光の国の恋物語





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 「・・・・・っ」
 寝返りをうとうとした黎は、下半身に走った痛みに思わず目を開いてしまった。
(・・・・・い、た・・・・・)
股はまだ何かが挟まったように力なく広がっているような感覚で、その奥の、普段自分も見ないような場所はズキズキと一定の痛
みが襲ってくる。
それがどうしてなのか、黎は直ぐに頭の中に記憶が蘇った。
(僕、昨日・・・・・)
 自分から抱いて欲しいと願って、洸竣は黎を抱いてくれた。
実際に身体を重ねるという行為は黎が頭の中で想像していた以上に恥ずかしく、痛くて、大変で、こんなことを本当に楽しく思え
るのかと、それまで数々の浮名を流してきた洸竣を少し尊敬してしまった。
 もちろん、受ける側の自分とは違うだろうが、悠羽も、莉洸も、サランも。皆、幸せそうな顔をしていて、抱かれることに躊躇して
いるようにはとても見えない。
(僕も、同じ顔を出来るんだろうか・・・・・)
 また、あんな痛みを受けることが出来るかといわれれば、やはり少し躊躇いはするものの、そんな自分の気持ち以上に、洸竣が
再び自分を抱こうという気になってくれるのかも心配だ。
 自分から何かをするということもなく、ただ、洸竣の手を待つことしか出来なかった。きっと、全然面白くなく、気持ちも良くなかっ
ただろうが、洸竣はもう一度、自分を抱いてくれる気持ちになってくれるだろうか・・・・・。
(・・・・・ここ、洸竣様の寝台・・・・・)
 いくら気を失ってしまったとしても、主である洸竣の寝台に自分がこんなにも大きな顔をして寝ているというのはとても失礼だ。
黎は何とか身体を動かして自室に戻ろうと思った。
 「・・・・・っ」
 少しだけ頭を動かすと、自分の隣に誰かがいることが分かった。ここは洸竣の私室の、それも寝台の上で、それが誰かなど考え
なくても分かる。
(洸竣様・・・・・)
 洸竣は片膝をたて、そこに腕を乗せてじっと窓の方を見ている。
ほのかに漏れてくる外の明かりに照らされたその横顔はとても綺麗で・・・・・まさしく、華の王子と呼ばれるに相応しい気がした。
こんな綺麗な人に、この身体を愛されたのだ。
 「・・・・・」
 そう考えると、黎は自然に身体が熱くなった気がして、慌てて視線を逸らそうとしたが、
 「・・・・・黎?」
同じ寝台にいた洸竣はその気配に気付き、視線を黎の方へと向けてくる。その眼差しの中に、確かな温かさと愛情を感じて、黎
は何だか泣きそうになってしまった。



 気を失うように眠りに落ちた黎。
洸竣は汚れた身体を綺麗な布で拭ってやると、そのまま自分の寝台へと横たわらせた。
 「・・・・・」
 今、自分が感じている気持ちをどういう言葉で言い表していいのか分からないが、洸竣は手に入れたものの重い価値をひしひ
しと感じていた。
 黎が女ならばもちろん責任を取っただろうが、男ならば尚更・・・・・その責任は重いと思う。
もちろん、洸竣は黎を手放すつもりはないし、この先、妻と呼ぶ相手は娶らないと思うが、そんな感情だけで全ての決着がつけら
れるほどに自分の地位は軽くなく、洸竣は王子という地位にいる自分を少しだけ恨めしく思ってしまった。
(民間ならば、男同士の結婚も許されているというのに・・・・・)
 甘い、甘い、黎の身体。次に味わうのは何時になるだろうか?
負担をかけてしまったことはよく分かっているので、大切に気遣ってやらなければならない。
 「ああ、そういえば・・・・・あんなに早く気をいかされたのは初めてだったな」
 黎が気を失ってくれたので良かったが、本当なら経験が豊富とは言えなかった自分の情けなさに何と言い訳をしたらいいのか分
からなかったくらいだ。
(本当に、黎は私を情けなくしてくれる)
王子ではなく、ただの男にしてくれる・・・・・洸竣は思わず苦笑を零した。

