縁と月日は末を待て












 本当は楓も伊崎のペニスを味わいたかったが、久し振りのセックスに心が急いているのは楓だけではなかったようで、伊
崎は身を起こすと、今度は楓の足を大きく左右に広げた。
 一瞬、濡れそぼった下半身を両手で隠そうと思ったが、その羞恥は辛うじて抑えた。今から伊崎が何をしようとしている
のか、それを自分がどれだけ望んでいるのか想像がついたからだ。

 グチュ

 自身の精液で少しぬるついた尻の蕾に、ゆっくりと指が這わされる。
伊崎の手も濡れているので滑りは悪くなく、何度も撫でられたそこにツプッと指が一本入れられた。
 「んん・・・・・っ」
(き、ついっ)
 まだ、いくらも解けていないそこに指を入れられるのは結構辛い。ここにローションか何かがあれば別だが、楓の部屋にそ
れを常備してはいなかった。
それに、楓自身伊崎の指や舌でそこを解してもらうのが好きだ。猛烈な羞恥心は感じるものの、それ以上に愛されている
という実感を感じることが出来るから・・・・・。
 「んぁっ、あっ」
 ギュウギュウに伊崎の指を締め付けているつもりだが、楓の身体を知り尽くしている男は上手くタイミングを計って指で中
を刺激してくる。
苦しいのに、熱い。
熱いのに、気持ちが良くて、楓は目を閉じて快感を耐えた。少し快感を抑えないと、自分だけがまたイッてしまいそうだ。
 いつの間にか含まされた指が、3本、楓の内壁を我が物顔に蹂躙していた。
 「きょ、すけっ」
 「どうしました?」
返ってくる声は憎たらしいほど余裕がある。悔しくて、思わず中の指をさらに強く締め付けた。
 「・・・・・っ、楓、さん」
 「・・・・・」
(ざまあ、みろっ)
伊崎の声の中からも、少し余裕が失われた気がする。自分だけが追い詰められているのではないと自信がついて、楓は
下から見上げながら口元を緩めた。
 「ひ、とり、よゆー、もって・・・・・っ」
 「まさか」
 「嘘っ」
 「本当です。今も、ほら」
 そう言って、柔らかな太股に押し付けられた硬くて熱いもの。
霞む眼差しで見たそこには、既に猛っている伊崎のペニスがあった。
 「お・・・・・き・・・・・」
 何時見ても凶器のようなそれに一瞬目を瞠り、次の瞬間には手を伸ばしていた。
 「楓、さんっ」
片手に余るそれは先走りの液を纏い、ドクドクと楓の手の平で脈動している。早く自分の中に入りたいと思っているのが
それだけでも分かり、楓は、

 ヌチャッ

ゆっくりと、手を上下させた。
そんな僅かな刺激だけでも、伊崎のペニスの勢いはさらに増す。その反応が、楓は嬉しかった。




 楓に苦痛を感じさせないように丹念に慣らしたいのに、当の本人は、わざと自分を煽ってくる。
こんなふうに感じやすいペニスを刺激され、何時までも長々と前戯だけに時間を費やすことは出来ない。早く楓が欲しく
て、喉が、心が渇いていた。
 「楓さん」
 「・・・・・」

 グニュ ジュク

伊崎が楓の内壁を刺激するのと呼応するように、

 クチッ

楓の手の平が自身のペニスをヌチャヌチャと擦る。既に支えが要らないほどに勃ち上がったそれは早く楓の中に入りたいと
主張してきて、伊崎自身ももう、その欲望を抑えられなかった。
 「少し、痛むかもしれませんが」
 それでも、こんなふうに言ってしまうのは、保護者としての気持ちが残っているせいかもしれない。そんな情けない自分に
楓は、目を細めてバカと囁いた。
 「痛み、だって、か、いか、んの、一部、だ・・・・・っ」
男らしいその答えに、伊崎はこめかみにそっと唇を寄せた。

 指を引き抜くと、楓の蕾は直ぐに固く閉じようとする。
それを許さないよう、伊崎はペニスの先端を押し付けた。
 ヌプッという音を伴い、きついそこに押し入ろうとゆっくりと腰を押し込んでいく。
 「・・・・・っ」
やはり、まだ慣らしが足りなかったのか、押し入るその中は心地良いというよりは痛いほどに狭く、伊崎は眉間に皺を寄せ
てしまった。
 だが、見下ろす楓の顔は自分よりも辛そうな表情だ。綺麗な唇を噛み締めて苦痛の声を漏らさないようにしているのを
見て、伊崎は腰を屈め、強引にキスをした。
 「んんっ」
 中のペニスの角度が変わり、楓はさらに辛くなったのか思わず声を上げようと口を開く。
そこに、するりと自身の舌をさし入れた。楓が自分の唇を噛むよりは、己の舌を噛んで欲しい。
 「んんっ、むぅっ」
 「・・・・・」

