海上の絶対君主




第二章 既往の罪と罰


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※ここでの『』の言葉は日本語です






 泉の側の柔らかな草の上に珠生の身体をそっと横たわらせたラディスラスは、改めてゆっくりとその愛しい身体を味わう為に覆い
被さった。
 「・・・・・」
口付けだけでぼうっと視線を彷徨わせていた珠生は、不思議そうな視線を向けてくる。
 「怖いか?」
 「・・・・こわ、い?・・・・・こわ・・・・・く、ない」
 「怖くないか」
 「ラディ、怖くないよ?」
どれ程意識してその言葉を言ったのかは分からないが、ラディスラスは珠生のその言葉に目を細めると再び唇を重ねていった。
身体を重ねてから、もう20日は過ぎてしまった。多分このままでは、二度目はもっと先になるだろうとも思っていた。
(好機は逃さないようにしないとな)
 この場所で、珠生にここまでするつもりはなかったが・・・・・そう思いながら、ラディスラスは珠生のズボンを脱がせていく。
水で濡れたそれは脱がせにくかったが、隠れていた白くほっそりとした足が徐々に現れてくるのは見ていて楽しかった。
 「タマ」
 「は、恥ずかしーよ、脱がすなっ」
 「暴れるな」
 「暴れるなっ?」
 さすがに口付けの余韻から覚めてきたのか、珠生の抵抗がまた激しくなってきた。
ラディスラスは苦笑を零すが、こうでないと珠生らしいとは言えないかもしれない気もしている。
それに、今のラディスラスは珠生を大人しくする術を既に知っていた。
 「・・・・・!」
 中途半端にずらしただけのズボンからチョコンと覗いている小ぶりなペニスを少し強引に掴むと、そのまま優しく愛撫するように擦
りあげる。
珠生は小さな声を上げて、ギュッとラディスラスの肩を掴んだ。



(うわっ、うわっ、何だよ、これは〜っ!)
 竿の部分を擦られるのも、根元の2つの袋を揉みしだかれるのも、自身の拙い自慰に比べれば雲泥の差の快感の大きさだ。
ラディスラスの片手で収まってしまう大きさなのが面白くないが、それでもそんな文句を言っていられないほどに快感は深い。
 「んっ、あっ、はぁっ」
 「タマ、口を開けろ」
 「そ、な・・・・・っ」
 「ほら、口」
何をされるか分からないまま、珠生は促されて食い縛っていた口元を少し緩めた。
すると、直ぐにラディスラスの口が重なってきて、するりとその中に舌も忍び込んでくる。
 「んんぅっ」
意識がないわけでもなく、不意打ちでもなく、今ラディスラスにキスされているという事を珠生ははっきりと自覚していた。
口腔内を自在に動き回るラディスラスの舌が怖くて肩を押しのけようとするものの、圧し掛かってくる身体は厚く重く、とても珠生の
力では押し返すことさえも出来ない。
(な・・・・・に、勝手にチュウするん・・・・・だ!)
 たった一度とはいえ、珠生はラディスラスを最後まで受け入れたことがある。
身体の痛みや快感は、頭では忘れたつもりでも身体は忘れてはいないのだ。
 「・・・・・!」
 自分は嫌がっているはずだ。
しかし、愛撫されているペニスがどんどん熱く硬くなっていくのが分かり、珠生は泣きそうになりながら身を捩った。
 「タマ」
 感じているのか、それとも途惑っているのか、自分自身の身体の変化が分からなくて、珠生は益々小さく身体を丸めようとした
が、返ってそれは小さな尻をラディスラスに差し出す形になってしまったらしく、それまでペニスを握っていた手がツッと引かれ、そのま
ま双球の狭間に滑り込んだ。
 「ひゃあ!!」
(ど、どこ触って・・・・・!)
 濡れた指の感触を、尻の奥・・・・・以前ラディスラスを受け入れたことがある蕾に感じる。
 『や、やめろっ!』
思わず珠生はそう叫んでギュッと足を閉じたが、その瞬間濡れた何かが身体の奥に入ってきた。
 「ラ、ラディ!」
 「力を入れるな。ほら、タマ、お前のここは俺のことを覚えてるようだぞ?きつく俺の指を締め付けている」
 「・・・・・っ!」
 もう・・・・・ラディスラスが言っている言葉の意味は分からなかった。
ただ恥ずかしくて、身体の奥を触られる感触が生々しくて、珠生は顔を真っ赤にしたまま身体を強張らせることしか出来ない。
 「いい子だ」
暴れなくなった珠生の身体を簡単に仰向けに返したラディスラスは、蕾に指を差し入れたまま、もう片方の手で再びペニスの愛撫
を始めた。
 「はっ!やっ、い・・・・・っつ!」
 「気持ちいいだろう」
 まるで悪魔の囁きのように、ラディスラスの声が耳元で響く。
 「ほら、タマ」
 「ひぃ・・・・・い!」
 蕾を抉る指の動きが激しくなる。この圧迫感は、多分差し入れられているのは指1本だけではないのだろう。
(や・・・・・っ、だ!)
快感が深過ぎて怖い。
そう思った瞬間、珠生はペニスから精液を吐き出してしまった。



