あやかし奇談




第一章 
物の怪の花嫁御寮














 ズボンが脱がされ、下着のみになってしまった下肢が心許ない。
こんな野外で、しかも、自分と同じ男に(妖怪を同じと言っていいのかどうか分からないが)こうして組み敷かれるなど信じられな
い。
 唇を奪う者と、胸にむしゃぶりついてくる者と、下肢に触れる者。
それぞれが、いやらしく、優しく、乱暴に、違う手や唇で触れてくるのが怖くて、どう反応していいのか分からない。
いや、反応し過ぎて・・・・・巴は自分の身体が違ったものになりそうで、とにかく伸びてくる六つの手から逃れたくて何とかしようと
思うものの、身体はもう・・・・・自由にならなかった。






 キスが上手いとは思ったが・・・・・益荒雄のキスはねっとりと、しつこく、口腔内の隅々まで嘗め回す舌はまるでそれだけで生き
ているようで、巴は息継ぎさえもままならない。
 「ふむ・・・・・ぅ」

 クチュ クチャ

 歯列だけでなく、歯茎にまでゆっくりと舌で触れ、怯える巴の舌の裏側にさえ刺激を与えてくる。飲み込めない唾液が唇の端
から頬を伝って流れ落ちてしまうが、それさえも勿体無いというように益荒雄は舌を這わせてきて・・・・・巴は舌を吸われながら、
ただ目を閉じてその波が過ぎるのを待つしかなかった。
(や、やだ、よっ)
 「あんっ、ふぐ・・・・・っ」
(キス・・・・・やだ・・・・・ぁっ)
 舌が絡まる音、唾液を飲む音。
早く解放されたくて益荒雄の胸を押しかえそうとした巴は、
 「・・・・・ひっ!」
少し強く胸の乳首を噛まれてしまい、思わず胸を逸らしてしまった。



 男の胸の乳首など、それまで全く意味の無いものだと思っていた。
それは、女の子だから意味があるもので、男はほとんど関係ない・・・・・そう思っていた自分を、巴はこの瞬間後悔していた。
 「やっ・・・・・んっ・・・・・!」
 益荒雄に口腔内を犯され続けているので、大きな声を出して拒否することが出来ず、身体を捩って逃げようとするのだが、乳
首を口に含んでいる八玖叉はそれを許さないかのように派手に噛んで、もう片方の手でたちあがってきた乳首を摘みあげる。
 「・・・・・!」
(いた・・・・・い!)
 このまま、乳首を噛み千切られそうな気がして怖い。
3人の中で一番落ち着きのある大人に見える八玖叉が、こんなにも乱暴なことをするとは思えず、巴は思わず目尻に涙が浮か
んでしまった。
 「・・・・・愛らしい」
 そんな巴の顔を見た八玖叉が小さく呟いた。思わず零れてしまったというような言葉は本気に聞こえ、巴はじっと八玖叉を見
つめる。
(や、止めて・・・・・)
 これ以上、何もしないで欲しかった。普通の男ならば感じることのない震えるような快感を、自分の身体に覚えこませて欲しく
ない。
 「んんっ」
 むずかるように唸った巴が、再度八玖叉から逃れようと身体を動かそうとすると、
 「ふぐっ!」
下半身に電気のような快感が走った。



 大きく下肢を割られていたことを、キスや胸元の愛撫から逃れようとする間に忘れていた・・・・・らしい。
そんな、他に逸れた巴の意識を自分の方に取り戻すかのように、慧は剥きだしにしたまだ大人になりきっていないペニスを乱暴
に擦り始めた。
 もちろん、自慰という行為は知っていたし、自分でもすることがあるものの、それも一週間に一度するかどうかで、自分は性欲
が薄い方だと思っていたくらいなのに、慧が少し触れただけで既にペニスは勃ち上がってしまった。
 「んぐっ」
 「お前、慣れてないな。色がまだ桜色だ」
 「!」
(なっ、何言ってるんだよ!!)
 男として、それはとても恥ずかしいことを言われているというのは分かる。ペニスの色がまだ淡い色だというのは、それだけ経験
が無い・・・・・童貞だと言っているのと同じだ。
 もちろんそれは本当のことだが、同じ男に言われたくない。
 「何だ、俺の手を濡らすものは」
 「んんっ!」
 「このままこの液をお前の肛孔に塗りつけて、俺の陰茎を突き刺してやろうか」
 「!!」
その言葉と、強引な手淫で、巴は甘い悲鳴を上げてしまった。






