眷恋の闇










                                                                     『』は中国語です。






 真琴の羞恥はもちろん好ましいが、このままでは先に進むのに時間が掛かってしまう。
海藤は宥めるように細い腰を撫でた後、
 「ひゃっ!」
いきなりその腰を引き寄せ、真琴のペニスを口に含んだ。身悶える真琴の腰に合わせるようにペニスは揺れるが、口の中でどんど
んペニスは膨らんでくる。
 それを感じ取った海藤はペニスを解放すると、そのまま舌を2つの膨らみに這わせ、口の中で転がすように愛撫した。
射精したばかりなのでそれほどに張り詰めてはいないものの、若いだけに直接的な刺激を与えればみるまに育ってくる。
 「・・・・・」
 「あっ」
 軽く甘噛みしてやると、真琴は高い声で啼いた。海藤にとって、自分が感じさせているのだという実感がわく瞬間だ。

 チュク クリュ

身体だけではなく、心も求め合っているからこそ、こんなにも感じるし、感じさせることが出来る。
海藤をこの世に繋ぎとめる唯一の存在・・・・・その相手を抱きしめ、拒絶されずに受け入れてもらえることがこんなにも幸福なのだ
と、真琴を抱きしめるために思う。
 もっと深く繋がりたい。高まる感情と共にそう思うが、傷付けたいわけではない。真琴の身体が心と同じように自分を抱きしめてく
れるよう、海藤は本人が嫌がってもその準備を怠ることは出来なかった。




 「ふ・・・・・くっ」
 海藤の舌が自分のペニスから離れ、そのもっと奥へと触れているのが嫌というほど分かる。
嫌だと思うものの、それは嫌悪からではなく羞恥心からだ。それに、こうしなければ海藤を受け入れる自分の方に大きな負担が掛
かることを身にしみて知っている真琴は、シーツを握り締めながらその羞恥に耐えるしかなかった。
(ほ、本当は、あれ・・・・・使っても、いいの、にっ)
 こういう時に使うローションは、寝室には置いているはずだ。
それを使えばもっと簡単に準備は出来るのだが、海藤はよく自身が丹念に真琴の身体を開いていくことが多かった。
 普段、自分でさえ見ることが無い場所を、好きな人に見られ、なおかつ、口を付けられることはとんでもなく恥ずかしい。
何度か海藤にもそれを訴えたことがあるが、彼は決まって、

 「俺がしたいから」

と、苦笑交じりに言うのだ。
真琴のためだと言われたら、それこそ、大丈夫だからと答えることが出来るのに、それが海藤自身の欲のためだと言われると嫌と
は言えない。
 そんな自分の気持ちを敏い彼はきっと気が付いているだろうが、訂正しないということは絶対に確信犯だと思っている。
(何時も優しいのに、こういう時は・・・・・意地悪だ)
それでも、好きだから受け入れる。

 身体の中から舐められる。
くすぐったくて、ゾワゾワと鳥肌がたつような感覚。
 「ふぁっ、やっ、んっ」
それと同時に、ペニスも手で愛撫されて、真琴はもう喘ぎ声を出すだけだ。押し止めようとする手も海藤の足に縋るようにしがみつ
き、ペニスへ愛撫をし返すことも出来ない。
(だめ・・・・・なの、にっ)
 何時も海藤の方がより深く自分を愛撫してくれる。真琴も、同じように海藤のことを愛したいのに、経験値の差と言えばそれまで
だが、それでも・・・・・。
 「・・・・・っ」
 何とか手を伸ばし、真琴は海藤のペニスに再び手を伸ばした。
しかし、まるで感じればいいというように、さらに身体の中に入ってきた指の動きに翻弄され、真琴はもうそれを握ることしか出来な
くなってしまった。




 「・・・・・」
 目の前にある、ほのかに赤い蕾の中には既に自分の指が3本も入っている。
送りこんだ唾液と、零し続ける先走りの液で濡れそぼっているその場所は、海藤を誘うように艶めかしく艶光っていた。
 「んっ、はっ、はっ」
 痛みは、多分それほど酷くは無いだろうが、真琴は何とか身体から力を抜こうと浅い呼吸を繰り返している。その零れる熱い吐
息が自身のペニスに掛かるだけで、海藤は愛撫を施されているかのように欲情が高まってくるのだ。
(真琴・・・・・)
 もう、何度抱いたかも分からない身体。
本人の心根と同じく素直なそれは、海藤を大きく、温かく、深い所まで受け入れてくれる。セックスというものが、単に快楽や子孫
繁栄以外の意味を持つということを、真琴と知り合って初めて知った。
 「真琴・・・・・」
 「・・・・・し、さ・・・・・」
 名前を呼べば、必ず返ってくる言葉と眼差し。これを失うことなど、考えることもしたくない。

 「再見(サイチェン)」

去り際、そう言った通りにジュウは再び自分達の前に現れた。
だが、以前とは海藤も違う。ただ受け止めるだけで精一杯ではなく、こちらかも反撃する力はつけてきたつもりだ。
(絶対に、手放すものか・・・・・っ)
この愛しい存在を、誰かに渡すことなど考えられない。

 「真琴」
 「ふぁっ、あっ・・・・・んっ」
 「このまま、入れるぞ」
 「・・・・・っ」
 コクコクと頷く様子を見ながら、海藤は自分のペニスを綻び掛けた蕾に押し当てた。
十分慣らしたそこは、クプッと艶めかしい水音を立てながら先端部分をのみ込んでいく。
 「・・・・・くっ」
 それでも、圧迫感や痛みは全く無くなるわけではなく、真琴は耐えるように海藤の腕を掴んできた。

