あやかし奇談
第一章 物の怪の花嫁御寮
13
ここまで来て許されるとでも思っているのだろうか。
それならば、なんて巴は甘いのだろうと思う。いや、そんな浅はかな考えを持つ巴も可愛いと思ってしまう自分こそが甘いのかもし
れないが、慧はもちろん自分だけが引き下がるつもりは無かった。
そうでなくても、何時の間にか巴の信頼を勝ち得ているらしい八玖叉や、謀が上手い益荒雄から一歩出遅れている感がある
慧は、こんな時こそ自分の存在感を巴に知らしめておきたかった。
たとえそれが恐怖や痛みだとしても、だ。
「巴」
「だ、だって、キ、キスしたしっ」
「キス?」
(何だそれは?)
「口付け、接吻のことだよ、慧。今の人間界の言葉も学んだ方がいいんじゃないか?」
含み笑いをしている益荒雄は、人間の女と遊ぶことも多いからそう言うのだろうが、慧は欲望を吐き出すために人間の女を抱
いたとしても、それが終わればさっさと捨ててきた。
会話など、さして重要でもないだろう。
「・・・・・」
しかし、慧は目の前で複雑そうな表情の巴を見て、少し考えを改めなければならないかもしれないとも思った。他の人間はど
うでもいいが、巴の言葉や考えは自分もきちんと分かりたいからだ。
「巴」
「なっ、何?」
「きすとやらは確かにしたが、ここ数日お前がここに来なかった罰はまだ与えていないだろう?」
「・・・・・罰?」
「そうだ。俺達の言葉を聞かない花嫁には、それ相応の罰を受けてもらわなければならない。だがな、俺達は大切な花嫁に
傷を付けたいわけじゃないしな」
躾と思ってもいいぞと言うと、巴の肩が揺れる。
嫌がってはいないなと思った慧は、そのまま巴の唇を更に堪能しようと身体に圧し掛かろうとするが、まるでそれを邪魔するかの
ように、面前に腕が伸びてきた。
「・・・・・邪魔だ、益荒雄」
「狐と揉めた子供のくせに、最初に巴を堪能しようとするんじゃないよ」
「・・・・・っ!」
ざわっと空気が揺れる。
再び怒りで力を漲らせようとしたらしい慧だが、まだ先程の弥炬との諍いの後遺症があるのか、それは圧倒されるほどのもので
はなかった。
(だから、何時も子供扱いするんだよ)
別に、益荒雄は巴に触れるなと言っているわけではない。順番というものを考えろと言っているのだが、短気な天狗は言葉の
表面だけを聞いて怒っている。
怒らせるのも簡単だが宥めるのも容易いと、益荒雄は慧に向かって笑いかけた。
「私達の花嫁だ、共に可愛がらないと」
「・・・・・」
「そうだろう?八玖叉」
「・・・・・そうだな。将来的にはともかく、今我らは同列のはずだ。誰かが特別に巴を可愛がるのはいささか先を行き過ぎている
かもしれない」
「堅苦しい」
八玖叉らしい言い様だが、彼も結局は同じ気持ちだということだ。
将来的に、巴を完全に自分達の花嫁とした上で、1人1人が個別に可愛がるのも一興かもしれないが、今の時点で差をつけ
るのはあまりよろしくないと思う。
「さて、巴」
自分達の会話を不安そうに聞いていた巴は、声を掛けると怯えたような視線を向けてきた。
「少し頑張ってもらうよ?なにせ、こちらは3人もいるんだから」
人ではない自分達に『3人』という言い方はおかしいかもしれないが、それでも巴にとっては一番分かりやすい表現だろう。
「甘い蜜を飲ませて」
「ま、待って、益荒雄さ・・・・・っ」
「だから、どうしてお前が先に出る」
「け、慧さん、俺っ」
「巴を怖がらせるな。優しく気遣え」
「八玖叉さ・・・・・ん、助け・・・・・」
「安心するがいい巴。我はお前を慈しみながら愛でる」
「・・・・・っ」
慧が中断されていた口付けを開始したのを見て、益荒雄はささやかな存在感の乳首を歯で銜え、もう片方を爪で傷付けな
いように捏ねて摘む。
「んっ」
感じる声はそのまま慧の口の中に消え、逃げようとした足は八玖叉が掴んで、柔らかな白い太股に歯を立てていた。
(あ、あっちの方が楽しそうだな)
口の中を自在に動き回る肉厚の舌。それは巴の舌を絡めとり、口腔の中にある唾液全てを啜り上げるように音をたてて吸っ
てきた。
もう何度もされて、キスは慣れたと思っていたのに、やはりこんな濃厚なものは何時まで経っても慣れることは無い。
「ふ・・・・・んっ」
キスに意識を集中させていると、こちらを忘れるなというように乳首を軽く噛まれてしまった。
牙も爪もある益荒雄が何時自分の肌に噛み付いてくるのか分からない恐怖に怯えるものの、一方で、全く膨らんでいない胸に
与えられる愛撫に確かに快感を感じている自分に気付く。
(お、かし・・・・・よ、ど、して?)
