【ようやくお互いの存在に馴染んできた(いない者もいるが)攻様達。
話は次第に下半身への事情へと移っていった】







 「キアは俺が初めてだったが、元々淫乱な兎族の血を引いているから柔軟に受け入れてくれた。あんまり気持ちよくて、少し無
理をしてしまったくらいだ」
 狼族というレンは、見た目では人間の17,8歳くらいだろうか。
人間とはやはり少し思考回路が違うのか、セックスに関する話もほとんど照れも無く話している。いや、レンにすれば、セックスは大
切な子孫繁栄の行為(キアがオスであることは置いておいて)なので恥ずかしくも何も無いのだが。
 「それは羨ましいな。ユキもそれほどに積極的になればいいのだが、何度抱いても恥ずかしがってしまう・・・・・まあ、それも初々
しくて良いのだが」
 「あまりあられもないと商売女と変わりが無い」
 「兄上は商売女と寝たことは無いでしょう?あれはあれで、楽しませることを商売にしているだけあっていいものですよ?」
 「ああ、それは分かるな。割り切って色んな大胆なこともしてくれる」
 遊び慣れている洸竣とラディスラスは話が合うのか、お互いの言葉に顔を見合わせて笑った。
確かに、洸聖もそれなりの女性遍歴はあるのだが、いずれは大国を背負う皇太子の身分なのでおかしな相手は初めから選ぶこ
とはなく、相手は良家の子女やどこぞの奥方が多かった。
彼女達はそれなりの技巧をもって洸聖の相手をしてくれたが、やはり商売女となるとそれを職業としているだけに違うのかもしれな
い。
悠羽を愛しいと想っている自分の気持ちを自覚した今は他の人間を相手にすることは考えてはいないが、それでもそういう経験を
してきた方が良かったのかもしれないと少しだけ・・・・・洸聖は思った。



 「確かに、春を売る女を相手にするのも面白いかもしれぬが、人妻というものもなかなかに楽しいものだ。そちらの・・・・・奥方殿
は、他の男に取られないようにされておるか?」
 意外にも性に奔放なこの国では、おおっぴらにする者はいないが人妻と情を通じている者も多い。
昂耀帝も、若い頃は遊び半分にそういった女達のもとに通っていたものだった。
それはもしかしたらここにいる者達・・・・・まだ年少である洸莱と龍巳は違うだろうが・・・・・には、多かれ少なかれ経験あることかも
しれない。
アルティウスも、シエンも。
稀羅も、レンも。
そして、紅蓮も・・・・・相手のある女と情を交わしたことがあるはずだ。
 だが、本当に愛しいと思う相手が出来ると勝手なもので、過去のことは全て無かったことになるらしい。
それは自分の持っていたそれまでのモラルも同様のようだった。
 「ユキはそんな軽い気持ちの持ち主ではない!私だけを愛し、エクテシアを思ってくれているユキが私以外を見るはずもないし、
もちろん私もそのようなことは許さない!」
 「私も同じです。ソウが私以外の相手を愛するなんて考えられない」
 「お前、自分に自信が無いからそのようなことを言うのであろう?チサト・・・・・と、申したか、その者は本当にお前を愛しているの
か?」
 「・・・・・無論だ」
 アルティウスの追求に、昂耀帝は少し声を詰まらせる。
その中に自信の無さが伺えて、アルティウスはふんっと鼻で笑った。



