熱砂の恋








                                                          
※ここでの『』の言葉は外国語です






 いずれはこの国の国王となるアシュラフの妻達が暮らすことになるハレムは、そこが砂漠の一角であることを忘れさせるような緑
と花に囲まれていた。
 『アシュラフ様』
 門が開く音を聞きつけて来たのは、このハレムの管理を任せているバーレ夫人だった。
父王の3番目の妾妃だった彼女は、王の寝所に呼ばれなくなって直ぐに、次期王になるアシュラフのハレムの管理を申し出た。
海外で留学経験もあった頭のいい彼女をアシュラフも尊敬していたし、彼女に任せていれば女達の醜い争いも上手に取りまと
めてくれるだろうと思ってそれを承知した。
それから数年間、今だ争い合う正妻も妾妃もいなかったが。
 『お久しゅうございます』
 『お前も元気そうだ』
鷹揚なアシュラフの言葉に微笑み、バーレは控えめにアシュラフの腕の中の悠真に視線を向ける。
 『奥様でいらしゃいますか?』
 『世話を頼む』
 『それは・・・・・おめでとうございます』
 今までは外で遊ぶばかりだったアシュラフは、このハレムに誰も入れることはなかった。
女主人が空白のままのハレムを守ってきたバーレは、嬉しそうに祝福の言葉を与えてくれる。
 『お食事はいかがされますか?』
 『寝所と湯の用意は?』
 『何時でもご利用して頂けるように常に用意は万端でございます』
その言葉に、アシュラフは満足げに頷いた。
 『このまま湯を浴びて寝所に向かう。バーレ、この者は何もかもが今日初めてな故、かなり騒がしてしまうかもしれないが』
 『承知いたしました。ごゆるりと可愛がって差し上げてくださいませ』
ここはハレム・・・・・主人が誰の目も気にすることなく、自由に愛の交歓が出来る場所なのだ。



 50代くらいの、それでも十分上品で綺麗な女に微笑みかけられ、悠真はアシュラフの腕の中にいたままぎこちなく会釈を返し
た。
目の前に広がる光景は、先程までいた屋敷のシンプルで機能的な様相とは違い、華やかで明るい色合いの佇まいだ。
(ここが、ハレム・・・・・)
 男が女達を囲う場所。
悠真自身もそんなに知識があるわけではないが、その言葉はどうもセクシャルな響きとしてしか取れなかった。
今までここには住人がいなかったと言っていたが、召使達はいて手入れも綺麗にされている。まるで今からでも十分ここに住むこ
とが出来るかのように・・・・・。
(まさ、か、本当に俺・・・・・を?)
 アシュラフが本気で男の自分を妻にしようとしているのが、だんだんと現実味が沸いてくるようで落ち着かなく、悠真はアシュラフ
の腕の中で身を捩った。
 「あ、あの、下ろしてください」
 「ならぬ。このまま風呂に入るぞ」
 「え?」
 「私はそのままでも構わないが、初めてのお前はやはり湯につかっておきたいだろう?」
 「え〜っ?」



