CHANGE




27







 どうして、無駄に大きいんだろうと腹がたってしまうものの、それを言えば、

 「お前だって、大きい方が気持ちいいだろう?」

と、絶対下世話な返答が返ってくると分かっているので、太朗は文句を胸の中だけに納めてじっと目の前のペニスを見つめた。
どう考えたって全部は入らないし、上杉だって期待していないはず。しかし、そう思われていると思えば返って、太朗はその逆のこと
をしてやろうと思った。
 「ん・・・・・っ」
 口を大きく開け、先端の張り出した部分を口に含む。風呂上りなので僅かな石鹸の香りがした。
(ゆっくり・・・・・ゆっくり、と)
そのまま竿の部分まで口の中に入れたものの、半分もいかないうちに挫折してしまった。
 「ごほっ」
 「おい、大丈夫か?」
 「はいひょふふ」
 「しゃべる時くらい、それ出せ」
 「ふぁら」
 一度口から出してしまったら、再度口に入れるのにはもっと勇気が必要になってしまう。
太朗は涙目になったまま、それでも何とか頭を動かし、口を窄めるようにしてペニスに刺激を与えた。口に入らない分は両手で扱
いて、上杉を感じさせようと頑張った。
 「んっ、んっ、んっ」
 やがて、自分の唾液だけではなくペニスが濡れてくる。口の中に広がる苦味は、上杉が感じてきた証拠だった。
 「ふぐっ」
それと同時に、口の中にあるペニスもさらに大きくなり、太朗の口の中を圧迫して、

 チュルン

とうとう、太朗は口からペニスを出してしまった。
 「はあ、はあ」
 「タロ」
 宥めるように上杉が頬を撫でてくれるが、太朗は嫌々と首を横に振り、更に強くペニスを握り締める。
(絶対、一度はイかせてみせるからなっ)
再び先端部分を口に含んで舌を絡めながら、先程よりも早く手を動かし始めた。




(くすぐったい)
 上杉はチロチロとペニスを舐める太朗の舌に思わず苦笑してしまった。本人はフェラチオのつもりでいるかもしれないが、上杉から
したらこれはアイスを舐めているのと一緒だ。技巧も色気もないのに、それでもだんだん自分のペニスが頭をもたげてくるのは、ひとえ
に太朗への愛情からだろう。
 「・・・・・気持ちいいな」
 そう言って頬を撫でてやると、チラッと上を向いた眼差しが嬉しそうに細められる。同時に、先ほどよりもさらにペロペロと舌が絡ん
できて、上杉は腰が熱くなってきた。技巧よりも眼差しだけで自分を高めてくれる太朗に脱帽だ。
 「ふんんっ」
 勃ち上がったペニスは太朗の喉をつき、苦しげな声が聞こえた。
(意地っ張りな奴)
どうしても上杉をイかせるまで止めるつもりがないらしい太朗のために一度出しておくかと、上杉は口から出せと言った。
 「もう出るぞ」
 「んんっ」
 「タロ」
 「ほほははっ」
 「・・・・・後で文句言うなよ」
 このまま口の中で出せという太朗の言葉を聞かなかったことにするほど、上杉は優しい人間ではない。
太朗の頭を両手で掴み、何度か自分から腰を突き上げると、
 「・・・・・っ」
 「ぐっ」
上杉は太朗の口の中に精液を吐き出した。

 「ごほっ、ごほっ」
 激しく咳き込みながら太朗が焦ったように顔を引くと、まだ出し切れていなかった精液がその顔にも掛かってしまった。
呆然として自分を見上げてくる太朗の口元は白く汚れていて・・・・・どうやら、中の精液を飲み込むことも吐き出すことも出来ない
でいるらしい。
 「いいぞ、出せ」
 飲み込むことまで期待していなかった上杉はそう言うが、太朗は顔を顰めたまま口を両手で押さえている。吐き出したところで愛
情を疑うことはないのになと苦笑しながら、上杉は強引に太朗の顔を上に上げると、その手を離し、そのまま唇を重ねた。
 「んんっ」
 いきなりのことに驚いた太朗の口元は緩み、上杉はそのまま口の中へと舌を差し入れる。さすがに自分の精液を進んで飲もうと
は思わないが、何時まで経ってもどっちつかずの太朗を助けるためには仕方がないだろう。
 「ふ・・・・・っ」
 舌を絡めると、太朗の唇の端からは唾液と共に精液が滴り落ちてきた。
上杉は唇を離すと太朗の顔をシーツで拭い、そのまま口元にシーツをあててやると、太朗はそんな上杉を見ながらそこへ残った精
液を吐き出したようだ。
 「・・・・・ジローさん」
 「さすがに、自分のは不味いな」
 「・・・・・ごめん」
 「タロ」
 「俺・・・・・自分からするって言ったのに・・・・・」
 「バ〜カ、あそこまで出来れば十分だ。お前の歳で凄いテクニック持ってる方が嫌だぞ」
 からかいながら太朗を抱きしめると、しばらくして細い腕が背中に回ってきた。
 「ジローさんは・・・・・何時も、してくれる・・・・・のに」
 「俺は大人だからな。それに、お前のは甘いし」
 「・・・・・嘘」
 「そう感じるほどに、お前にベタ惚れなんだよ、タロ」
そのまま太朗を押し倒し、上から顔を覗くと、目元に少しだけ涙を浮かべた太朗が顔を真っ赤にしながらも目を逸らさずに、俺も
と小さな声で答えてくれる。
最高に嬉しい言葉に、上杉は笑いながら再び唇を重ねた。