(自分が愛した者が、本当に自分を愛しているか・・・・・)
 黙って話を聞いていた稀羅は、頭の中に莉洸の姿を思い浮かべて思わず唸ってしまった。
自分は歳の差や経験値を上手く使い、幼い莉洸の心を騙して手に入れたようなものだ。ようやく身体も手にしたとはいえ、自分と
莉洸の間の気持ちの温度差というのは確かにあるだろう。
(それでも離せないのだからな・・・・・)
 らしくもなく溜め息をつきそうになった稀羅は、ふと、黙って控えている洸莱を見た。
 「そなたも、愛おしいと想う相手がいるのか?」
 「・・・・・いますよ」
 「まさか、莉洸ではないだろうな?」
兄弟同士で・・・・・とは思わないが、莉洸の口から洸莱の名前が出てくる頻度は多く、一応というように前置きをしながらも真剣
な視線を向けて言うと、洸莱は歳に似合わない深い笑みを浮かべた。
 「私にとって、莉洸は特別な存在です」
 「特別、だと?」
 「でも、兄以上の気持ちは抱いておりません」
 「・・・・・洸莱殿」
 「あなたは、もう莉洸の夫となられたんでしょう?私のことは洸莱とお呼びください」
 「・・・・・そなたは、私と莉洸のことを許すのか?」
 「私は、兄達よりも長い時間莉洸と一緒にいました。莉洸はとても優しく、たよやかな性格をしていますが、嫌なことは絶対に受
け入れることはありません。そんな莉洸があなたを選んだのならば、私が反対する理由などないのです」



 勝手に言い合っている人間達を醒めた目で見つめていた紅蓮だったが、自分の横顔に注がれる強い眼差しに怪訝そうに顔を
上げた。
 「・・・・・何だ」
 「俺の言いたいこと、分からないか?」
紅蓮の赤い瞳など全く恐れないように、龍巳は紅蓮の前に歩み寄った。
 「昂也を酷い目に遭わせてないだろうな?」
 「・・・・・」
 「碧香は、自分のせいで竜人界に行ってしまった昂也のことを心配してくれている。お前は?碧香のことは心配しても、昂也の
ことはどうでもいいと思っていないか?」
龍巳の言葉は一々紅蓮の心に突き刺さるが、それでも人間などに諭されてなるものかと思って口を噤んだままだ。
 「・・・・・俺は、あんたとは違うよ」
 「・・・・・」
 「仮に、あんたが昂也に酷いことをしたとしても、その代わりに碧香に何かしようとは思わない。碧香には出来るだけ協力するし、
大事にしたいとも思ってるから、あんたも少しでも・・・・・本当に少しでもいいから、昂也のことを考えて欲しい」
 「・・・・・」
 「頼むよ」
 「・・・・・」
 龍巳の言葉に、紅蓮は頷かなかった。
それは、受け入れることが出来ないということではなく・・・・・既に、紅蓮の心の中には昂也がしっかりと存在しているからだ。
(お前などに言われるまでもない・・・・・っ)
内心でそう言いながら、紅蓮は冷たくなった飲み物をぐっとあおった。



 「まあまあ、とにかく今日は自慢話をするんだろ?」
 所々で話していた者達は、陽気なラディスラスの声に流されるように振り向いた。
確かに今日は本編とは関係なく、自分の愛しい(もしくは、気になる相手)の自慢話をする為に来たのだ。
 「じゃあ、俺から言わせて貰うけど、まず、タマって名前が可愛いだろ?でっかい目も、子供みたいな肌もいいが、あのびっくりする
ような考え方がまたいい。たどたどしい話し方もそそるしな」
 「ああ、それは分かるな。話が全く通じないのも困りものだが、少し幼い口調は愛らしい」
 「ええ、ソウも、なかなか言葉を覚えてくれなかったのですが、一つでも通じると凄く喜んで・・・・・確かに可愛らしいですよね」
 「コウヤは全く言葉を覚えようとしていないんじゃないか?身体や目の動きで訴えていることは分かる気がするが、全く通じないの
では話にならない」
 「その点、碧香は偉いな。あんな痛い思いをしてでも言葉を通じさせようと努力したし」
 「我が弟だからな」
 異世界からやってきた相手のことを話す者がいれば。
 「キアはまだまだ子供で、何でも口に出していっちゃうんだよな。交尾のことも、知識だけはあるから、こっちが驚くような物言いは
するくせに、手も口も思うようにはいかなくて・・・・・まあ、慣れていなくて嬉しかったけど」
 「莉洸も何も知らなかったな。男同士で身体を繋げることもあまり理解していなかったようだし・・・・・」
 「稀羅王!そなた、もう莉洸に手を出したのかっ?」
 「既に婚約をしている身だ、身体を繋げて何が悪い」
 「り、莉洸はまだ子供なのに・・・・・っ!」
 「身体はきちんと私を受け入れたぞ」
(確かに全ては無理のようだったが)
それは絶対にこの面々の中で言うことは出来ない。
 「初めてがきついっていうのはしかたないよな、相手は男だし。タマも、何度も身体を慣らしてやって、ようやく最後まで出来たしな
あ」
 ラディスラスはその時のことを思い浮かべて、にんまりと笑みを浮かべた。
 「始めはきついぐらい絞られて抵抗が物凄かったんだが、慣れてくると気持ちいいほど中が煽動して・・・・・根元まで押し込むと、
もう気持ちよくってたまらなかったなあ」

