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このキスは、普通のキスとはちょっと違うかもしれない。日和はまだ、秋月を好きだと言えなかったし、もちろん、その恋人にもなっ
たつもりは無かった。
ただ、もう怖いだけの、出来れば出会わなかったことにしたい相手だとは思わなくなった。
日和にとって秋月は、好きになる可能性の一番強い、今一番身近にいる人・・・・・だった。
(男同士だけど・・・・・仕方ないよ)
男同士でも、キスも、セックスも出来ることを、日和はしっかりと身体に刻み込まれてしまっていて、今更女の子しか恋愛対象に
ならないと言い逃れるつもりは無い。もちろん、こんな身体にしたのは秋月なので、しっかりと責任はとってもらおうと思った。
「や、約束、してください」
「何だ」
「人前で、ベタベタ、しないこと」
眉を顰めた秋月に、そんなに難しい条件かなと思ってしまう。
その答えは後回しにした方がいいのかと思い、日和は次にと言った。
「俺は、普通の高校生だから、ヤクザ関係の話は、あ、あの、ヤクザさんも立派なお仕事かもしれないですけどっ、俺、怖いこと
とか嫌だし・・・・・っ」
「当たり前だ。お前が素人だということはよく分かっているし、俺は大事な人間を危険に晒すほど間抜けじゃない」
「あ・・・・・はい」
真面目に答える秋月に、日和は自分の方が赤くなりそうになるのを誤魔化した。面と向かって《大事な人間》などと、家族以
外の人間に言われたことなど無い。それが、芝居じみてというわけでなく、ごく当たり前のような口調だったので、更に信憑性が強
いような気になったのだ。
「それから」
挙動不審に視線を彷徨わせていた日和は、更に促されてあっと、続けた。
「そ、それと、着物を着せるのは止めて・・・・・」
「駄目だな」
「え?」
「それは俺がお前を着飾りたいからすることだ」
「で、でもっ、俺、男ですよ?」
「男でも、似合うお前が悪い」
「・・・・・」
(それって、ただの欲目・・・・・とか)
さすがに、惚れたという形容詞を付けるのは違うかなと思ったが、考えれば今の日和の歳だからそんなことをするのかもしれないと
思い直す。
「ま、まあ、20歳とか過ぎたら、さすがに俺だって男っぽくなるだろうし・・・・・」
そうなったら、女装姿も醜くなるだろう・・・・・そう考えた日和だったが、その考えの中に自分でも思い掛けない事実が含まれてい
ることに気付いてしない。
「・・・・・あれ?」
いきなり、またベッドに押し倒されてしまった日和は、いったいどうしたのかとただ下から秋月を見上げることしか出来ない。
「少なくとも、20歳までは俺と一緒にいてくれる気だな?」
「え?」
「初めの約束。人前では出来るだけベタベタしないようには気をつけよう。だが、2人きりの時は遠慮しないからな」
「ええっ?」
どうしてという言葉は、秋月の唇の中へと消えてしまった。
年甲斐も無く欲求不満になって、何時まで経っても進展しない日和との関係に勝手に焦れてしまい、攻め倒して・・・・・結局
は無駄なのだと自己完結して。
(また、こうして浮上するなんてな)
「ま、まあ、20歳とか過ぎたら、さすがに俺だって男っぽくなるだろうし・・・・・」
もちろん秋月も、1年や2年で日和を手放すことなど考えてはいなかった。生半可な気持ちで高校生の、それも男を手に入れ
ようなどとは思わない。
刑務所の中に入っていた者の中には、男だらけの世界でそんな趣向になった者がいると聞くし、実際秋月もその手の誘いをかけ
られたことはあったが、女に不自由していない自分がわざわざ男に手を出すなど考えたことも無かった。
それなのに、今こんなにも自分が欲しがっているのは、理由も何も無い。
ただ、欲しいと思い、愛しているからだ。
「んっ」
秋月に抱かれるまでセックスをしたことが無かったまっさらな日和の身体は、自分の意志では無いにせよ秋月に触れられただけ
で甘く解けていく。これを、利用しないでどうするのだ。
(どうせ、俺はヤクザだからな)
相手の弱みに付け込む卑怯な真似も、どうしてもという目的があったら躊躇うことは無い。
「ふ・・・・・」
脱げ掛かった肌襦袢はそのままにした。脱がせても良かったが、これはもう・・・・・危ない趣味の一つだ。
細い足を持ち上げ、下ろしたての足袋を脱がせてやると、秋月はそのまま足の爪先にキスをする。
「そっ、そんなとこっ」
その秋月の行動に、日和は必死に肘を使って上半身を起こした。
「ん?」
「き、汚いですっ」
「お前の足だろ。別に土の上を歩いていたわけじゃないし、汚れていない」
