熱砂の恋








                                                          
※ここでの『』の言葉は外国語です






 悠真の尻の蕾を解す為に垂らされたオイルが、ピチャピチャといやらしく部屋中に響く。
(嘘・・・・・あんなとこに、ゆ、指・・・・・)
男同士のセックスがどこを使うのか・・・・・女のように受け入れる場所がないので、使う場所は限られている。
頭の中では分かっているその事実も、実際にこうして普段は排泄の時にしか使わない、自分でも直接触れることなど滅多にな
い場所に他人の指を受け入れるなど、悠真は受け入れている自分自身が信じられなかった。
(お、俺、アシュラフと、せ、セックスするって・・・・・こと?)
 結婚とか、妻とか、そんな風に現実味の無い言葉よりも、はるかにこの行為自体が悠真の心に激しい衝撃を与えていた。
 「ユーマ、足を広げろ」
 「ア、アシュラフ」
 「私を受け入れてもらうには、お前のここを十分解さないと傷を付けてしまう。ユーマ、私の言う通りにしろ」
 「・・・・・っ」
なぜ、そこで嫌だと言わないのか。
震える足をおずおずと開きながら、悠真はこんなにもアシュラフの言いなりになってしまう自分の身体に途惑っていた。
 「ユーマ」
 「・・・・・」
 「愛している」
 「・・・・・っ」
 「お前の身体で、私を溶かしてくれ」
(・・・・・は、恥ずかしい・・・・・っ)
 民族性の違いか、アシュラフは躊躇うことも無く愛の言葉を囁いてきて、悠真はその言葉一つ一つに嫌でも反応してしまう。
同じ男の身体である自分を、これ程甘く丁寧に愛撫してくれるアシュラフの言葉を信じてしまいたくなる。
(俺のこと・・・・・ホントに・・・・・?)
一目惚れという事が現実にあることなのかと、悠真はただアシュラフの手で甘く身悶えてしまうしかなかった。



 悠真の身体が一分、いや、一秒ごとに、自分の手に素直に反応していくのを感じ、アシュラフの頬には満足げな笑みが浮か
んでいた。
綺麗な悠真の肌はまるで男を感じさせないほどにアシュラフの指先に吸い付き、白い肌が快感にゆっくりと赤く染まっていくのは
目に心地良かった。
一度精を吐き出してしまったペニスも再び健気に勃ちあがって震え、無意識なのだろうかアシュラフの鍛えた硬い腹に自ら擦り
付けてくる。
 まだ全く苦痛を与えていない今の段階では、悠真の身体は既にアシュラフの言いなりになっているのも同然で、これ程に素直
な身体はこの先もっとアシュラフの好みに変化していくだろう。
 「ふ・・・・・んっ、んっ」
 自分のペニスを受け入れさせる悠真の小さな尻の蕾は、ようやくアシュラフの指を2本受け入れるようになった。
これ程に狭い場所に、人並み以上の大きさだと自負している自分のペニスが、悠真を傷付けることなく挿入出来るか・・・・・ア
シュラフは少し考えてしまった。
本来なら、慣らす目的ならば今日は指だけを使い、ペニスの挿入は後日にした方が間違いはないのは分かっている。
しかし、これ程色鮮やかに変化してきた悠真の身体をその最奥まで味わわずに手放すことなど出来ない。
(出来るだけ、優しくしよう)
 それでも、自分のペニスはこれまで無かった以上に大きく硬く勃ち上がっている。
自身の正直な反応に、アシュラフは苦笑を浮かべるしかなかった。



 どの位経ったのだろうか・・・・・下半身に感じる圧迫感は更に大きくなったものの、一番最初に感じていたピリッとした痛みは既
に消えていた。
 「ひゃっ、はっ、ううんっ」
 時折、身体の中の感じる場所を引掻かれるようにされ、身体が飛び跳ねそうになるのをアシュラフが身体ごと受け止めてくれ
る。
その時、悠真は触れ合った自分とは全く違う褐色の肌に、しっとりと汗が滲んでいることに気がついた。
感じているのが自分だけではないと分かり、安堵と共に嬉しさがこみ上げてくる。
(男同士でも、気持ちよくなれるんだ・・・・・)
 「アシュラ・・・・・フ・・・・・」
 「ユーマ」
 まるで恋人同士のように名前を呼び合っていると、悠真の中にもアシュラフに対する確かな思いが見える。
目の前のこの男が、愛しいと思うのだ。
 「アシュラフ・・・・・」
 今まで頭の中で思い描いていた、手順を踏んだ恋愛などではなく、本来ならありえない状況下での思い。
もしかすると、この一瞬にだけ気持ちが傾いているのかもしれないが、それでも構わないと思える程にその思いは強い気がした。



