LOVE TRAP
11
『』の中はイタリア語です。
「今回のことで身辺が少し煩くなる。早々に終決する為にも、私は明日の夜には日本を発つつもりだ」
予定では一週間ほどの滞在のつもりだったが、今回のクラウディアの暴走でそうはいっていられなくなった。
いくら仕掛けられたことでも、マフィアの一族が絡む話で、それなりの対応をしなくてはならない。もちろん、こちらが優位にあること
は確かだが、楽観視しては足元をすくわれてしまう。
それに、今回は友春の存在も大きくクローズアップされた。
イタリアと日本。アレッシオにとっては不本意ながらも離れているこの距離では、友春の安全の為にも、イタリアにいる対立関係の
相手はもちろん、カッサーノ家の中も引き締めて確認しておかなければならない。
「お前には悪いが、明日以降の予定は全てキャンセルしてくれ」
「はい」
「空港へは明日の夕方に向う」
「それでは、午後6時にお迎えにあがります」
江坂は何の疑問も口にせず、丁寧に頭を下げた。
もしかしたらクラウディアが出てきたあたりで、予定外の出来事があるかもしれないと予め予想していたのかもしれない。
それとも、一応大東組の組長に面会するという大きな目的は済ませていたので、それでよしと思っているのだろうか。
「ご苦労だった、エサカ」
「ゆっくりおやすみください」
どちらにせよ、滞在時間が限られているということは、その時間を共に過ごす相手は決まっている。
アレッシオはそのままオートロックのドアが閉まるのを確認した後、部屋の奥で自分の訪れを待っているであろう愛しい者の傍へと
足を早めた。
「トモ」
「ケイ・・・・・」
それ程、待ってはいなかったと思う。
友春はリビングに現れたアレッシオを見て、改めて安堵の溜め息をついてしまった。
(怪我も、ない・・・・・よね)
銃撃戦を間近で見るなど、滅多に・・・・・いや、普通に生活をしているのならば絶対にありえるはずの無いシチュエーション。
まだ恐怖と興奮が薄れなかった。
「怖い思いをさせた」
「・・・・・」
アレッシオはそう言いながら、友春のこめかみにキスを落とし、そのまま隣に腰掛けて肩を抱き寄せてきた。
「・・・・・っ」
流れるように、頬に手をあてられて深い口付けをされる。無言のまま、舌でゆっくりと唇を舐められると、友春は無意識のうちに唇
を少しだけ開けてしまい、アレッシオの舌は当然のように口腔内に侵入してきた。
「ふ・・・・ぐっ」
肩を、抱き寄せる手の力が強い。
怯える舌を絡め取る力が強い。
何時もとは違う余裕の無さを感じると、友春はアレッシオも怖かったのかもしれないと思ってしまった。
自分がアレッシオに再び会うことなく死んでしまうかもしれないと思っていた時、彼も、自分を失ってしまうということを恐れてくれて
いたのだろうか?
支配する者と、される者。
圧倒的な立場の差があるはずの自分達に、共通する恐怖があったのだろうか・・・・・。
「・・・・・」
貪ぼられるようなキスにクラクラしながら、友春は必死にアレッシオの背中に縋る。その時抱きしめた広い背が、なぜか愛おしく感
じてしまった。
友春の手が自分を抱きしめている。
何時ものように、セックスをしている最中の意識が朦朧としている時ではなく、自分が命令しての行動ではなく、友春の意志で自
分に手を伸ばしてきてくれた行動が嬉しかった。
「トモ、今、お前を抱きたい」
キスを解いたアレッシオは、お互いの鼻を擦り付けるようにしながら言う。
「私のペニスでお前の熱さを確かめたいんだ」
遠まわしではない直接的な言葉に、友春の肌が鮮やかに赤く染まっていくのが分かる。自分が変化をさせたその様子を目を細め
て見つめていたアレッシオだったが、友春は直ぐには頷かなかった。
「で、でも」
「何を迷う?」
「あ、あの、人、ケイの、婚約者って・・・・・」
「・・・・・」
(・・・・・ああ、トモはあの女のことを気にしていたのか)
確かに、油断をさせる為という目的があったが、友春の前でクラウディアをエスコートしたのは事実だ。
もちろん、本心からその役を望んだわけではなく、あの女の為にイスを引いてやることも煩わしかったし、きつい香水の匂いには辟
易していた。
それでもあんな面白くない思いをしたからこそ、クラウディアはすんなりと騙されたのだろうが、それを愛しい友春が本気にしてはた
まらない。全ては、友春を守る上での行動なのだ。
「婚約者候補に名前があがったのは事実だが、私はあの女をカッサーノ家の女主人にするつもりはない」
「ケイ・・・・・」
「今もって、カッサーノ家の女主人は私の母だ。彼女が亡くなるまで、それは変わらないだろう」
現実にカッサーノ家の全ての権限をアレッシオが譲られているとはいえ、それとこれとは別だ。長い間日陰の身として生きていた
母の幸せな今を守る為にも、それは徹底して知らしめておかなければならないことだった。
「で、でも・・・・・」
「まだ何かあるのか?」
