BLIND LOVE
12
『』の中は日本語です。
既に、友春が身に纏っていた肌襦袢は肩に羽織っているだけの状態になっていて、中途半端に服が絡まっている姿は妙に扇
情的な光景だったが、当の友春は自分のそんな姿に全く気が付いていなかった。
『ああ、こうしているとお前の感じている様子が良く分かる』
『・・・・・っ』
『赤く熟れた胸の飾りも、蜜を零すペニスも。そして、私をいっぱいに頬張っているお前の慎ましやかな蕾もな』
『や・・・・・っ』
からかうような言葉に顔を隠してしまいたかったが、アレッシオの腰に跨った状態で、下から突き上げられている格好の友春は逃
げることは出来ない。
(は、恥ずかしい、のにっ)
恥ずかしくてたまらないのに、これでは自ら進んでアレッシオのペニスを貪っているように見えるはずだ。
自分の恥部を目の当たりにして、アレッシオは自分のことをどう思っているだろう。
(い、いやらしくて、みっともない、って・・・・・っ)
普段、口ではこういった行為を嫌がっているくせに、実際に身体を重ねると呆気ないほどに快感に溺れてしまう自分の身体。
アレッシオに抱かれて、自分の身体は変わってしまった。他の相手とセックスしたことがないので、それがアレッシオに対してだけなの
か、それとも自分の性質からなのかは分からないが、アレッシオ以外に抱かれる自分というものはとても想像出来ない。
『あっ、んっ、あっ』
『ト・・・・・モ』
『ん・・・・・っ』
下から腰を突き上げてくるアレッシオを見下ろす視界は涙で潤んでいる。それでも、友春は必死にアレッシオを見ようとした。
自分を抱いているのはこの人なのだと、心に、身体に、刻み付けたい。
『ケ・・・・・イッ』
手を伸ばして彼の胸元に触れると、その手を強く掴まれる。
そして、
『うぁ・・・・・あっ!』
いきなり視界が反転し、今度は自分がアレッシオに見下ろされる体勢になってしまった。
(く・・・・・るしっ)
身体の中に入ったままのアレッシオのペニスの角度が変わり、友春は痛みと快感に喉を鳴らしてしまう。自分が上になる体勢よ
りははるかにましだったが、これだとアレッシオに好きなように貪られてしまうだろう。
『あ・・・・・あ・・・・・っ』
『やはり、食われるより、食う方が私には合っている』
何をと問い掛ける前に、友春は噛み付くようなキスをされた。
根元まで咥えこませたペニスは、友春の内壁に強く絞り取られるように擦られる。
その抵抗を押し退けるように、アレッシオはペニスの先端部分まで引き出し、再びゆっくりと押し込んだ。
ズリュッ グチュッ
『あっ、はっ、んっ』
何度も何度もそれを繰り返し、時に突く箇所を変えると友春は可愛らしい声を上げる。しっかりと肩にしがみ付き、無意識に腰を
揺らす友春の姿を見ると、本当に自分のことを欲しがっているのだと感じられた。
抱いている時にしか友春の気持ちを身近に感じないというのが悔しいが、それでも何も手にしていないよりはましだ。
『ふむっ』
キスをして、舌を差し入れれば、躊躇いながらも応える友春が、自分を想っていないなどと思えない。
「トモ・・・・・」
『んぁっ』
キスを解き、腰を突きいれながら、アレッシオは苦しげに耳元で囁いた。
「愛している」
『!』
「愛している、トモ・・・・・ッ」
イタリア語で、自分の本当の言葉で、友春への愛を囁き続けた。けして、「僕も」と返してくれないことが分かっても、アレッシオはそ
の言葉を囁かずにはいられない。
何度も日本に行き、こうして友春がイタリアまで来てくれて。最初の出会いを考えれば十分満足してもいいものかもしれないが、
アレッシオは友春の全てを支配しなければ気がすまなかった。
『あっ、あっ!』
「・・・・・っ」
(こ・・・・・んなに、私を締め付けて離さないくせ、にっ!)
