光の国の恋物語





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 「・・・・・嫌なら、直ぐにそう言うんだよ」
 口付けを解き、濡れた小さな唇に指を触れながら言うと、黎は一瞬目を瞬かせ、次に小さく笑った。
 「前と、違いますよ?」
 「うん・・・・・それは、分かるけど」
 「本当に、僕も・・・・・望んでいます、から」
黎の言葉が嘘ではないということはよく分かる。しかし、気持ちと心が別だということも、洸竣はよく理解していた。身体だけの、快
楽だけの関係を持ってきた自分だから言えることだし、黎もまた、義兄との関係で理不尽なめに遭ったことがある。
(恐怖は、身体から消え去らない・・・・・)
 「洸竣様・・・・・?」
 黎が、自分を求めてくれて、とても嬉しいと思うと同時に、どうやってこの細い身体に快感を刻み込んでいっていいのか、洸竣自
身もまだ分からない。
 ただ、泣かさないこと、傷付けないこと。
それだけは何としても守ろうと、洸竣は心に誓った。



(じ、自分で脱いだ方がいいのかな・・・・・)
自分から服を脱ぐなど、自らが誘っているように思われないかと心配になったが、考えてみれば今のこの状態も黎の方から仕掛け
たといってもいいのだ。
 「・・・・・っ」
 いくら、この気持ちが純粋な恋で、王子として・・・・・主としての洸竣への奉仕ではないと思っても、やはり、洸竣にしてもらうこと
は気が引けてしまう。
もちろん、この先どういったことをすればいいのか、具体的には何も分からない黎にとっては、行為自体は洸竣に頼らなくてはならな
いが、その前までは自分がすべきではないかと思った。
 自分に圧し掛かってくるように見下ろしてくる洸竣の視線から目を逸らし、黎は震える手で一つ一つ、服の紐を解いていく。
洸竣はそれを止めることはぜず、ただじっと視線を向けてくるだけだ。
(は、はずか、しい・・・・・あっ)
 「こ、洸竣様」
 「どうした?」
 「ぼ、僕、まだ身体を清めていないので・・・・・」
 もちろん、旅から戻って服を着替える時に簡単に身体は拭ったものの、きちんと湯に使って汚れを洗い流したわけではない。こん
な汚い身体を洸竣に触れさせることは出来ないと、黎は少し時間をくださいと頼んだ。
 「す、すぐに、戻って参ります」
 「・・・・・」
 「洸竣様」
 「・・・・・いや、そのままでも構わない」
 「そ、そんなっ」
 「簡単にでも身体を拭ったのなら十分に綺麗だろう?」
 そう言って、ほとんど脱げ掛かった首筋から胸元へと舌を這わせてくる洸竣の肩を、黎はお願いですからと懇願しながら押し返
す。
(綺麗な洸竣様が汚れてしまうなんて・・・・・っ)
身体を合わせるということがどんなことをするのか・・・・・しかし、お互いの裸身を見つめ、触れ合うことはするだろう。その時、やはり
この身体を洸竣に触れさせることは、怖い。
 「お、お願・・・・・」
 「黎、身体を合わせるということは、けして綺麗なだけの行為ではないよ」
 泣きそうに顔を歪める黎に対し、洸竣は少しだけ笑った。
 「お互いの吐き出したものを口に含むし、身体の隅々に舌を這わす。それにね、黎は男の子だから、私と繋がるためには・・・・・
ここに」
 「!」
洸竣の指先が、服の上から信じられない場所を撫でる。
 「ここに、私のものを入れるんだ。ね?いくら湯に入って身体を清めたとしても、直ぐに互いが汚れてしまうんだよ。それは嫌?ね
え、黎。私と、そんなことは出来ない?」
黎は身体を硬直させたまま、じっと洸竣を見つめていた。



(・・・・・やはり、まだ早いか)
 抱きしめることから、口付けをして、身体に触れて・・・・・繊細な神経を持つ黎には、順番通りに行為を進めていく方がいいのだ
ろう。
洸竣は軽く黎の額に口付けをすると、そのまま身体を起こした。
 「今日は、もうここで・・・・・っ」
 止めようという言葉は、いきなり延びてきた黎の手で途切れてしまう。
黎は洸竣の腕を掴んで、再び自分の身体の上へと引き落とした。
 「止めないで下さい・・・・・っ」
 「黎・・・・・」
 「・・・・・洸竣様が、お嫌でなければ・・・・・この、ままで・・・・・っ」
 「・・・・・」
(全く・・・・・)
 何も知らないと思っていたのに、黎はこちらがドキッとするような誘い文句を掛けてくる。
(ああ、もう・・・・・知らないぞ)
 「大切に・・・・・大切に、抱くからな、黎」
痛みも、恐怖も、そして羞恥も。黎に教えてやれるのは自分しかいない。洸竣はそう迷う自分の心に決着をつけると、そのまま黎
の閉ざされた足の間に手を差し入れた。

