外持雨 ほまちあめ











 部屋の中の照明は明々と点けられたままだった。
普段の倉橋ならば自ら消すか、綾辻に消してくれと頼むはずだろうが、それほど今日は気持ちに余裕が無いようだった。
綾辻にしてみれば、明るい光の下で倉橋の綺麗な身体をじっくりと堪能出来るいい機会なので、無粋な言葉は言わないまま
下から腰の部分に引っ掛かっていた倉橋の浴衣をすっと引き抜いた。
 「・・・・・っ」
 一瞬、倉橋は頬を羞恥に染めて、綾辻の背線から逃れるように視線を逸らした。
(やっぱり・・・・・綺麗だな)
 現れた倉橋の裸身は、以前見た記憶の中のものよりも更に綺麗だった。
綾辻は口元に笑みを浮かべたまま、既に勃ち上がっている倉橋の細身のペニスを握り締める。
 「あ、あやっ」
 「ん?」
 「きょ、今日は私が・・・・・っ」
 「もちろん、お前にも気持ちよくしてもらうけど、俺達の関係は一方的なものじゃないだろ?」
 「・・・・・あっ」
その心と同じに、綺麗で真っ直ぐな倉橋のペニス。
これが以前女の身体の中に入っていくのを見たことはあるが、とても今までセックスに使ってきたとは思えないほどの綺麗な色だ。
綾辻は手触りさえもいいそのペニスを扱き始めた。
 「・・・・・っ、や、め・・・・・っ」
 「お前もすればいい、ほら」
 丁度倉橋の小さめな尻に当たっている自分のペニスは、倉橋の裸身を見ただけでもかなりの硬度を見せていた。
倉橋さえ慣れていればこのまま一気に挿入したいところだが、今日は絶対に急がないと心に決めている。とにかく、倉橋が欲し
いと言うまでトロトロに愛撫を施すつもりだった。
 「まだまだこれからだぞ」



 女に愛撫された時さえ、こんなにも感じることは無かったと思う。
同じ男だからなのか、的確にペニスの感じる部分を刺激してくる綾辻の手に、倉橋はもうそのまま綾辻の身体の上にいることが
出来なくなっていた。
腰が痺れてきたこともあるが、手淫の為に自分のペニスから零れる先走りの液が綾辻の腹を濡らすところを目で見るのが耐え
がたかったのだ。
 「・・・・・っ」
 唇を噛み締めたまま身体の上に倒れてきた倉橋の身体をしっかりと抱きとめてくれた綾辻は、そのまま身体を入れ替えて自
分の方が上になった。押さえ込まれることを望むわけではないが、綾辻に比べて自分が何も出来ないと言う事は分かりきってい
る倉橋は、この体勢にも文句を言うことはなかった。
 「克己」
 優しく名前を呼ばれ、倉橋は泣き出しそうになるのを何とか我慢すると、そのまま綾辻の首に手を回してその唇を奪った。

 クチュ

生々しい舌の絡まる音と、ザラッとした舌の感触。
本来なら他人が飲んだカップでさえ使えない潔癖な自分が、唾液を交換するほどのキスを交わせるのはこの男だからだと思い
知った。
(身体は・・・・・認めていたんだな・・・・・)
葛藤する気持ちを他所に、自分の身体は既に綾辻を受け入れていたのだ。



 気分が高揚しているのか、倉橋の身体がうっすらと汗ばんでくるのは早かった。
綾辻はその汗さえも愛おしそうに舐め上げながら、片手は緊張の為か尖っている小さな乳首に、そしてもう一方は今にも弾けそ
うにビクビクと震える倉橋のペニスを刺激し続けた。
 「・・・・・ふっ・・・・・んっ」
抑えようとする声は、どうしても噛み殺せないまま唇から漏れている。
それが恥ずかしいのか、顔を赤くする倉橋がたまらなく可愛くて、視線を外してやるという名目で綾辻はいきなり倉橋のペニスを
口に咥えた。
 「!」
 反射的に腰を引こうとする倉橋をがっしりと腕の中に捕らえたまま、綾辻はペニスを口腔で愛撫し続けた。
控えめに張り出してある先端の部分も、すっと伸びだ棹の部分も、喉の奥まで迎え入れて口全体で刺激する。
そうでなくても感じていた倉橋のペニスは、とめどなく先走りの液を流し続けた。
 「はっ・・・・・んっ、や・・・・・っ」
 出来るだけ声を出さないようにしているらしいが、それでも漏れてくる甘い悲鳴。
普段は抑揚の無い、儀礼的に話すその声が、愛欲に濡れるとこれほどに甘く響くことを、多分誰も・・・・・倉橋自身さえも知ら
なかっただろう。
この先も、綾辻はこの声を聞く権利があるのは自分だけだと思っているし、何より倉橋は自分以外に身体を開くことはないと信
じている。
 「・・・・・くっ」
 棹に浮き出た血管に沿うように舌を這わせ、先端の窪みを人差し指の爪で刺激する。
すると、我慢出来ないというように倉橋の手が綾辻の肩を爪を立てるほど強く掴み、とうとう精を吐き出してしまった。
喉の奥に叩きつけられた熱い迸りを上手く受け止めた綾辻は、ペニスを咥えたままそれを飲み干した。
倉橋が自分から身体を開いてくれたせっかくの記念だ、一滴でも零してしまうのはもったいなかった。



