elite




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(汚れ、ちゃった・・・・・っ)
 挿入の衝撃で精を放ってしまった静は、汚してしまった江坂の腹の自身の精液を指先で拭った。
 「・・・・・」
側には手を拭うものがなく、少し迷った挙句に静はそれを口に含んでしまう。
(・・・・・苦い)
青臭くて、粘ついた液。これが自分の吐き出したものかと思うと、何時も飲んでくれる江坂に申し訳ないと思ってしまった。
しかし、そんな静の思いを読み取ったのか、江坂が色っぽい笑みを向けてくれる。
 「どうですか、自分の味は」
 「・・・・・美味しく、無い」
 「おかしいですね、静さんのものは何時でもとても甘いのに」
 そう言いながら骨ばった指先が同じように腹の精液を掬い取り、自身の口に運ぶのをぼんやりと見つめていると、切れ長の眼差
しはゆったりと細められた。
 「!」
 白く汚れた指を舐めている江坂の舌に、それが自分のペニスを舐める姿を想像してしまい、静はそんな淫らな想像をしてしまっ
た自分に戸惑ってしまった。
 「やっぱり、甘い」
艶っぽいその表情に胸が高鳴ったかと思うと、中に含んでいたペニスを無意識に締め付けたみたいで、さらにピクンとそれが大きく
なったような気がする。
 「う・・・・・そっ」
 それでも、辛うじてそう言い返せば、江坂は笑いながら緩やかに腰を回し始めた。
 「じゃあ、もう一度出してもらって、確かめましょうか」

 ズチュッ

硬いペニスが、内壁を抉るように突いてくる。
 「や・・・・・あっ、や、だぁっ」
 「ほら、ちゃんと動いてください」
 「で、出来な・・・・・っ」
 「嘘」
 なぜか、楽しそうに反論した江坂が大きく腰を打ちつけてきた。
 「あぅっ!」
この身体を抱き慣れた江坂は、的確に気持ちが良い場所を攻めてくる。グチュチュチュと擦られ、グニッと捏ねられ、中が熱く火
照ってくるのが自分でも分かるような気がした。
(い、淫乱、みたい、だっ)
 こういった欲望には淡白なはずなのに(実際に自分でするのも週に1、2回くらい)、江坂に抱かれると身体全てが作り変えられ
ていくようだ。
自身が処理する間隔よりも頻繁に江坂に抱かれているせいなのか、もう理性など保っていられない。
腰を捕まれ、強引に揺らされる・・・・・はずが、何時しか自分自身で動き始めたのを静は気付かなかった。
 「一度、出させてくださいね」
 「えっ?はっ、ふぁっ、あっ!」
 休むことなく突き上げられる動きに呼吸もままならなくなった瞬間、
 「うぁ・・・・・っ!」
内壁に熱い迸りが染み渡り、静もまた精を吐き出してしまった。




 グチュ グチュ

 「あっ、はっ、んっ」
 下から静が揺れているのを見つめる。

 ジュク グチャ

一度吐き出したせいか、江坂は余裕を持って乱れる静を見つめることが出来た。
(本当に、ビスクドールみたいだな)
安っぽいものではない、何千万、いや、億さえ出してもいいほどの価値のある、精巧な人形のような静。
白くしなやかな身体が軽やかにリズムを刻み、うっすらとかいた汗も明かりに輝いて、本当にこの世のものではないような美しさだっ
た。
 しかし、もちろん静は人形ではない。恍惚と快感に溺れる表情も、貪欲にペニスを飲み込んでいる内壁の蠢きも、人形ではと
ても表現出来ないものだ。
 「りょっ、りょ、じさっ」
 「・・・・・静」
 名前を呼べば、嬉しそうに綻んだ顔が下りてきた。苦しい体勢だろうに口付けを求める静に、江坂は濃厚に舌を絡めて静の口
中の唾液を啜る。
精液はもちろん、汗も唾液も、静のものは全て甘い。何時までも味わっていたいような、麻薬のような甘味だ。

 ズチュ バシッ

 キスをしているせいでピッタリと上半身がくっ付いているので、少し浮き上がりかけた腰を強引に引き寄せてペニスを出し入れす
ると、水音と肉体がぶつかる音がさらに大きくなった。
その律動に合わせるように、お互いの腹の間の静のペニスも擦れ、ニチャニチャと音を出しながら大きく育っていくのが分かり、
 「・・・・・っ」
 「ふぁっ?」
江坂は強引に手を差し入れてそれを掴んだ。
 「ま、ま、て・・・・・っ」
 「どうして?可愛がってと泣いているじゃないですか」
 たて続けに射精してしまったせいでまだペニスは半勃ちの状態だったが、江坂は構わすに先端部分に爪をたてて刺激してやる。
すると、その快感の度合いを示すように内壁がさざめいて、
 「・・・・・っ」
搾り取られるようなきつい締め付けに、江坂は苦笑を浮かべた。
 「もっと、ゆっくり楽しみましょう」
先端部分から竿に手を移し、敏感な裏筋を撫でてやると高い声で啼いてくれる。
そのまま何度も擦ってやると静の肛孔がキュウッと締まって射精の時を知らせてきた。だが、このまま簡単には吐き出させない。
 「う・・・・ぇ?」
 上下に擦っていた手でギュッと握りこむと、痛みに身体が硬直した。
 「ど、どうし、てっ?」
 「・・・・・」
 「は、離してっ」
イキたいと哀願してくる頬に唇を寄せると、
 「あぁっ?」

