海上の絶対君主




第五章 忘却の地の宝探し


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※ここでの『』の言葉は日本語です






 バシャ バシャ パン パン


 「はっ、あっ、あっ!」
 月夜に響くのは、激しく湯が波立つ音と、肉体がぶつかり合う音、そして・・・・・珠生の高い喘ぎ声だ。
自分の両手で回るほどに細い腰をしっかりと掴み、その白い双丘の狭間に自分のペニスが出入りする様を見ながら、ラディスラス
は本当に珠生を抱いているのだという実感を感じていた。
 チュッと背中に口付けをすると、自分を含んだ蕾が強く締め付けてくる。
 「・・・・・っ、タマ、少し緩めろ」
 「な・・・・・っ」
 「もう少し、お前の中を味わわせてくれ。今度は何時抱けるか分からないしな」
 「・・・・・!」
その言葉に、更に強くペニスを締め付けられたラディスラスは、苦笑しながら片手を珠生のペニスへと伸ばし、弄り始めた。
 「ひゃあっ!やっ、まっ、ま・・・・・てっ」
 後ろから身体の中をかき回され、前ではペニスを刺激されて、珠生の声は半泣きの様相になっていた。しかし、拒絶する声とは
裏腹に、ペニスに纏わり付く内壁は締め付けるだけから、蠢き、搾り取るように愛撫の動きになって、ラディスラスはその気持ちよさ
に思わず熱い溜め息を吐く。
 「上手いそ、タマ」
 「・・・・・はっ、んっ、あっ」
 「ほら、もっと」
(もっと、感じてくれ)
 今度は珠生の方から抱いて欲しいと言う様になるまで、自分との性交に溺れて欲しい。
一度だけ抱いた珠生の身体を自分が忘れられなかったように、珠生にも自分のペニスで感じたということを脳裏に刻み付けて欲
しい。
 普段は、お互い好きなことを言い合い、笑い、喧嘩をすることがあったとしても、お互いの唯一はお互いしかいないのだと、その
根本を明確にするためにも、ラディスラスは今夜珠生を簡単に解放するつもりは無かった。




 今珠生は、向き合ったラディスラスの首にしがみ付き、胸も、腰、足も密着させてセックスをしていた。
珠生の肌を傷付けないためだと言いながら、温泉の縁に腰掛けたラディスラスの腰に跨り、今は湯の抵抗もないので激しくお互
いの腰がぶつかっている。

 ズチュ ズリュ

 それでも響く水音は、ラディスラスがもう何回自分の中で吐き出したか分からない精液を、未だ萎えないペニスでかき回すように
突いてくる音だ。
 頑強な腰の突きは一向に弱まらず、珠生はラディスラスと結合している場所を漏らしたように濡らしたままで、ただ揺さぶられるま
まに身体を動かすしかない。
 「タマキ」
 「・・・・・っ」
 名を呼ばれ、少しだけ顔を上げると、ラディスラスはキスをしてきた。
舌を絡める濃厚なキスに息が上がるものの、ラディスラスは合わせた唇はそのまま、珠生の腰を持って自分の腰へと引き下ろす。
いや、今は珠生の方が自分から腰を動かし、貪欲にラディスラスのペニスを味わっているのだが、半分意識がとんだ状態なのでよ
く分かっていなかった。
(き・・・・・つい・・・・・)
 ゆらゆら揺れているのは、ラディスラスが動いているせいか、それとも、自らの動きのせいか。
いや、もしかしたら温泉の中でセックスを始めてのぼせてしまったせいかも知れない。珠生はぼんやりそう考えていたが、
 「・・・・・っ!」
 ラディスラスの硬い腹筋に何度も擦り付けていたペニスから精を吐き出してしまうと、疲れたようにくったりと肩に頭を預けてしまっ
た。




(もう、そろそろか)
 何回目か分からない射精を終えた珠生は、もうすっかり身体から力が抜けきっている。
これ以上したら明日に支障が出ると(今のままでも十分大変だろうが)、ラディスラスは最後に向けて珠生の腰を抱えなおした。
 「ま、まだ?」
 「これで最後だ。しっかり飲み込んでくれ」
 女ならばとっくに孕んでしまいそうなほど最奥に吐き出した精液が滑りを助け、ラディスラスは更に激しく内壁を突いていく。
 「あっ、あっ、あぁっ!」
 「ああ、頑張って俺をくわえ込んでる。きっと、赤く腫れてしまっただろうが、この体勢では見えないな。アズハルから薬を貰ってそ
こに塗る時、ゆっくりと眺めさせてもらうか」
 「・・・・・っ!」
それがどういう意味なのか、珠生も分かったのだろう、むずがるように身体を動かすが、もちろんラディスラスはこの腕から解放する
つもりは無かった。それよりも、今の言葉で珠生の意識がしっかりと戻り、ペニスを締め付ける内壁の力がますます強くなったこと
に笑みが漏れてしまった。
 「見せてくれよ?」
 「ぜ・・・・・い、い、や・・・・・!」
 「はは、嫌がられるほどに男は燃えるもんだ」
 今度は、こんな月明かりの下ではなく、明るい中で珠生の綺麗な身体を堪能したい。
この、まだ房事に慣れない身体が快感に弱いことは分かった。それならば、これからは多少強引にでも事に持ち込んでしまえば、
この素直な身体は自分の手に落ちてくるだろう。
 しかし、心配も増えた。
これだけ快感に弱ければ、自分以外の男が強引に奪ったとしても、気持ちは拒否しても身体は受け入れる心配もある。
(渡すか・・・・・っ!)
 これは、自分のものだ。
海の女神が、自分に与えてくれたものなのだ。

