CHANGE












 小振りと言っては太朗に叱られてしまうだろうが、それでも口にくわえるにはちょうど良い大きさのペニスを、上杉は口全体を使って
愛撫した。先端部分を舌で突き、唇で扱けば、快感に弱い素直な身体はたちまち強張りを解いて、自然と伸ばされた指先が上
杉の髪を掴んでくる。
 上杉の愛撫が核心をつくたび、太朗が指先に力を入れるので少し痛いが、それだけこの快感に必死に耐えているのだと思えば
可愛いものだ。
(ホント、最後まで出来ないのが残念・・・・・)

 チュク クチュ

 「んっ、あっ、あっ」
 耐えられなくなったのが、太朗の口から零れる喘ぎ声はだんだんと大きなものになっていく。
上杉はいったんペニスを口から出し、その代わりに手で擦りながら、ハアハアと大きく胸を上下させる太朗の耳元で囁いた。
 「外に聞こえるぞ」
 「え・・・・・」
 「中は見えなくても、声が聞こえたらバレバレだろう?」
セックスをしていることが・・・・・改めて自分達が何をしているのかを認識させるように言えば、眼下の太朗のすんなりと伸びた足が
強張ったのが分かった。
(おー、いい眺め)
 きっと、尻の下のシートまで、零れてしまった先走りの液で濡らしているだろうに、身体にはまだ制服が纏わりついている。
子供には興味のない上杉も、そのいたいけな様子にさらに自身の欲望も高まっていくのを感じた。




(こ、こんな、とこ・・・・・でっ)
 上杉が持っている中でも、一番乗りやすくて好きな車だったのに、こんなことをしてしまったら次からとても乗れなくなってしまう。
それに、上杉の大きな手で弄られている下半身からは、耳を塞ぎたいような淫らな水音が聞こえてきて・・・・・絶対に、この腰の下
のイスは汚れてしまっているはずだ。
 「・・・・・んっ」
 それだけではない、自分の制服だってきっと汚れているだろうし、皺くちゃになっていると思う。
(と、父ちゃんに怒られる・・・・・って!)
上杉との関係を一応認めてくれている父も、自分の子供がセックスをしているということは知りたくないはずだ。もちろん、太朗だって
おおっぴらにしたいことでもないので、何とか上杉にはここまでで止めて欲しかった。
 「ジ、ジロー、さっ」
 上杉の指先が、シャツの隙間から覗く乳首を摘んできた。
 「んっ」
 「何だ?タロ」
訊ねてきているくせに、上杉の手は止まらない。
優しく、時々意地悪に強く、乳首を弄る上杉の指のせいで、太朗はなかなか訴えることが出来なかった。
 「うんっ・・・・・んっ」
 「タ〜ロ」
 「や・・・・・だっ」
 「違う。気持ちいい、だろ?」
 「・・・・・っ」
 気持ちいい・・・・・この感覚がそうだということは当然分かっているものの、やはり車の中ということで太朗は快感に流されるままと
いうわけにはいかなかった。身じろぎをすればドアに手が当たってしまうし、足も大きく動かせない。
 しかし、快感に溺れきることが出来ないと同時に、逃げることも出来なくて、上杉の指先は乳首だけではなく、再びペニスへと絡
まってきた。
 「あ・・・・・あっ」
 「・・・・・」
 「は、はな、し・・・・・っ、出、ちゃうっ」
 もう、我慢は限界だった。高まる射精感に太朗はどうしようも出来ず、なんとか自分のペニスを自分で握り締めようとしたが、上
杉はそれを許さずに太朗の伸ばした手を掴み、再びペニスを口に含んだ。
 「ひっ!」
 その途端に、唇で強く擦られ、先端を歯で甘噛みされてしまった太朗は、とうとう上杉の口の中に射精してしまう。
ピクピクと腰が揺れるほどに吐き出される精液を、上杉は全て自分の口で受け止め、残滓も残らないように啜った。




 我慢した挙句の射精に、太朗はすっかり身体から力が抜けてしまったようだ。
上杉はいったんペニスを口から出し、今度は見せ付けるように竿の部分を清めるように舌を這わせる。
 「・・・・・だ」
 「タロ」
 「・・・・・ヘン、タイ」
 こんな風にペニスを弄ばれ、口の中に精液を吐き出してしまったくせに、太朗の口だけはまだ元気なようだ。
それがおかしくてふっと笑った上杉は顔を上げた。太朗が自分のことを見ているのを知った上で、見せ付けるように濡れた唇を舌で
舐めとると、太朗は恥ずかしくてたまらないというように顔を逸らしてしまう。
 「・・・・・く、車の中でなんて、変だよっ」
 「喜んだくせに」
 「そ、それとこれは、別!」
 仕方がないだろと、怒ったように言った後、太朗は恐々という風に自分の下半身に視線を落とし、射精の後でしんなりとしてし
まっているペニスを見て情けなく眉を下げた。
 「どうするんだよ・・・・・」
 「舐めて綺麗にしてやったろ?それとも、尻まで舐めてやろうか?」
 「い、いいっ!」
 もちろん本当にそこまでするつもりは無かったが、太朗は慌ててシートに背をくっ付けるように精一杯後ずさると、後部座席の自
分の鞄を取ろうとしている。
そんな太朗を押さえ、上杉はダッシュボードからタオルを出して、自ら濡れた足を拭いてやった。
 「いっ、いいよっ、自分でする!」
 「いいからさせろって。ここまで濡らしたのは俺だから」
 「・・・・・っ」
 太朗は何かを叫ぼうとしたらしいが、ようやく押さえたように口を噤む。そして、黙々と始末をしている上杉の行動をじっと見て、ま
た何か思い浮かんだかのように唇を尖らせた。
(何考えてるんだ?)




