MY SHINING STAR



24








 「タロ」
 「お、俺も、お風呂!お風呂入りたい!」
 太朗の緊張はピークになっていた。
腰にタオルを巻いただけの上杉はドキドキするほど大人で、カッコよくて。
ただ、それと同時にいよいよ今からなのかと思うとどうしても待ったを言いたくなって、太朗はピョンとソファから立ち上がった。
 「い、いいよね?」
 「・・・・・タロ」
 「な、なに?」
 「あ、いや、ゆっくり入って来い」
 「・・・・・うん」
 「その代わり、服を着てくるなんで無粋な真似はするんじゃねえぞ」
 「わ、分かってるよ!」



 様々な葛藤をしているのだろう。
太朗が寝室に顔を覗かせた時、ベットに腰掛けていた上杉は丁度3本目の煙草を吸い終えた頃だった。
 「早かったな」
 「・・・・・」
 おずおずと中に入ってきた太朗の姿に、上杉は思わすプッと吹き出した。
 「なんだ、その格好は」
 「だって・・・・・」
太朗は上杉のバスローブを羽織っていた。多分、バスルームに予備として置かれていたものだろう。
2人の体格差を示すように、本来上杉ならば腿と膝の間ぐらいの長さなのに、太朗はまるで膝下スカートをはいている様に
ゾロびいていた。
肩も落ち、太朗の指先さえ袖からは見えない。
その格好が何とも言えず可笑しくて可愛い。
 「わっ、笑わないでよ!自分でだって変だって分かってる!でも、だって、タオルだけなんて・・・・・」
恥ずかしいよと呟く太朗に、上杉が言った。
 「こい、タロ」
 「・・・・・犬みたいに呼ばないでよ」
 「タロ」
 「・・・・・」
 重ねて言うと、太朗は少し躊躇う素振りを見せた後、ゆっくりとベットに近付いてきた。
その身体が手の届くところまできた時、上杉は無造作に結ばれていたローブの紐を外す。
 「・・・・・ああ、綺麗な身体だ」
 約束通り、太朗は下着を身に着けておらず、ローブの下は素肌だった。
まだまだ少年の瑞々しさを持つしなやかな身体。あれだけ運動していると言うのに、どこか柔らかな線を保っている。
1度見たことがある綺麗な色のペニスは、緊張の為か小さく縮こまったままだ。
 「いいか、タロ、今から俺がお前を抱くのは遊びでも好奇心でもない。お前が欲しいから抱くんだ・・・・・それは分かってる
な?」
 「・・・・・うん」
 「今回は少し痛いこともするが、俺を信じて身体を任せろ」



 部屋の電気は落とし、カーテンも閉めてくれているが、どうしてもお互いの姿は目に映った。
太朗は、腰のタオルさえも取っていた上杉の、既に勃ち上がり掛けたペニスが目に入り、一瞬息をのんでしまった。
(・・・・・でかい)
その体格に見合った上杉のペニスは太朗の想像以上に大きく、まだ完全に勃起していない状態でもゆうに太朗の勃起時
の2、3倍はあるように見えた。
同じ男であるだけに、羨ましいと同時に自分が情けなくなる。
 「タロ」
 そんな太朗の表情に気付いたのか、上杉が笑いながら頬にキスをしてきた。
 「お前はまだまだこれからだって」
 「・・・・・っ」
何だか情けない慰められ方だが、太朗はキュッと唇を噛み締めて上杉に抱きついた。
 「おお、積極的だな」
 お互い既に全裸なので、素肌が直に触れ合う。
そのせいか、太朗は上杉が口で言うほど余裕があるわけではないと、伝わった激しいくらい早く打つ心臓の鼓動で感じ取っ
た。
(ジローさんも緊張してる・・・・・)
そう思うと、少しだけ太朗は落ち着いた。



(・・・・・みっともねえ)
 上杉は太朗の肌に触れようとしている自分の手が小さく震えているのに気付いて内心舌打ちをした。
自分ではもっと余裕があって太朗を抱けると思ったのに、身体の方は今までに無く緊張しているようだ。
 こんな風になったのは、今日で3度目だ。
一度目は初めて女を抱いた時、緊張して手が震えた。
二度目は結婚した女を初めて抱いた時。好きだという気持ちが強くて震えた。
そして今・・・・・上杉は今までに無く怖いと思って震えている。
男相手だとか、好きだとか、そう思う以上に、失うことを恐れていた。
太朗を抱きたいとは思っているが、このことで太朗が結果的に離れてしまうようなことがあれば・・・・・男同士のセックスに違
和感や嫌悪感を持ったらどうしようかと思う。
 「・・・・・ジローさん?」
 上杉の手が止まってしまったことに気付いた太朗が、下からじっと上杉を見上げ・・・・・そして強張った笑みを向けてきた。
その顔が可愛くて、上杉は反射的に貪るようなキスをした。
(ああっ、もうっ、可愛いんだよっ、ちくしょう!)



 いきなり口の中に入ってきた上杉の舌に、太朗は初めてではないが途惑ってしまう。
まるで何かの生き物のように、太朗の口腔内を我が物顔で犯す上杉の舌に、太朗は応えることもままならなかった。
(い・・・・・き、くるしっ)
 呼吸のタイミングが掴めず、太朗は息苦しさにバンバンと上杉の肩を叩く。
それでやっと口付けを解いてもらい、太朗はゼイゼイと激しく呼吸した。
 「まだ今からだぞ、タロ」
 既に疲れきったような太朗の様子に笑いながら言った上杉は、そのまま唇をうなじに滑らせ、細い首筋に歯をたてた。
 「!」
 「痛くはないだろ?」
そのまま鎖骨から胸元、そして腹と、まるで太朗の身体全てを味わうように上杉の唇は移動していく。
時折は軽く噛み、あるいは強く吸う。
ざらざらとした舌の感触が肌の上を滑っていくのに、太朗はもう身を震わせることしか出来なかった。



(勃ってる)
 自分の胸元に濡れた感触があった上杉が視線を落とすと、そこにはまだ幼いながらもちゃんとした男である証の太朗のペ
ニスが勃ち上がっていた。
これまでの行為に太朗が嫌悪感ではなく快感を感じている証拠に上杉は安堵する。
 「タロ」
 「・・・・・」
 耳元で名前を囁くと、ポヤンとした視線を向けてくる。
まっさらの身体は、与えられる快感を素直に感じ取っているようだ。
 上杉は満足したように唇に笑みを浮かべると、太朗が抵抗する気が無いうちに次の段階に移ることにした。
太朗の震えて勃ち上がっているペニスをそのまま口に含んだのだ。
 「!!な、なにっ?」
 敏感な場所に突然の違和感を感じ取ったのか、太朗はビクッと体を硬直させる。
そして、その目は直ぐに自分の下半身に顔を埋めている上杉の姿を捉えたらしい。
 「ジ、ジローさん!な、なにしてるんだよ!!」
ペニスを口に含んだままではもちろん答えることは出来ず、その代わりにと上杉は口の中にあるペニスに舌を絡め、先端を軽
く噛んでやった。
 初めてではないその行為も、まだたった二度目だ。
その強烈な刺激を覚えていた太郎の身体がその快感に耐えられるわけが無く、そのまま高い啼き声をあげながら上杉の口
の中で射精してしまう。
覚えがある、苦く、そしてなぜか甘く感じる太朗の精液を、上杉は少しの躊躇いもなく嚥下した。