アレッシオの全てを搾り取ろうとするほどに中がうねって締め付けてくるくせに、その言葉だけは陥落しない友春。
後何回、この身体を抱けばいいのだろう。
何度、愛を囁けばいいのだろう。
普通の家で普通に育った友春が、イタリア人で、マフィアの首領で、その上同性であるアレッシオに愛情を抱くことはもしかしてな
いのかもしれない。
しかし、アレッシオはそんな暗闇の未来は信じなかった。自分ならば、決められた未来さえ変えることが出来ると信じていた。
それほどに、友春を愛しているからだ。
「トモ、トモ、愛してる、お前だけだっ」
何もかも手に入る自分のこの手に、最後に残るのは友春だけでいい。
それ程の覚悟を持って、アレッシオは友春に愛を囁き続ける。
「・・・・・っ」
(ト、モ?)
アレッシオのなすがまま、身体を揺さぶられていた友春の手が、肩から首へと伸びて来る。伸ばされた細い足も腰に絡み付いてき
て、友春は全身でアレッシオに抱きついてきた。
「ケ・・・・イ」
「・・・・・くっ」
内壁まで、アレッシオのペニスを強く締め付ける。
「言葉ではなく、身体で、応えているのかっ?」
「ケイ・・・・・ケ、イッ」
友春はただ、その名前を口にした。アレッシオの熱さに、身も心も焼けてしまい、本当は、そのまま何かを口走ってしまいそうだった。
しかし、それが心からの言葉なのか、それとも身体の快感から出る言葉なのか、誰かに激しく求められることが初めての友春には
判断がつかなくて、ただアレッシオの名前を縋るように呼び、しがみ付くことしか出来ない。
(も・・・・・、僕・・・・・っ)
自分に対しては怖いほど情熱的で、真摯なのに、それ以外の人間には、心が凍ってるかと思うほどに冷たい態度を取る男。
もしかしたら、もう・・・・・信じてもいいのかもしれない。
自分の一言で、彼がどんな風な表情をするのか、確かめて見たい。
しかし、それはこんなセックスの最中では駄目だと思う。アレッシオに、身体の快感ゆえと思われたくはない。
「もっと、も・・・・・とっ」
「・・・・・っ」
早く、この熱に浮かされているような時間をやり過ごし、アレッシオと向かい合いたい。
ズチュッ グチュッ ズズッ
いやらしい、水音。アレッシオのペニスが、本来受け入れる器官ではない自分の内壁を、まるで女のように犯している証。
「はっ、やっ、も・・・・・っ」
自分の求めにアレッシオの動きが早くなり、
「・・・・・っ」
「ああっ!!」
我慢出来ずにアレッシオの腹を吐き出した精液で汚し、ほぼ同時に際奥に熱い迸りを感じた時、友春は自分の全てを中から染
められてしまったことを自覚しなければと思った。
目が覚めたのは、友春の方が先だった。
(・・・・・寝てた?)
アレッシオの身体の上に子供のように乗りかかる形で、彼が重いのではないかと焦るものの、数時間前に解放されたばかりの身体
はとてもだるくて、下半身はまだ痺れていて、アレッシオのペニスを含んでいるのかと思うくらいで・・・・・。
「!」
(う・・・・・そっ!)
それは気のせいではなかった。友春の蕾はいまだアレッシオのペニスを含んだままで、友春は自分達が結合したまま眠りに落ちた
ことに愕然としてしまった。
「・・・・・っ」
いくら、昨夜は失神するように眠りに落ちたとはいえ、自分の身体の中に異物があれば眠れるはずがないのに、今の今まで何を
暢気にしていたのだろうと思った瞬間、友春は自分の中にあるアレッシオのペニスを締め付けてしまった。
「・・・・・トモ?」
その刺激で目覚めたのか、それとも元々眠っていなかったのか、アレッシオの眼差しが友春を真っ直ぐに見て細められた。
「ケ、ケイ、ごめんなさ・・・・・っ」
「何を謝っている?」
「だ、だって、私、これ・・・・・」
自分達がどういった状況なのか、話すたびにアレッシオのペニスを締め付けるその刺激で本人も分かっているはずだが、うろたえる
友春とは反対に、アレッシオは頬に笑みを浮かべている。
「昨夜、お前が離したくないと言ったからだ」
「えっ?」
「・・・・・嘘だ。私がお前に包まれて眠りたいと言ったら、お前が抱きしめてくれたんだ」
嘘だと言いたいが、友春の記憶もぼんやりとだが戻ってきた。
確かにアレッシオにそんなことを言われ、友春も頷いたが・・・・・もちろんそれは本当に言葉通り、アレッシオの身体を抱きしめるとい
う意味だと思っていた。
(そ、それが、あ、あそこに、なんて・・・・・っ)
結合したまま眠っていたなんて恥ずかしくてたまらない。
それまで、疲れて少しも動かないと思っていた身体を何とか起こした友春は、ゆっくりと身体の中からアレッシオのペニスを引き出そ
うとしたが。
「!」
(ま・・・・・さか?)