 手の中にすっぽりと包み込むことが出来る巴のペニスは弄っているだけで楽しい。
言葉や眼差しでは止めて欲しいと言っているが、そんな感情だけでは止めることが出来ずに流れ出ている先走りの液。
慧は躊躇うことなくそれを口に咥える。
 「!」
 反射的に身体が跳ね、その拍子に慧の喉の奥まで入り込んできペニスだが、その感触も味も、大きさも、すべてが自分の好
みだ。このまま、出来れば巴を組み敷いてしまいたかったが・・・・・。
 「なんだか、ずるいな」
 クチュッと生々しい水音をたてながら巴の唇をようやく解放した益荒雄は、巴のペニスを美味そうに口に含んでいる慧を拗ねた
目で睨んできた。
 「私もそこを可愛がりたいんだけど」
 「ふふふぁい」
 「・・・・・話す時くらい、口から出せば?」
 「・・・・・」
 ざまあみろと、もちろん口からペニスを出さないまま慧は益荒雄を睨んだ。
自分は経験豊富だと言っている益荒雄に、巴のペニスまで簡単にくれてやりたくは無かった。この素直な身体に、一番に自分
の匂いやクセを染みこませたいと思っているのだ。
 「おい、慧、聞いているんだろう」
 「・・・・・」
(何時も余裕たっぷりなくせして、こんな時に焦った芝居をしなくったっていいんだよ)
この、ペニスから零れる一滴だって、自分以外の人間に味合わせるつもりなど全く無い。それは、巴の夫候補という同列の立
場の男達も同様だった。



(全く、子供じゃあるまいし)
 自分の言葉が聞こえているはずなのに無視をし続けている慧は本当に子供としか思えない。
益荒雄は内心舌をうちながら巴の顔を見下ろした。散々味わった甘い唇は少し赤く、腫れぼったくなっていて、唾液で濡れて
いるさまは幼い表情とアンバランスで艶かしい。
 この表情をさせたのは、自分か、慧か、八玖叉・・・・・いったい、誰だろうか。
(下半身を弄るのが楽しそうなんだけど・・・・・)
愛撫する場所は決めたはずだが、唇とペニスでは・・・・・。
 「・・・・・」
 少し考えた益荒雄は、強引に巴の腕を引っ張って身体を起こした。
 「・・・・・・っ」
いきなり体勢が変わったことに、慧がペニスを咥えたまま眉を顰める。
 「・・・・・」
胸の乳首を咥えている八玖叉も、顔を上げて眼差しを向けてくる。
 「・・・・・」
 そんな2人を見てにやっと笑った益荒雄はそのまま後ろから巴の身体を抱くと、巴の両足をガバッと大きく開いてみせた。
 「!」
ペニスだけでなく、その奥・・・・・近い将来、自分を、いや、悔しいが自分以外の男も受け入れる小さな窄まりも、きっと目の前
の2人の目にも晒されているだろう。
 「益荒雄」
八玖叉の言葉に、益荒雄は楽しそうに言った。



 思いも寄らない益荒雄の行動に、八玖叉はいったい何をするのかと睨みつけた。
それぞれが何をするのか役割を決めたくせに、勝手に行動してしまうこの益荒雄の奔放さには、慣れているという以上に面白く
ない気もする。
 「・・・・・」
 しかし、それ以上に、八玖叉は目の前にある光景から目が離せなかった。
小さな小さな、薄紅色の窄まり。先走りの液か、それともペニスを愛撫している慧の唾液のせいか、その窄まりはキラキラと光っ
て、僅かに深呼吸するように動いている気がする。
 「ねえ、八玖叉、ここも可愛がってやりたいと思わないか?」
 「!」
 後ろから、益荒雄が指先で窄まりを撫で上げる。
その瞬間、慧の喉が鳴った。
 「なんだ、もう気をやったのか」
 「・・・・・」
八玖叉は、慧の喉が動くのをじっと見つめる。
 「八玖叉、ねえ、このままじゃ私達は面白くないと思わないかい?この先、もっと巴の身体を開発すれば、口付けや胸の愛撫
だけでも気をやることが出来るかもしれないが、今はやはりこの辺りを可愛がってやらなくては・・・・・ねえ」
 「・・・・・」
(何を考えてるのだ、こいつは)
 八玖叉は、たとえ決められた夫婦という関係でも、巴を愛おしく思い、慈しみたいと思っていた。だから、出来れば無理矢理
だったり、無茶なことはしたくないのだが、益荒雄の怪しい誘惑の声を無視することも出来ない。
 「・・・・・」
(巴のそこを、可愛がる?)
 「八玖叉」
 「・・・・・」
 「八玖叉、どうする?」
 確かに、考えれば慧だけが巴の下半身を弄るのは面白くは無い。慧がペニスを愛撫するのならば、自分がこの薄紅色の窄ま
りを可愛がってもいいのではないかと思う。
 「・・・・・」
 そこまで考えた八玖叉は、益荒雄が広げている震える足をそっと撫で上げ、
 「おいっ」
不満そうに声を上げる慧の言葉も無視して手を伸ばすと、息づくそこへとゆっくり指先を伸ばした。