 「「「「「「「・・・・・」」」」」」」

ラディスラスと同じような思いをした者・・・・・若干7名はうっと言葉に詰まってしまった。
(確かに、ユキも始めは痛がって、押し入れるだけでも苦労はしたものだが・・・・・)
(慣れてくると、心地良く締め付けてくれましたし・・・・・)
(痛いと泣き叫ぶ姿が返って気分を高まらせてしまって・・・・・悠羽にはさらに痛い思いをさせてしまった・・・・・)
(泣き顔にもそそられて、更に激しくちさとの最奥に突き入れて・・・・・)
(気を失った莉洸に、あれ以上無体なことは出来なかったが・・・・・)
(人間の身体は初めて抱いたが、皆あのように熱く狭い内部なのか?)
(人間って大変なんだな。キアは最初から喜んでくれたけど)
それぞれがそれぞれの思いを抱いた。



 自分の言葉が切っ掛けで誰がどんなことを考えているのかラディスラスは関係なかった。
多分、ここにいる者達の相手はそれなりにいいのかもしれないが、その誰よりも珠生が一番だと思っているからだ。
 「まあ、情けないけどまだ1回しか最後まで抱いていないが、近々向こうから泣いて抱いてくれと言わせるつもりだ」
 「言わなかったら、どうするのですか?二度とその腕に抱けないかもしれませんよ?」
シエンが穏やかに口を挟むと、ラディスラスはチッチと人差し指を揺らした。
 「そういう時は、抱かせてくださいって頼むんだ」
 「・・・・・こちらが願うのか?」
自信家に見えるラディスラスの弱気な言葉に、意外だという風に昂耀帝が繰り返した。
 「当たり前。しかたないと思われたって、抱けばこっちが主導権を握るんだからな」
 「・・・・・確かに」
 「そういう場合も有りえるな」
 気の強い恋人を持つ者は思わず頷いてしまう。そうだろうと、同意を得て更に勢いづいたラディスラスは、意気揚々として持論を
展開していった。
 「それでも駄目なら、酒や薬を使ってもいいんじゃないかって俺は思ってる。身体に影響が残らず、そのうえ相手が淫らに身体を
開いてくれれば儲けものだし」
 「酒か」
アルティウスがうんうんと頷き、
 「なるほど、それも良いな」
昂耀帝も、チラッと用意させてある酒に視線を向ける。
 「お前達、そんなもので相手を意のままにさせて構わないというのかっ?」
 しかし、生真面目な洸聖は何かを使ってということがどうしても頷き難いようで、1人猛然とラディスラスに食って掛かった。
 「構わないぜ」
 「お、お前!」
 「あんたは?もう何回も相手を抱いてる?」
 「・・・・・わ、私は・・・・・っ」
 「二度目を許してくれない相手だぜ?あんただったらどんな手を使う?」
反対にそう聞かれ、洸聖は思わず言葉を飲み込んでしまう。
兄の劣勢に、洸竣が苦笑を零しながらその肩を叩いて言った。
 「兄上、彼らの方が女の・・・・・いえ、抱く相手のことを良く分かっていますよ。私だって、黎がなかなか身体を開いてくれなかった
ら、薬を盛ることも考えるでしょうしね」
 「洸竣!」
 「なんだ、そこの王子様は話が分かるな」
ラディスラスは自分と同じ雰囲気を醸し出す洸竣に向かってにやっと笑い掛けた。