先ほど気づいた時よりも確かに、アレッシオのペニスは大きくなっていて、友春の内壁を突いてきた。
昨夜、アレッシオに散々貪られたそこは痺れ、快感に敏感になっている。友春は思わず上げそうになった声を押し殺そうとしたが、
それがかえって中のものを締め付けることになってしまい、アレッシオは本格的に下から緩く腰を突き上げてきた。
「あっ!」
「時間はたっぷりある。今日は1日、お前を味わい続けよう」
「ちょっ、ま、待ってっ」
「待たない」
「ひゃあ!」
グチュッ
グッと、腹筋で起き上がったアレッシオは、そのまま友春を腰に跨らせたまま腰を揺らし始める。
「あっ、あっ、あっ!」
アレッシオにしっかりと腰を拘束され、激しく身体を上下左右に動かされて、友春は朝日が差し込む部屋の中で再び身体を貪
られ始めた。
友春にシャワーを浴びさせ、自分も身体を汚した体液を洗い流して、アレッシオは濡れた髪を拭きながらベッドに横になる友春
を見つめた。
朝からその身体を貪り、アレッシオにとっては心地良い目覚めといってもいいが、昨夜から身体を酷使された友春はかなり疲れてし
まっただろう。既に昼に近い時間だが、この分だと昼食も取らずに眠っていそうだ。
「・・・・・」
アレッシオは友春の頬に指先を触れる。
その刺激に友春はうっすらと目を開き、
「も・・・・・でき、な・・・・・」
小さな声で、そう拒絶を口にした。
「分かっている。こんなふうなお前に無理を強いるほど、私は獣ではないつもりだ」
ここまでさせたことこそが十分獣じみた求愛のせいだと自覚しているものの、アレッシオは友春の額や頬に掛かった髪をかき上げて
やりながら静かにそう言う。
その言葉を信じたのかどうか、友春は再び目を閉じて・・・・・その様子を見たアレッシオは、身体にそっとシーツを掛けてやると、その
ままリビングに向かい、携帯電話を取り出した。
【はい】
「ルチアーノ・ナンニを潰す」
前置きも無くそう言うと、相手は一瞬だけ考え込み、直ぐになんでもないような軽い口調で聞き返してくる。
【何時頃がよろしいんですか?】
「即刻だ。娘がいるが、借金のかたにどこぞの下種なクラブにでも・・・・・いや」
(毎日違う男の相手をさせてやるのもな)
友春に恐怖を感じさせたあの女には、外の空気を吸わせてやるのも忌々しい。
アレッシオにとって、あの女の命を奪うのは簡単だ。しかし、一瞬で恐怖を消し去ってやるのも考えものだった。
「確か、70を過ぎた金貸しがいたな」
【ええ、腹が出て、頭が禿げて、それでも性欲だけはある男を1人、知ってますよ】
「マウロ」
【上手くやりましょう】
一週間下さいという相手に、3日でかたをつけろと言い、アレッシオは返事を聞く前に電話を切った。
自分の美貌と若さだけが売りのあの女には、先が知れた醜い老人の醜いペニスで身体中を汚してやるのが一番苦痛だろう。
たった1人の老人を相手に、何時死ぬかと指折り数えながら身体を差し出し続ける・・・・・。
「それでも、トモに対する態度を全て贖えるわけではないがな」
アレッシオはベッドルームの方へ視線を向けた。
「・・・・・」
「ケイ・・・・・ッ」
(まだ、愛も・・・・・言葉も足りないのか・・・・・?)
「・・・・・トモ」
どういった思いからなのか、しっかりと自分の身体にしがみ付きながら精を吐き出した友春。それでも、今回もまた愛の言葉を聞け
なかったことに、アレッシオはらしくもなく深い溜め息をついてしまった。
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