未来への胎動
21
父や兄と同じ屋根の下でセックスするのはこれが初めてではない。
まだ家の者には内緒の付き合いで、知られてはならないという罪悪感や背徳感を感じながらも伊崎に抱かれていたが、
兄に知られた今も、その気持ちにあまり変化はなかった。
もちろん、大好きな、愛している伊崎と身体を合わせることを悪いことだとは思っていないが、自分だけがこんなにも幸
せでいいのかという後ろめたさはある。
父の大切な母は、身体が弱く入院しているし。
兄も、この世界に入る前に、付き合っていた彼女と別れたことを知っている。
楓だけが、初恋といっていい伊崎と両想いになり、こうして・・・・・。
「楓さん?」
「あ・・・・・」
楓は名前を呼ばれて、ハッと視線を上げる。
それまで、胸元に顔を埋め、ささやかな乳首を口に含んでいた伊崎が、顔を上げて自分を見つめていた。
「どうかしましたか?」
「・・・・・俺、幸せだと思って」
「幸せ?」
「大好きな恭祐と・・・・・セックス出来る」
(手を伸ばせば、そこにいてくれる・・・・・)
楓は自分の上にいる伊崎の背中に手を回した。逞しく、それでいてしなやかな身体。伊崎の背中には全く傷は無い。
彼が入ってから大きな抗争が無かったせいもあったが、伊崎が見掛けによらず強く、誰に対しても背中を向けない証だ。
楓には見せない別の顔もあるということ・・・・・冷徹で、非常な面も・・・・・。
(それでも、好きなんだっ)
そうでなければ、ヤクザなんか好きにならない。例え、自分がそのヤクザの家の人間でも、幼い頃から世話をしてくれた
相手でも、この男が欲しいと心底願わなければ、楓は多分この手を拒んでいたはずだった。
背中に回った楓の手が少しだけ冷たい。
手の冷たい人間は心も冷たいというが、伊崎はそうは思わない。楓は自分の心の奥深くにある醜い炎を鎮めてくれる天
使の手を持っているのだ。
「楓さん」
「恭祐・・・・・っ」
ピチャ
伊崎は楓の唇を塞ぐ。直ぐに開いてくれた唇の中に舌を差し入れ、唾液ごと攫うように口腔内を愛撫する。
楓も自分の舌に積極的に応えてくれ、どちらのものか分からない唾液が、飲み込めないまま楓の頬から伝って落ちた。
勿体無いと、その唾液を舐め取りながら、伊崎は同じ屋根の下にいる雅行のことを考える。
楓と下がれといった時点で、自分達がこうなることを予期していたのかどうか・・・・・楓のことを大切に思うあまり、自分との
関係を認められないと言った雅行。
「楓が成人するまで、俺や親父やお袋、そして組員の前でも、一切デキている気配を見せるな。・・・・・目に見えない
ものは、どうとでも誤魔化すことが出来る」
それでも、セックスしている気配を感じているかもしてない。
大切な弟と、それよりも遥かに年上の・・・・・自分が。
「あくまでも、これは暫定的な処置だ。俺は、とことんお前達を邪魔する」
それでも、無理だった。楓の気持ちと自分の気持ちが同じ今、この愛しい身体を抱かずにはいられなかった。
「あ・・・・・っ」
伊崎は、楓の華奢な首筋から胸元へと唇を這わせながら、手を伸ばして下着ごとジーパンを脱がす。既に先走りの液
を漏らすほどに感じていた楓のペニスは、狭い空間から開放されて勢いよく伊崎の手を押し返してきた。
「・・・・・」
その様子に笑みを漏らした伊崎は、手を伸ばして勃ち上がったペニスを掴む。濡れていたペニスは伊崎の手も滑らかに
動かし、そのままどんどん大きくなっていった。
「そ・・・・・れ、や・・・・・っ」
「手は、嫌?」
「・・・・・っ」
「・・・・・じゃあ、口にしましょうか?」
握られたままだった2人の手。楓の手に力がこもったことが答えだと、伊崎は一度身を起こし、そのまま楓の全身を見つ
めて感嘆の声を漏らした。
何度見ても、完璧に美しい身体だ。髪の艶から、顔の造作、臍の形に、ペニスの色形。手足の指先の爪まで完璧に
整っている楓の身体を抱く幸運を与えられた自分は、本当に世界一の幸せ者だろう。
「は・・・・・やくっ」
じっと見つめていると焦れたように、楓が細く伸びやかな足を左右に開いた。
人形のように完璧な身体の中の、人間らしい器官。自分の愛撫を求めて、震えながら濡れているペニスを掴み、伊崎は
そのまま喉の奥まで迎え入れた。
「ひ・・・・・っ!」
滑る伊崎の口腔内は、手での愛撫とは雲泥の差だ。
喉のザラザラした部分で擦られ、歯で甘噛みされ、舌で先端をくすぐられ、楓の腰はビクビクと震えてしまった。
「んんっ」
どんどんと容赦なく与えられる愛撫に、楓は追い詰められていく。出来れば最初にイク時は伊崎と一緒がいいと思った
のに、このままでは自分の方が先にイッてしまいそうだ。
(ま、待って・・・・・っ)
まだ、伊崎はシャツを羽織ったまま、下はベルトも外していないというのに、自分だけが快感に踊らされてしまう。
「あっ、あっ、あっ」
ズリュッ ジュクッ
唇がペニスを擦る音が、だんだんとリズムを早くしていく。
「きょっ、きょうっ、けっ」
ジュク ジュク クチュ
「・・・・・っ!」
楓は自分の下半身に顔を寄せ、ペニスを銜えている伊崎の髪を無意識に掴んだ。何か、支えが欲しかった。
(も・・・・・だめっ!)