そう言っても、日和は何とか秋月の手から足を引き離そうとするが、秋月は構わずにそのまま指先を口に入れた。
「!」
ここを舐めることが汚いなどと思うのは、きっと日和がまだ子供だからだろう。好きになれば、相手の身体のどんな部分に唇をつけ
るのも躊躇などしない。
それが大人のセックスだ。
「あ・・・・・んっ」
わざと音を立てて舐めしゃぶると、力が入っていた腕がカクンと崩れ、そのまま日和は再びベッドに横たわった形になる。
秋月はそれを見てからもう片方の足からも足袋を脱がすと、そのまま同じように指先を愛撫した。
「はっ、はっ」
「・・・・・」
快感に敏感な日和はこんなところも感じるのか、無意識のうちに日和の足は開いていき、それをきっかけのように秋月は遠慮の
欠片も無く、更に膝裏を掴んで更に大きく足を開いてしまった。
既に勃ち上がっているペニスから少しだけ先走りの液が漏れているのに気付き、日和は恥ずかしくてたまらなかった。
それでも、足を閉じようにも間には秋月の身体が入り込んでいて、まるで見せ付けるように下半身が目の前に曝け出されている。
(は、恥ずかしい・・・・・っ)
もっと、初心者向けでいいのに、どうしてこんなに・・・・・。
(ま、待って、俺、受け入れちゃってるっ?)
本来なら、セックスなんてしたくないはずなのに、今与えられている快感をこのまま逃したくないと思ってしまう。気持ちが良くて、そ
れでも少しだけ性急過ぎて、もう少し自分に合わせてくれたら・・・・・。そんな風に思っている自分自身が信じられなくて、とりあえ
ず日和は自分が出来る抵抗・・・・・両手で必死に自分の口を塞ぐという抵抗をした。
「声を聞かせてくれないのか?」
「・・・・・んっ」
「まあ、いいか」
「・・・・・!」
(まあいいかってどういうことだよ〜っ!)
「嫌でも声を出したくなるだろうしな」
秋月の愛撫は全く休むことは無かった。
剥き出しになった淡い色の乳首を指先でこね、もう片方は舐めしゃぶる。女の子のように豊かな乳房は無いものの、それでもここ
が感じるということは日和はとっくに知っている。
心なしか前より色が濃く、大きくなってしまったようで、少し前友人に、
「お前の乳首って女みたいだよな。吸いたくなるっていうか・・・・・ちょっと雰囲気が・・・・・」
そう言われて以来、最近は体育で着替える時も、こそこそと着替えているという情けなさだった。
身体が変わっている・・・・・そう自覚するのはとても怖いことだし、自分が男に抱かれて喜ぶ人間だと思うのも怖いが、戸惑うこと
も許さないかのように秋月は日和を淫らに変えていく。
それでも日和は抵抗することが・・・・・出来なかった。
胸元の2つの飾りが、赤く色付いて美味しそうに育っている。
秋月がふっと息を吹きかけるだけで、華奢な腰が震えるのが分かった。
「あ・・・・・あっ」
その腰を、更に快感をかき立てるように意味深に撫で、すっと舌を落としておく。平坦な胸から、へその窪み、そして・・・・・淡い
下肢の毛に辿り着いてそこを舐め濡らすと、薄い毛は直ぐに濡れそぼって、その下にあるペニスの形をはっきりと見せてくれた。
(・・・・・感じているな)
男は感じると直ぐに分かる。
その呆気なさに思わず苦笑が零れるが、その安易ささえ可愛いと思えた。
「声を出せ、日和」
ペニスを握り、ゆっくりと擦ると、ペニスの勢いは更に大きくなり、秋月の手を先走りの液で濡らすほどになってきた。手のひらにド
クドクと波打つ脈動を感じるが、手の中に収まる大きさというのが可愛い。
「んっ、んっ」
「・・・・・ここも、気持ちいいだろう」
もう片方の手で、ペニスの根元にある双球を揉んでやる。自慰では触らないここも感じる場所だということを教えてやったのは秋
月で、素直な身体はその通りに反応した。
「もっ、もうっ」
「一度出せ。その方がお前の身体も柔らかくなるだろうしな」
「あっ、あっ、あっ!」
「日和」
ペニスを擦る手の動きを早くし、先端を爪先で刺激する。敏感な若い身体はそれ程長く刺激に耐えられるはずも無く、
「・・・・・!」
秋月が耳たぶを噛むように銜えた次の瞬間、ビクビクッと腰が揺れたかと思うと、日和は呆気なく秋月の手の中に精を吐き出して
しまった。
胸が苦しくて、腰がだるい。たった一度射精しただけなのに、もうクタクタに疲れてしまった。
それだけではない。
(汚し・・・・・ちゃった・・・・・)
自分の身体の下にある肌襦袢は、日和の精液で見事に汚れてしまった。どれだけ高い物かは分からないが、勝手に洗濯をし
ても傷まないだろうか?
