海上の絶対君主




第一章 支配者の弱点


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※ここでの『』の言葉は日本語です






 珠生が流す涙のわけが、ラディスラスは分からなかった。
痛み・・・・・と、いうのではないだろう。珠生の狭いそこはいっぱいに広がってラディスラスのペニスを飲み込んでいるが切れた様子
は無く、反対にヒクヒクと痛いくらいに締め付けて蠢いている。
(・・・・・嫌、なのか?)
 あれほど嫌がっていた行為をしているという事に、珠生は嫌悪を抱いているのだろうか?
しかし、紅潮した頬と、涙をいっぱいに溜めながらも必死で自分にしがみ付いてくる珠生の様子を見ると、そんな言葉では片付
けられない気がした。
分かりやすく言葉にすれば、それは・・・・・恐れ。
過ぎた快感と、それに感じてしまう自分への恐れなのだろう。
 「タマ」
 「ラ、ディッ」
 小さな身体でいっぱいに自分を受け止めてくれる珠生が愛しかった。
身体を慣らすという名目はあったものの、珠生の意識の無い時にその身体を弄ってしまったことを後悔してしまうほどに・・・・・。
それでも、今日、この時は、その時間が無ければとても迎えられなかったものだという事も分かっている。
 「愛してる、タマ」
 「・・・・・っ」
 「もっと、俺を受け入れろ」
こんな途中で止めてしまえば、お互いにとっても辛いだけだ。
とにかくラディスラスは珠生の身体の中に欲望の証を吐き出すまで、珠生がどんなに泣いても、抵抗しても、止めることなどとても
出来なかった。



(お腹の中に・・・・・なんか、ある・・・・・っ)
 とても無視できないほど存在感のあるものが珠生の腹の中を突いている。
それが、自分に圧し掛かってきているラディスラスのペニスだとは思いたくないが、これだけ身体が密着しているのだ、嫌でも思い
知らなければならない。
(きも・・・・・ち、い・・・・・っ)
 自分でも知らない身体の中を、男のペニスがゆっくりと擦って愛撫している。
支配されてしまう・・・・・その恐怖に、珠生は思わず叫んでしまった。
 『止めろっ』
 「タマ?」
 『これ以上、やめて、よ!』
好きかどうかもはっきりとしない相手と、身体を重ねることなどとても出来ないと思った。
もちろん、嫌いならばこんなに感じることも無いのかもしれないが、はっきりと自覚しないまま、このまま流されてしまったら、絶対に
後悔してしまう。
 「ラディ、やめ、て」
 珠生は、何とかこの世界の言葉で懇願した。
涙で潤んだ目をいっぱいに開き、ラディスラスの目をしっかりと見返しながら、震える声で・・・・・はっきりと言った。



 「・・・・・」
 ラディスラスはじっと珠生の顔を見下ろす。
卑怯な手段で手に入れようとした身体は、もうほとんど手中に収めているのも同然だったが、ラディスラスはこれ以上続けてもい
いのか一瞬迷ってしまった。
だが。
 「ラ、ディ」
 「・・・・・っ」
 止めてもらおうとその名を珠生が呟いた時、ラディスラスは一気に最後までペニスを差し入れた。
 「ぐぅっ!」
自分の下生えが珠生の尻の丸みに触れている。
全てを挿入し終えたラディスラスは、ほっと溜め息をついた。
(タマキは、俺のものだ)
 「ひど・・・・・っ」
 「タマ、お前はまだ子供だから分からないんだろうな・・・・・こんな時、そんな顔で名前を呼ばれれば、大人でも止められなくな
るんだ・・・・・っ」
 多分、罵倒されると思う。
ひっぱたかれたり、蹴られたり、噛みつかれもするかもしれない。
それでも今珠生を抱いてしまわないと、ラディスラス自身が後悔してしまうだろう。
 「タマ、これは俺が悪い」
 「・・・・・ああっ」
 「全部俺が悪いんだ、お前は感じさせられているだけ、こうされれば誰でも気持ちよくなってしまうんだ」
 少し引き抜いたペニスを、再びグイッと奥まで突き上げる。
その衝撃に珠生の身体は跳ね上がり、悲鳴のような喘ぎ声を上げた。
 「・・・・・くっ」
 指で慣らしたとはいえ、自分のペニスとはあまりにも質量が違い過ぎ、快感を感じているはずの珠生の身体にも相当な負担
になっているのは間違いが無い。
その苦痛から解放してやるには、自分が精を吐き出すしかなかった。
ラディスラスはしっかりと珠生の腰を掴むと、緩やかに・・・・・しかし、力強く珠生の内壁を突き上げた。
 『いっ、やっ、だ!』
 「タマッ」
 『怖いよっ!』
ギシギシと寝台が鳴る。
ただ寝る為だけに入れられたそれの上で、こんなに愛しいと思える身体を抱きしめることが出来るとは思わなかった。
 「タマッ、タマキ!」
 快感の分かち合い方をまだ知らない珠生のそこは、ただ苦しいほどにラディスラスのペニスを締め付けるだけだ。
しかし、その刺激だけでも十分に高まったラディスラスは、そのままグッと珠生に覆い被さり、
 「・・・・・っ!」
 「ひゃっあ!」
思う様、その最奥に自分の激情を吐き出した。



 ビチャッ

 まるで、音が鳴ったかのように勢い良く熱いものが自分の身体の中に注ぎ込まれるのを感じた珠生は、反射的に中に挿入さ
れたままのラディスラスのペニスを締め付けた。
(・・・・・やられちゃった・・・・・)
・・・・・鼻を啜り上げながらの珠生の正直な感想はそれだった。
身体は確かにラディスラスを受け入れてしまったが、気持ちは抵抗していた・・・・・と、思う。
 「タマ、痛いか?」
 『・・・・・さっさとのけよ、このデカチンッ』
 気遣われているのが嫌だった。
自分は男で、女の子がレイプされたのとは違うのだ。
(男と初体験するなんて・・・・・父さんが知ったら泣いちゃうよ・・・・・)
 『俺だって泣きたい・・・・・』
それでも、もうしてしまったことは仕方がない。男にバージンだなんだというのは変かもしれないが、2,3日・・・・・いや、4、5日で
も過ぎれば、この痛みは消えてなくなってしまうはずだ。
 「タマ?」
 『い〜から、抜けってば!』
(お、おしっこ漏らしたみたいで気持ち悪いんだよっ)
 下半身が自分のそれやラディスラスのあれでぐっしょりと濡れそぼって気持ちが悪かった。
とにかく、今だ自分の中に根元まで埋め込まれているラディスラスのペニスを引き出そうと、珠生はグイグイと(全く力は入ってい
なかったが)ラディスラスの胸を押し返す。
 「タマ、おい、暴れるな。お前の中が傷付くだろう」
 ラディスラスは珠生の手を押さえ、ズルッとペニスを引き出した。
 「・・・・・っ」
ゾワゾワとした感覚が背中を襲ったが、珠生は唇を噛み締めて声を耐える。自分の中から何かが零れている・・・・・それを怖々
と確認しようと身を起こしかけた珠生は、
 「ラディ、傷の消毒を忘れ・・・・・」
ドアを叩く音がしたと同時に、アズハルが姿を見せ。

 ガチャッ

アズハルの手にした消毒液と包帯が落ちる音がして。

 
「何をしたんですかっ、あなたはっ!!!」

アズハルの怒声が船内に響き渡った。