海上の絶対君主
第一章 支配者の弱点
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※ここでの『』の言葉は日本語です
そして・・・・・夜。
さすがに部屋の中にラディスラスと2人きりになる時は緊張する。
しかし、そんな弱気を見せるのは嫌だったし、何かあったらアズハルかラシェルの元に逃げるつもりなので、珠生は何とか踏ん張っ
て部屋の中にいた。
そんな珠生の気持ちを知ってか知らずか、無造作に服を寛げたラディスラスは、ドアの近くに立ったままの珠生の姿に苦笑しな
がら、棚にある瓶を差し出して言った。
「甘い物好きだろう?コムという実だ。美味いぞ?食べろ」
『・・・・・』
(たべろ?)
「ん?俺の差し出す物は怪しくて食えないか?」
手を動かすことも無く、じっと瓶とラディスラスを交互に見ていると、ラディスラスは蓋を開けて黄色い液体に浸けられた黄色い実
を口にした。
蓋を開けた瞬間に香った蜂蜜のような甘い匂いに、珠生の喉がコクンと鳴る。
(食べろって言ってるのか・・・・・大丈夫かな)
船の上ではなかなか甘い物を口にする機会も少なく、香りを嗅げば急激にそれが食べたくなってしまった。
「タマ?」
ラディスラスはもう一つ、まるで見せ付けるように実を食べる。
珠生は我慢出来なくなって両手を差し出して言った。
『ちょうだい!』
「いるのか?」
「しょ・・・・・食、事!」
「はいはい」
ラディスラスが渡してくれた瓶を受け取ると、珠生は早速瓶の中の実を指で摘んだ。
ねっとりとした液体はやはり蜂蜜の様な匂いで、久し振りの甘さを期待した珠生は躊躇い無くその実を口にした。
『あま・・・・・美味しい・・・・・っ』
口の中に広がる美味に、珠生は本当に嬉しそうに顔を綻ばせた。
「・・・・・タマ?」
『・・・・・』
「タ〜マ?」
ラディスラスは寝台の上に横たわった珠生の身体を揺するが、珠生は微かな応えを返すだけで一向に目を開けようとはしない。
あの夜から、ラディスラスの一挙手一動を気にして警戒し通しだった珠生がこんな風に無防備に寝顔を晒すなど、もしかしたら
初めてのことかも知れなかった。
「弱いとは思ったが・・・・・効果絶大だな」
枕元に転がった瓶を手にして、ラディスラスは口元に笑みを浮かべた。
これはガナ酒という酒に浸けた物で、旅路で酒が手に入らない時の携帯用の酒代わりの食べ物だった。
かなり強い酒で、2粒も食べれば完全に酔ってしまえるという割安感の物で、船の中にもかなりの量を積んでいる。
「・・・・・」
ラディスラスは、そっと珠生の頬に手を当てた。
もうすっかり酔っているのか、白い頬は赤く火照って、小さな唇は微かに開いている。
「予想以上だ」
少し、酔わせるつもりだった。
多少でも気持ちを和らげて、出来れば、少しは身体に触れられれば・・・・・そのくらいにしか思っていなかったのだが、思った以
上に珠生は酒に免疫が無かったらしい。
しかし、考えればこれは好都合かもしれなかった。
意識が無いのは物足りないが、今のうちに珠生の身体を慣らしていけば、恐怖で身体が強張るという事は無くなるかもしれな
いだろう。
「タマ・・・・・気持ちいいことしかしないからな」
全く力の入っていない身体から服を脱がすのは一苦労だったが、やがてラディスラスの目にはランプの灯りに照らされた珠生の
裸体が映った。
綺麗な白い身体だ。
「本当は、同意の上が一番なんだがな」
(とにかく、俺の手に慣れてもらうぞ)
ゆっくりと、珠生の身体に手を触れてみた。
さらっとした手触りの良い肌をそっと撫で下ろすと、指先に小さな乳首が触れた。本当にささやかなその突起は、健気にも主張
