熱砂の誓約








                                                          
※ここでの『』の言葉は外国語です






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 もう何度も抱かれたというのに、結婚式を挙げたからということだけで、悠真は自分の肩を抱きしめてくるアシュラフをドキドキしな
がら見つめていた。
 どうやって抱かれるか、自分がどんな反応を示すのか、もう分かっているのに、見つめられるだけで身体は蕩けてしまいそうになっ
て、悠真は先走ってしまいそうになる自分を抑えるために、ギュッと目を閉じ、何度も落ち着けと口の中で繰り返した。
 「ユーマ?」
 そんな悠真に、アシュラフは違和感を覚えたのか名前を呼んできた。
 「どうした?」
 「ど、どうし・・・・・?」
 「目を閉じていては、お前を抱いているのが誰だか分からないだろう?ユーマ、お前の身体を愛しているのが私以外の男だったら
どうする?まさか、それでも構わないとは言わないだろう?」
 「!」
まさか、アシュラフがそんなことを言うとは思わなくて、悠真は直ぐに目を開いた。
しかし、悲しそうな顔をしていると思ったアシュラフの顔は、にっこりと楽しそうに笑っている。悠真はそれでようやく、自分がからかわ
れたのだということを悟った。
 「アシュラフ!」
 「ははは、ユーマが私を見てくれないから悪い」
 「もう・・・・・」
 「さあ、目を閉じないで、私の顔をずっと見ていてくれ」
お前に見つめられるだけで身体が熱くなる・・・・・そう言うアシュラフの言葉に自分自身の身体が熱くなってきたような気がして、悠
真は目を閉じる代わりに唇を噛み締めた。



 湯を浴びた後に、自分と同じように身体に香油を塗られた悠真の身体からは華の香りがする。
欧米人や中東の人間とは違い、きつい体臭など持たない日本人の悠真。アシュラフは当然、悠真そのものの匂いの方を好まし
いと思っていたが、今回は特別な夜でもあるし、趣向が変わっていいものかもしれない。
 「ユーマ」
 耳元で囁きながらゆっくりと服を脱がせようとすると、恥じらいの表情を見せながら・・・・・拒まない。その絶妙な様がさらにアシュ
ラフの欲望を刺激して、全てを脱がす前に胸元に顔を埋めてしまった。
 「あっ!」
 「・・・・・」
 「ア、アシュラフッ」
 ささやかな乳首を口に含みながら、まだ隠されている悠真の下半身を服の上からゆっくりと刺激する。アシュラフの手の大きさに
ピッタリの、好ましい大きさの悠真のペニスは、直ぐにアシュラフの手を押し上げようと勃ち上がり始めた。
 「まっ、ね、待ってっ」
 「・・・・・」

 クチュ ペチャ

立った乳首を唇で食み、舌で舐め濡らすアシュラフの肩を押し退けようとする悠真の手。しかし、その力は弱く、どちらかといえば
支えを探して手を伸ばしているようにさえ感じる。
 アシュラフはその片手に自分も指を絡めると、下半身を愛撫していたもう片方の指を、そのまま腰から尻へと滑らせた。
 「!」
まだ、緩く勃ち上がり始めたペニスにも直接触れていないが、アシュラフの指は自分のペニスを受け入れる場所である双丘の奥を
焦らすように弄り始める。
早く、悠真にも自分を欲しいと、はっきりと言葉で求めてもらいたかった。



 上半身は腕に服が引っ掛かるほどに脱がされたが、下半身の方はまだ縛っている紐も解かれてはいない。それなのに、アシュラ
フの指は自分の尻を、いや、尻の挟間を何度も指先で撫で、時折つんと突いてくる。
(ま、まだ早いよ・・・・・っ)
 最終的にアシュラフのペニスを受け入れることは分かっているものの、あれ程に大きなものを自分のあそこに受け入れるのにはま
だ時間が欲しい。何時もなら、アシュラフもまずペニスを愛してくれて、何度かいかせてくれてから、ゆっくりと後ろの方へと手を伸ば
すのに・・・・・。
 何時もとはやり方の違うアシュラフに、悠真は戸惑って、混乱していた。
 「ね、ねえっ」
 「・・・・・」
 「アシュラフッ」
強く名前を呼ぶと、ようやくアシュラフは胸元から顔を上げた。
その口元が濡れ光っているのが見え、同時に、自分の乳首がヒリヒリと痛むのを自覚して、悠真はその原因を想像するだけで恥
ずかしくなった。
 「ユーマ」
 「ふ、服も、まだだよ?アシュラフだって・・・・・」
 焦っている気持ちをごまかす為に言ったのだが、そう言葉にして初めて、悠真は自分もそうだがアシュラフもまだ服を脱いでいない
ことに気がついた。こんな風に服を着ていると、たった1枚の生地でも2人の間に隔たりが出来ているようで寂しく、悠真は、手を伸
ばしてアシュラフの服を脱がそうとした。
 「・・・・・ユーマが私を襲ってくれるのか?」
 「だ、だって」
 「さあ、この先はどんな風にしてくれる?」
 目元を和らげたまま、アシュラフは楽しそうに訊ねてくる。悠真はどうしようかと一瞬躊躇ってしまったが、それでもこのままでは余
計に恥ずかしいような気がして、協力してくれるアシュラフの服をゆっくりと脱がし始めた。

