光の国の恋物語
86
全ての衣類を脱ぎ捨てて誰かを抱くのは、もしかしたら初めての経験かもしれなかった。
何時もは下半身だけを寛げて性急に身体を繋いで・・・・・それだけ。相手に労わりの言葉を掛けることも無く、愛していない相手
に甘い囁きを掛けることもない。
それが普通だと思っていたのだが・・・・・それは間違いだったのだ。
今ならば、これほどに愛しいと思う相手に対して、行動しないという選択がありえないことは分かる。
愛しているのならば素肌と素肌で触れ合いたいと思うことが普通だ。
「悠羽」
「ん・・・・・っ」
名前を呼ぶと、嬉しそうに小さく答え、悠羽は口付けを求めてきた。
深い貪り合うような口付けよりも、軽くじゃれるようなそれが気に入っているようで、悠羽はかなり緊張を和らげてきたようだ。
洸聖は今だと思い、寝台の隠し棚に入れてあった香油を取り出した。男同士の性交渉では、こういった道具を使うと円滑に事を
進められると教えられたからだ。
「・・・・・」
悠羽が口付けに夢中になっている隙に、洸聖は片手で器用に小瓶の蓋を取ると、手の平にたっぷりと香油を垂らし、そのまま
その手を悠羽の尻の狭間に差し入れた。
「・・・・・っ」
その冷たさと違和感にさすがに悠羽はビクッと身体を震わせ、物言いたげな視線を向けてくる。
それに向かって洸聖は言った。
「慣らさねば、また以前のようにお前を傷付けてしまう」
「な、慣らす?」
「これは滑りを良くする為の香油だ。お前の尻の蕾はとても狭いだろう?今のままでは私の指さえも受け入れぬ状態だが、これ
を使って慣らせば、いずれ指が数本入るそうだ。もちろん、指と私の陰茎との大きさが違うのは当たり前だが、少しでもお前が快
感を感じるように、私の全てを痛み無く受け入れてもらう為に、これで慣らすことは絶対にしなければならない、よいな?」
「よいな?」
そう言われ、嫌ですと首を振ることは悠羽には出来なかった。
理路整然と香油を使う理由と慣らしの重要性を説明してくれる洸聖の声には甘さはほとんど無かったが、悠羽は返って物慣れ
ない洸聖のその様子に好感が持てた。
たとえ今までに幾人の女性をその手に抱いてきたことが真実だとしても、今自分達は手探りで自分達の愛し方を探しているよう
な気がする。
(大丈夫・・・・・大丈夫だ、きっと)
濡れた洸聖の指が自分の尻の蕾の中に挿入され、恐々と内壁を愛撫していた。
身体の中から触れられるという感覚は本来男ならば経験をしないことだろうが、洸聖を愛した悠羽はこの先も何度も同じ感覚を
感じるのだ。
洸聖が快感を感じてくれるように早く慣れなければと唇を噛み締める。
と。
「ひゃあ!!」
いきなり、身体が弾んだ。
身体の中のどこかを指の腹で擦られた時、まるで雷で打たれたかのような激しい衝撃を感じたのだ。
「悠羽、痛むのか?」
突然の悠羽の反応に、洸聖は指を抜こうとする。
しかし、それさえもたまらない快感になって、悠羽は無意識の内に自分の中にある洸聖の指を締め付けてしまった。
「・・・・・痛みでは、無いんだな?」
「な、なんだ、か・・・・・身体がゾクゾク、して・・・・・あぁっ、こ、わい、怖いですっ、こうせ、様!」
「いや、それで良いのだ。男の身体の中には激しい快感を感じる場所があると聞いた。お前は当たり前に感じているだけだ」
教えられたことに間違いは無かったと確信した洸聖は、更に激しく悠羽の内壁を刺激し始めた。
初めは傷付けることが怖くてほとんど単調な動きしか出来なかったが、悠羽が感じ始めると内壁もまるで生き物のように煽動し始
め、洸聖の指に縋るように巻きついてきた。
これが自分の陰茎だったら・・・・・そう思うと心が逸るが、今回は前回の乱暴な行為のやり直しだと自身の心に言い聞かせ、洸
聖は徐々に指を増やしながらも執拗に蕾に愛撫を施した。