 グチュッ

いきなり上半身を起こした江坂はそのまま静の背中をベッドに押し付け、片足を大きく広げて結合部分を明かりのもとに晒した。
薄赤い色をした蕾が、目一杯自身のグロテスクなペニスを飲み込んでいる様がよく見える。
静の先走りの液と、江坂が中に出し、挿入するたびに滲み出た精液が、まるで静の肛孔から流れ出る愛液のように光っていた。




 体勢が変わり、江坂に真上から顔を見つめられる。
セックスをしている恥ずかしさがまた一からこみ上げてきて全身が熱くなったが、そんな自分を見る江坂の目の中には貪欲な欲情
が覗いていた。
(欲しいって・・・・・思って、くれてる?)
 普段は冷静沈着な大人の江坂が、今この瞬間は欲望をむき出しにして自分に向き合ってくれている。
 「静・・・・・」
囁くその声の中にも滴るような欲を感じ、静はジンと自分の中が濡れたように感じた。
 「愛している、静」
 「・・・・・お、れもっ」
 何とか言葉を返すと、嬉しそうな笑みを浮かべた江坂が動き始めた。
静が上になって動くよりももっと力強い動きに、静は背中がシーツで擦れて熱いのか、身体の中から熱いのか、もうわけが分から
なくなってくる。
 「あっ、はっ、はっ」
 「・・・・・っ」
 「りょ、りょ、じ、さ・・・・んっ」
 「静・・・・・っ」
 しっかりと指を絡ませ。
キスを交わして。
貪欲に快楽を生み出している結合部分を擦り合わせて・・・・・。
 「!」
 「・・・・・っ」
ほぼ同時に、快感の証を吐き出した。
静は自身の腹を汚し、江坂は静の身体の奥深くを濡らして、くっ付いたどの部分も離さないでしばらくそのまま抱き合う。
 「・・・・・ふっ」
 やがて、息苦しくなった静が僅かに眉間に皺を寄せると、江坂はキスを解いてくれた。チュッと頬や鼻に何度もキスを繰り返しな
がら、ようやく目線を合わせて少しだけ笑う。
過ぎた快感のせいで目尻に涙が滲んだが、江坂はそれを舌で拭ってくれた。
 「大丈夫ですか?」
 「・・・・・」
 何とか頷きを返すと、江坂はホッとしたように頬を緩めた。
 「少しこのまま休みましょうか」
 「あ・・・・・えっと」
(中に、まだ・・・・・)
射精をしたばかりだというのに、あまり萎えた様子を見せない江坂のペニスは、いまだ静の身体の中にある。
熱に浮かされた時ではない今は何だかその感覚が恥ずかしくて、静は視線で抜いてくれと訴えたが、敏いはずの江坂はなぜかそ
知らぬふりをしていた。
 「あの・・・・・」
 言葉で言わなければいけないのかと、静は小さな声で抜いてくださいと言った。
 「どうして?」
 「すこ、し、休もうって・・・・・」
 「私にとっては、このままで十分安らぐんですが」
 「・・・・・やっ」
会話をしているうちに、中のペニスが徐々に大きくなっていくのを感じる。
 「凌二、さん?」
 「休憩は終わりですか?」
 「え・・・・・」
 「では、いいですね?」
 「あ・・・・・っ」




 江坂の甘言に絆され、また揺さぶられて。
少し久し振りになったセックスは、静にとってはかなり濃厚なものになってしまった。
(こ、これからは禁欲期間、短くしないと・・・・・もたない)








 江坂はすとんと眠りに落ちてしまった静の中からペニスを引き出した。
赤くなった肛孔と白く汚れたペニスの間に精液が繋がり、自分と静がかなり長い間情交をしていたのだということを指し示している
ような気がした。
 「・・・・・無理をさせたか」
 セーブが効かなかった。
自分ではごく平常心で迎えたと思った総本部長就任だが、自覚していた以上に気持ちは高揚していたのかもしれない。
まだ身体の熱さは引いていないものの、これ以上静を付き合わせては彼の身体が壊れてしまいかねないだろう。
 「・・・・・」
 汗ばんだ前髪をかきあげてやる。身体も様々な体液で汚れているが、静は変わらずに綺麗だ。
そのまま身体を抱き上げてバスルームに向かうと、まだ湯を抜いていない湯船の中に一緒に浸かる。
 「ん・・・・・」
 「眠っていていいですよ」
 「・・・・・」
 「眠りなさい、静」
 肩に湯を掛けてそう囁けば、静はまた深い眠りに落ちたようだ。
(愛おしい・・・・・)
こうしてみると欲望などとは全く縁がないように見えるのに、ついさっきまでこの細い腰で己の欲望を飲み込んでくれた。
熱くて、狭くて、静の身体は極上で、何度求めても足りなかった。
 「・・・・・」
 汚い自分の欲を全て受け止めてくれるこの愛おしい存在を、江坂は絶対に手放すつもりは無い。この先、静が大学を卒業し
て世に出ると言い出しても、何とでも誘導してこちらの手の内に囲い込むつもりだ。
 「可哀想に・・・・・」
(私の目に映ったのが不運だったのか・・・・・)
 「それでも、それを幸せだと思わせますよ」
 静の目には綺麗なものしか映さない。江坂はそう思いながら、滑らかな項に唇を寄せると、うっすらと赤い華を幾つもそこに散ら
した。