 ピチャ

 舌を絡め、楓の口腔内をくまなく愛撫すると、強烈にペニスを締め付けていたそこから少し力が抜けるのが分かった。
その隙をつき、伊崎は徐々に、そして確実に楓の中に侵入する。
 この美しい身体を味わうことを許されたのは自分だけだという歓喜と、どんな時でも己のことを慕ってくる楓の一途な思
いに対する切ない痛み。
そして、隠しようもない自身の凶暴な欲に、伊崎は一気に中を征服した。




 「あっ、はっ、はっ」
 気持ちが、いい。
 「か、えでっ、さんっ」
 「あっ、あんっ、はっ」
名前を呼ぶ声が、艶っぽく濡れているのがくすぐったい。

 ズチュ グチュ

楓は律動を繰り返す伊崎の腰に足を絡め、腕に強くしがみ付きながら、腹を突き破るほどの勢いで押し入っているペニ
スに合わせて自分も腰を揺らしていた。
 最初に感じた痛みは既になくなっている。
いや、もしかしたらまだ痛みは残っているのかも知れないが、伊崎が欲しいという気持ちの方が強くてまったく感じることが
なかった。
 「楓・・・・・っ」
 伊崎が名前を呼んでくれる。
こういう時にしか呼び捨てにしてくれないつれない男の生真面目さは時として歯がゆくもあるが、伊崎がこんなふうに名前
を呼んでくれる時は彼の理性が飛んでいる時だとも分かっているので、嬉しくて仕方が無い。
 「きょ、すけっ」
 「楓っ」
 名前を呼び合い、唇を重ねる。それと同時に、下半身の密着も深くなる。
(ぜん、ぶっ、解けちゃえば、いいのにっ)
2人の身体がドロドロに溶け合って、1つになったらどんなにいいだろうか。
そうなれば伊崎のことをずっと恋焦がれる、胸が締め付けられるようなこの思いから解放されるのに・・・・・そう思うことが何
度もある。
 しかし、こうして別々の身体だからこそ、こんなふうに至上の快感を分かち合えるのだ。
 「す、きっ」
思わず零れた言葉に、次の瞬間、痛いほど強く抱きしめられる。
 「ああっ」
 それと同時に、中の伊崎のペニスが一回り大きくなったようで、その圧倒的な存在感に楓は反射的にそれを締め付け
てしまった。




 「す、きっ」
 子供が、切羽詰って言ったような言葉。
しかし、それは伊崎の中の何かを強く刺激して、思わず強く楓を抱きしめてしまった。
 「ああっ」
その腕の力が強かったのか、楓が声を漏らしたが、今の伊崎は愛しい相手を気遣うよりも、食らって食らって、食らい尽く
したい気持ちの方が強い。

 ズチュ ズチュ


 締め付けてくる内壁を押し開くように腰を押しつけ、ペニスで刺激した。
楓の感じる箇所はもうすべて分かっているので、ペニスの先端でそこを擦ってやるとさらに高い声で啼く。
 楓の中も、伊崎に最高の快感を与えてくれていた。
 「・・・・・はっ、あっ、あっ」
 「・・・・・っ」
伊崎は楓のペニスに手を伸ばして擦ってやった。それまでも伊崎との腹の間で擦られていた、フルフルと震えているペニス
は数度擦っただけで限界だったのか、
 「あ!!」
伊崎の手の中に精を吐き出してしまった。
 「・・・・・くっ」
 その瞬間、伊崎のペニスも今までになく締め付けられる。
伊崎は奥歯を噛み締めてその強烈な刺激に耐え、さらに奥へとペニスを突きこんでいった。早く、この熱い塊を吐き出し
たい、それも、楓の身体の最奥に。
 「んっ、やっ、ま、ま・・・・・って・・・・・っ」
 射精したばかりの楓は息が整わないのか、小さく口を開いて喘ぎ声を漏らすだけだ。

 グチュ ズリュッ

何度も何度も内壁を擦りあげ、楓を刺激すると同時に自身のペニスも鍛え上げる。
そして、
 「・・・・・っ」
 「あ・・・・・は・・・・・っ」
 最後に腰を突き入れ、楓の腰も引きつけると、熱い最奥に堪えていた精液を吐き出した。
トクトクと、中に精を吐き出しながら、伊崎はゆっくりと腰を揺する。
 「楓・・・・・」
 自分の熱を全て中に吐き出し、内壁にぬりこめるように、自身のペニスを何度も抜き差しをさせた。
 「・・・・・ぁ・・・・・」
すると、楓の口から熱い吐息が漏れてきた。それだけではない、今この瞬間、楓の内壁はまた伊崎のペニスを貪るように
蠢き始めたのだ。
 「・・・・・」
 伊崎の唇に笑みが浮かび、目を細める。まだ物足りないと思っているのは自分だけではない。
そう思うと、伊崎は楓の腰を掴みなおし、収めたペニスがまた力を取り戻すのを自覚しながら律動を再開した。