何時しか洸聖自身の陰茎も勃ち上がり、触れるまでも無く先端から快感の印の液を零し始めたが、洸聖は敷布を濡らすそれ
にも一切構わなかった。
「あっ、あんっ、はっ・・・・・ぅうっ」
それよりも、自分の指の動き一つで、淫らに身体をくねらす悠羽を見ていることに夢中だった。
あれほどに恥ずかしがっていたのに、今では大胆に足を開き、洸聖の指を従順に受け入れている。
やがて、小さな両手が勃ち上がっている自身の陰茎を両手で握り締めた。
「悠羽、どうした」
「も・・・・・」
「・・・・・」
「も、漏れて、しまいそ・・・・・で・・・・・」
快感と羞恥で顔を真っ赤にした悠羽が小さな声で答える。
尻の蕾への刺激でそれほどに感じているのかと、洸聖は額に滲み出た汗が頬に垂れてくるのを感じながら口元を緩めた。
「手を離せ」
「で、でも・・・・・っ」
「私の愛撫で感じているお前を見せてくれ。悠羽、この場には私しかおらぬ。お前がどんなに淫らな姿を晒したとしても、私は嬉
しいばかりなのだぞ」
「・・・・・っ」
「さあ、悠羽」
「・・・・・っあ!」
まるで洸聖のその言葉に促されるように、悠羽は小さな叫び声と同時に、洸聖の腹へ向かって精を吐き出していた。
あれほどに恐れていた挿入は、呆気ないほどに簡単だった。
もちろん、洸聖の陰茎は悠羽のものとは比べ物にならないほどに大きいもので、挿入された時の圧迫感はかなりのものだったが、
洸聖がかなり念入りに解してくれたおかげで、切れたりするようなことは無かった。
そして・・・・・。
「ふっ、はっ、ぐっ」
初めはゆっくりと、悠羽の様子を見ながら動かされていた陰茎は、今はかなり激しい動きになっていた。
太い先端で先程感じた内壁のある部分を刺激されると、恥ずかしいくらい涙を流しながら感じてしまう。
痛みは、ある。確かにそれはあるのだが、その痛み以上の快感が頭も身体も覆いつくしていくのだ。
(わ、私は・・・・・どうなる・・・・?)
こんなに快感を感じてしまって、いったい自分の身体はどう作り変えられてしまうのだろうか。
「んっ」
口付けをして、小さな舌を絡めるように吸って。
陰茎は、狭い内部を思う様蹂躙して。
グチュッ グチュッ
淫らな粘膜の擦り合う音と、身体をぶつける音を部屋の中に響かせながら、洸聖は自分の身体全体で悠羽の全てを支配して
いると感じていた。
いや、自分の熱く荒れ狂った陰茎を絡め取り、愛撫を与えてくれているのは悠羽の方かもしれなかった。
「はっはっ」
「・・・・・っ」
しっかりと身体を密着させ、洸聖は最後の瞬間を迎えるべく、今まで以上に激しく悠羽の身体を貪る。
痛々しいほどの痩せた幼い身体が、何時しか花開くように艶やかに、柔らかく変容してきた。
「ゆ・・・・・はっ!」
「・・・・・!」
グッと、最奥に陰茎を押し込んだ洸聖は、そのまま熱い精を吐き出した。
衝撃に身体がずり上がりそうになってしまった悠羽の腰をしっかりと掴み、全ての精を中で吐き出すまで離そうとは思わなかった。
(これで孕めばよいものを・・・・・っ)
子が出来れば、悠羽が自分から離れることは絶対に無いと思う反面、その生まれた子にさえ嫉妬してしまうかも知れないほどに
悠羽に傾倒しているというのを自覚している。
「・・・・・っ」
とにかく今は、まだこの甘い身体に溺れていたい。
そう思った洸聖はすっかり力が抜けてしまった悠羽の腰を抱え直し(悠羽もこの洸聖の射精で自分も数度目の精を吐き出してい
た)、最奥に吐き出した精の滑りを利用して、一向に萎える気配の無い陰茎で再び悠羽の身体を貪り始める。
「や・・・・・」
今日と言う日をようやく迎えたのだ。
洸聖はまだまだ足りないと、深く腰を沈めていった。
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