蒼の光   外伝2




蒼の運命




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                                                           ※ここでの『』の言葉は日本語です






 同じ男として(その部分の差はあるとはいえ)痛みが分かる蒼は、慌ててその部分に舌を這わした。
唾をつけておけば怪我は治るという迷信を信じているわけではなかったが、少しでも謝罪の気持ちを伝えるためにも、何度も何度
も竿の部分を舐めた。
 「・・・・・っ」
 「・・・・・」
 「ソウ」
 「・・・・・シエン」
 しかし、どうやら男の生理現象を甘く見ていた蒼は、見る間にさらに勃ち上がったシエンのペニスに、どうしようかと迷いながら顔を
上げる。
そんな蒼に苦笑を向けたシエンは、色っぽい吐息をついてから蒼の頬をそっと撫でた。
 「太陽の光が似合うあなたに、こんな格好をさせる私こそが、神に罰せられるかもしれませんね」
 「え・・・・・?」
 「あなたが愛しくてたまらない。蕩けるように愛したいと思うのに、心のどこかであなたを支配し、私だけを見つめるように仕向けた
いとも思ってしまう。私は傲慢で・・・・・とても愚かな人間です」
 セックスという欲望に直結している行為をしているというのに、蒼はシエンの真摯な想いをぶつけられて気持ちが温かくなっていた。
 「俺・・・・・うれしい」
 「ソウ?」
 「俺だって・・・・・シエンを、俺だけのものにしたいって思ってるよ?」
彼が皇太子という立場で、国のことを第一に考えなければならないと分かっているが、それでも先ず自分を見つめて欲しいと思っ
ている。シエンにとって、どんな時も自分が一番でありたい。
 ただ・・・・・それが叶わないことも、蒼は当然理解していた。いや、もしも、シエンが実際に国よりも自分のことを優先してしまった
ら、それこそ蒼は彼を責めてしまうかもしれない。
 感情とは裏腹の、相反する自分の思い。多分、シエンも同じなのだ。
 「いいじゃん、2人の時は、お互いのことだけ考えよ?シエンも、俺をしばっていいし、俺も、シエンをしばる」
もちろん、それは物資的に縛るというのではなく、心を・・・・・と、いう意味だが。
 そこまで話した蒼は、今の自分達の格好を改めて思い出した。
自分は素っ裸に近い格好で、シエンは下半身を寛げた姿で。その上、自分は勃起したシエンのペニスを手に掴んでいる。
 「・・・・・俺達って、マヌケ」
 「マヌ、ケ?」
 「なんだか、おかしいってこと。こんなことしてるのに、真剣に話しちゃって」
 「ああ・・・・・そうですね」
 蒼の言いたいことはどうやらシエンにも伝わったようで、彼も先ほどまでの思いつめたような色を目の中から消し、蒼の好きな空の
色の目を細めて笑いかけてくれた。
 せっかく、ここは2人きりで、自分達は想いを通い合わせたセックスをしようとしているのだ。重い話はしなくてもいいよなという思い
で笑い掛けると、シエンがいきなり蒼の肩を押してベッドへと沈めた。
 「シ、シエン?」
 同時に、今まで握り締めていたシエンのペニスからも手を離す結果になってしまい、これでは彼を気持ち良くさせることが出来なく
なると思っていると・・・・・。
 「すみません、我慢が出来なくなった」
 「えっ?」
 「あなたの小さな舌が這うたびに、私のものは早くあなたに入りたいと脈打ってしまう。本当は、私以外の男に唇を許したあなたに
仕置きをするつもりでしたが、どうやら私の方の我慢が効かないようです。・・・・・ソウ」
 「ひゃっ!」
いきなりの展開に戸惑う間もなく、尻の狭間に伸びてきた指先が、自身が零している先走りの滑りを利用してその部分を撫でこす
り始めた。




 自分の醜い感情さえ大きく包み込んでくれた蒼に、さらに深い愛情を感じたシエンは既に余裕を無くしていた。
そもそも、セルジュが蒼の唇に触れたことを面白くないと感じ、理不尽な感情を蒼にぶつけようとしたが、今はそれよりも早く蒼と愛
し合いたいと思った。
 「シ・・・・んんっ」
 文句を言いたそうな蒼の唇を口付けで塞ぎ、そのまま小さな、弾力のある尻を揉んだ。今からどうされるのか、蒼も分かっている
はずなのに、恥ずかしそうに目元を真っ赤にする様子が愛らしい。

 チュク     グチュ

 舌を絡める濃厚な口付けを与えながら、双丘の奥、自分を受け入れてくれる場所を何度も刺激した。
既に蒼自身が零している先走りの液で濡れていた蕾は、まだ狭く、きついながらも、シエンの指を1本飲み込む。
 「・・・・・っ」
 強い痛みは感じていないはずだが、それでも圧迫感や衝撃は感じたらしい蒼が、絡めていたシエンの舌に一瞬歯をたてた。
シエンは眉を顰めたが、宥めるように蒼の口腔内を舐めねぶりながら、差し入れた指で内壁を刺激していく。熱くうねる襞は直ぐに
シエンの指に絡みつき、強く締め付けてなかなか自由に動かせてくれない。
それでも、強引に指を曲げ、爪で引っ掛けば、
 「!」
重なったシエンの口の中に悲鳴が流れてきた。