 ようやく、指が3本、窮屈ながらもその中で動かせるようになった頃、アシュラフは既に勃ち上がって先走りの液で濡れた自分
のペニスを持ち直した。
慣れた女でも、挿入時は苦痛を感じさせるほどの自分のペニスを、指を引き抜いた場所にゆっくりと押し当てる。
 「・・・・・っ」
 クチュッと粘膜の擦れ合う音がする。
(・・・・・やはり、まだ狭いか)
先端の一番太い部分をめり込ませるにはもう少し愛撫をした方がいいことは分かるが、アシュラフもこれ以上我慢は出来なかっ
た。
差し込んだ指でさえ、ギュッと強く締め付けてきたあの狭い中に自分の欲望を早く沈めてしまいたい。
 「ユーマ、少し我慢してくれ」
 「・・・・・ふっ」
 「・・・・・っ」
手元のオイルを更にその部分に垂らすと、アシュラフは一気にペニスの先端を差し込んだ。



 「!!!」
 信じられないほどの衝撃が悠真を襲った。
まるで尻から身体を二つに裂けられたような、息さえも出来ないような痛み。それと同時に感じる熱さと圧迫感で、悠真はただ
口を開けて短く呼吸をするしか出来なかった。
 「ユーマ、大丈夫か?」
 「・・・・・っ、・・・・・っ」
 「ユーマ」
何度も頬を撫でられ、名前を呼ばれているのに、悠真は声を出すことが出来なかった。
しかし、それで全てが終わったわけではないと悠真が知るのは直ぐだった。
痛みを長引かせるよりはいいと思ったのか、アシュラフが勢いつけてペニスの根元まで一気に挿入を果たしたのだ。
 「ひぃぃぃぃ・・・・・っ!!!」
 助けを求めるように伸ばされた悠真の手が、アシュラフの腕を掴むとギュッと爪をたててしがみ付いた。
荒い息を吐きながら、目からはボロボロと涙が流れる。
 「ユ・・・・・マッ」
根元までペニスが入り込んだのは、アシュラフの下生えが尻に触れたことで分かった。
アシュラフ自身も痛みを感じているのか眉を顰めているが、ペニスはそのまま悠真の中に深く埋めたままだ。
いくら慣らされたとはいえ、許容量以上のアシュラフのペニスは相当な苦痛を悠真にもたらしたが、悠真はそれでも嫌だとは思え
なかった。
確かに、下半身は燃えるような熱さと痛みで、まるで自分のものではないような感覚にさえなっている。
息をする為に僅かに動くだけでも結合部分に響き、ジンジンとした鋭い痛みが断続的に襲ってもくる。
それでも・・・・・。
 「ユーマ、目を開け」
 「・・・・・っ」
 「ユーマ、ユーマ、私を見ろ」
 涙で潤む視界は、目を開いても良くは見えなかったが、何度も瞬きを繰り返しているうちに、悠真は驚くほど間近にアシュラフ
の顔があることに気付いた。
そして、言葉の通りに目を開いた悠真に、アシュラフは自分も泣きそうな、それでいて嬉しそうな笑みを向けてきた。
 「この行為が、こんなにも厳かに思えたのは初めてだ」
 「ア・・・・・」
 「愛している、ユーマ。今はまだ私の言葉を信じることは出来ないかもしれないが、私はお前の全てをこうして奪うことが出来て
嬉しくてたまらない」
 「・・・・・・っ」
 「愛してる・・・・・」



