配がして蒼はチュルンと口からペニスを出した。
 「ご、ごめんっ、痛かったっ?」
ペニスを見ると傷にはなっていなかったものの、少しだけ赤くなっている箇所が目に入ってしまった。