 グチュ ズリュ

目一杯広がった蕾をさらに押し広げながらめり込んでいく自分のペニス。
真琴の顔が衝撃を耐えるように強張っているのを見て、海藤は宥めるように頬や唇にキスをする。

 グリュ

 そのキスに真琴の意識が向く隙に、さらに腰を突き入れ・・・・・やがて、真琴の尻たぶへと海藤の腰が当たった。
 「真琴、痛むか?」
 「・・・・・ふ、くっ」
 「真琴」
 「だ・・・・・、じょ、ぶ」
言葉と同時に、しなやかな足が腰に絡みついてくる。遠慮をすることはないのだと、言葉や態度で教えてくれる真琴に、海藤も目
を細めてそのまま律動を開始した。

 ニュチュッ ズルッ

 グチュ クチュ

 絡みついてくる内壁をさらに押し広げるようにペニスを動かしながら、海藤はしっかりと真琴の手を握り締める。
離さないという思いが伝わったのか、真琴も痛いほどに縋りついてきて、身体も心も、一つに溶け合って行くようだ。
 「真琴っ」
 「す、き・・・・・好きっ」
それ以外の言葉を言えない真琴に、海藤も息さえも奪うような濃厚なキスを仕掛けた。このまま、ずっとこうして抱き合えていたらと
思いながら、海藤は温かな最奥へと最初の飛沫を吐きだしていた。




 濃厚な夜を過ごした翌日は、たとえそれが大好きな人であっても顔を合わせるのは恥ずかしくてたまらない。
今日も、真琴は鈍く痛む腰を宥めつつ、ベッドから何時起き上がろうかとグズグズ考えていた。
 「・・・・・」
 隣の温もりはとっくに消えていたものの、頬に触れた優しい感触は夢うつつながらちゃんと覚えている。
(朝ごはん・・・・・また、海藤さんに任せきりにしたな・・・・・)
男同士では、どうしても受け入れる側の負担の方が大きいというのは確かで、海藤もそんな真琴を気遣ってくれ、翌朝などは至
れり尽くせりで世話をやいてくれる。もちろんそれは嬉しいことだが、真琴としてはお互いが望んで身体を合わせ、快感も感じたの
だし、責任など感じて欲しくは無いのだが・・・・・。
 「・・・・・しょっと」
 とにかく、こうしてシーツに潜り込んでいるのでは駄目だと、真琴は何とか起き上がる。
腰にはまだ痛みはあるが、もちろん歩けないということは無かった。

 そのままリビングルームに向かうと、ドアを開けた瞬間から味噌汁の良い匂いがした。
 「おはよう」
真琴の姿に直ぐに気付いてくれた海藤がそう声を掛けてくれ、真琴もおはようございますと慌てて答える。
 「ごめんなさい、全部してもらっちゃって」
 「俺が勝手にしていることだ」
 「でも・・・・・」
 「顔を洗ってこい。着替えなくてもいいから食事にしよう」
 「あ、はい」
(今日は早いんだな)
 真琴の着替える時間を待たずに朝食をとるということは、少しでも早く出掛けなければならないのだろう。恥ずかしさから起きて来
るのが遅くなったことを申し訳ないと思いながら真琴は急いで・・・・・それはどこか緩慢な動きではあったものの、それでも出来るだ
け早くとリビングから出ていった。




 真琴の後ろ姿を見送った海藤は、中断していた朝食の支度を始める。
本当は、せめて午前中は真琴と一緒にいてやりたいと思っていた。ジュウと再会した真琴がどんな思いなのか、動揺は夕べのセッ
クスで多少は落ち着いたと思うが、それでも言葉できちんと聞いてやることも大切だと思う。
 しかし、時期が悪かった。
大東組の中でも様々な大きな動きがある中、私情だけで動くことがどんなに困難か・・・・・海藤は今の自分の位置を後悔はして
いないが、それでも、煩わしいと思う場合もあるのだ。
(ジュウのこともそうだが、俺のことも話さないといけないしな・・・・・)
 まだ正式な任命ではないものの、次期理事の内定を貰った今、真琴にもそのことをきちんと話しておかなければならないだろう。
真琴や、その家族には関係ない話だとしても、そうは取らない馬鹿な人間もいるのは確かだ。
 海藤は溜め息をつく。真琴の前では絶対に出来ないことだ。
真琴にだけは甘えたいと思い、反面、弱みを見せたくないとも思う・・・・・と、
 「・・・・・」
カウンターに置いていた携帯が鳴った。そのまま手にとって相手を確認し、海藤は何時真琴がやってくるかと入口に視線を向けたま
ま話を始める。
 「俺だ・・・・・そうか、頼む。後、30分ほどだな・・・・・ああ、寄越してくれ」
 どうやら、真琴の護衛の手筈が整ったようだ。海藤がここを出る時に来るようになったということで、これで少しは海藤の不安も消
える気がした。
 「本当は、俺が傍にいたいが・・・・・」
 ぽつりと出た言葉は、男としての思い。愛する者を他の人間に任せなければいけないということが、悔しくて、情けない。
それでも、それが今の自分の立場だ。
 「ごめんなさいっ、待たせちゃったっ」
 携帯を切った時、真琴が慌てた様子でやってきた。前髪を濡らし、服も急いで着替えてきたらしいその様子に苦笑を浮かべなが
ら、
 「座れ」
海藤は椅子を引いて真琴を促した。