日本人は・・・・・いや、友春が特にそうなのかもしれないが、目の前のことではなく、ありえない未来のことを想像して心配をして
いる。
他の人間ならば煩わしいが、もちろん友春の言葉ならば、アレッシオは一々説明をしてその不安を払拭させるつもりだった。
「い、いずれ、ケイも結婚するでしょう?そうなったら、僕・・・・・僕は、どうなる・・・・・」
「結婚はしない」
「・・・・・っ」
「私が妻と呼ぶ女は、この先1人として現れないだろう。ただ、生涯唯一のパートナーならば、既にもう見つけている。トモ、それ
がお前だ」
「ぼ・・・・・く?」
「性別など関係ない。お前が頷いてくれれば、私はお前を私の籍に入れたい。お前が過去に私のしてきたことを許して、愛して
くれるのならば、共に生きたいと願っている。存在しない女のことなど、お前は考えなくていい」
友春はじっとアレッシオを見ている。
黒い瞳が涙で潤んでいるようだが、その中に拒絶の光はない・・・・・そう思いたかった。
真剣に、求められている・・・・・友春は指先まで緊張していた。
イタリアにいたある瞬間から、アレッシオの自分に対する想いがただの興味から変化していったのにはなんとなく気がついていた。
それでも、始まりがあまりにも暴力的だった為に、その後にどんなに愛の言葉を囁かれても、友春の心は容易に傾かず・・・・・そ
れでも、アレッシオは変わらずに言葉を与え続けてくれた。
「トモ」
「・・・・・わ、分かりません」
「分からない?」
「今のケイは・・・・・嫌いじゃ、ないです。でもっ、でも・・・・・」
アレッシオを受け入れてしまったら、自分がいったいどんな風に変わってしまうか分からない。今でさえ、アレッシオに抱かれている
自分はみっともなく、淫乱で、男とはいえない痴態を見せてしまっているのだ。
「・・・・・どうしよ・・・・・う」
「トモ」
「どうしよう、僕・・・・・」
混乱してしまう自分の気持ちにどう決着をしていいのか分からず、かといって、今までのように恐怖と憎しみを抱き続けるわけに
も行かず、友春は混乱してしまう。
すると、
「あっ」
いきなり、アレッシオが友春の身体を抱き上げた。
「ケ、ケイ?」
「全て私のせいにすればいい。決めることが出来ないのならば、このまま私の愛に溺れるんだ」
埃や汗で汚れているからと、広いベッドの上で友春は自分の身体を隠すように抱きしめた。
気にすることは無いと言っても、嫌々と首を横に振る友春。バスルームに連れて行ってそこで抱くことも考えたが、そうでなくても今
日は精神的に疲れている友春は早々に湯あたりをしてしまいかねない。
一緒にいられる時間は限られている。そのまま、イタリアに連れて行けばいいのだが、今度イタリアに行く時は友春が望んだという
事実が欲しいアレッシオは、二度と強制的な手段は取りたくはない。
全てを考えると、やはりこのままここで抱くしかなかった。
「ケ、ケイッ」
「お前は汚れていない」
「で、でもっ」
「汚れているというのなら、その汚れは全て私が舐め取ってやろう」
(ああ、これはいいかもしれない)
何時も恥ずかしがって身体を隠す友春に、汚れを拭う為だという理由を付けたら隅々にまで舌を這わすことが出来そうだ。
アレッシオは口元を緩めた。
ペチャ・・・・・
「も・・・・・やっ」
頭上で半泣きの友春の声が聞こえるが、もちろんアレッシオはペニスから舌を放さなかった。
キスをしながら、あっという間に友春を全裸にして、もう・・・・・30分近くは経つだろうか。顔から、首筋、そして胸元へと、アレッシ
オは綺麗にしてやるという言葉通りに友春の身体に舌を這わせていた。
もちろん、両手も休ませることは無く、片手はツンと立ち上がった乳首を愛撫し、もう片方の手は緩く勃ち上がり始めた友春の
ペニスをしっかりと揉みしだいていた。
「あっ、う・・・・・っ」
モゾモゾと腰を揺らしている友春は確かに感じているだろうに、それをアレッシオに知られまいと必死で隠そうとしている。
その姿が愛らしくて、アレッシオは臍を弄るのを止めて顔を上げた。
「トモ、目を開けてよく見ろ。お前の愛らしい胸の飾りが、赤く熟れて美味しそうだ」
「・・・・・っ、ケ、ケイがっ、強く、舐める、からっ」
「素直に感じる様が愛らしいから悪い。お前がもう少し我慢出来れば、私もしつこく舐めないのだがな」
「ジ、ジンジンして、痛い、よ」
「それは、感じていると言うんだ」
豊満な乳房はない。
しかし、華奢で痩せているはずの友春の身体はどこまでも柔らかく、アレッシオの手は吸い付くようにその肌から放れることが出来
なかった。
日本人の肌理細やかな肌を手にすると、化粧で誤魔化した女の肌はとても抱く気は起きなかった。
それに、柔らかいのはここだけではない。身体の奥深く、アレッシオしか味わうことの出来ない友春の中は、もっと心地良く、更に
きつく、アレッシオを包み込んでくれるのだ。
(・・・・・ん?)