 「随分ごゆっくりで」
 珠生を背中におぶって浜辺に戻ると、ほとんどの者は雑魚寝の形で休んでいたが、アズハルだけは火の側に黙って座っていた。
戻ってきたラディスラスに低い声でそう言ったアズハルは、その背中にいる珠生の顔を覗き込む。
 「・・・・・眠ったんですか」
 「疲れたんだろう」
 「疲れるようなことをさせたんですか?」
まるで謎掛けの様にアズハルは言う。
言外に、今疲れるようなことをさせたのだろうと言う責めるような響きがあった。
もちろん、ラディスラスには十分覚えがあることで、弁解はしようとは思わない。
ただ、本来ならば最後まで抱きたかったところを、明日からの捜索のことを辛うじて思い出し、珠生をよがらせるだけで納めたのは
褒めてもらいたいくらいだ。
 一応、高まった自分のものを珠生に握らせて、半ば強引にイかせて貰ったが、それはまだ可愛いものだろう。
 「タマはどこに寝かせる?」
 「・・・・・こちらに」
アズハルが火の側の布を指差したので、ラディスラスはゆっくりとそこにその身体を横たわらせる。
少し目元が赤いのは泣かせてしまったせいだ。意識はそのまま睡魔に掴まっているらしく目が覚めることはない様だった。
 「ラディ」
 ラディスラスが珠生の身体に布を掛けてやったのを確認して、アズハルは少し呆れたように口を開いた。
 「皆を先に帰らせたと思ったらなかなか帰ってこなくて・・・・・ラディ、今の状況を分かっているんですか?」
 「分かってる」
 「それなのに?」
 「タマが可愛いから悪い」
一番悪いのは、多分欲望を抑えきれない自分であろうという事は分かっている。
それでも、一方で無意識なのだろうが、自分を誘うような行動を取る珠生も悪いと思うのだ。
(水に濡れた服が身体に張り付いて・・・・・妙に色っぽいんだよ)
普段が普段だけに、ほんの少し垣間見える艶やかな雰囲気が妙に欲情を刺激する。
 「・・・・・反省無しですか」
 「する必要がないだろ?最後までは抱かなかったし、タマも気持ちいいと可愛く泣いていた。・・・・・アズハル、これでも俺は我慢
している方だと思うぞ?」
 「・・・・・」
 珠生と知り合うまでは、寄る港で適度に遊んでいたラディスラス。
その容姿と、性格で近付く女には困らなかった。
それが、今はほとんど禁欲といった状態だろう。
(タマ以外、抱こうという気も起きないしな)
 「あれでも18を過ぎてる大人だ。タマ自身がいいって言うなら、お前も文句はないだろう?」
 「・・・・・それはそうですけど」
やはり見た目と最初の印象からか、どうもアズハルは珠生を庇護するべき子供のように思っているらしい。
その認識はなかなか覆せないというのも分かるので、ラディスラスは口元を歪めてポンポンとアズハルの肩を叩いた。
 「さっきで大分タマを補充したしな。しばらくは大人しくするから心配するな」