光の国の恋物語





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 稀羅は莉洸の身体の変化をおかしくないと言ってくれた。莉洸が稀羅を愛しているのならば、この身体の変化は当然のものだ
と・・・・・。
(僕は・・・・・稀羅様を愛して・・・・・る?)
尊敬をしているということははっきりと頷ける。
厳しい国情を何とかしようとする情熱と、あれほど民に慕われている彼の人間性を凄いと思っていた。
だが、それを、愛というのだろうか。
今まで誰かを恋しいと想う事が無かった莉洸にとって、稀羅の言葉が真実そうなのかどうか確かめることは到底出来なかった。
 「あっ、あっ」
 そんな莉洸の途惑いを宥めるように、稀羅の指は繊細に莉洸のペニスを愛撫してくる。
15歳という年齢差以上に、実体験もとても稀羅の足元にさえ及ばないほど自分が未熟だと分かっている莉洸は、稀羅の言葉
を信じて身を任せることしか出来なかった。
 「稀、稀羅、様っ」
 「莉洸・・・・・」
 「・・・・・」
 稀羅に名前を呼んでもらうのは嬉しい。
以前は『王子』と呼ばれるたび、稀羅との間に歩み寄れない距離を感じていた。しかし、今は、名前を呼ばれるたびに、一歩ずつ
距離が縮まっていくような気がする。
その自分の気持ちが、恋というものなのかもしれない。
(稀羅様のお言葉を信じなければ・・・・・)
どういう意味にせよ、自分自身が蓁羅に骨を埋めることを誓ったのだ。



 「莉洸・・・・・」
 名前を呼ぶたびに、莉洸の強張っていた表情が柔らかくなっていくのが分かる。
もっと早く名前を呼んでやれば良かったと思ったが、稀羅自身自分の気持ちを見つめ直す為にもそれだけの時間が必要だった。
 初めは、大国光華国の大事な宝を奪ってやりたいと思った。
それが、たまたま忍びで訪れた光華国の町で出会った第三王子莉洸だっただけのことなのだと思っていたが、今にして思えば自
分には無い純粋さや優しさを持つ、儚い美しさの莉洸に一目で心を奪われたのだと分かる。
光華憎しというのは、既に口先だけの言い訳にしか過ぎなかったのだ。
 もはや、稀羅は莉洸を手放すことなど考えられない。
今は何も知らない莉洸が唯々諾々と自分に従っているだけかもしれないが、いずれ莉洸が様々な人間に触れ、稀羅に対して
抱くものが愛情で無いと気付いたとしても、手足を切り落としてでも側から離すつもりは無かった。
(・・・・・いや、莉洸はこのままの姿が一番美しい。なれば、その手足に黄金の鎖を付けて、王宮の地下深くで囚われの身として
しまおう)
 「うあっ!」
 嬲っていた莉洸のペニスから、再び精液が溢れ出た。
そうでなくてもこういった行為に慣れていない莉洸は、すっかり疲れきってしまったかのように寝台に身を横たえている。
 「莉洸」
 「稀羅さ・・・・・ま」
 「このぐらいで参ってもらっても困るぞ。私はまだ、一度もそなたの中を味わっておらぬ」
 「あ・・・・・っ」
 稀羅が何を言おうとしたのか、しばらくしてようやく気付いたらしい莉洸は、顔ばかりか身体全身を薄赤く染めて、途惑ったような
視線を稀羅に向けてきた。
 「ぼ、く、どうした、ら・・・・・」
 「足を広げて、そなたの全てを私に見せなさい」
 「・・・・・っつ!」
それがどんなに恥ずかしい行為か・・・・・莉洸は目を見開いて何度も首を横に振ったが、稀羅は許すつもりは無かった。
とにかく、今夜この身体の全てを自分のものにしなければ、稀羅自身の心が落ち着かないのだ。
 「嫌ならばそなたが動くことは無い。だが、私も手を止めるつもりは無いぞ」
 そう言うと、稀羅は寝台の飾り棚の中から小さな瓶を取り出した。
莉洸を再び王宮に連れて来た時から、いずれはと思い用意させていたものだ。
 「・・・・・」
光華国の市で売られていた上等の香油。
僅かに花の香りをさせるそれを手の平に注いだ稀羅は、冷たかったそれが少し人肌に温まったことを確認してから、
 「なっ?」
そのまま、その手の中のものを莉洸の尻の狭間にゆっくりと垂らし始めた。