(どうして、こんなトコにタオルがあるんだよ?)
 自分が運転しない太朗は、車の中にある備品を全て知っているわけではないが、それでもここにタオルがあるのはちょっと・・・・・
怪しいと思ってしまった。
 「・・・・・」
 思い返せば、シートを倒す手順も慣れていたし、こんな狭い場所での身体の移動もスムーズだった。
車の中でこんなことをするのが初めての太朗とは違い、あきらかに上杉は・・・・・慣れている。
 「・・・・・ジロー、さん」
 「ん?」
 「どうして、タオル・・・・・あるんだ?」
 「タオル?」
 不思議そうに繰り返した上杉は、自分の手にしている物を見て、ようやく太朗が何を言おうとしたのかが分かったらしい。その反
応をまともに見られなくて、太朗は必死になって上杉から視線を逸らしたまま続けた。
 「ま、まさか、だ、誰かを、つ、連れ・・・・・」
 「連れ込んでるだろ」
 「え・・・・・」
思わず、上杉の方を振り返った太朗は、何時ものように笑っている上杉の視線と目が合ってしまう。
 「お前」
 にっと笑う上杉の表情には少しも後ろめたいという様子は無く、自分をからかっているということが直ぐに分かった。そして、上杉に
も、自分が妬きもちをやいたということが気付かれたと思う。
 「可愛いな、お前は」
 「・・・・・っ」
 何をどう思ってそんなことを言っているのか恥ずかしくてとても聞き返せず、太朗は必死で俯いて・・・・・その視界の中に入ってきた
ものに思わずうっと息をのんでしまった。
(ジローさんの・・・・・勃ってる・・・・・)
自分は上杉の手淫や口淫によって欲情させられてしまったが、上杉は・・・・・もしかしたら、そんな自分を見て欲情してくれたのだ
ろうか。
(お・・・・・俺だけって・・・・・ダメ、だよな)
 自分だけが気持ち良くしてもらって、射精までさせられてしまったのだ。
太朗は唇を噛み締めたが・・・・・やがて、すっと手を伸ばした。




 「タロッ?」
 いきなり自分の下半身に手を伸ばしてきた太朗に、さすがに上杉は慌てたように声を出してしまった。
しかし、太朗はその声で手を引こうとはせず、そのまま上杉のベルトを外し、ファスナーを下ろそうとしている。
 「・・・・・っ」
 目の前のグリーンのブリーフに一瞬手の動きは止まってしまったが、太朗は意をけっしたように唇を引き結んだまま、明らかに高ま
りを見せている自分のペニスを下着の上から触ってきた。
 「タロ・・・・・お前」
 「だ、だって、ジローさんだって、こんなに・・・・・」
 「口で出来るのか?」
 「うっ・・・・・」
 太朗は自分の下半身から視線を逸らさないまま、直ぐには頷けないようだった。無理もない、今だって寝室でのセックスではなん
とか躊躇い無く出来るようにはなってきたが、車の中、幾ら横や後ろから見えないとはいえ、フロントガラスからは見られてしまう可能
性は無いとは言えないのだ。そんな場面で、フェラチオをしようという勇気は出ないのは当たり前だと思った。
 「で、出来・・・・・」
 「しないでいいって」
 「ジローさん・・・・・」
 「その代わり、お前からキスしてくれ。今はそれだけで十分だから」
 大人の男というものは、このじれったささえ楽しめるものだ。
それよりも、今の行為を許してくれるという証のキスを、太朗側からして欲しい。そんな思いのままに太朗の顔を覗き込んでいると、
ゆっくりと伸びてきた手が自分の首に回ってきて・・・・・上杉は目を細めて笑った。




 キスくらいで欲望が解消されるなんて思わないが、きっと上杉はそれで太朗の後ろめたさを全て帳消しにしてくれるつもりなのだろ
う。そんなところで、大人と子供の違いを見せつけられるのは悔しいが、太朗はその譲歩案を受け入れることにした。
 「・・・・・」
 手を伸ばして上杉の首を抱き寄せると、目前の上杉の男らしい顔が、まるで子供のような顔をして笑っている。
(卑怯だよな・・・・・その顔)
自分よりも遥かに大人の男のくせに、時々こんな風に子供っぽく笑うから、太朗は何時だって最後まで怒りっぱなしには出来ない
のだ。
そして、多分、上杉も同じように自分を見ているのかもしれない。
 「チュウ、だけだよ」
 「ああ、濃厚なやつを頼む」
 「・・・・・コーリョする」
 太朗が引き寄せるよりも先に、上杉の方から唇が重なってきた。そんな性急な様子もなんだか子供だなと、太朗は頬を緩めな
がらキスを深いものにする。

 クチュ

 舌を絡め、お互いの唾液を交換して・・・・・深いキスをしている最中も、太朗の足には上杉の高ぶったペニスの感触が伝わって
きた。
(・・・・・ごめん)
太朗は最後までセックスが出来ないという侘びを込めたわけではないが、上杉にしがみ付いた手にさらに力を入れて、上杉のリクエ
スト通りの濃厚なキスをし、何時しか自分自身も夢中になっていった。