してピンと立ち上がっている。
可愛くて、思わず口に含んで舌で転がすと、
『あ・・・・・んっ』
珠生が小さな声を漏らした。
ラディスラスは視線だけを上げてその顔を見つめたが、どうやら意識が覚めたというわけではなく、身体だけが気持ち良さを拾って
声を漏らしたらしい。
素直で覚えのいい身体に、ラディスラスは笑みが零れた。
どこもかしこも、珠生の身体は甘かった。
酔いと快楽のせいか、頬だけでなく身体中がほんのりと赤く染まって、素直に声を上げている。
すんなりと伸びた足を大きく左右に広げ、自分のものとは比べ物にならない程に可憐で綺麗な色のペニスが震えて勃ち上がっ
ている姿を灯りの下に晒しても、珠生は嫌がることも泣き言をいう事も無かった。
「抱かれるっていうのは、怖いことじゃないんだぞ?」
珠生にとっては、初めてだろう身体を重ねる行為。
その初めての行為への恐怖と、一番最初に感じた痛みさえ克服出来れば、この身体はたちまち官能の色に染まって自分の手
の中に堕ちるはずだ。
その為にもと、ラディスラスは枕元の棚に置いていた香油を手に取り、それを自分の手の平の上に零して体温で温めた。
そしてそれを、そのまま珠生のペニスに手の平を使って塗っていく。
滑りが良くなったその感触に、無意識であげる珠生の声は一段と高くなった。
(・・・・・よし)
濡れた手は、ペニスの先端から根元の袋までを丁寧に愛撫し、ペニスはますます健気に勃ち上がっていく。
ラディスラスは更に香油を垂らすと、そのまま指を1本珠生の尻の蕾に差し入れた。
『・・・・・っ』
さすがに違和感を感じたのか、珠生の身体が揺れた。
ラディスラスはしばらく差し入れた指を動かさず、そのまま空いた手で身体中を撫で擦り、口付けを落としていく。
『ふぁ・・・・・っんっ』
再び漏れ出した声は、甘えるような響きになった。
ラディスラスは珠生の顔に視線を向けたまま、差し入れた指をゆっくりと動かし始めた。
まだ狭い内壁を指先で押したり、引っ掻くように折り曲げたり、慣れないそこには次の指を差し入れることはしなかったが、そのま
ま指がある程度自在に動かせるようになるまで、ラディスラスは珠生の身体を中から愛撫し続けた。
「タマ・・・・・気持ちいいか?」
指を動かしながら、珠生の耳元で囁くが、珠生はただ喘ぎを漏らすだけで言葉にはならない。
無論、返事は期待していなかったので、ラディスラスはそのまま指を動かし続け、
『!!』
不意に、ペニスの裏側に当たる柔らかい場所を引っ掻いた時、珠生のペニスが震えたかと思うと、そのまま精を吐き出した。
(今の場所か?)
偶然に探り当てたあの場所は、きっと珠生のいいところなのだろう。
「・・・・・今日はここまでか」
本当はもっと珠生の身体に触れていたいが、あまり長引くと珠生の意識が戻ってしまうかもしれない。
もう少し身体を慣らすまでは素面の珠生には出来ない行為の数々なので、ラディスラスは惜しみながらも珠生の蕾から指を引
き出し、そのまま掛け布で珠生の身体を拭ってやる。
「湯で拭いてやらないとな」
粘着いた身体を拭いてやる為と、自分自身今の珠生の艶姿で昂ぶってしまった欲望の始末をする為に、ラディスラスはそっと部
屋を抜け出した。
今はまだ、この欲望を珠生の身体の最奥に差し入れることは出来ない。
「・・・・・もっともっと、慣らすからな」
自分の手が触れただけで、甘い声を漏らしてしまうように慣らしてやろう。
ラディスラスはこの先の珠生との秘密の夜の時間を思い浮かべ、人の悪い笑みを浮かべて密やかに笑った。
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