 「何だか、大人のクセに情けないな」
 高校1年生である龍巳は、一応幾人かの女と関係を持ったことがある。本気の相手というわけではないので、龍巳の中ではあ
まり重要なことではないが。
周りは運動部の友人達が多く、彼らは特定の彼女を持っていない者が多かったし、何より一番側にいる昂也が全く女っ気がな
いので、そういったことを改めて意識することがあまりなかった。
(愛しい相手とのセックス・・・・・ねえ)
 「・・・・・あれ?」
 そこでなぜ碧香の顔が浮かぶのか分からず、龍巳はぶるっと頭を振る。
その拍子に、先程からほとんど口を開かないまま座っている、自分とそう歳が変わらないような男が目に映った。
 「えっと・・・・・あんたは?」
 「・・・・・何だ?」
 「その、経験、とか」
 「私はまだ誰も抱いたことはない」
 きっぱりと言い切ったのは光華国の第四王子、洸莱だ。
その口調に少しも未経験なことが恥ずかしいという響きがなかったので、龍巳は思わず身を乗り出して話を聞いてしまった。
 「好きな人っている?」
 「・・・・・気になっている相手はいる」
 「どんな人?」
 「とても、綺麗な人だ」
 「へえ」
 「容姿だけではない。誰かを思いやるという心を持っている、とても優しい人だ。私自身、その人とどうなりたいのかはまだ分から
ないが・・・・・あの人に笑顔を浮かばせることが出来ればと、思ってる」
 「・・・・・」
(それって、告白じゃないのか?)
自分がどんな惚気た事を言っているのか少しも気付いていないような洸莱を、龍巳は少し苦笑をして見つめる。
それでも、それほどに思える相手がいる洸莱のことを羨ましいとも思った。



 「そろそろか」
 昂耀帝は渡り廊下の向こうからこちらへとやってくる松風の姿を見付けて呟いた。
それほどに時間が経ったという気はしなかったが、もうそろそろあちらの部屋に移動する時間が来たということだ。
見目も良く、それなりの地位や威厳がある者達が、こぞって惚気話をしていた噂の相手の顔を見れることが楽しみであったし、昂
耀帝自身、誰かにこうして千里の話をしたせいか、早く千里の顔が見たいと思ってしまった。
 「御上」
 現れた松風が一礼した。
 「皆様お待ちでございます」
その言葉に頷くと、昂耀帝は一同を見回した。
 「客人方、そろそろ場を移して頂こうか。この松風に案内させる」
 「どこに行くというのだ?」
 「あなた方の愛おしい相手がいる場所だ」
昂耀帝がそう言うと、その場にいた者達の顔が目に見えて柔らかくなった。
若干1名ほど、眉を顰めた複雑そうな表情をしていたが、多分それも恰好だけではないだろうかと昂耀帝は思う。
 「では、早く参ろう。シエン」
直ぐに立ち上がったアルティウスが言うと、シエンも頷きながら立ち上がる。
続いて兄弟である洸聖、洸竣、洸莱と、やがて義理の兄弟になる(洸聖は認めたくないだろうが)稀羅。
龍巳もぱっと立ち上がってちらっと振り向くと、視線の先にいる紅蓮が渋々といった感じに立ち上がり、それを見たレンも腰を上げ
た。
 「ようやくタマとご対面か」
 ラディスラスは昂耀帝を振り返った。
 「なあ、何か美味い物出してくれたか?あいつ、美味い物には目が無くってさ」
 「ああ、それなら、ソウもです。自分で作ることも好きなんですが」
 「ああ、じゃあ、気が合ってるかもな」
ワイワイと騒ぎながら(一部は静かなまま)移動を始めた男達を見送りながら、昂耀帝もゆっくりと歩き始めた。
(ちさとも私を待ってくれているであろうか・・・・・)






                                       






ノロケ話、攻様側後編です。

あんまりエッチくなかったかもしれませんが・・・・・次回、受けちゃんとの合同話です。長くなりそう(汗)。