男なのにこれほど感じるとは、もしかしたら既に自分の身体は作り変えられているのだろうか。
そんな怖さも感じて手を伸ばせば、誰かの髪に指先が触れて、とっさに縋るように握り締めてしまった。
「んあっ!」
それが合図のように、足に触れる濡れた感触。肝心な場所には触れず、足の付け根や腹の下を舐めるそれに、早くあそこを
舐めて欲しいと口に出しそうになった時、巴は無意識のうちに自分が快感を貪っていることが分かった。
「んっ、やっ、やめ・・・・・っ」
「嘘を言うな、巴。お前の唇はもうこんなに紅く熟れているぞ」
「う、嘘、だっ」
「嘘であるものか」
耳元で意地悪く言う艶っぽい声に抵抗しても。
「可愛いね、巴。ほら、胸のこの実も愛らしく育って、触れて、舐めてと私を挑発してくる。どちらも同時に舐ってやりたいが、生
憎と私の口は1つしかないんだ」
指で我慢してくれという甘い声に、違うと首を振って見せても。
「お前の愛らしい陰茎が勃ち上がっている。巴、もっともっと、その甘露を零しておくれ」
官能的に響く声が、吐息と共に下半身に触れて、巴は絡みつく長い指の感触で、自分のペニスが反応していることを悟って
しまった。
「あ・・・・・や・・・・・っ」
クチュ クチャ
耳にダイレクトに響く水音は、自分が漏らした先走りの液の音だ。
まだ大人の姿にはなりきっていない未熟な姿のくせに、こうして浅ましく勃ち上がり、快感の証を溢れさせながら、それを第三者
の手で塗りつけられているのだ。
「んっ、あっ、あぁっ」
腰が揺れてしまう。
(こ・・・・・わいっ)
自分よりも大きな手が、自分のもっとも汚い部分を愛おしげに、それでいて淫らに擦り、刺激してくる。
「んっ!」
自慰などでは到底味わえない快感に、巴はとうとう大きな手の中に快感の証を吐き出してしまった。
ピクピクと小刻みに震える腰に笑みを浮かべて、八玖叉は巴が最後まで精を吐き出すまで幼い陰茎を擦りあげてやった。
快感に弱い、幼い身体。味わうのは可哀想だと思いつつも、味わずにはいられないほどに甘い匂いを放つ身体。
鍵だから・・・・・そんな言葉で片付けられないほどに素晴らしい身体だと、八玖叉は白く濡れた指先を口元まで持ち上げて舐
めた。
「・・・・・」
(甘い)
「ずるいぞ、八玖叉」
巴の愛らしい唇を思う存分弄んでいたくせに、慧は悔しそうにそう毒吐きながら手を伸ばして八玖叉の指先を掴むと、そのまま
まだ舐めとっていない巴の精を口に含む。
「・・・・・」
「あ、2人だけ」
2人の様子を見た益荒雄が笑いを含んだ声で言い、そのまま顔をずらして巴の陰茎を口に銜えた。
「!」
手での愛撫とは違い、口腔の愛撫は更に刺激的だったのか、巴の陰茎がたちまち力を持ってくるのが見て取れた。
(そこを可愛がっているのは我なのだが・・・・・)
八玖叉は眉を顰めたものの、止めろとは言わなかった。
巴の身体は自分だけのものではなく、慧と益荒雄のものでもあるわけで、彼らがどうそれを味わおうと口出しをするべきではない
だろう。
もちろん、巴の身体を傷付けたり、必要以上に苛んだとしたら話は別だが。
(我も、まだ足りない)
そして、彼らが巴の身体を自由に出来るということは、花婿の1人でもある自分にもその権利があるということで、巴が愛らし
い声を上げるほどに可愛がるつもりだ。
「・・・・・」
八玖叉は、益荒雄が巴の陰茎に愛撫を始めたので、空いた胸元へと唇を寄せた。
一度精を吐き出した巴の身体はどこもかしこも柔らかい。
益荒雄は陰茎を口に含んだまま、その下の双玉を片手で揉み始めた。
「んあっ、はっ、い、いた、いっ」
「・・・・・」
グチュ グチュ
(嘘をついてはいけないよ、巴。痛みを感じているというのなら、こんなにも健気に震えている陰茎はどう言い訳をするつもりなの
かな?もっと、貪欲に快楽を求めればいいものを)
吐き出した先走りの液や精液、そして、自分の唾液などが陰茎から双玉を伝い、その後ろまでを十分に濡らしているようだ。
「ふふ」
益荒雄は精液で濡れた人差し指で、小さな尻の蕾をするっと撫でてみた。
「ひ・・・・・っ!」
そこは、もう十分に濡れている。
直ぐに入れてしまうのは酷かもしれないと、益荒雄は何度も、蕾の表面にヌルヌルと指を滑らせた。
「益荒雄、早いのではないか」
自分の行動に目敏く気付いた八玖叉が諌めてきた。いや、きっと巴の内部に真っ先に入ろうとする(指だけだが)自分を牽制
しているのだろうが、これは早い者勝ちだ。
3人の指を同時に入れることは、まだ初心者の巴には辛いことだろうし、それならば、一番手にはこういうことに慣れている自分
がするのがいい。
「少し待って。解れたら一緒に楽しもう」
そう言って、チラッと視線を流す。
「いいの?慧と巴、まるで恋人同士のようだよ?」
「・・・・・」
ピチャ クチャ
舌を絡ませ合い、濃厚な口付けを続けている慧は、時折弾む巴の息が蕾を可愛がられているせいとはまだ気付いていないよう
だ。
「・・・・・」
眉を顰める八玖叉に、益荒雄は心配ないよと続けて言った。
「勝手に入れたりはしないから。八玖叉は巴の可愛い陰茎を宥めてやって」
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