爆ぜる感情











 「チャイニーズマフィア?」
 屋敷に戻った伊崎は、後で行くからと楓を納得させて部屋に戻し、先ずは今日の食事会の結果を現組長であり楓
の兄でもある雅行に報告した。
雅行もイレギュラーな存在のウォンに違和感を感じたようだ。
 「大東組が大陸と手を結ぶとは噂で聞いたが・・・・・それが香港伍合会とはな」
雅行は日本と海外の組織は相容れないもの、一部では協力し合っても根本では信用しない方がいいと思っているが、
末端組織の日向組の一意見などはないのも同然だった。
ただ、雅行が師事している開成会の海藤も、あまり乗り気ではないということは雰囲気で感じていたが・・・・・。
 「それで、そいつはどうして今夜同席したんだ?」
 「・・・・・楓さんを見る為だと」
 「楓を?」
 「どこまで本気なのかは分かりませんが、奥田さんから楓さんのことを聞いて、顔が見たかったのだと言っていました」
 「・・・・・」
 雅行の顔はますます渋い顔になる。
弟の楓が、異性だけではなく同性までも惹き付けるほどの美貌の主であるということは雅行も認識していた。
まだ幼稚園に上がる前から誘拐されかけたことも何回もあるし、学校に通い始めたら上級生や教師にまで迫られること
もあった。
歳が離れた楓を、自分達家族にとっては宝物のように大切な楓を守る為に、雅行が伊崎と共に闇に葬った男達は数
知れない。
成長するにつれ、楓の美貌はますます磨きがかかり、最近ではハッとするような色気さえ感じることがあった。
そんな楓に会いたいと言って現れたというウォンの真意を、雅行は深く考えずにはいられない。
 「どんな奴だった?」
 「身分はおっしゃいませんでしたが、龍頭(ロンタウ)ではないと」
 「・・・・・」
 「組長」
 「警戒が必要だな」
何もなければ、後で笑えばいい。
しかし、何かあってからでは遅いのだ。



 ノックの音がしたが、楓はベットに座ったまま出迎えに立つこともない。
それが分かっているのか、
 「入りますよ」
一言声を掛けて入ってきた伊崎は、まだ服を着替えていない楓を見て僅かに溜め息をついた。
 「どうされたんですか?着替えないと皺になりますよ」
 「恭祐」
 「はい」
 「お前は、俺が男にあんな目で見られても何とも思わないのか?」
 「楓さん」
 「あいつ・・・・・まるで俺を品定めしているように見てた」
 幼い頃から色々と危険な目に遭ってきた楓は、相手の視線というものに敏感になっている。
そんな楓が感じたウォンの目は、冷たかった。
欲情どころか、感情というものさえも感じられず、楓を見る目もまるで美術品か何かを鑑定するような冷静なもので、か
えってそれが楓には薄気味悪く感じられたのだ。
(まだ、ヘンタイの方が分かりやすい)
 「楓さん」
 楓は両腕を伸ばした。
伊崎は苦笑しながらその腕を引っ張って楓を立ち上がらせると、そのまま帯を解き始める。
まるで綺麗にラッピングされたプレゼントを解くように、丁寧に着物を脱がせていく伊崎の手に、楓は気持ち良さそうにうっ
とりと目を閉じたまま身を委ねた。
 「いい着物ですね。奥田さんは本当に楓さんが可愛いらしい」
 「奥田のおじ様はいいおじいちゃんだよ。俺もあの人は好きだな」
 「・・・・・好きですか」
 「もちろん、恭祐のことは愛してる」
 楓は白い襦袢姿のまま伊崎に抱きついた。
 「今日はこのままここに泊まれ」
 「明日は朝から予定が・・・・・」
 「俺より大事なことか?」
言外に、絶対違うだろうという響きを含ませた楓の言葉に、伊崎は苦笑を零すしかなかった。



 白い滑らかな首筋に口付けをし、伊崎はそのまま襦袢を脱がせていった。
直ぐに表れた肌は女も羨むほどのきめ細かさと透明感があり、その白い肌がゆっくりと桜色に染まっていく鮮やかな変化
を伊崎は楽しんだ。
一つ一つの愛撫に素直に反応を返す楓は普段の我儘な小悪魔とはまるで違い、伊崎だけの可愛く淫らな恋人になっ
ている。
その姿を見れるのは伊崎だけだ。
 「ふ・・・・・あっ、んっ」
 小さな乳首を軽く噛んでやると、楓は身体を震わせて甘い声を上げる。
どこもかしこも感じやすい楓の身体・・・・・こんな身体にしたのは自分だと、伊崎は誰に向かっても大きな声で知らしめ
たいほどだった。
 「・・・・・す、け、さわ・・・・・て・・・・・っ」
 まるでねだる様に濡れたペニスを伊崎の足にこすり付ける楓は、既に快楽の波に溺れているように、ただ一心に伊崎
を求めてきた。
そこまで求められ、伊崎も何時までも理性が保つはずもなく。
 絡み付いてくる楓の腕をそっと離すと、素早く自分も服を脱ぎ捨てていく。
綺麗な筋肉の付いた身体をうっとりと見つめていた楓は、直ぐに伊崎の首筋に噛み付いた。
学校がある為自分の身体に伊崎の標を残せない楓は、まるでその代わりとでもいうように伊崎の身体に(それも目に付
く所に)キスマークや噛み跡を残して行く。
浮気防止だと可愛らしいことを言っていたが、伊崎としては抵抗する力のある自分よりも、よほど楓の方が心配だった。
楓が浮気をするということではなく、楓の意思に反して身体を奪われることが、だ。
 そうならない為にも細心の注意を払って楓を守っているつもりだが、若頭となった今では常に傍にいることは出来ない。
その役目を津山に任せなければならないことが悔しかった。
 「力を抜いて」
 楓を傷付けない様に丁寧に尻の蕾を解したが、今日は抱くつもりがなかった伊崎はローションも持ってきておらず、や
はり少しは中がきつい感じがする。
それでも伊崎自身止まらなかったし、楓も止めて欲しくなかっただろう。
 ペニスの頭が蕾にめり込んだ時、楓は辛そうに眉を顰めたが止めてくれとは言わず、伊崎の腕に爪をたてたまま挿入
の衝撃に耐えた。
もちろん、伊崎のペニスも搾り取られそうなほどの痛みを感じるが、楓の痛みに比べればと耐え、キスやペニスへの愛撫
を繰り返しながら少しずつ挿入を深め、ゆっくりと時間を掛けて全てを楓の中に埋め込んだ。
 「楓」
 「・・・・・っ」
 名前を呼ぶと、楓の中がぎゅうっと締まり、動かなくてもその刺激だけで達してしまいそうになってしまう。
それを唇を噛み締めて耐えた伊崎は、タイミングを計って動き始めた。
 「あっ、あっ、はっつ!」
既に知っている楓の感じる場所をペニスの先で突き、襞をペニス全体で擦りながら、伊崎は次第に律動を早めていく。
 「きょ・・・・・もうっ」
 「楓っ」
 高い声を上げてイッてしまった楓のその瞬間の刺激で伊崎も射精しそうになったが辛うじて耐える。
まだまだ、この甘い身体を味わい足りなかった。
 「楓・・・・・まだ終わらない・・・・・」
伊崎が耳元で熱く囁く。
今だ楓の身体の奥深くに入っている伊崎のペニスは熱く固いままだ。
(あなたが誘ったんですよ・・・・・)
既に朦朧としている楓の身体を再び揺すり始めながら、伊崎はさらに夜更けまで白い身体を貪り続けた。