 「・・・・・っ」
 部屋の中の明かりは点いている。
それを消して欲しいと懇願することも思いつかないまま、悠真はアシュラフの腰の紐を解いた。
徐々に現れてくるアシュラフの身体。鍛えてある引き締まった褐色の肌は、同じ男であってもいまだ線が細い自分の身体とはまる
で違っていて、悠真は憧れの目で見つめてしまう。
 それと同時に、今まで何度もこの綺麗な身体に抱きしめられたことを思い浮かべて、自然と下半身の熱が跳ね上がってしまっ
たことには・・・・・気付かなかった。
 「・・・・・綺麗・・・・・アシュラフ」
 思わず口から零れてしまった賞賛の言葉に、アシュラフはクスリと笑う。
 「私なんかよりも、ユーマの身体の方が綺麗だ」
 「・・・・・嘘」
 「本当に。誰が何と言おうと、私にとって一番美しいのはユーマの身体だ」
もちろん、その心もと付け加えるアシュラフは、自分がどんな殺し文句を言っているのか分からないだろう。
欲しがられているのが嬉しくて、彼の特別な位置に自分がいることが誇らしくて、そして・・・・・妻という立場になった自分がくすぐっ
たくて、悠真は一瞬目を閉じたが、
 「・・・・・」
直ぐに意を決して上半身を起こすと、
 「ユーマ?」
不思議そうに自分を見つめてくるアシュラフに強張った笑みを向け、そのままアシュラフのペニスに手を伸ばした。



 「ユーマ・・・・・っ」
 小さな手にペニスを握られて、アシュラフは更に自分のペニスに勢いがついたことを自覚した。
言葉や態度で悠真を翻弄しているはずの自分自身、何時も以上に初々しい態度の悠真に煽られていたことが、このペニスの反
応で知られてしまうだろうと思った。
 しかし、悠真はそこまで気が回っていないようで、アシュラフの足の間に身体を入れ、じっとペニスを見つめながら、用心深く手を
動かしている。
 「・・・・・」
(何時もは、私の方から言わないとしてくれないんだが・・・・・)
 何度もいかせ、かなり理性が飛んでしまってからでないと、恥ずかしがってしてくれなかった行為。
正式に結婚したという事実は、アシュラフも気持ちが新たに思ったと同じように、悠真にとっても特別な出来事になったのかもしれ
ないと思った。
 「・・・・・っ」
 悠真の両手でも、とても全てを愛撫しきれない自分のペニス。まだ理性が残っている悠真は恐々と手を動かしているが、悠真
の愛らしいペニスとは違い、もっと激しく愛撫を施してくれてもいいのだが・・・・・。
 「ユーマ」
 アシュラフは悠真の手の上に自分の手を重ね、それまでよりも強く擦り始めた。
 「い、痛くない?」
 「いいや、気持ちがいい」
 「本当?」
 「ああ」
両手でも、竿の部分を全て覆えない・・・・・アシュラフは俯いている悠真の髪をかきあげ、そっとまだ丸みの残る頬に触れた。
 「・・・・・?」
どうしたのだと顔を上げた悠真の唇に、意味深に親指を滑らせたアシュラフは出来るかと訊ねる。それがどういう意味なのか、一
瞬分からなかったような顔をした悠真に、アシュラフは口で出来るかとはっきりと言った。
 「く、口・・・・・」
 「お前の中に入る前に、こちらも味わってみたい」
 「・・・・・」
 「出来ない?」
 「・・・・・出来る」
 出来ない・・・・・始めにそう聞いたのは偶然だと思ったが、もしかしたらアシュラフの頭の中には無意識な計算があったのかもしれ
ない。
抱かれる側としても、あくまで男である悠真に、始めから否定をこめた声で訊ねれば・・・・・否という答えは返ってこない可能性の
方が高い・・・・・そう思ったのだろうか・・・・・。