(な、何っ?これは・・・・・っ?)
 少し冷たい粘ついたものが身体の表面を流れていく。
何をされたのか分からない莉洸がそのまま稀羅に問い掛けるような視線を向けた時、何かがいきなり自分の信じられない場所に
侵入してきた。
 「ぐっ!な・・・・・にっ?」
 「力を入れるな、莉洸。今入っているのは私の指だ」
 「ゆ・・・・・び?・・・・・なっ、なん、て、こと!」
あんな汚らわしい場所に、一国の王である稀羅の指が・・・・・そう思うだけで卒倒しそうになった莉洸は、余計に身体に力が入っ
てしまった。
 「莉洸、力を抜くんだっ、それでは指さえ動かせぬっ」
 「・・・・・っ」
(稀・・・・・羅様・・・・・苦し、そう・・・・・)
直ぐ目の前にある稀羅の、眉間に寄った皺と額に浮かんでいる汗を見た莉洸は、稀羅に苦痛を与えているのが自分だと思った。
何とかしなければいけない・・・・・莉洸は懸命に稀羅が言ったように身体の力を抜こうと、何度も何度も呼吸を繰り返す。
 「・・・・・!」
 それが功を奏したのか、自分の身体の中に入っていた稀羅の指が動いた。
 「こ、このま、ま、出し・・・・・てっ」
これ以上汚したくないと訴えた莉洸だったが、
 「ひゃあ!」
いきなり、身体の中で指を曲げられ、内壁を擦られて、ビクッと信じられないほど身体が跳ねてしまった。
 「浅い場所にあるが・・・・・ここか?」
 「やっ、やっ、こわ、怖い!」
痛みと熱さは変わらずあるのに、身体の中心から湧き上がってくる激しい快感が強烈に莉洸の感覚を支配する。
ビクビクと震える身体は収まらないまま、莉洸は何とか止めて欲しいと稀羅に訴えようとした。
「ふっつ!」
 しかし、そんな莉洸の怯えを強引に塗り替えるように、稀羅は絶え間なく莉洸に快感を与え続けた。
先程身体が跳ねるほどに感じた場所を何度も刺激し、何時しか尻の蕾に感じる圧迫感はさらに酷くなった感じがした。
莉洸は止めて欲しいという言葉を言うことはとても出来ず、ただただ与えられる快感と痛みに翻弄され続けた。



(もう、いいか)
 男の抱き方は衣月から聞いた。
とにかく全てが初めてであろう莉洸の身体は慣らし過ぎるほど慣らしても足りないかもしれないと言っていたが、今、あれほどに固く
窄まっていた莉洸の尻の蕾は、稀羅の骨ばった指を三本ほど銜え込んでいた。
 本当は、もっともっと、慣らした方がいいのだろうということは考えれば分かる。だが、稀羅の方がもう待てなかった。
 「莉洸・・・・・」
正面から莉洸を見下ろし、そのまま細い足の膝裏を持って大きく開かせる。
 「入れるぞ」
 「・・・・・っ」
 「これ以上痛みを消してやることは出来ぬ。叫びたいほどの痛みを感じたら、構わず私のこの指を噛め」
そう言うと、稀羅は片手の手の平をそっと莉洸に触れさせると、人差し指と中指を小さな口に差し入れ、
 「・・・・・っ」
ペニスの先端を僅かに口を開いた蕾に差し込んで挿入を始めた。
 「!!!」
 「つ・・・・・っ」
莉洸が感じた激痛そのままに、口に含ませていた指を噛み千切られそうなほどに噛まれた稀羅は痛みに唇を噛み締めるが、この
痛み以上の痛みを莉洸が感じているのだと思うと、指などどうなってもいいとさえ思った。
蕾の中に埋まっているのは、まだペニスの先端の半分もない。
その部分を痛いほど締め付けられてしまった稀羅は、いっそのこと一気に中に差し入れた方がいいのではないかと思って足を抱え
直そうとした時、
 「・・・・・莉洸?」
 不意に、痛いほど噛み締められていた指から歯の感触が無くなった。
 「莉洸っ」
血の気の無い顔色をしたまま、目を閉じた莉洸が全く動かなくなったのに気付いた稀羅は、痛いほど締め付けられているままのペ
ニスの先端を直ぐに引き抜いて莉洸の身体を抱きかかえた。
 「・・・・・っ」
 薄い胸に当てた耳には、僅かな呼吸が聞こえてくる。
心臓が止まったのではなく気を失ったのだとようやく分かった稀羅は、莉洸の身体を抱きしめたまま深く安堵の息をはいた。