ひっそりと含み笑いを零したアレッシオは、自分の腹に濡れたものが擦り付けられているのに気付く。
肌を舐められただけでペニスを勃ち上がらせてしまった友春が、それをアレッシオに擦り付けて自慰の真似事をしているのだ。
(これは・・・・・楽しい光景だが)
躊躇いながらも、快感に抗いきれない友春の行動に、アレッシオは見ているだけではすまなくなってしまう。
「トモ、お前の可愛いここは、もう濡れてしまっているじゃないか。私が綺麗に舐め取ってやろう」
「・・・・・やあっ!」
言葉と同時に顔を下ろしたアレッシオは、そのまま既に先走りの液を零している友春のペニスを口に含んだ。
ジュル クチュ ジュル
「・・・・・っ」
耳に響く水音が、自分が何をされているのか目を閉じていても知らせてくる。
キスをされ、肌を舐められただけで呆気なくペニスを勃ち上がらせてしまった自分が情けなくてたまらないが、アレッシオの口腔の中
でねっとりと愛撫される感覚に更に肌が粟立った。
「あっ、んっ、ふっ」
(は、恥ずかしい・・・・・っ)
どう聞いても、感じているとしか思えない自分の声。押し殺したくて唇を噛み締めようとしたが、アレッシオはそんな友春の口の中
に指を差し入れてきた。
その指を噛むことが出来ない友春の迷う舌を指先で摘んだり、口腔内をそろりと撫でるアレッシオの指。まるで愛撫されているよう
なその感覚に、友春の閉じられない唇の端から唾液が零れ落ちる。
ペチャ ペチャ
その間も、アレッシオがペニスに与える愛撫は止まらない。いや、更に執拗に、強くなっていくような感じだ。
「ゆ、ゆっく、り・・・・・っ」
「・・・・・」
「い、息が、苦し・・・・・っ」
なんとか、荒い息の中でそう訴えたが、クチュッと口の中からペニスを解放してくれたアレッシオは、今度は手でそれを弄りながら笑
みを含んだ声で答えてきた。
「舐めとっても舐めとっても、トモのペニスから零れる液が止まらないんだ。綺麗にしてやるといった約束を守りたいんだがな」
「だ、だってっ、それは、ケイがっ」
「私のせいだと言うのか?・・・・・本当に?」
オマエガミダラダカラデハナイノカ?
「・・・・・!」
耳元に掠めた声に、反射的に身体を隠そうとした友春だったが、もちろんそれをアレッシオが許してくれるはずもなかった。
いや、今度はペニスの付け根にある双珠までも口に含み、濡れた指を更に奥へと進めてくる。
「!」
そこは既に自分のペニスが零した液と、アレッシオの唾液のせいで濡れていたが、さすがに硬く閉ざされたまま、簡単にはアレッシ
オの指を受け入れなかった。
「トモ、力を抜け」
「・・・・・だ・・・・・」
「奥の奥まで、舐め濡らさないといけないか?我が儘だな、トモは」
「・・・・・」
(わ、がまま、言ってる・・・・・?)
責められているという口調ではないが、友春は何とかアレッシオの言う通り、身体から力を抜こうと何度も深呼吸を繰り返した。
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