 ギュウッと、悠真の中の襞がペニスを搾り取ろうとするようにうごめき、アシュラフは思わず洩れそうになる声を唇を噛み締めて堪
えた。
(すご・・・・・いっ)
それは意識しての技巧ではないことは分かる。
だとしたら、じっとしているだけでもペニスを刺激する悠真の中は大変な名器なのかもしれない。
 「・・・・・くっ」
 「・・・・・!」
 アシュラフは悠真の腰をもう少し持ち上げ、自分達の結合している部分に視線を落とした。
皺が無くなってしまうほど限界に開いた悠真の蕾は、健気にも根元まで自分のペニスを受け入れている。
どうやら切れてはいないようだが、少しの身動きも出来ないほどに隙間が無いこの状態では、悠真の苦しさも自分のもどかしさ
も解消されないままだ。
 「ユーマ・・・・・」
 悠真の顔は汗びっしょりで、頬は紅潮したように赤く染まっている。
とにかく自分が精を吐き出すまではこの状態のままだと思ったアシュラフは、残りのオイルを全て結合部分に垂らすと、ゆっくりと
ペニスを引き始めた。
 「い・・・・・っ!」
それだけでも痛みがあるのだろう、悠真の顔は泣きそうに崩れ、さらに強くアシュラフにしがみ付いてくる。
そんな爪が食い込む痛みなど、自分が悠真に与える痛みに比べれば全く無痛に近いものだ。
(出来るだけ感じさせてやりたい・・・・・)
 先端部分を残す部分まで引き出し、次にまた根元までゆっくりとペニスを埋めていく。
それを時間を掛けて、何度も何度も繰り返していくうちに、アシュラフは悠真の漏らす吐息に変化が生まれたことに気がついた。
 「ふ・・・・・んっ、あっ」
 「ユーマ」
 「ア、アシュラ、フッ」
声の変化に伴って、痛みを感じるほど狭かった蕾がほんの僅か柔らかくなる。
 「ユーマ・・・・・」
(少しは感じているのか・・・・・?)
 ペニスの出し入れを少し早いものにしても、悠真の漏らす声は始めのような苦痛ばかりのものではなくなった。
痛みは完全に消えてはいないようで、眉間に時折浮かぶ皺が無くなることはなかったが、それでもぎこちなく自分からも腰を動か
し始めた悠真に、アシュラフの笑みは深いものになった。



(ど、どうしよ、俺・・・・・っ)
 自分の身体が変わっていくのが分かり、悠真はその快感に怯えてしまう。
それでも、自分の身体の上で動き、甘い言葉を囁いてくれるアシュラフを見つめていると、胸の中に広がる甘い思いが更に快感
を増幅していった。
 「す・・・・・き・・・・・」
 「ユーマ?」
 「す、きっ」
 認めないわけにはいかなかった。
今日会ったばかりの異国の男に、抵抗する間もなく身も心も陥落してしまった。
たとえ、花嫁という言葉が虚構のものでも、たったこの一度だけで離れてしまうようなことになったとしても、今自分が感じているこ
の思いは嘘ではない。
もしかしたら、初めてで最後かも知れない、恋。
この熱い国で見つけた、愛しい人・・・・・。
 「ア、アシュラフッ」
 「ユーマッ」
 自分の身体の中を掻き回し、奥の奥まで突いてくるアシュラフのペニスを、痛みを凌駕する思いで必死で受け止めた。
(いた・・・・・い、痛い、・・・・・っ)
 「・・・・・っ」
アシュラフも、もう躊躇いを感じているようではなかった。
激しく悠真の中を蹂躙し、自分自身というものを確実に刻み付けていく。
そして。
 「ひ・・・・・っ!!」
 「・・・・・くぅっ」
 熱いものが、自分の身体の最奥にたたきつけられたのを感じ、悠真は身体を震わせながら深い脱力感を感じた。
 「・・・・・ユーマ」
アシュラフは悠真の名を呼び、熱いまなざしで見つめながらキスを落とした。
軽く触れるだけだったキスは、やがて深い口付けとなって悠真の意識を再び奪っていく。
まだ悠真の中に深く埋められたままのアシュラフのペニスは脈動を続けており、悠真は甘苦しいこの時間がまだ続くのだろうと感
じて、小さな熱い吐息を漏らした。






                                     





アラブ物、第6話です。
言い訳のしようがありません・・・・・終わりませんでした(泣)。まるまる1話ヤッテるだけなんて。
いえ、ここで終わることも出来るんですが、エッチが終わって終わりなのはどうも納得がいかないので、もう1話、もう1話だけ追加させてください。
次回は本当に最終回。エッチの後のエピローグです。砂漠の恋は熱い熱い(笑)。