 まだ完全には勃ち上がっていないアシュラフのペニスは、それでも十分自分のものよりも大きかった。
(あ、明るいとこで見るのって・・・・・)
生々しい赤黒い色に、血管の浮き出た竿。大きく張り出たカリの部分に、恐る恐る顔を近づけた悠真は、ほのかに香る華のよう
な匂いに気がついた。
(そういえば、俺も何かを塗られたっけ・・・・・)
 風呂上り、まだ服を着る前に、全身に何かを塗られていた。一瞬、ベタベタとすると思ったが、直ぐにそれはさらっとした感触に変
わって、今の今までそのことを忘れていたのだが・・・・・それを塗られる時、尻やペニスにも触れられたことが鮮やかに思い出された
悠真はカッと頬に血が上ったが、同時に、もしかしてアシュラフもと思ってしまった。
 「ア、アシュラフ」
 「・・・・・ゆっくりでいいぞ」
 「・・・・・」
 悠真の準備をしてくれたのはアリー1人だが(アシュラフが気遣って1人だけにしてくれたようだ)、アシュラフの場合はどうだろうか。
この宮殿の中には大勢の召使いがいて、その中には若い女の人も男の人もいて・・・・・。
(みんな、綺麗なんだもん・・・・・)
 この国の美意識が日本人の自分と同じかどうかは分からないが、少なくとも誰が見ても整ったという容貌の者が多い。
どちらかといえばあっさりした顔の自分とは違う、くっきりとした目鼻立ちの若い女の召使いに、もしかしたらアシュラフは全身を、そ
れこそペニスにまで香油を塗られたのだろうか。
(・・・・・嫌だ・・・・・)
 世話をされることに慣れている王子様のアシュラフはなんとも思っていないのかもしれないが、悠真はアシュラフの身体に自分以
外の誰かが触れたと思うと胸がザワザワとしてしまう。それが儀式のためだったとしても、やっぱり・・・・・面白くない。
 「・・・・・」
 悠真はじっとペニスを見下ろすと、
 「ふむっ」
いきなり、口いっぱいにそれを銜えこんだ。
 「・・・・・ぐ・・・・・っ」
(く、くる、し・・・・・っ)
 勢いをつけたせいで喉の近くまで先端が入り込み、その経験したことのない感触と息苦しさに、悠真は息が詰まりそうになった。
 「ユーマッ、出すんだっ」
その様子に気付いたアシュラフは直ぐに頬を叩いて促してくれたが、ここまで来て悠真も口淫を止めるつもりはない。
 「・・・・・」
 一度、先端部分を残してペニスを引き出した悠真は、今度はゆっくりと出来る範囲でそれを口の奥へと導いていく。苦しさの為
に歯など立てないように、苦しそうな表情をアシュラフに見せないように、悠真はゆっくり、ゆっくり、自分の口の中でアシュラフのペニ
スを育てていった。



 グチュ ジュル グチュ

 小さな悠真の口を行き来するたびに、自分のペニスがその唾液で濡れ光り、次第に大きく、硬くなっていくのが分かる。
無理をするなと言っても聞かず、今更止めろとも言えないアシュラフは、自分に愛撫を施してくれる悠真をじっと見下ろした。
 「・・・・・」
 ベッドの上に正座をするように自分の下半身に顔を埋めている悠真。その背中から細い腰の線がよく見える。
頭を上下するたびに、無意識に腰も揺れているのが楽しくて、しばらくは視界だけで楽しんでいたが、やがてアシュラフは手を伸ば
すと、半分だけずり落ちている夜着から覗く尻へと手を伸ばした。
 「!」
 リーチが長いので、その狭間にも軽く指先は届き、アシュラフはもう少しと更に奥へと手を進める。すると、悠真は口の中に含ん
でいたペニスを出して顔を上げた。
 「ま、まだ、ダメだって」
 「どうして?」
 「アシュラフ・・・・・イッてないし」
 「・・・・・もう少しだけど、ね」
 本当は、まだたどたどしい悠真の愛撫ではイクまで時間が掛かりそうで、その時間じっとしているのはつまらないと思ったアシュラ
フは、悠真に自分の顔を跨いでくれと言った。
 「え・・・・・?」
 「お互いに楽しんだ方が気持ちいいだろう?」
悠真が一生懸命してくれる口淫はもちろん嬉しく、気持ちがいい。それを、アシュラフは自分も悠真にしてやりたいと思った。
 「ほら、身体をこちらに」

 いきなりの注文に悠真が戸惑っているのを利用したアシュラフは、悠真の身体を自分の身体の上へと移動させると、そのまま下
半身を自分の顔の上へと向けた。
 「ほら、続けてくれないのか?」
 悠真にすれば羞恥を感じる体勢(アシュラフから見れば絶景だ)に身体を強張らせていたが、アシュラフは構わずにその腰を持っ
て引き寄せると、既に勃ち上がっていた悠真のペニスを躊躇わず口に頬張る。
 「!」

 クチュ クチュ クチャ

今まで我慢していた分、愛らしいペニスにねっとりと舌を絡めると、悠真は快感を耐えるためか、アシュラフのペニスを握る手に力を
込めてきた。
 「ユーマ」
 握っていないで、続けてくれと、懇願するように、甘えるように言うと、少しだけ逡巡するような気配の後、再び温かく柔らかいも
のにペニスの先端が含まれる。
アシュラフは目を細めると、悠真のペニスを口に含んだまま、その根元の方へと、ゆっくり指を移動させた。






                                      






今回エッチはかなり長くなると思うので、呆れない方だけお付き合い下さい。
次回、入れるとこまでいくとは思いますけど(苦笑)。