優しくベッドに下され、身を起こそうとした日和はそのまま覆いかぶさられた。
その拍子に、腰にタオルを巻いただけの秋月の逞しい上半身が視界の中に入り、慌てて視線を逸らしてしまう。
(や、やっぱり、照れるっ)
 何度もセックスをしたし、身体の隅々まで見られているのに、まだ熱にうかされていない時にこんな風に見つめられるのは恥ずか
しくて仕方が無かった。
 「どうした、何を照れている?」
 「て、照れない方がおかしいでしょ」
 「そうか?」
 「そうですっ」
 今から自分達が何をしようとしているのか、この俺様な男は分かっているのだろうか?単に自分をからかいたいだけじゃないだろ
うなと上目づかいに見上げると、秋月は楽しそうに目を細めて笑い掛けてきた。
 「誘うな、馬鹿」
 「さ・・・・・っ?」
 どこがと応える唇を強引に塞がれた。
 「んぅっ」
(いきなり〜っ?)
口の中に入ってきた秋月の舌に日和は動揺したが、それでも目の前の胸を押し返す気はない。それは、キスをしている相手が自
分の恋人だからだ。

 クチュ

好きな人とキスをするのは当たり前で、相手が男だからその気持ちが変わるということはあり得ない。
現に、秋月のタオルの下は徐々に持ち上がってきているし、日和のそこもキスだけで感じ始めている。好きでなければ、こんな風
に感じるはずが無い。
 「ふぁっ」
 ちゅくっという水音を立てて唇が離れた。お互いの唇からは唾液が輝く糸を引き、日和は口腔に溜まった唾液をコクンと飲み込
む。その時にはもう、日和の身体は熱くなっていた。




 キスを解くと、物足りないとでもいうような眼差しを向けてくる日和。
数分前まではあんなに恥ずかしがって、口では可愛くないことも言っていたのに、本当にこの子供は快感に弱い。
(それも、俺には都合がいいがな)
 身体を感じさせることから日和を自分の中へと取りこんだ。遊びではなく、その気持ちも欲しいと思ったからこそ、逃げられないよ
うにジワジワと絡め取った。
 「日和」
 「・・・・・秋月、さん」
 「違う」
 「・・・・・」
 「こういう時は何て言うと教えた?」
 恋人同士という関係の2人が一番濃密な時間を過ごす時に交わす言葉を何度も教えてきたはずだ。
日和はなかなか覚えなくて、いや、もしかしたらわざと覚えないようにしているのかもしれないが、案外秋月もそのたびに訊ねるの
が楽しみになっていた。普段は我が道を行くほどに呑気な日和が、一瞬にして自分の《女》の顔になるのが嬉しかった。
 「・・・・・甲斐さん」
 少しだけ震える声が言う自分の名前。
 「さんは余計だがな」
それでも充分だと褒めてやり、目元にキスを落とすと恥ずかしそうに肩を竦める。
 「久し振りだからな、じっくりと可愛がってやる」

 既に全裸の日和の乳首を口に含んだ。
自分と同じボディーソープの香りなのに、どうしてこんなにそそる匂いになるのか。多分、日和の体臭も合わさっているのだろうが、
秋月はこの日和の匂いが好きだった。

 ピチャ

 小さな乳首がつんと立ち上がり、存在を主張してくる。本来は胸というにはあまりにもささやかな存在のはずだったのに、こうして
可愛がってやると女の性感体と同じ存在になっていた。
 「ふふ、そんなにこれが気持ちいいのか?」
 「・・・・・っ、そ、そんな、こ、とっ」
 「右と左を比べてみろ。今可愛がってやった右の方は、ほら、こんな風に濡れてたち上がって」
 「んっ」
 言葉と同時に赤く熟れた乳首を噛むと、ひくんと腰が揺れるのが分かる。無意識に押しつけられる下半身・・・・・ペニスはもう頭
をもたげていた。
 「乳首を可愛がってやったら、ここも勃つのか。分かりやすいなあ、日和」
 「・・・・・っ、ば、かっ」
 「馬鹿で結構。もっともっと馬鹿になって、歯止めが効かないままお前を抱き潰してやるからな」
 そう言って、自分の腰に巻いているタオルを取り、半勃ちになった自分のペニスで日和のペニスを擦ってやる。クチュクチュという
淫らな水音が聞こえるまでには、そう時間は必要なかった。




 ニュル クチュ

 「・・・・・っ、や、やだっ」
(こんなのっ、ヘンタイみたいだよっ)
 秋月のペニスが自分のペニスを擦っている。同じ器官というには大きさも色も形もあまりにも違う2本のペニスが、まるで生き物
のように一つに絡みあっている姿はあまりにも衝撃的だった。
 互いのペニスから零れてきた先走りの液は、自分だけではなく相手のペニスをも汚していく。
濡れて、硬く、熱い。
ペニスでペニスを愛撫するという倒錯的な行為。
感情では抵抗感を強く感じるものの、日和の肉体は素直に快感を拾って行き、やがて自分から腰を動かす羽目になっていた。
 「んっ、んっ」
 「気持ちいいか?」
 耳元に感じる秋月の声も、熱を帯びている気がする。
 「揺れてるぞ」
 「な・・・・・っ」
 「男の本能ってやつか?」
笑われて、慌てて腰を引こうとしたものの、秋月は今度はペニスの下、双玉をペニスで刺激してくる。入れられてはいないものの、
それはもう疑似セックスと同じだ。
 「や、やめっ」
 「嘘をつくなよ」
 「嘘、じゃ、なっ」
 「じゃあ、俺が何をしてもイクなよ?」
 何をするつもりなのだと霞が掛かった意識の中で考えていた日和は、いきなり覆いかぶさっていた秋月の身体が目の前から消え
たかと思うと、
 「ひゃあっ?」
今にも爆発しそうだった自身のペニスが、生温かく濡れたものの中に収まったことが分かった。
 慌てて視線を向けると、秋月の頭が自分の下半身にかぶさっている。