 「・・・・・し、信じられない・・・・・」
 小さく呟いた倉橋の声に、綾辻は残滓まで吸い取った後ようやく顔を上げた。
その唇に白いものがついているのが見えると、倉橋は一瞬唇を噛み締め・・・・・続いて、顔を近づけると、その白いものをペロッ
と自分の舌で舐め取った。
(・・・・・まずい)
これが自分の精液の味だと思うと複雑な気分だが、綾辻はそれを全て飲み込んでしまったのだ。
 「・・・・・」
 倉橋は視線を下に移した。
既に勃ち上がった綾辻のペニスを見ると自分も同じことをしなければと思い、おずおずと手を伸ばしかけたが・・・・・。
 「それは、後でな」
笑いながら言った綾辻は、脱ぎ捨てた自分の浴衣の袂から手のひらぐらいの大きさの瓶を取り出した。
(なに・・・・・?)
倉橋の疑問は、綾辻の次の言葉で直ぐに解決した。
 「ジェルだ」
 「ジェ・・・・・」
 「本当は舐めて濡らした方が俺も楽しいんだけどな。前回みたいに、濡れが足りなかったらお前も痛いだろうし、今回はこれの
力を借りようと思って・・・・・絶対に最後までするつもりだったからな」
 「・・・・・そんなの、用意していたんですか」
 「男の嗜みだって」



 「・・・・・」
 ほっそりとした足を他人に向けて開いて見せることがどんなに恥ずかしいことか・・・・・。倉橋の性格を人よりも把握していると
いう自負のある綾辻にはよく分かっていた。
言い換えれば、こんなに恥ずかしい思いをしても、綾辻を受け入れようとする倉橋の決意は固いということなのだろう。
(いい眺めだって事は・・・・・言わないでおくか)
 元々体毛が薄い倉橋の下生えは、ジェルのせいですっかりと地肌が見えるほどに濡れている。
こんな場所さえも綺麗だと言える倉橋の尻の蕾には、既に綾辻の指が3本突き入れられていた。
 「痛いか?」
 「い・・・・・いえ、もう・・・・・っ」
痛みを感じていないはすが無い。それでも、この慣らす行為の方が恥ずかしくてたまらないのか、倉橋は足を掴んでいる綾辻の
手を握り締めてきた。
本来はもっと十分慣らさなければならないところだろうが、これ以上すればますます倉橋は羞恥の為に身体が硬くなってしまうだ
ろうし、自分の我慢も・・・・・限界かもしれない。
 綾辻は指を引き抜いた。
粘ついた糸を引いたその手に更にジェルを垂らし、限界までそそり勃ったペニスをたっぷりと濡らすと、綾辻はジェルか先走りの液
か分からないほどに液を垂らした自分のペニスを、今までの長い愛撫の為に周りの肌より濃くなってしまった倉橋の尻の蕾に押
し当てた。
 「・・・・・っ」
 「克己、俺だけ見てろ」
 「は・・・・・い」
 優しくジワジワと挿入する方がいいかもしれないと思ったが、綾辻もここまで我慢してきたのだ。
迷いは一瞬で、綾辻は倉橋の両足をグッと開くと、そのまま一気に根元まで・・・・・自分の下生えが倉橋の尻に当たるまで、躊
躇いもなく自分のペニスを全て倉橋の中に埋め込んでいた。
 「うあぁ・・・・・っ!」
抑えきれない苦痛の呻きが倉橋の口から漏れる。
その拍子に力が入った蕾の入口と内壁に強烈にペニスを締め付けられた綾辻も、ぐっと唇を噛み締めてその苦痛に耐えた。