 悠真は慌て、急に激しく腕の中で暴れ始めた。
どうやらようやく自分の身に何が起ころうとしているのか自覚をしたようだ。
しかし、体格も力もはるかに上回るアシュラフの腕の中から逃れることなど出来るはずもなく、アシュラフはそのまま悠真を風呂に
連れて入った。
 「うわっ、ふ、服が!」
 「構わぬ。どうせ入るのは私とお前だけだ」
 「無茶苦茶・・・・・っ」
 どんなに罵倒されても、アシュラフは手を止めることなどせず、悠真を抱きしめたまま湯船につかった。
 「!」
 更に文句を言おうと口を開き掛けた悠真の唇をそのまま奪い、突然の行為に口を閉ざすことなど出来なかったらしい悠真は、
結果的に二度目の深いキスを許すことになった。
眉を顰め、ギュッと目を閉じた悠真が自分のキスを受け入れる様子を見ながら、アシュラフは慣れた手つきで濡れて肌に張り付
いた悠真の服を器用に脱がせていった。
(・・・・・細いな)
16歳ということだが、悠真はその年齢から見てもまだまだ発達途中な青い身体をしていた。
しかし、次第に現われる白い肌は東洋の人種に特有の肌理の細かい肌だ。
 「綺麗だな」
 「ア、アシュラフ、俺は・・・・・」
 「ユーマは女を抱いたことがあるか?」
 「そ・・・・・っ!」
 瞬間に全身が赤く染まっていくのを見れば、答えなど要らなかった。
悠真の全てを自分が初めて触れるのだと、アシュラフの心の中には内からこみ上げる喜びが溢れている。
(抱く相手の初めてなど、全く興味は無かったんだが)
むしろ、慣れている方が手間が掛からないものと思っていたが、いざ悠真がまだ誰の手にも触れられていないと思うと・・・・・自然
にアシュラフの心が震えたのだ。



 慣れた手つきで次々と服を脱がされた悠真は、もうアシュラフのなすがままだった。
多分・・・・・本気で嫌だと思い、抵抗したとすれば、幾ら体格や体力に差があるとはいえ、男である悠真を組み伏せることは簡
単なことではないはずだ。
それなのに・・・・・。
(まずい、まずいよ、俺〜)
 自分とは全く違う大きな手。
しかし、それは肉体労働などしたことが無いのが分かる綺麗な手で、長い指が繊細に悠真の身体を優しくなぞっていった。
僅かな胸の先端に触れられるとビクッと無意識に身体が跳ね、それがまるで感じているようで恥ずかしくなってしまう。
 「・・・・・」
 後ろから悠真の身体を抱きかかえるようにして湯につかっていたアシュラフに逸らした首筋に軽く歯をたてられ、悠真は思わず声
を漏らしてしまった。
 「ふぁっ・・・・・んっ」
 「もっと啼け、ユーマ」
 「やめ、やめて、くだ・・・・・っ」
 「止める?お前の身体はこんなに喜んでいるのに?」
 「・・・・・っ」
勃ち上がりかけたペニスを掴まれ、悠真はもう泣きそうだ。
 「アシュラ、フ・・・・・ッ」
 「愛してる、ユーマ。私の愛を受け入れて欲しい」
真摯な響きの言葉に、悠真は思わずアシュラフを振り返ってしまった。
 「アシュラフ・・・・・」
 「身体も心も、全て私に委ねてくれ」



 悠真の身体のこわばりがその瞬間見る間に解けていったのを感じ、アシュラフの口元には満足げな笑みが浮かんだ。
(もう大丈夫か?)
すっかり裸に剥いてしまった悠真の体をそのまま抱き上げ、アシュラフは風呂を出た。
そこには2人の使用人がいて、濡れているアシュラフとユーマの身体を丁寧に拭いていく。
 仕えられることに慣れているアシュラフは自分の裸を見られることに慣れているが、悠真はかなり恥ずかしいのだろう、アシュラフ
の腕の中で身体を小さくしていた。
 『もうさがっていい』
 『は』
 悠真にこれ以上の精神的な負担を掛けさせない為にも人払いをしたアシュラフは、そのままの格好で寝所に向かった。
そこは、第一夫人・・・・・つまり、アシュラフの正妻が入るはずの部屋だった。
 「ユーマ」
 優に4,5人は一緒に寝れそうな広いベットに悠真の身体を下ろしたアシュラフは、たちまちシーツで身体を隠そうとした悠真の
両腕を軽く押さえ、その身体の上にのり上がるようにしてじっと悠真の顔を見つめた。
 「私が嫌いか?」
 「・・・・・」
 「こうして触れ合ってみて・・・・・嫌悪を抱くか?」
 風呂の中で全ての服を脱ぎ捨て、脱がした自分達は今全裸で、お互いの勃ち上がりかけたペニスが擦れ合っている。
湯だけではない濡れた感触が下半身を敏感にし、アシュラフはうっとりとした目で悠真に言った。
 「私はもう・・・・・こんなにお前を欲しがっている」
 「・・・・・けて・・・・・」
 「ユーマ?」
 「助けて・・・・・アシュラ・・・・・フ・・・・・」
 「ユーマ」
 「身体・・・・・熱いよ・・・・・」
 上気した目元が色っぽく、まるで誘うようにアシュラフに視線を向けてくる悠真。
多分、それは誘っているわけではないのだろうが、アシュラフは自分に都合のいいようにその言葉の意味を解釈した。
 「助けてやる、ユーマ。お前のその身体の熱を冷ましてやるぞ」
そう言うと、アシュラフはいきなり体を起こすと、躊躇いも無く悠真のペニスを自分の口に含んだ。