 チュク ピチャ

音と、感触だけで、秋月の口淫を受けていることが分かった瞬間、日和はギュッとその髪を掴んだまま、呆気なくその口の中に快
感の証を吐きだしてしまった。
(もう・・・・・っ、最悪だよ〜っ)
 こんなに早くイッてしまった自分を見て秋月は何と言って笑うのだろうか・・・・・そう思うと恥ずかしくてたまらなくて、日和は自分の
腕で顔を隠そうと身じろいだが。
 「馬鹿、隠すな」
 なぜか、想像していたものとは違う優しい声でそう言われたかと思うと、そのまま唇にキスをされてしまった。
(・・・・・う、にが・・・・・っ)
秋月が舌を絡めた時に口の中に広がった何とも言えない苦い味が何なのか、直ぐには分からなかった日和も意味深にペニスを撫
であげられて、
 「・・・・・っ」
(お、俺のっ?)
自身の吐き出したものの味だと分かった途端、日和はカッと身体が燃えるように熱く感じた。




(気付いたか)
 日和のペニスを銜え、その精液を全て受け止めたままキスをした。マナー違反かもしれないが、そんなことを一々考えてやる優し
さなどない。
いや、こんな風に生々しいキスをしてやるほど、日和がもっと淫らになることを秋月は知っていた。

 チュパッ

 わざと音をたててキスを解き、駄目押しのように唇を舐めて、秋月は日和の鼻と己のそれが触れ合うほどに顔を近付けてにやっ
と笑い掛けて言う。
 「どうだ?」
 「ど、どう・・・・・?」
 「自分の味。俺のと違うか?」
 「!なっ、何を言って・・・・・っ?」
 「それとも、俺の方が美味いか?」
 あまりの直接的な会話に、日和は口をポカンと開けたまま声を出すことも出来ないようだった。
しかし、たちまち顔だけではなく全身が羞恥に赤く染まっていく様はなかなか楽しく、秋月は射精したばかりで萎えてしまっている
日和のペニスに絡めた指を動かし始める。

 クチュ クチュ

 「ま、待ってっ」
 濡れているペニスは艶めかしい音を立て、直ぐに頭をもたげた。若いからかもしれないが、いや、日和が感じやすいせいか、何度
か擦ればペニスが再び張りつめてくるのが指越しに分かった。
 「んっ」
 日和は今度こそ逃れようと秋月の腕を掴んできたが、感じさせるのは手以外にも幾つもある。
 「ふひゃっ」
足を動かし、ペニスをクニュクニュと押し潰し、
 「んあっ!」
また、自身のペニスを擦り付けた。
 「あ、あきっ」
 「甲斐」
 「・・・・・んっ、はっ」
 「甲斐だろう?」
 聞こえているのかどうか分からないが、秋月はまだ放出せずに硬いままの自分のペニスで日和のそれを愛撫する。
いかにも大人のものというグロテスクな自分のペニスが、綺麗で小さな(言うと怒られてしまうだろうが)日和のペニスを犯している様
は、挿入しなくても視覚的にきた。
 「・・・・・か、いさ・・・・・、止め、てっ」
 「どうして?」
 「ぐ・・・・・ぐちゃ、ぐちゃに、なる・・・・・から!」
 「馬鹿だな、日和。セックスはぐちゃぐちゃのドロドロになるもんだ」
 お互いの醜い顔を見せ合い、汚い欲望をぶつけ合って。人間の素の部分が濃密に絡み合うのがセックスというものだ。
もう何度も身体を重ねているというのに、日和はまだ自分を偽って見せようとしているのだろうか?
・・・・・いや、多分、日和は多少は自分のことを想ってくれているはずで、こうして拒むのは好きな相手に己の醜い部分を見せたく
ないからと思ってくれているからと信じたい。
 それならば、もっともっと苛めて、泣かせて、日和の理性がグズグズに溶けてしまうほどに攻めてやる。
そう思った秋月は身体を起こすと、そのままグイッと日和の足を抱え上げた。




 「うわっ」
 いきなり足を引っ張られ、日和はそのままズルズルと引きずられて、秋月の目の前に自分の下半身がくるという最高に恥ずかし
い格好をさせられてしまった。
 「・・・・・っ」
 多分、どんなに言っても秋月は日和の気持ちを分かってくれないのだろう。セックスをするのが嫌なわけではなく、秋月に抱かれ
ると我を忘れて乱れてしまう自分を見られるのが嫌だと、どうして分かってくれないのだろうか。
 バタバタと足を揺らしたが、それは抵抗だと分かるほどには強くなくて、返って下半身の奥、秋月を受け入れる場所を晒す羽目
になってしまった。
 「どうする、日和」
 「ど、どうって・・・・・」
 「ローションを使うか?」
 「ロッ?」
 「それとも、舐めて濡らすか?」
 「・・・・・っ」
 出来ればどちらも却下と言いたいが、それでは許してくれないはずだ。どちらがより羞恥を感じないだろうかと考え(考えるまでも
ないが)、日和は顔を赤くしたまま答えた。
 「ロ、ローション」
(恥ずかしいっ)
それを何に使うかを知っているだけ、言葉に出すのは随分と勇気がいったが、それでもあそこを舐められるよりはましだと思った。
しかし、それを聞いた瞬間に、秋月の口元には楽しそうな笑みが浮かび・・・・・。
 「分かった。・・・・・たっぷりと舐めてやるな」
 「!」
(は、話が違う〜っ)