光の国の恋物語





116









 もう、何度この身体を抱いてきたのかは分からない。
確かに数多くの女もその手に抱いてきたが、洸英は噂で言われていたほどには荒淫しているわけではなかった。
ほとんどが一夜だけの快楽を共にしただけであったし、妾妃として王宮に迎えた者もいるにはいるが、訪れるたびに抱いていること
は無く、ただ話をして時を過ごすことも多々あった。
 女達の多くは洸英を王と知って、打算で身体を与える者もいたし、中には本当に愛情を向けてきてくれた者もいたが、洸英に
とって愛しいと思える存在は過去にも現在にもただ1人、和季しかいなかった。
 「和季」
 「洸英様」
 名を呼ぶと、直ぐに言葉を返してくれる。
綺麗でいながら何時もは無表情な顔に、今は温かな微笑を浮かべているのを見ると、和季が本当に自分を受け入れてくれたの
だとじわじわとした実感が湧いてくる。

 クチュ

 唇を重ね、舌を絡めると、冷たい体温からは考えられないほどの熱い口腔内が洸英を迎え入れ、自分からも積極的に舌を絡
めてくる。
お互いの唾液が混ざり合い、横たわる和季の顎から滴るそれも勿体無いと舐め上げた洸英は、そのまま簡素な和季の衣を脱が
していった。
 「洸英様、湯浴みを・・・・・」
 その時、和季が少しだけ身体を身じろがせた。
 「なぜ?」
 「汚れた身体を抱かれるのは・・・・・」
何日も牢にいたわけではないが、それでも和季にとっては少しでも綺麗にしたいという思いがあるのだろう。
だが、洸英にとっては全く無用な懸念だった。
 「そなたの匂いは私の欲情をそそるだけだ。気にせずそのまま私を求めよ」



 熱い吐息が、冷ややかな自分の肌を撫でる。
洸英の手が衣を取り去り、自分の肌に触れていく。平坦な胸をそっと愛撫し、ささやかな乳首を口に含まれると、和季はピクッと
腰を揺らしてしまった。
 「・・・・・っ」
 「声を漏らしていいぞ」
 「・・・・・い、え・・・・・っ」
(どうして・・・・・っ?)
 何時もは、性器に触れられるまで・・・・・これ程に感じたことはなかった。
女ではないのだからと、胸に触れられても感じることなどないと思っていたし、実際にもそうだったが、今は洸英の手がどこに触れて
も熱く、ざわざわとした感覚に襲われてしまう。
 「あ・・・・・っ」
 立ち上がったペニスを洸英が掴んだ。
 「どうした、もう感じているのか?」
 「や、ま・・・・・って・・・・・っ」
 「お前のここは、もう甘い雫を零している。愛しいな、和季」
 「・・・・・!」
こんな甘い言葉を言われたら、身を隠すことも出来ない寝台の上でどうすればいいのか分からない。
クチュクチュという水音がどこから聞こえてくるのか考えたくもなくて、和季は目を固く閉じ、唇を噛み締めた。