 グチュ プチュ パシッ

 ラディスラスは高まる感情のまま珠生の蕾を犯し続け、
 「タマキッ!」
 「んあっ!」
パンッと強く珠生の尻を引き寄せ、奥の奥に入り込んだペニスから精が注ぎ込まれる。全てを珠生の中に注ぎ、零れてこないよ
うに、しっかりと密着した腰を離さないままだ。
 「ラ・・・・・ディ・・・・・」
 「タマ・・・・・」
 「あつ・・・・・い」
ラディのが・・・・・と、熱い吐息混じりの呟きを耳元で聞かされたラディスラスは、うっと焦ったように呟き、珠生の中に入ったままの
ペニスは再びピクッと反応する。
 「・・・・・お前」
(勘弁しろ、タマ〜)
 これ以上続けたら、珠生に快感以上の苦痛を味わわせてしまいかねない。
納まりのつかないペニスの状態を知らない珠生に文句を言いたかったが、珠生はもうその声を聞くことが出来ないほどに疲れきっ
ているようだった。







 「気持ち良かったか?」
 目を細め、楽しそうに聞いてくるラディスラス。全く疲れた様子を見せないこの男は、きっと化け物だ。
(ラディには、絶対バイアグラはいらないな)
精力増進剤など飲ませたら、自分の方がどんな目にあうか分からない・・・・・などと、そう考えている珠生は、今後ラディスラスと
自分がセックスする可能性を否定していない自分に気が付いていない。

 珠生が気がついた時、既に身体は綺麗にされ、服まで着せられている状態だった。
少し服は濡れていたが、どういった状況でこうなったかはあまり考えたくなかったし、多分日が昇れば時間が掛かることなく乾く程
度だ。
 「・・・・・もう、ここ、みんなに入ってもらえない」
 「ん?あいつら気に入ってるんだし、タマの1人占めっていうのは・・・・・」
 「バカ!ちょっとは考えろ!」
 ここで自分達は何をしたのか、ラディスラスはもう忘れてしまっているのだろうか?
温泉の中には、どちらが吐き出したかも分からない精液が混じっているのだ。その中に他の人間が浸かるなんて、想像することも
したくない。
(それくらい、ラディは分かんないのかっ?)
 デリカシーが無さ過ぎるとは思うものの、その理由を改めて口にするのは嫌なので、珠生はとにかくどうしてもと押し切った。
 「・・・・・まあ、一応伝えておく。奴らが守るかは分からんが」
 「ラディは船長なんだから皆守るよ」
 「その、船長の言うことを聞かない奴がここに1人、いるけどな」
笑いながらそう言って、指先で自分の頬を突くラディスラスに、珠生は眉を顰めてみせた。




 空が明るくなってきた。
いったい、どのくらい珠生を抱いていたのだろうと思うが、そろそろ浜辺に戻った方がいいだろうというのは確かだ。
 自分と珠生が抜け出したことを知っている者達は、その理由も何となく想像がつくだろうが、今戻れば何事も無かった風に装え
るし、相手も暗黙の了解で同じ態度を取るだろう。
 「タマ、戻るぞ」
 「え〜」
 疲れきっているらしい珠生は動くことに難色を示したが、おぶってやるからと言うと黙って両手を差し出してくる。
やれやれとその前に屈もうとしたラディスラスだったが、
(・・・・・拙い)
真上から珠生の姿を見て、少し動きを止めてしまった。
 珠生を抱く時、ようやくという思いが強くて夢中だったし、月夜だったのではっきりと視界に入らなかったのだが、こうして明るくなっ
た日の下で見れば、服から見える珠生の白い首筋や胸元に赤い痕が無数に散っているのが分かったのだ。
 明らかな、性交したことが分かる痕跡。今、珠生は気付いていないが、これに気付いたとしたら・・・・・。
(かなり、拗ねるな)
じゃれ合いの中でつけたと言うには多過ぎる痕。ラディスラスからすれば、珠生が自分のものであると言葉ではなく意思表示出来
る好都合なものだが、珠生は、多分羞恥もあるだろうが、かなり怒ることが容易に想像出来た。
 「ラディ?」
 急に動きを止めたラディスラスの顔を、珠生が不思議そうに見つめてくる。
 「・・・・・」
 「?」
 「・・・・・まあ、いいか」
珠生がどういった反応を示すか、ラディスラスとしても見て楽しみたい。怒っても、恥ずかしがっても、どちらにせよこの痕を付けたの
は自分で、珠生の身体はもうラディスラスのものなのだ。

 「ねえ、これからどうする?」
 珠生をしっかりと背負って山を下りていたラディスラスは、その珠生の問いに直ぐには答えられなかった。それを決めるのは自分で
はなく、イザークだからだ。
 「さあなあ」
 「さあって・・・・・」
 「イザークがどう判断するかだな。俺としては、あいつの決定に異論を唱えるつもりはない」
 ラディスラスの言葉と、ラシェルの言葉。それを聞いた上でイザークがどう判断するのかはラディスラスには分からない。それでも、
きっとその答えはイザークの今の真実だろう。
 「お前もいいよな?」
 「・・・・・」
 「それとも、もっと原石が欲しかったか?」
 「俺は、宝石もらっても困るだけだし・・・・・もっと、じゃらじゃらしたキンカが出て、埋まってみたかったなーって思って」
 金貨の山に埋まり、顔だけ出して笑っている珠生の姿を想像して、ラディスラスはくくっと笑う。やはり、珠生は面白いなと思いな
がら、昨日たっぷり味わった小さな尻にあまり振動を与えないように、ラディスラスは慎重に足を進めた。