 「!!」
 突然、ペニスが熱い粘膜に包まれた。
悠真は信じられないというように大きく目を見開き、自分の下半身に頭を埋めているアシュラフの褐色の広い背中を見つめてし
まう。
(な、なに?俺の・・・・・口で?)
性体験がまだの悠真にとってこの行為、フェラチオは未知の愛撫だった。
 「ああん・・・・・っ」
(こ、これ、俺の、こ・・・・・え?)



 女の中に入ったことが無いまだ幼いペニスが、まだ会って1時間もしない男の口の中を犯していく・・・・・いや、犯しているのは
口をつかっているアシュラフの方かもしれないが。
今まで奉仕される側のアシュラフにとっても、自ら相手を感じさせる為にこんな風に性器を愛撫することなど皆無といってもいいぐ
らいだったが、なぜか悠真には最高の快感を感じさせてやりたかった。
自分と同じ男の証・・・・・しかし、自分のものよりもはるかに幼いままの悠真のペニスは、咥えることに全く躊躇いは無い。
 「あっ、はっ、あんっ!」
 「・・・・・」
 「ひっ、はっ、ああぁっ」
アシュラフの頭を引き離そうと伸ばされた悠真の手は、もどかしげにその髪を掴んだ後、まるで縋るようにそのまま自分の方に引
き寄せていった。
無意識に快感を拾い始めた悠真に、アシュラフは更なる愛撫を加える。
 ペニスの先端を甘噛みし。
幹の部分の裏筋に沿って舌を這わせ。
付け根の小さな二つの袋を少し強引に手でもみしだく。
そのたびに悠真の身体は跳び跳ねた。
(感じているな)
 そして・・・・・それから時間を置くことも無く、悠真は呆気なくアシュラフの口の中で射精してしまった。
 「あ・・・・・」
強烈な快感に、我慢など出来なかったのだろう。目尻に涙を浮かべたまま、悠真は荒い息をついている。
(美味いものではないが、ユーマのものと思えば不思議と甘く感じる)
 口の中に広がっていく苦く甘い悠真の体液を飲み込んだアシュラフは、やがて口からペニスを離し、快感に浸ってぼんやりと空
を見つめている悠真の唇に軽くキスを落とした。
 「・・・・・」
 僅かに眉を顰めたのは、アシュラフの口に残っていた自分の精液の味を感じ取ったからだろうか。
子供のように素直な反応に、アシュラフは苦笑してしまう。
 「ユーマ」
 「・・・・・」
 「これで終りではないぞ」
 「・・・・・アシュラフ?」
 「お前の全てを貰う為に、今度はお前のここで私を受け入れてもらう」
そう言いながら、アシュラフの指先は悠真の尻の狭間をゆっくりと意味深になぞる。
 「あ・・・・・」
 「ここに、私のものを入れるぞ」
 「・・・・・っ」
信じられないと大きく目を見開く悠真に、アシュラフは艶っぽい笑みを向けた。






                                     





アラブ物、第5話です。
も、申し訳ないです、ここで終わりませんでした。
せっかくのシーンを駆け足で終わらせたくなかったので、もう1話追加です。
次回は、次回は最終回のはず・・・・・。