狼と7匹目の子ウサギ
14
「ホントッ?ホントにレンと交尾したのっ?」
「身体大丈夫なのか?お前交尾初めてなんだから痛かっただろ?」
口々にキアの身体を気遣って声を掛けてくれる兄姉達の優しさが嬉しくて、キアはレンにおぶわれた格好のまま満面の笑みを
浮かべて言った。
「うん、大丈夫」
「キア、ちゃんとレンのペニスを全部受け入れられた?」
「うん」
「へ〜、凄いね、初めてで?」
兄姉達の驚きも良く分かる。
キア自身、あんなにも大きなレンのペニスが、今まで誰も受け入れたことが無い自分のそこに入るとはとても思えなかった。
雌は、初めてでも子孫を作る為にかなり無理は利くらしいのだが、雄同士は・・・・・どちらかと言えば純粋に快楽だけを求める行
為なので、慣れるまでは痛みを伴うと兄弟達も言っていた。
何をどうするか、知識だけはあったので、痛みは何とか我慢出来るのではないだろうかと思っていたが、自分でも驚くほどに快感
しか感じなかったと思う。
(レンさんがいっぱい触ってくれたし・・・・・)
その前にコードの手でもトロトロにとかされていたので、痛みなど一瞬だった。
「キア」
ぼんやりと思い出していると、自然と身体が火照ってくる。
思わず身体をもぞもぞ動かすと、まだキアを背におぶったままのレンが気遣わしそうに言った。
「キア、身体が痛いのか?」
「う、ううん」
「馬鹿だなあ、レン。キアはまだウズウズしてるんだよ」
「そうだよなあ、今日初めてなら仕方ないって」
「治めるには、もう一度抱いてもらうのがいいんだけど」
兄姉達はそう言いながらレンを見ている。
そして、一番下の兄が笑いながら言った。
「レン、もう一度キアを抱いてやってよ」
「出来るかっ!」
思い掛けなく大きな声でレンが否定したので、キアは少し寂しくなってしまった。
(僕の身体・・・・・もう抱きたくないのかな・・・・・)
(今日初めて交尾したキアに何を言うんだっ、この兄姉達は!)
少し見ただけでも疲れていることが良く分かるはずなのに、更にその身体を抱けと言うのは無茶過ぎだ。
そうでなくても、初めての相手にやり過ぎたかと反省している気持ちとは裏腹に、レンとしてはもっともっとキアの身体を貪りたい気
持ちがあるのだ。
「レン、言葉が足りない」
「何?」
「その言い方だと、二度もキアは抱けないって言ってるも同じだよ」
「・・・・・」
(こいつ・・・・・)
笑いながらレンにそう言ったのは、確かキアの直ぐ上の兄、ルカ・・・・・と言ったか。
兄姉達の中でもかなり淫蕩な性質で、レンをも振り回したほどの相手だ。
「・・・・・」
「ねえ、レン。まさか一度抱いたからって、二度とキアと会わないなんてこと・・・・・言わないよね?」
「・・・・・どうしてお前がそんな事を言うんだ」
「レンが交尾をした相手をわざわざ家まで送るなんて聞いたことが無いし、何よりその目・・・・・何だか、僕達にもキアを渡したく
ないって気持ちが見えるんだもん」
「・・・・・っ」
(こいつ!)
確かに、ルカの言う通りだった。
さすがに淫乱な兎族とはいえ、近親間・・・・・親子や兄弟で交尾をするという話は聞いたことが無い。
このままキアを家に置いて行ったとしても手厚い世話をするだけだというのは分かるのだが、交尾の後の色っぽくやつれたキアを見
てもこの兄姉達は手を出したりしないだろうか?
キアに対してはかなりの独占欲を感じているレンは、たとえ兄姉間のスキンシップといえども笑って見逃すことは出来ないような
気がしていた。
「レンって、そんな人だったんだ?」
そんなレンの思惑が全て分かっているように、ルカが悪戯っぽく笑った。
「もっと冷たい人だって思ってた」
「あら、実際レンは冷たかったわ」
「そうだな、終わった途端家から追い出したし」
「違うって、兄さん達。レンは今だって冷たいんだよ、キア以外にはね」
「・・・・・」
「そうでしょう?」
「・・・・・お前達に言う必要は無いだろう。早く、キアの部屋に案内してくれ、ゆっくり寝かせてやりたいんだ」
いい加減勝手な憶測を言われるのも面白くないので(そのほとんどが事実だというのも悔しいが)、レンは年かさの兄に向かっ
て言った。
「ねえっ、聞いたっ?」
「レンって優しかったんだ!」
しかし、かえってその言葉に兎の兄姉達は盛り上がっている。
レンは深い溜め息をつくと、早くキアをゆっくり寝かせてやりたいと思っていた。
その夜、自分を捜しに行ってくれていた2人の兄達も戻り、キアは少し遅めの夕食を7匹で囲っていた。
「良かったね、キア」
「おめでとう、キア」
「ずっと好きだった甲斐があったな」
「レンを離さない様にね」
「交尾で分からないことがあったら何でも聞けよ?」
「大丈夫だって、きっとレンの方がキアにベタ惚れだから」
兄や姉達の祝福の言葉がくすぐったかった。
「ありがとう、兄さん、姉さん」
兄弟達は、キアがレンを好きなことを知っていて、ずっと黙って見守っていてくれた。
キアが好きな相手なのに交尾をしてしまったことについては・・・・・もうこれは兎族の性と言うしかないが、キアはそのことで兄姉達
を恨んだりした事は無い。
もちろん、レンが兄姉達の誰かを好きだったとしたらまた話は違うだろうが、レンはキアのことをちゃんと好きだと言ってくれた。
たくさん、たくさん愛してくれた。
これ以上望むことなど無いくらいだった。
「ね、キアはレンと暮らすの?」
「え?そ、そんなこと考えたこともないよ!」
「でも、キアがレンと暮らすんだったら、キアはレンと結婚するって事?」
「雄同士だよ?」
「え〜、分からないよ」
兄姉達はその話で盛り上がっているが、キアはとてもレンと暮らすことなど考えられなかった。
けして、レンと暮らしたくないというわけでは、もちろんない。
(僕、きっと毎日ねだっちゃうかも・・・・・)
想像でしか知らなかった交尾を経験したキアの身体は、既にその甘美さを覚えてしまった。
そうなると、毎日毎日したくなって、レンに交尾をねだってしまうだろう。そんな淫乱な自分にレンが嫌気を覚えてしまったら・・・・・
そう思うと、怖くて必要以上にレンの元へはいけない気がした。
「駄目だよ、キアがレンと一緒に暮らしたら、キアが抱き壊されちゃう」
「え〜、レンって淡白だよ?」
「そうよ、一度したらさっさと身体を離すじゃない」
「だから、僕達とキアは全然別なんだよ」
「ルカの言うことは難しいな」
「そんなこと無いよ、いたって簡単」
そう言うと、ルカはツンッとキアの頬を指で突いた。
「レンにとっては、キアだけが特別なんだから」
「一緒に暮らした方がいいかな」
レンは思わず独り言のように呟いた。
キアの兄姉達の動向にヤキモキするくらいなら、いっそキアを攫ってここで一緒に住んだ方がいいかもしれない。
キアの家にも歩いて行ける距離だし、寂しいことは無いだろう。
なにより。
「・・・・・」
レンは自分の手の平を見つめる。
この腕の中にあの柔らかで温かな存在が無いことがとても寂しく・・・・・なぜだかとても不自然なことのように思うのだ。
(あれは俺のだし・・・・・側に置いておく方が正しいんじゃないか?)
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