 「・・・・・はっ、はっ」
 眉を顰める蒼の表情に、シエンは口付けを解く。
途端に大きく、浅く、何度も呼吸を繰り返す蒼に、シエンは頬や目元に唇を寄せた。
 「ソウ、そのまま力を抜いて」
 「シ・・・・・」
 「大丈夫、ちゃんと慣らしますから」
 「・・・・・ん」
 ここで身体を繋げるつもりは無かったので、蒼の硬い蕾を解す香油などは無い。
後はシエンが、蒼の身体が傷付かないように念入りに解してやるしか方法は無く、それはこの身体を味わう自分の当然の義務で
あり、蒼には言えないが・・・・・密やかな楽しみでもあった。
 「・・・・・ふっ」
 きつ過ぎる蕾も、何度も中の指で刺激していけば、僅かずつだが綻んでくる。
(そろそろ、いいか)
今入れている指に沿わせ、2本目を差し入れると、蒼が小さく悲鳴を上げてきつく眉根を寄せた。先走りの液だけでは滑りが足り
ないかもしれない。
そう思ったシエンは、躊躇わずに蒼の下半身へと頭を沈めた。




 「うわあ!」
 シエンを受け入れるためには、その部分を解さなければならないことは十分分かっているが、それでも恥ずかしい気持ちは何時ま
でも消えることなく、蒼は固く目を閉じてその行為を受け入れている。
そのせいで、何時シエンの身体が下にずれたのか、その頭が自分の下半身へと沈んだのか、直ぐには気付けなかった。

 ペチャ

 そして、感じた湿った、生温かい感触。
シエンの指を含んでいるその部分に感じる新たな刺激に反射的に視線を向けると、彼の金色の髪が自分の下半身にあった。
 「シ、シエンッ?」
 さきほど感じたものが何なのか、蒼は呆然としながらも想像がつく。
何時もは香油を使って解すことが多いのだが、それがこの場に無いので、シエンは舐め濡らそうとしてくれているのだ・・・・・それは分
かるし、今までも経験はしてきたが、やはり猛烈な羞恥は消えない。
 「お、俺っ、大丈夫だから!」
 「・・・・・」
 「シエンッ、シエン、離してっ」
 何度もそう言い、シエンの肩を叩いて訴えると、ぴちゃっという艶かしい音をたてながら顔を上げたシエンが、困ったような表情で自
分を見つめてきた。
(う・・・・・)
その綺麗な、少し薄い唇が濡れているのがなぜか。想像すれば気を失ってしまいそうに恥ずかしいが、蒼はようやく目線が合ったシ
エンに、もう大丈夫だからと言う。
 「なめなくていいからっ」
 「ですが、まだ指が2本しか入っていません」
 「そ、それでもっ、なめなくていい!」
 「あなたの我が儘は何でも聞いてあげたいのですが・・・・・私としてもあなたを傷付けることだけはしたくないんです。今回はこのま
ま、私に身を預けてください」
 「シ、シエンッてば〜!!」

 蒼の訴えも虚しく、シエンは再びあの部分へと舌を伸ばしてきた。
話している時も中を刺激し続けていた指はさらに激しく中で蠢き、蒼は太股が引き攣る感覚に襲われる。腰も、立っていられない
ほどに痺れているので、シエンンが押さえつけている手から逃れることはとても出来なかった。

 チュク グチュ クチュ

 「・・・・・っ」
(せ、せめて耳を塞ぎたいのに・・・・・っ)
 狭いそこを、水音をたてながら指でかき回す音と、唾液を塗りつけるように舌を動かしている音。
刺激に耐えるために強くシーツを掴んでいるので耳を塞ぐことが出来ず、蒼はただ幾重にも襲い掛かる羞恥を我慢するしか出来
なかった。
(ま・・・・・)
 「・・・・・くっ」
(まだっ?)
 時間がどのくらい経っているのか、感覚が全く掴めない。
それでも、何時しか下半身の圧迫感が薄れてきたかもしれないと感じた時だった。
 「ソウ」
 大好きな声が、熱を含んだ様子で自分の名前を呼んだかと思うと、

 グチュッ

 「ああっ!!」
唐突に、熱く、質量のあるものが下半身を貫いた。




 差し入れた3本の指が何とか隙間を作るまで蕾を解した。本当はまだもう少し慣らした方がいいとは分かっていたが、蒼も、そし
て自分も限界だった。
 シエンはズリュッと音をたてながら指を引き抜くと、蕾がまだ閉じきらないうちに自身のペニスの先端を宛がい、
 「ソウ」
愛しい者の名前を呼びながら、そのまま一気に腰を打ちつけた。
 「ああっ!!」
 「・・・・・っ」
 そこはさすがにまだ狭く、少しの余裕も無くシエンのペニスを締め付けてくる。しかし、自分が感じている以上の痛みを蒼が感じて
いると分かるシエンは、青褪めた顔色で挿入の衝撃に耐えている蒼の顔に何度も口付けを落とした。
 「ふ・・・・・っ」
 大きく足を広げ、上半身を屈めて口付けをする体勢は、蒼にとってはさらにきつい体勢ではあるだろう。
それでも、蒼はシエンの身体を突き放すことはせず、かえってその肩を自分からも抱き寄せるようにしがみ付いてきた。上半身も、
下半身も、これ以上ないほどに密着し、溶け合っているという現実に、シエンは至上の幸福を感じた。
 「ソウ・・・・・愛しています」
 何度も口にする言葉は、そのたびに意味を深くしている。そんなシエンの、表現するのももどかしいほどの愛情の深さを、蒼はしっ
かりと受け止め、返してくれるのだ。
 「お・・・・・れも、すき・・・・・っ」
 荒い息の中、しっかりとそう答えてくれた蒼を見つめている自分の顔は、一体どんな表情になっているだろうか。もしかしたらとても
情けないものかもしれないが、そんな自分も蒼はきっと愛してくれるはずだ。

 グチュ ズリュ

 しばらく、蒼の身体の負担を考えて動かなかったシエンも、ゆっくりと律動を開始する。その途端、内壁はその動きを責めるかのよ
うにシエンのペニスをキリキリと締め付けてきた。