その楓の行動に触発されるようにどんどん伊崎の口淫は淫らに、激しくなり、やがて耐え切れなくなった楓は伊崎の口の
中に更にペニスを押し込み、そのまま精を吐き出してしまった。
「あ・・・・・ん・・・・・っ」
喉を鳴らしながら、伊崎が自分の吐き出したものを飲んでいるのが分かる。
恥ずかしくてたまらないのに、嬉しくて、楓は何とか肘を使って身体を起こすと、伊崎の肩を押して顔を上げさせ、
「楓さ・・・・・」
まだ白く濡れている唇に、自分から舌を絡めるキスを仕掛けた。
(・・・・・マズイ)
伊崎の口腔の中に残っていた自分の精液の味は、苦くて青臭くて、自分ならばとても飲み込めなくて吐き出してしまい
そうなものなのに、伊崎はこれを望んで飲んでくれたのだ。
(・・・・・愛してなきゃ、出来ないって)
そして、楓も、自分のものはごめんだが、伊崎のものならば飲める。
自分だけが先に追い詰められた仕返しにと、そのまま伊崎を押し倒した楓は、ベルトを外すと、下着をずらしてペニスを取
り出した。
(・・・・・おっき・・・・・)
伊崎のペニスも勃っている。楓が触れると、更にそれは凶器のような様相になってしまった。
(く、口に入るか・・・・・?)
男としては、少し悔しい。
楓が何をしようとしているのかは分かるし、これまでも何度かしてもらったが、伊崎は望んで口淫をしてもらおうとは思って
いなかった。
楓の綺麗な唇を汚したくなかったし、自分の方が楓に奉仕するのが好きだ。
しかし、自分のペニスを銜えてくれようとしている楓の気持ちはとても嬉しい。自分の下半身に顔を埋めているその姿を
見ると、普段気の強い楓が自分だけに服従しているように見えて・・・・・暗い欲情も感じる。
(それが、俺の本性かもしれないな)
「・・・・・」
直ぐには銜えることに躊躇いがあるのか、楓は下着の中から取り出したペニスを両手で握ったまま、なぜかまじまじと見
つめているようだ。
何を考えているのか分からないが少し気恥ずかしくて、伊崎は手を伸ばし、楓の髪を撫でた。
「無理しなくてもいいんですよ」
「・・・・・無理じゃない」
「楓さん」
「・・・・・俺よりデカイのがムカツクだけ」
「それは・・・・・」
体の造りのせいかもしれないが、その大きさに文句を言われても小さくすることは無理だ。子供のようなことを言う楓に、
伊崎は冗談めかしてすみませんと言った。
「でも、大きい方が楓さんも喜ぶでしょう?」
「・・・・・っ」
その瞬間、頬を真っ赤に染めた楓が、ペニスを握っている手にギュッと力を込めてくる。思わず眉を顰めた伊崎を、楓
は睨みつけながら言った。
「アンアン泣くなよ、恭祐」
「でも、大きい方が楓さんも喜ぶでしょう?」
「・・・・・っ」
何を言うのかと怒鳴りつけたかったのに、あまりにも恥ずかしくて声も出ず、楓は衝動的にペニスを握っている手に力をこ
めてしまった。さすがに痛かったのか伊崎の眉が顰められたが、今自分が感じた羞恥に比べれば可愛いものだ。
(お、俺が、喜ぶなんてっ、どんな親父ギャグなんだよ!)
・・・・・もちろん、伊崎のペニスが小指ほどに小さかったら問題だが、普通サイズだって自分には十分だ。規格外が問題
なんだと思いながら、
「アンアン泣くなよ、恭祐」
精一杯虚勢を張って、楓は思い切ってペニスを口に含んだ。
「ふぐっ」
先端と僅かな竿の部分だけで、口の中は一杯になる。硬いのに、柔らかい肌触りに、楓は何とか歯を立てないように顔
を上下し始めた。
「んっ、ふっ、んっ」
ズリュ クチュ
口いっぱいのペニスに舌を絡めるのは難しく、ただ唇で上下に擦るのが精一杯で、それでも何とか伊崎に快感を与えよ
うと、口に含めない部分を手で擦る。
「・・・・・っ」
頭上から聞こえた、伊崎の溜め息のような声。
(感じてるの、か?)
楓は嬉しくなって、いったんペニスを口から取り出すと、今度は先端部分だけを口に含んで、舌や歯を使って愛撫を施し
始めた。
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