海上の絶対君主




第一章 支配者の弱点


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※ここでの『』の言葉は日本語です






 白・・・・・というよりも、海の宝石真珠と同じような光沢のある肌の色に、ラディスラスは感心したように手を触れ、そっと口を付
けてみた。
(・・・・・やっぱり、甘い)
一番最初に味わった時に感じたように、珠生の肌は不思議と甘い。
 「タマ」
 ギュッと目を閉じている珠生を見下ろしていると、僅かな罪悪感が沸いてきた。
こんな子供に自分が何をしようとしているのか・・・・・今までならば自分が止めるようなことを、自分自身がしようとしていることに
自嘲するしかなかったが、それでも珠生を欲しいと思う気持ちは止められなかった。
(悪い、タマ)
 怖さと寒さのせいか、粟立っている肌。
その胸には豊かな乳房はないが、自分と同じ男とはとても思えないようなしなやかで滑らかな身体の線は十分に魅惑的で、ラ
ディスラスは自分のペニスが既に反応し始めていることに気付いた。
女を知り始めた時とは違い、どんなに色っぽい美人でも実際に奉仕してもらうまでは自制が効いていた自分自身のあからさまな
欲望が笑えてくる。
(あまり急いだら怖がるのは分かっているが・・・・・)
それでも、あまりゆっくりはしていられないようだった。



(うわ、うわ、うわっ、唾飲んじゃったよ〜っ!)
 珠生は体内に取り込んでしまった他人の体液に頭がパニックになっていた。
大体、一番最初のキスというものは口と口を合わせるもので、初っ端から相手の口の中に舌を入れるなど反則もいいところだ。
そんなキスを、もう何度されたことか。
(・・・・・って、なにキスだって認めてんだよっ、俺〜!これはただの接触!事故!災難!)
 「タマ・・・・・」
 『う〜』
何時もはからかうような響きにしか聞こえない呼び方が、なぜだか甘く優しく聞こえる。
(き、気のせいっ)
 「可愛いな、タマ。どこもかしこもお前は小さくて可愛い」
 何を言っているのか、ラディスラスは1人楽しそうに笑いながら珠生の服をあっという間に脱がしていった。
ラディスラスの長い髪が緩やかに肌の上を滑るのがくすぐったくて身を捩るが、ベットから逃げるのにはラディスラスの大きな身体が
邪魔になっていた。
 『おもっ、重いんだよ!』
 「ん?」
 『お〜も〜い〜!!』
 グイグイとラディスラスの厚い胸を押し返していると、ようやく珠生の言っている意味が分かったようだ。
 「重かったか?すまんな」
宥めるように額にキスされると、まるで自分達が恋人同士なのではないかと錯覚してしまいそうだ。
 「ラ、ラディ!」
 とにかく離れて欲しくてその名前を叫んだが、ラディスラスにとっては返って気持ちが盛り上がってしまったようで、嬉しそうに笑い
ながら唇を頬から首筋、そして胸へと、珠生の感じる場所を探るかのようにゆっくりと移していく。
舌で舐められ、時折軽く肌に歯をたてられた珠生は、羞恥で思わず叫んでしまった。
 『な、舐めるな〜!』