 服を全て脱がしてしまうと、骨がうっすらと見えてしまいそうなほどに細い身体が現れた。以前少しだけ見た時よりも明らかに痩せ
てしまったのは、自分とのすれ違いが原因なのだろう。
申し訳ないと、可哀想だと思うことは後回しにした。それよりも、この愛に飢えた身体に、溢れんばかりの愛情を注ぎたいと思う。
 「・・・・・っ」
 小さな胸元の飾りを口に含むと、薄い胸が反り返る。そのまましゃぶり続けると、小さな乳首は少しだけたちあがった。
それを見た洸竣は、もう片方の胸にも唇を寄せる。そして、
 「!」
足の間に差し入れたものの、強く挟まれて動けなかった手を少し強引に動かし、自分の腰を挟ませるようにした。
 「こ、洸竣様」
 「ん?」
 「あ、あの・・・・・」
 羞恥の為に足を閉じたいのであろうが、洸竣の身体が邪魔でそうすることも出来ないのだろう。分かりきったことに洸竣は笑みを
浮かべたまま、改めて黎の身体を見下ろした。
 「・・・・・」
 上半身も骨が透けるようだったが、その腰はまるで洸竣の両方の指を回せば足りるのではないかというくらいに細い。血管の浮
き出た太股も、これから行う行為に耐え切れるのだろうか・・・・・。
(・・・・・いや、迷わないと決めたはずだ)
ここまで来てこの行為を止めてしまう方が、黎の心に大きな傷を残してしまうだろう。



 しばらく黙って自分の身体を見下ろしていた洸竣。きっと、貧弱な自分の身体を見て、抱くのを躊躇っているのだろう。
(でも・・・・・でも、僕・・・・・)
以前にも見られてしまったが、それでも、前と今では、自分の気持ちはまるで違っていた。
 しかし、こんな身体を洸竣に差し出すのは申し訳ない・・・・・無意識のうちに身体を隠そうと身じろぎをした黎だったが、洸竣は
そのまま手を伸ばして、浅ましく震えていた自分のペニスを握り締めてきた。
 「!き、汚いですっ」
 「そんなことは無い。黎のこれは、私のものと違って、とても綺麗な色をしている。形はまだ幼いが、それはこれから私が大人にし
てやればいいことだろう」
 洸竣の言葉につられるように、その下半身に視線をやると、まだ夜着を脱ぎ捨てていない洸竣のそこは、明らかに形を変えて布
を押し上げていた。男のそこが変化するということは、性的に興奮しているということだ。
(僕なんかに・・・・・感じてくださってる・・・・・っ)
 「・・・・・あっ」
 洸竣の変化に目を奪われていた黎は、自分のペニスを緩やかに扱かれて甘い声を上げた。
黎は、今まで自分のそこを慰めた経験は無い。今までに何度か、朝目覚めた時に下着を汚していたことがあったが、明らかな意
図を持ってここには触れなかった。
 自分の両親の関係が、性にたいして黎を臆病にさせていたのかもしれないが、感じるという感覚はちゃんと備わっているようだ。
 「・・・・・んっ・・・・・はっ」
ゆるゆると竿の部分を擦られ、先端を爪の先で刺激される。
先端から何かが漏れてきて、それが洸竣の手を伝い、自分の尻の狭間まで濡らすのが分かった。
 「よ・・・・・汚れ、ちゃう・・・・・っ」
 「構わないよ。黎、気持ちよかったらそのままいきなさい」
 「い・・・・・く?」
 「その感覚が分からない?じゃあ・・・・・排泄する時のことを思い出して・・・・・ほら、出たくなった?」
 「・・・・・っ!」
 洸竣の手淫のせいか、それとも言葉で導かれたのかは分からないが、ぶるっと腰を振るわせた黎は、そのまま熱の塊をペニスか
ら吐き出してしまった。