 何とかイかせることが出来たというのに、それを飲むことが出来なかったのが悔しい。
上杉は何時もしてくれるし、自分だって過去したことがあるはずなのに・・・・・毎回、完璧に出来るということはなかなか無かった。
今はまだ、上杉は歳のせいだと言ってくれるが、自分だってもうすぐ高校を卒業するほどに成長した。セックスの面で、何時までも上
杉に主導権を握られているのは悔しい。
(好きだから、俺だって感じさせたいのに・・・・・っ)
 自分が上杉を抱くことは想像出来ないが、気持ちよくさせることは出来るはずで・・・・・ただ、練習相手がいないだけに(上杉は
絶対に許さないだろうし、太朗だって嫌だ)、上達は上杉との行為次第だ。
 もっと貪欲にテクニックを盗んでやろうと、太朗は改めて決意したが・・・・・。
 「は・・・・・んっ」
(も、もう、攻められてる、よっ)
上杉の口に胸の飾りを銜えられ、太朗はピクピクと腰を揺らしていた。反対の乳首も手で摘まれ、もう片方の手は既に勃ち上がっ
たペニスを掴まれ・・・・・同時に攻められる快感に、自分がやり返すことは出来ない。
 「んっ」
 「気持ちいいのか?」
 「・・・・・っ」
 胸から顔を上げた上杉が、笑いながら聞いてきた。
恥ずかしくてたまらないが、つんと立ち上がったそれを見られてしまうと誤魔化すことも出来なくて、仕方ないじゃんと強がりで言い返
した。
 「き、気持ち、い・・・・・しっ」
 「それなら嬉しいな」
 「・・・・・え?」
 「俺も、可愛がり甲斐があるってもんだ」
 「へ、変なこと言うなよっ」
 「変なことじゃないぞ」
 上杉の舌が、鎖骨をペロッと舐め上げる。
 「!」
 「ほら、これくらいで、ここも」
握られたペニスを、ゆっくりと扱き上げられた。
 「こんなふうに反応してくれると、俺のものだって実感が湧くんだよ」
 「・・・・・っ」
(こ、こんなことで感じなくったって・・・・・っ)
 何時も、言葉でも態度でも、上杉が好きだという気持ちは伝えているつもりで、こんな時だけではないぞと言い返したい。
しかし、口を開けば耳を塞ぎたくなってしまうほどの恥ずかしい喘ぎ声が漏れてしまうばかりで、太朗はせめて視線だけでもと上杉
に向けた。
 「・・・・・逆効果」
 「・・・・・?」
 「そんな目で見られて、我慢出来る男なんていねえだろ」
 どんな目なんだと思う間もなく、太朗はグイッと腰を抱き寄せられ、そのまま足を開かされると、
 「ひゃあっ!」
あっという間もなく、上杉にペニスを銜えられてしまった。




 口に入れるのにはほどよいサイズだと、絶対に太朗には言えないようなことを考えながら、上杉は太朗のペニスを口の中で弄り始
めた。喉の奥まで入れ、歯で扱き、舌で舐め上げて、先端を吸う。
 「ふあっ、んっ」
 太朗は先端部分が弱いので、舌を尖らせて刺激を与えれば、ペニスはすぐに硬く勃ち上がった。
このくらいの歳ならば何度イっても可笑しくないだろうと思うが、太朗は自分ばかりと訴えてくる。その訴えさえも可愛くて、ついもっと
意地悪をしたくなってしまうのだが。

 ズリュッ クチュッ

 寝室の中に響く、ペニスを弄る音。
時折眼差しを向けると、太朗の顔が見るたびに紅く染まり、快感を耐えるように眉根に皺を寄せている。
 本当はこのままイかせたいくらいだが、そうすると太朗はもっと拗ねてしまいかねない。ここは、一緒にイく方がいいかと、

 チュクッ

いきなりペニスを口から出した上杉に、無意識なのだろう、太朗が物足りないというような眼差しを向けてくる。
その顔に笑い掛けた上杉は、
 「もう、我慢出来ない」
自分の方が負けなのだと、太朗に言葉で伝えた。
 「ジロ、さ・・・・・」
 何か言おうとした太朗を口付けで黙らせ、上杉は片手をペニスのさらに奥、尻の蕾へと伸ばす。
 「・・・・・っ」
既に先走りや唾液で濡れていたものの、指で触れられると驚いたのだろう、太朗はピクッと身体を揺らしたが、怖がったり拒絶した
りという様子は見えなかった。
 「ふんっ」
 唇を重ねながらその表情も見た上杉は、何度もその周りを指で撫で摩り、ゆっくりと爪先を差し入れた。
 「・・・・・っ」
 「痛いか?」
太朗は首を横に振る。
 「あれを使った方が滑りがいいのは分かるんだが、無い方が俺のをリアルに感じることが出来るしな」
何を言っているのか分からなかったのだろう、太朗が不思議そうに自分を見ていたので、上杉はその耳元に唇を寄せ、わざと低く甘
く・・・・・ある単語を囁く。
 「バ・・・・・バカッ!」
その瞬間、太朗はそう叫び、身体の中に入っている、まだ先端だけの上杉の指先はキュッと締め付けられてしまった。