 キャンキャン騒ぐ珠生の声は確かに耳に届いてはいるが、それさえもラディスラスにとっては睦言にしか聞こえず、愛撫の手を止
める事はなかった。
既に上半身は全て服を剥ぎ取り、下も僅かな布で隠れているだけだ。
産毛ほどにしか毛もないすべらかな足を一撫ですると、珠生はブルッと目に見えて身体を震わせる。どうやら足が感じるようだ。
 ラディスラスはニヤッと笑うと、自分も上半身の服を脱ぎ捨ててしまい、そのまま腰をするっと撫で、下着の上から珠生のペニス
に触れた。
 『!や、やだ!』
 さすがに、抵抗が激しくなったが、蹴ろうとする珠生の足を自分の足で押さえ込み、ラディスラスはゆっくりと丁寧にペニスを愛撫
し続ける。
その手はやがて下着まで取り去ってしまい、珠生はとうとう生まれたままの姿をラディスラスの面前に晒してしまった。
 『やっ、やっ、やだっ、やだあ!!』
 「・・・・・綺麗だ」
 何度見ても、それは不思議な身体だった。
明らかに女のような柔らかさはないのに、とても自分と同じ男とは思えないほどの線の細さだ。
下半身の男の象徴も、まだ肌よりも僅かに赤味があるくらいの幼いままの姿で、薄く細い下生えの毛も申し訳なさそうなほどし
か生えていない。
一目見ただけで、まだ使ったことがない、自分でさえもあまり触れないのではないかとさえ思える程の愛らしい姿だ。
(口に咥えるには丁度いい大きさだな)
珠生が聞けば激怒しそうなことを考えながら、ラディスラスは前は口に咥えて愛撫もしたことがある珠生の小ぶりなペニスに、直に
手を触れると愛撫を再開した。
 「タマ」
 ピクッと、珠生のペニスが震え、僅かながら力を持ってくる。
 「気持ちいいか?」
囁きながら、ラディスラスは珠生の裸の腰に、自分の勃ち上がり始めたペニスを服越しに押し付けた。
 「・・・・・っ!!」
不意に、珠生の目から、ぶわっと涙が溢れ出た。
足に感じるその熱い感触に、以前の信じられない痛みと恐怖を一気に思い出してしまったようだ。
 『こ・・・・・わ・・・・・、こわ、い、怖い・・・・・よ・・・・・』
ポロポロと涙を流し続ける珠生を見て、さすがにラディスラスも手を止めるしかない。
 「タマ、タマ、落ち着け」
 そのまま続けるほど非道なことは出来ずに、ラディスラスはそっと珠生の身体の拘束を解いた。
その瞬間、
 『!』
 「タマ!」
その場から逃げることしか考えなかったのか、珠生が全裸のまま部屋から飛び出す。
 「・・・・・っ」
あまりにもとっさのことに反射的に止めることが出来なかったらディスラスも、舌打ちをうつと直ぐにその後を追いかけた。



 『バカ!あほ!ヘンタイ!強姦魔!』
 とにかく、思いつく限りの悪口を叫びながら、珠生は少しでもラディスラスの傍から逃げようと走っていた。
 「タ、タマッ?」
 「おい!」
夜間の当番で甲板にいた乗組員達は、いきなり裸で走ってくる珠生を驚いたように見る。
もちろん男同士ならば恥ずかしいことはないし、仲間達の身体も見慣れているくらいだが、暗闇の中でも白く浮き出る珠生の身
体はとても男には見えないほど華奢で小さく、まるで少女が裸で走っているようにさえ見えた。
 「タマ!そんな身体で走るな!」
 『追いかけてくるな!バカバカバカ〜〜!!』
 「タマ!待て!勿体無いだろっ、他の奴に見せるな!」
 とにかく、逃げたくて走っていると、その騒ぎを聞きつけたのかラシェルとアズハルも甲板に飛び出してきた。
 「タマ!」
ラディスラスの腕が伸びてくる。
珠生は最後の力を振り絞ると、そのままラシェルの胸の中に飛び込んだ。
 「タマ・・・・・ッ」
 ラシェルは触れた珠生の身体が冷たいことに直ぐに気付き、夜着の上に羽織っていた自分の上着を素早く珠生に着せると、そ
のままその身体を腕の中に抱きしめて追いついてきたラディスラスを鋭く睨んだ。
 「どういうつもりですか、ラディ」
 「・・・・・見ての通りだな」
確かに、全裸の珠生と、上半身裸のラディスラスを見れば一目瞭然だ。
 「無理矢理ですね?」
 「タマも最初は感じていた」
自分の頭の上でどんなやり取りがされているかは分からないが、珠生は身体を包む布の感触にとにかく安堵すると、そのままラ
シェルの胸の中に逃げ込むように顔を埋めた。