 自分と同じように歳をとっているはずなのに、和季の白い身体は昔と変わらず瑞々しく、それと同時に円熟した柔らかさを持って
洸英の愛撫を受け入れていく。
洸英は和季の腰を抱き寄せ、胡坐を組んだ自分の足の上にまで身体をずり上げると、そのまま細身の和季のペニスを口に含ん
だ。
 「!」
 両性を持つ和季だが、身体の仕組みはどちらかといえば男性体の方が強く出ている。
ペニスは細身ながらもきちんと勃ち上がるし、精を吐き出すことも出来るが、そのペニスの下には双球は無く、そのまま女性器にあ
たる幼い小陰唇(しょういんしん)が垣間見えた。
 男か、女。性別で和季を区別しているわけではなかったが、洸英は和季の女性器に挿入したいとは思わなかった。
子が出来ないといわれていても、万が一出来てしまったら・・・・・和季の愛情が自分以外にも分け与えられることを考えるとどうし
ても我慢出来なかった。
(もう、ここに入れてもいいのだが・・・・・)
 今はもう、どんなことがあっても和季の愛情を疑うことはないと言えるが、あまりに幼いその部分は今まで抱いてきた女達のその
部分とは違い過ぎ、自分のペニスを押し込めば壊れてしまうのではないかと思う。
それに、今までの経験で、和季の後孔は洸英のペニスを柔らかく受け入れてくれるすべを心得ていて、ここでも十分快感を得るこ
とが出来るのだ。
 「んっ、ふっ、んんっ」
 口の中でペニスを甘噛みし、先端部分を舌先でくすぐると、堪りかねたように和季の唇から声が漏れ始めた。
高い嬌声では無く、押し殺したようなその声が、洸英の欲情を高めていく。
 「ふんん!」
 指を1本、慎ましやかな蕾に差し入れた。
きつい抵抗があるものの、少しずつ洸英の指を含んでいったその内部は、進入してきた指を締め付け、熱く蠢いている。
早く、ここに自分を沈めたい。
 「・・・・・っ」
 洸英は口の中からペニスを解放すると、乱れていなかった自分の下穿きの紐を緩め、
 「あっ!」
ペニスの先端を宛がったと同時に、グッと中に押し入っていた。



 まるでまだ知り合った当時のような性急な挿入に、痛みと圧迫感は確かに感じた。
それでも、自分の中を一杯に満たしてくれる洸英のペニスの存在を感じると、感じる痛みさえ愛しく思えてしまう。それ程自分は
洸英を愛しているのだと、身体中が叫んでいた。
 「あ・・・・・」
 「しばらく、このまま・・・・・」
 根元までの挿入は強引だったが、全てを和季の中に収めた洸英はまるでその感覚を自分の中に植えつけるようにそのまま動か
ないでいる。
(ああ・・・・・動いている・・・・・)
洸英が動かなくても、ペニスの脈動は和季の内壁に伝わり、和季の感覚はどんどん研ぎ済まれ、高まっていった。
このままでは、洸英よりも先に精を吐き出してしまうことになってしまうが、それを我慢することは・・・・・。
 「・・・・・っ」
 「和季?」
 自分の肩にしがみ付いてくる和季の顔を覗き込もうと洸英の身体が動き、同時に和季の身体の中のペニスの角度が変わって
しまって、敏感な内壁をぐっと押し退けるように動いた。
 「!」
 「・・・・・和季・・・・・」
その瞬間、洸英の腹に熱い精を吐き出してしまった和季は、色白の肌を紅潮させて泣きそうに顔を歪めてしまった。



 腹に飛び散った和季の精。熱いそれが和季の感じた証だということが分かると、洸英の頬には鮮やかな、そして自信に満ちた王
者の笑みが浮かんだ。
 「お前は、私のものだな?」
この身体は、既に自分の言うことしか聞かないのだ。
 たった今精を吐き出したばかりで身体から力が抜けてしまったはずの和季だが、それでも内壁は洸英のペニスを離さないというよ
うに締め付けている。
そして・・・・・真っ直ぐな眼差しが洸英に向けられた。
 「あなたも・・・・・私のものですね?」
 「・・・・・ああ、そうだ。今までも、そしてこの先も、私の心も身体も、お前だけのものだ、和季」
 洸英の答えに、和季は静かに笑った。
 「今までは、違うかもしれませんが」
 「そう言うな、和季。お前が私につれなくしたので、子供のように反抗しただけだ・・・・・許せ」
 「もちろん・・・・・許しますよ、私の王」
愛しい愛しい愛しい。何度言えばいいのか、どんな言葉で表していいのか分からない。
それは和季も同じだったのか、しばらく視線を合わせた後、なぜか同時にふっと笑みを漏らす。
 「お前が足りない、和季」
 まだ和季の中に収めたままのペニスは勢いは衰えておらず、これから更なる高みを目指す為に、洸英は奪うように和季の唇に口
付けをしながら、再び愛しいその身体を貪り始めた。