(やっぱり、クリーニング・・・・・)
出さなくてはいけないだろうかと、荒い息をつきながら思っていると、まるで自分の方を向けとでも言うように秋月が音を立てて頬に
キスしてきた。
「余裕だな、日和」
「え・・・・・?」
「このくらいじゃ、まだまだお前は乱れないらしい。ちょっと可愛がり過ぎて慣れてしまったかな」
「ち、違・・・・・」
これ以上の刺激は勘弁して欲しいと必死で頭を左右に振るが、秋月は笑みを浮かべたまま今度は唇にキスしてくる。
「お前の身体はもっと気持ちいいことを知っているもんな」
「あ、秋月さ・・・・・ん」
「俺も、気持ち良くしてくれ」
熱くて硬い感触が太股に擦り付けられてくる。それが何なのか、教えられなくても十分分かっていた。
「・・・・・」
さすがに、自分だけ気持ち良くしてもらっても申し訳なく、日和は言葉で促されるままにオズオズと秋月のペニスに手を伸ばす。
自分のそれとは違う、ずっしりとした重量と大きさの、これならば自慢も出来るだろうと思えるペニス。
子供の腕ほどもありそうな(それは言い過ぎかもしれないが)大きなこれが、自分の尻の・・・・・あそこに何時も入っているとはどう
しても考えられなかった。
それでも、自分の腹を突き破るかと思うほどの大きさを自分自身で体験しているのだ、やはり嘘ではないのだろう。
「え・・・・・と」
日和から秋月に愛撫する事は余りない。人のペニスを触るのは何だか怖かったし、秋月の方も日和を感じさせる方が楽しいよ
うで、日和は何時もあっという間に快感に流され、そのまま・・・・・セックスが終わることが多かった。
それでも最近は、時々日和に愛撫をねだってくる。無理矢理ではないが、先程みたいに、まるで悪いことを唆してくるように。
「・・・・・」
「・・・・・」
秋月のペニスを擦りながら、日和はその顔を見つめた。
(・・・・・な、なんか、少しも・・・・・変わってないんだけど・・・・・)
ペニスは確かに感じているのを示すように大きく、そして先走りの液も流し始めているが、秋月の表情にはほとんど変化は見えな
かった。日和など、感じてしまうと直ぐに声が漏れ、顔も情けなく歪んでしまうというのに・・・・・これでは秋月が感じているかどうか
など考えるまでも無い。
(ど、どうしよう・・・・・)
もしかしたら、このまま手でイカせてしまえば、今日のセックスは無いのかも。
そんな甘い事も考えていたが、こんな様子では下手な罰として泣かされるまで抱かれてしまうかもしれない。
「き、気持ちよく、ない、ですか?」
思わず聞いてしまった日和に、秋月はふっと笑みを漏らす。
「気持ちいいぞ」
「で、でも・・・・・」
「お前の小さな手がくすぐったくて気持ちがいいが・・・・・」
「ひゃあっ!」
(ど、どこ、触ってんだよ!)
秋月は話しながら、日和の下肢に再び手を伸ばしてきたのだ。
そのまま、濡れたペニスの下、何時も秋月を受け入れる尻の狭間に指が触れてきて、日和は慌てて秋月のペニスから手を離して
しまった。
「ちょ、ちょっと、秋月さんっ」
「日和、手が止まってるぞ」
「止まってるって、あ、あのっ」
「ほら」
「・・・・・」
(お、俺にどうしろって〜)
慌てる日和に、秋月はにやっと人の悪い笑みを向ける。
「手で出来ないなら、お前のここで気持ち良くしてもらうしかないな」
秋月はそう言うと、いきなり日和の尻の蕾に濡れた指を差し入れてきた。
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