 「・・・・・黎?」
 それからどのくらい経っただろうか。
ようやく外が明るくなってきた頃、隣で身じろぐ気配を感じた洸竣は、自分に背中を向けようとする黎に気がついた。
 「黎」
 「・・・・・」
 「身体は?痛むだろう?」
 「い、いいえっ」
 始めは黙っていた黎も、気遣う言葉を掛ければ直ぐに否定してきた。
 「ぜ、全然、痛くなん・・・・・っ」
起き上がろうとした黎は、直ぐに眉を顰めて蹲った。
 「こら、無理をしなくていい」
洸竣はそう言うと、枕元にあった傷薬を取った。化膿止めのこれに、鎮痛剤の役割があるかどうかは分からないが、それでも何も
つけないよりはましだろう。
 「このまま大人しくして」
 「な、何を・・・・・?」
 恐る恐る聞いてくる黎に、洸竣は手にしている物を見せた。
 「薬をつけるんだ。身体を拭いた時に、少し血が付いていたんだが、起こしてはいけないと思ってあまりよくは見ていなかった」
 「ま、まさ、か・・・・・やっ、だ、駄目です!」
 「黎」
 「自分でっ、自分でしますからっ」
 「自分では見ることが出来ないだろう?安心しなさい、昨日のようなことはしない。ただ、手当てをしたいだけだ」
 既に身体を合わせたのだ、それ程羞恥を感じなくてもいいと洸竣は思うが、黎にすればそれとこれとは話が違うのかもしれない。
しっかり明かりを点けた中で、熱に浮かされてはいない状態で身体を見られるのは・・・・・。
(それでも、後にしておくとますます気まずくなるだろう)
 「黎、言うことを聞きなさい」
 「こ、洸竣様・・・・・」
 「直ぐに済ませるから」



 明かりを点け、下半身を剥き出しにした状態で、あろうことかその恥部を洸竣に見られてしまうという恥ずかしさ。
黎は顔を真っ赤にし、出来るだけ敷布に顔を隠すようにして(無駄な努力だとは分かっていたが)、早く洸竣の言う手当てとやらを
済ませてもらおうとした。
 「足を開いて」
 「・・・・・っ」
 「こら、黎、こんなに力を入れていては、私の手も入らないよ」
 「で、でもっ」
 「それとも、赤子のように足を持ち上げて欲しい?」
 「!」
 濡れたおしめを換える姿を想像してしまった黎は、それだけは嫌だと、強張る足から何とか力を抜いた。
すると、洸竣は黎の腰を自分の膝の上まで持ち上げ、
 「!」
そのまま僅かに開いた足の間に手を入れて、少し強引に大きく開いた。



(・・・・・少し、腫れているな)
 顔を近づければ、もっと状態がよく分かると思ったが、これ以上すれば黎が羞恥の為にますます萎縮してしまいそうだ。
薬を塗っておけば間違いはないだろうと、洸竣は昨日とは別の意味で薬をたっぷりと指先にすくい取り、それを黎の尻の蕾に押し
当てた。
 「!」
 表面だけではなく、中にまで指を差し入れる。夕べ、自分のペニスを受け入れてくれた小さなそこは、まだその大きさを覚えてい
るのか、洸竣の指1本を、わりと容易に飲み込んだ。
 「ふ・・・・・っ」
 「・・・・・」
 熱を持っている内壁と、その入口に、薬が浸透するように何度も指を動かす。
すると、黎の幼いペニスが僅かに勃ち上がってきた。
 「・・・・・っ」
黎は目を強く閉じていて、自分の変化には気が付いていないようだ。
(どうするかな・・・・・)
 まるで、自分の欲望を試されているような気がしたが、もちろんこの状態の黎を再び組み敷くことはあまりにも可哀想で出来な
い。
洸竣はもう1回薬を取って塗りつけると、黎の腰を寝台の上に下ろし、下半身を掛け布で隠してやった。
 「さあ、終わった。今からお前の着替えを取ってこよう」
 「・・・・・すみません」
 「いや、お前の世話をするのは楽しいからね」
消え入りそうに礼を言う声に笑い、そっと髪をかき撫でながらそう言った洸竣は、しばらくの間黎を1人にさせてやろうと、寝台から
立ち上がった。